アニメ番宣小説 その12
番宣小説です。
本日、11回目の放送日だ。残り2話となった。
「前回の続きです。盗賊はどうなったんでしょうか。この一週間、気になって仕方ありませんでした」
「わたしもです」
ノアとフィナは子熊化したくまゆるとくまきゅうを抱きながら、テレビの前に座る。
わたしは、いつもどおりにお茶とお菓子を用意して、ベッドの上に腰掛ける。
そして、時間どおりにアニメが始まり、眠そうなアトラさんが登場し、地面には縛られた男が二人倒れている。わたしの安眠妨害した罪人だ。
そんな罪人を追加するように、くまゆるとくまきゅうの背中に盗賊を乗せて、わたしが現れる。
「ユナさん、一人で盗賊を全員捕まえたんですね」
現実だと、わたしだけでなく、ハーレムパーティーとも一緒に戦って一緒に捕まえた。
その辺りの話を入れると、尺に入らなかったみたいだ。あと2話だし。
アトラさんに盗賊を引き渡したわたしは、眠るために宿屋に帰ろうとするが引き止められる。
「アトラさん、危険です」
「ユナお姉ちゃんの睡眠の邪魔をしちゃダメです」
二人が先週のことを言っているのか、宿に帰って寝ようとするわたしを引き止めるアトラさんを心配する。
「いや、いくら眠くても、アトラさんを殴ったりはしないよ」
怒るのは理不尽に睡眠の邪魔をされるときだ。
結局、アニメのわたしはアトラさんに説明することになり、寝ることができない。
そして、テレビには優雅にワインを飲む商業ギルドのギルマスが映る。
「この男の人、悪人顔をしています。絶対に悪い人です。フィナもそう思いますよね?」
「えっと、はい」
フィナは遠慮がちに頷く。
わたしも見た目で判断されて困ることがあるから、人を見た目で判断しちゃダメだよと注意したいところだけど、実際に悪徳商人で、悪いことをしていたことを知っているので、2人を注意することができない。
それをすぐに証明するかのように、男は部下の職員から盗賊が捕まったことを聞かされると慌てだし、自宅の宝物部屋らしい場所に駆け込む。
「お金を持って、逃げるつもりです!」
ノアの言うとおりに、男は金目の物を持って逃げ出そうとするが、すぐにアトラさんが登場する。
ここでアトラさんが登場するってことは、男を監視していたのかな?
そして、アトラさんは、探偵のように男と盗賊の繋がりを証明して、男を問い詰めていく。と言っても、わたしが捕まえた盗賊が全て吐いたんだけど。
そんなアトラさんと男のやりとりのなか、緊張感もなく、あくびをしているわたしがいる。
「ユナさん、眠そうです」
夜中に盗賊に起こされて、そのまま起きているみたいだ。
睡眠の大切さが分かるね。
でも、もっと目の前のことに興味を持て、アニメのわたし!
そして、男は逃げ出そうとするが、アトラさんに平手打ちされて捕まってしまう。
頬が真っ赤で、痛そうだ。
でも、わたしが殴るよりマシかも。
わたしがクマパンチで殴れば、その程度では済まない。(デボラネの顔を思い出す)
「捕まってよかったです」
「はい、これで街道が通れるようになったんですよね」
盗賊の事件は解決し、街道が通れるようになった。これで他の街に行ける手段を得ることができ、少しだけ食糧問題が解決した。
でも、海にクラーケンがいる限り根本的な解決にはなっていない。
そして、わたしは宿屋でデーガさんとアンズさんから、盗賊を捕まえたお礼として食事をいただく。
そこには魚と、夢に見たお米と味噌汁があった。
「ユナお姉ちゃん、泣いています」
「ユナさんの故郷の味だったんですね。でも、海の先には和の国があるんですね。いつかはわたしも行ってみたいです。フィナもそう思いますよね?」
「……えっと、……その、……はい」
フィナは、ノアの言葉に困ったような表情をして、わたしのほうを見たりして、最終的にうなずく。
「な、なんですか。その反応は。もしかして、和の国に行ったことがあるのですか?」
フィナの表情から、何かしら感じとったノアが、フィナを問い詰める。
「……その」
「ノア、アニメが終わっちゃうよ」
わたしはフィナを助けるため、話を逸らさせる。
「今は、それどころではありません!」
「本当にいいの?」
アニメは止まることもなく進み、わたしが海を眺め、クラーケンの討伐方法を考えている。
ノアはテレビとフィナを交互に見る。
「うぅ、フィナ。後でお話がありますからね」
ノアはそう言うと、テレビを見る。
フィナが困ったようにわたしを見る。これは黙っていることはできないよね。すでにクマの転移門も知られているし。わたしは諦めて、テレビに目を向ける。
テレビではデフォルメされたわたしが、くまゆるとくまきゅうの背中に乗って、クラーケンと戦うとか、くまきゅうに乗って空を飛ぶとか、空気の玉の中に入って戦う想像シーンが流れている。
「流石のユナさんでも、海では戦うことはできないんですね」
「でも、ユナお姉ちゃん。くまゆるとくまきゅうは海の上を走れますよね?」
フィナが、くまゆるとくまきゅうは海の上を走ることができると指摘する。
今はクマの水上歩行のスキルを覚えたので、わたしもくまゆるとくまきゅうも水の上を走ることができる。
でも、当時のわたしたちは、まだクマの水上歩行のスキルを覚えていなかったので、水の上を走ることはできない。
「そうなんですか!? くまゆるちゃんとくまきゅうちゃん、海の上を走ることができるんですか?」
フィナの言葉にノアが驚く。
そういえばノアは、そのことも知らなかったんだ。
