アニメ番宣小説 その9
「ふふ、今日はアニメの日です」
ノアの言うとおりに今日は新しいアニメの放送日だ。
「今日は、どんな話をするんでしょうね」
たぶん、大群の魔物が現れたときの話になるんだと思う。
わたしはいつもどおりにお菓子と飲み物を用意する。
週一回のことだから、脂肪の神様も大目にみてくれるはずだ。
「フィナ、隣に座ってください」
「はい」
2人は仲良く、テレビの前に座る。
もちろん、腕の中には子熊化したくまゆるとくまきゅうが抱かれている。
「ユナさんも、早く座ってください」
「そんなに慌てなくても大丈夫だよ」
わたしはベッドの上に座り、始まるのを待つ。
そして、いつもどおりにアニメが始まるとノアが声をあげる。
「始まりました」
だけど、わたしたちのアニメではなく、別のアニメが始まった。
薄暗い部屋で、男が叫んでいる。
違うアニメかと思ったら、国王陛下が出てきた。
そして、処刑っぽいシーンが流れたと思った瞬間、いつものオープニングが流れる。
わたしたちのアニメで間違いはなかったみたいだ。
「な、なんですか!? 今のは!?」
「少し、怖かったです」
ノアとフィナの言葉に同意だ。
今のシーンはなんだったんだろう?
そして、オープニングが終わり、CM部分らしきところは黒い映像が流れ、アニメが始まる。
「ピザです」
先ほどのシーンと違って、楽しそうにピザを食べるシーンから始まる。
わたしにフィナ、ノア、ミサ、シア、そこにエレローラさんもやってくる。見事に全員集合だ。
「ユナさん、ピザが食べたくなりました」
アニメでピザを食べるシーンを見たノアが、そんなことを言いだす。
まあ、その気持ちは分かるけど。
「寝る前にピザはダメだよ。ポテトチップスで我慢してね」
ポテトチップスもアウトのような気がするけど、週一回だけだ。
ノアはポテトチップスを手に取って、口に入れる。
「美味しいです」
フィナも一緒に美味しそうにポテトチップスを食べている。
アニメではノアがフィナの貸し出し許可をわたしにもらう。
「そういえば、ノアとフィナ、ミサでおでかけしたことがあったね」
「もしかして、あのことですか!」
ノアはなにかを思い出したみたいだ。
「なんなの?」
「いえ、な、なんでもないです」
ノアは誤魔化そうとして、わたしから視線を逸らす。
「あのことだったら、ユナさんに知られてしまいます」
ノアは小声で言っているが、近くにいるわたしには丸聞こえだ。
「フィナは、なんのことか知っているんだよね?」
「えっと、その……」
フィナが言い淀んでいる横では、ノアがフィナに向けて唇に人差し指を付けている。
わたしがいる前でやっても意味がないと思うんだけど。
アニメを見れば、ノアとフィナが隠していることも分かるかも知れないので、2人を追及するのはやめておく。
翌日、ノア、フィナ、ミサの3人は一緒にお出かけで、シアは学園。一人になったわたしはエレローラさんとお城に行くことになる。
現実だと、フィナも一緒にお城に行っていたけど、アニメではわたしだけみたいだ。
そして、お城の見学をして、フローラ様に会う。
その頃、ノアたち3人がテレビに映る。
フィナ、ノア、ミサの3人が仲良く城下町を歩いている。
フィナがどこに行くかをノアに尋ねている。
「ああ、やっぱり、あのときのことです。ユナさん、これ以上先は見てはダメです」
ノアがわたしの目を塞ごうとするが、ノアの力ではわたしの目を塞ぐことはできない。
ノアたちはどこかの店にやってくる。何かを頼んでいたらしい。ノアはカードらしきものを手にすると満足気な表情をする。
どうやら、カードを頼んでいたらしい。
『くまさんファンクラブ?』
アニメのミサがカードを見ながら呟く。
「くまさん、ファンクラブ?」
同じ言葉をわたしも口にする。
「うぅ、ユナさんに知られてしまいました」
わたしが知らないところで、くまさんファンクラブの会員証を作っていたらしい。
どうして、そんなものを作ったか尋ねようとすると、アニメのノアが答えてくれる。
『はい! 私たちはクマ友同志! ユナさんやくまゆるちゃん、くまきゅうちゃんについて見たり聞いたりしたことを教え合って、みんなでクマに詳しくなるのです!』
その言葉にミサも賛同している。
いや、いつのまにクマ友同志になったの?