アニメのせいで、いろいろとわたしの秘密がノアに知られていく。
でも、すでに神様のことを知られたのだから、今さらだ。
「このときはまだ、神様から教えてもらってなかったんだよ」
2人が神様のことを知っているので、そのように言う。
まあ、実際にスキルは神様から授かったものだから、嘘ではない。
でも、このときにクマの水上歩行を覚えていれば、クラーケンと戦いやすかったかもしれない。
神様も融通をきかせてくれてもよかったのに。
アニメのわたしが、クラーケンを討伐する方法を思いつかないでいると、ユウラさんに会い、食事に誘われる。
商業ギルドのギルマスが捕まったことで、商業ギルドが独占していた魚もユウラさんたちに回ってきたみたいだ。
ユウラさんの厚意で、食事をいただくことになる。
テーブルの上には魚介類が入った鍋が置かれる。
「お鍋、美味しそうです。鍋が食べたくなってきました」
アニメのお鍋を見て、ノアがそんなことを言う。
テレビの食べ物番組を見て、食べたくなるのと一緒だね。
「それじゃ、来週はお鍋にしようか?」
「本当ですか?」
「来週でアニメは最後だからね」
最終回ぐらい、そのぐらいしてもいいと思う。
「そうなんですね。次回で最後なんですよね。わたし、ほとんど登場しませんでした」
やっぱり、自分が登場しなかったのが残念みたいだ。
「ノア様、ユナお姉ちゃんがクラーケンを討伐する方法を思いついたみたいです」
わたしたちが話している間も話は進み、わたしが鍋を見て、クラーケンの討伐方法を思いつき、アトラさんに相談している。
「やっと、クラーケンを倒すんですね」
とは言っても、ワームを餌にしてクラーケンを呼び寄せて、攻撃をするだけなんだけどね。
そして、わたしとアトラさんは崖がある海岸にやってくる。
現実どおりに、わたしは、クマボックスからワームを取り出し、ロープで縛り、崖の上から吊す。
「ワームでクラーケンを呼び寄せることができるんですか?」
魚の餌にミミズを使うこともある。でも、今回はイカだけど。
「見ていれば分かるよ」
わたしがそう言った瞬間、アニメではクラーケンが動き出し、ワームを掴む。
アニメのわたしは、現実どおりに、クマの土魔法を使って、クマの岩を作り出す。
「大きいクマさんです」
クマの岩がクラーケンの逃げ場を塞ぐ。
クラーケンの逃げ道を塞ぐほどの大きさのクマの岩を何体も作ったことで、魔力を消耗する。
あのとき、本当に白クマで戦えばよかったと思ったよ。
でも、現実どおりに、黒クマの格好のまま、クラーケンの攻撃をかわしながら、海に岩も溶かすクマの炎魔法を何発も放り投げる。
「ユナさん、頑張ってください!」
「ユナお姉ちゃん、頑張って」
テレビに向かって叫ぶ2人。
頑張ってもなにも、もう終わっていることだから。
子供がヒーローショーを見て叫ぶのと一緒かな?
そして、わたしの魔力が尽きそうになる前にクラーケンが倒れる。
「倒しました!」
「よかったです」
わたしはフラフラだ。
そういえば、あのときも魔力の使い過ぎで倒れたっけ。目が覚めたときは宿屋のベッドの上だった。
そして、アニメは終わり、エンディングが流れる。これで、残り1話となった。
「それでは、フィナとユナさんには和の国のことを聞かせてもらいましょうか」
どうやら、覚えていたらしい。
わたしは、タールグイのことは省き、一人で和の国に行って、クマの転移門を設置して、フィナを連れていってあげたことを話してあげる。
「酷いです。わたしだけ、のけ者なんて。わたしだって和の国に行きたいです」
「分かったよ。今度、連れていってあげるから」
「本当ですか? 約束ですよ」
その日の夜、3人で一緒に寝るとき、ノアに和の国のことをいろいろと聞かれることになったのは言うまでもない。
数日後、アニメ公式サイトに見に行く。
タイトルが「クマさんとフィナ」だった。
なにこれ?
でも、画像を見ると、クラーケンを討伐したあとの話みたいだ。
どうして、タイトルが「クマさんとフィナ」なんだろう?
少し、気になる。
あとの情報は、ミニアニメがあり、病気のわたしの看病したいから、病気になってほしいと無理を言うノア。
実際に言いそうだから怖い。
それから、LI○EスタンプとLI○E着せかえが発売中?
ああ、ぼっちのわたしには必要がなかったものだ。
でも、本当にこれで最後なんだね。
恥ずかしいシーンを見られることがなくなるから、よかったとも感じるけど、寂しい気持ちもある。
まさか、気持ちがここまで変わるとは思わなかった。
でも、次回で最終回という事実は変わらない。
【お知らせ】
本日より、くまクマ熊ベアーアニメ12話の放映が始まります。
最終話です。3ヶ月間、お付き合いありがとうございました。
web版のクマ、書籍版のクマ、コミカライズ版のクマは引き続き、よろしくお願いします。
TVアニメ「くまクマ熊ベアー」のLINE着せかえとLINEスタンプ第1弾が発売中です。
詳しいことは活動報告にてお願いします。
【本編について】
毎週日曜日に投稿ができればと思っています。
水曜日はいつもどおりに番宣小説を書かせていただきます。
本編を楽しみに待っている読者様にはご迷惑をお掛けします。
※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。
一部の漢字の修正については、書籍に合わせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。