クマに詳しくなるって、そんなにクマについて知ることなんてある?
くまゆるとくまきゅうも安全なところ以外、普通のクマと一緒だよ。たぶん。
そして、最後にアニメのノアが怖いことを言う。
『めざせ、会員1万人!』
「そんなに目指しているの!?」
確かにノアが作ったファンクラブの会員証は箱にいっぱい入っていた。
まさか、1万枚もあるとは思わなかった。
「いえ、今は量より質だと思いますので、そんなに集める予定はありません」
「ちなみに、くまさんファンクラブには誰が加入しているの?」
「えっと、わたしにフィナにミサ、お姉様にシュリに、それからシェリーの6人です」
全員、わたしが知っている人物だ。というかノアの周りにいる人たちで構成されていた。
「それで、そのくまさんファンクラブは何をするの? わたしやくまゆる、くまきゅうのことを話すって言っていたけど」
「たまに、みんなでお茶会で、ユナさんやくまゆるちゃん、くまきゅうちゃんのくまさん談義をするだけです」
アイドルのファン同士が集まって交流会を開くみたいなものかな。
「ちなみに会長のわたしは会員番号0001番で、副会長のフィナが会員番号0002番です」
会長に副会長までいるの?
かなり、本格的だ。
クマさん談義だけと言うので、やめさせることはしないけど、これ以上増やさないでほしいものだ。
わたしとノアがファンクラブのことで話し合っている間もアニメは止まることもなく、放映は続く。
テレビには、くまさんファンクラブが作られたことも知らないわたしがノア、フィナの3人でお出かけをしている。
そんなとき、街道に魔物の情報を知る。
その話を聞いたノアが、本日クリフが王都に来ることになっているので、心配する。
そんな心配するノアのため、わたしがクリフを迎えに行くことになる。
そして、アニメはエレローラさんに変わる。
「お母様です」
「国王陛下もいます」
エレローラさんは国王陛下に街道に現れた魔物のことを報告する。
そんなとき、予告で見た薄汚い男が現れ、兵士を倒し、国王とエレローラさんの前にやってくる。
そして、名前をグルザムと名乗る。
「グルザム……」
聞いたことがある。
確か、一万の魔物を集めた男の名前だった。
それから水の街ユーファリアでセレイユを襲った男から、グルザムの名前も聞いた。
こんな顔をしていたんだね。
名前は何度か聞いたけど、関わっていなかったので、実際に見るのは初めてだ。……アニメだけど。
国王とエレローラさんはグルザムから魔物に王都を襲わせる話を聞かされるとシリアスな顔をする。
そして、場面が変わると、わたしが鼻歌を歌いながらくまゆるに乗っていた。
温度差が激しい。
「ユナお姉ちゃん……」
「ユナさん……」
2人が呆れた様子でわたしを見る。
「いや、お城でそんなことになっているなんて、知らなかったんだから、仕方ないよ」
そして、アニメのわたしは探知スキルで魔物がたくさんいることを知ると、護衛しながらクリフを王都に連れてくるのが面倒くさいと考え、魔物を討伐することにした。
「ユナさん、魔物を全部倒そうと考えるなんて、信じられないです」
「そのほうが楽だと思ったんだよ」
映像はお城に変わって、国王にエレローラさん、さらにはアニメ初登場のサーニャさんがいる。
そういえば、アニメだと冒険者ギルドに行っていないから、サーニャさんには会っていないのかな?
裏設定ではどうなっているかわからないけど。
そんな中、サーニャさんが召喚鳥を使って、魔物の情報を逐一国王に報告する。
つまり、見られていたってこと?
『クマに乗ったクマが』『クマが魔物を』
とサーニャさんは報告するが、国王は意味が分からない表情をする。
アニメを見ているわたしには、わたしとくまゆるとくまきゅうのことだと分かるが、この映像を見ていない国王には意味不明だと思う。
サーニャさん、報告はちゃんとしないとダメだよ。
そして、魔物を倒していくわたしは、現れたグルザムとワームを倒してしまう。
アニメだとグルザムと会うことになるんだね。
まあ、会うと言っても、会話を少しして、殴って終わったけど。
これじゃ、次に会っても記憶に残っていないと思う。
「なんでしょうか。この男の人が悪いと分かるのですが、同時に可哀想と思ってしまいます」
「はい」
復讐は防ぐことはできた。それと同時にグルザムが長い年月をかけてしたことが無駄になったことでもある。
良いことなら可哀想だけど、悪いことなら未然に防ぐことができてよかったと思う。
人が亡くなってからでは遅い。
そして、わたしはクリフと無事に合流して、今回のことをゴブリンキングの剣を譲ったことで、取引しようとしたが、王都に着くと、エレローラさんに引っ張られてお城に連れていかれる。
現実と多少違うが、お城に連れていかれることになるのは同じみたいだ。
まあ、アニメはサーニャさんが召喚鳥でわたしのことを見ていたシーンがあったから、こうなると分かっていたけど。
そして、アニメのわたしが国王に言った気持ちは、わたしの気持ちと同じだった。
お金や名誉のために魔物と戦ったのではない。
ノアの笑顔を守りたかっただけだ。
「ユナさん……」
わたしはノアの頭を撫でる。
もし、クリフが魔物に殺されていたら、今の笑顔は無かったと思う。
そして、エレローラさんのお屋敷に戻ってきたわたしたち。無事にノアとクリフは会うことができた。
わたしも心配するフィナの頭を撫で、アニメはエンディングに入る。
数日後、続きが気になったわたしはアニメ公式サイトに確認しにいく。
どうやら、9話はモリンさんとカリンさんが登場して、お店を作るみたいだ。
まあ、タイトル「クマさん、お店を開く」からしてネタバレ感がある。
それから、新しいミニアニメもあり、フローラ様がわんこそばみたいにプリンを食べていた。
謎の胃袋だ。
あとオープニングテーマとエンディングテーマがカラオケ配信が決定の文字とYouTu〇eにてTVアニメ「くまクマ熊ベアー」ちょこっと生放送するんだべあー!Part2が決定などと、いろいろと書かれている。
※詳しいことは活動報告にてお願いします。
【お知らせ】
本日より、くまクマ熊ベアーアニメ9話の放映が始まります。
よろしくお願いします。
AT-X 毎週水曜日 21:00~
TOKYO MX 毎週水曜日 23:30~
BS11 毎週水曜日 25:00~
サンテレビ 毎週木曜日 25:00~
KBS京都 毎週金曜日25:00~
他にもネット配信などもあります。
そちらはアニメ公式サイトにてお願いします。
【お知らせ】
ユナ役河瀬茉希さんとフィナ役和氣あず未さんによる生放送番組
TVアニメ「くまクマ熊ベアー」ちょこっと生放送するんだべあー!Part2は決まりました。
詳しいことは活動報告にてお願いします。
【本編について】
毎週日曜日に投稿ができればと思っています。
水曜日はいつもどおりに番宣小説を書かせていただきます。
本編を楽しみに待っている読者様にはご迷惑をお掛けします。
※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。
一部の漢字の修正については、書籍に合わせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。