アニメ番宣小説 その6
前回に続き、今日もフィナとノアが家に来ている。
「ふふ、楽しみです」
「どんな話なのかな?」
「孤児院の話みたいだよ」
「それじゃ、わたしは出てこないんですね」
ノアは残念そうにする。
孤児院にノアは関わっていない。次にノアが登場するとしたら、王都に行くときだと思う。
わたしはお菓子と飲み物を用意して、アニメが始まるのを待つ。
「始まりました!」
卵の話から始まる。
そして、クマの転移門を見たノアが反応する。
「な、なんですか!? この門は!」
「クマの転移門って言って、同じ門が設置されている場所を行き来できるんだよ」
「そんなことが、フィナは知っていたのですか?」
「えっと、はい」
フィナは困りながら答える。
「うぅ、ずるいです」
「ほら、クリフやエレローラさんに知られたら面倒くさいことになると思って」
「わたし、黙ってほしいと言われたら、黙っています」
ノアは口を尖らせる。
ノアが文句を言っている間もアニメは進み、わたしが屋台で腹ごしらえをするシーンだ。
そこで見たのは現実と同じように人が捨てたものを拾おうとする孤児院の子供たちだった。
あのときも、こんな感じで屋台のほうを見ている子供たちがいた。
「あの子たちは?」
ノアがテレビ画面を見ながら尋ねてくる。
「人の食べかけが捨てられるのを待っているんだよ」
「そんな……」
テレビ画面でも屋台のおばさんが同じセリフを言う。
ノアは現実を知って、落胆の表情をする。
貴族の娘からしたら、人が捨てたものを拾って食べるなんて、信じられないことなんだろう。
でも、親がいない子供たちが食べ物を手にいれるのは難しい。
わたしだって、自分でお金を稼ぐことができなかったら、どうなっていたか分からない。
だから、あの子たちを見て、ほうっておくことはできなかった。
これもフィナに出会った影響かもしれない。
家族のために頑張っているフィナを見て、手を差し伸べたいと思った。
でも、フィナと出会う前なら、可哀想と思っても、見て見ぬふりをしていたと思う。
アニメは進み、子供たちと一緒に孤児院に行く。
そこにはボロボロになった孤児院の建物があった。
「本当にこんなに酷かったのですか?」
ノアはボロボロの孤児院を見ながら尋ねる。
「うん、酷かったよ」
今の孤児院はわたしが建て直したものだ。
わたしの言葉にノアは少しショックを受けた顔をする。
やっぱり、今回は呼ばないほうがよかったかもしれない。
映像では屋台で買った串焼きを子供たちは美味しそうに食べてくれている。
それから、寒そうな布団の代わりにウルフの毛皮を出していく。
そして、孤児院のお金が領主様の指示で止められたことが院長先生の口から出る。
「お父様が」
ノアが信じられなそうな顔をする。
これは、早めに誤解を解かないと、領主として、人として、なによりクリフの親としての立場がなくなってしまう。
「ノア、初めに言っておくけど、クリフの指示じゃないからね」
「そうなんですか?」
「お父さんを信じてあげて。クリフは領民を思う立派な領主だよ」
ただ、全てに目が行き届いていなかった。
企業や学校でもそうだけど、人が集まり、大きくなればなるほど、全てに目が行き届かなくなる。
その全てに目を届かせるのが部下や先生の役目だが、その人物が悪さをすれば、トップの人間に報告は上がってこない。
今回それと同じことが起きた。
人が集まり、纏めるのは難しいものだ。
「このときに、すぐにクリフに話していればよかったんだけどね」
でも院長先生に止められた。
わたしも領主であるクリフとは出会ったばかりだった。娘のノアの前だから優しくしてくれたのかもしれない。本当に院長先生の言うとおりにとんでもない領主だった可能性もあった。もし、悪徳領主だったら、院長先生たちがここから追い出されてしまうかもしれない。
それだと、院長先生に迷惑をかけることになると思ったから、クリフに言うことができなかった。
そして、アニメでは卵を使って、孤児院でお金を稼ぐことにした。
「それで、孤児院で鳥さんを飼うことになったんですね」
そして、卵の販売は順調に軌道に乗り、クリフの耳に届くことなった。
「ユナさん、そんな嫌がらせをしていたんですね」
「まあ、そのぐらいの嫌がらせぐらいはしてもいいと思ったからね」
商業ギルドのミレーヌさんに頼んで、クリフに卵を販売しないように頼んだ。
本来なら、そんな無理なお願いは引き受けてくれないはずなのに、ミレーヌさんはその願いを引き受けてくれた。
今思うと、商業ギルドのギルドマスターだったから、できたことだったんだよね。
ミリーラの町に一緒に行くまで、普通の職員だと思っていたよ。
当時は騙されたと思ったものだ。
ミレーヌさん曰く、話さなかっただけらしい。
そして、クリフは孤児院のお金を横領していた人物を突き止める。
「エンズがお父さまに濡れ衣を着させたんですね。どおりで、最近見なくなったわけですね」
その後、この男がどうなったかは知らないけど、街から消えてくれてよかったと思う。
今、思うと、わたしも一発ぐらい殴ってやりたかった。
顔もそうだけど、膨らんだお腹なんてサンドバッグにちょうどいい。
「でもお父様が、悪いことをしていなくてよかったです」
「でも、部下を管理できなかった責任はあると思うよ」
「そうですね。上に立つ者として、しっかりしないといけません。だから、最近、お父様は紙で見るだけでなく、いろいろな人の話を聞いたり、自分の目で確かめることが必要だ、って言うことが多くなりました」
自分のミスをした教訓をちゃんと娘に伝えているみたいだ。
「だから、王都やミリーラに行く許可も、自分の目で見て、勉強する代わりに、出されているんだと思います」
確かに、いつもそんなこと言われているっけ。
ノアは、そのクリフの言葉に従って、ちゃんと勉強している。
将来は立派な貴族令嬢になると思う。
最後はわたしはクリフを疑ったことで、恥ずかしそうにする。
確かに恥ずかしかった。
わたしは先走ってクリフを疑ってしまった。
クリフじゃないけど、人は失敗から学ぶものである。
そして、アニメはエンディングに入り、終わりを告げる。
「わたしは出なくて残念でしたが、孤児院のことやお父さまの失敗を知ることが出来てよかったです」
「わたしもです。お母さんが今の仕事ができているのもユナお姉ちゃんのおかげです」
みんな幸せならいいことだ。
いくら神様からもらったチート装備があるからといって、全ての人を幸せにすることはできない。
でも、目に見えている人ぐらいは助けてあげたいと思う。
数日後、そろそろ6話の情報が出るころなので、公式サイトに確認しにいく。
ちゃんと新しい情報が出ている。
「えっと……?」
次のお話はゲンツさんとティルミナさんの結婚の話で、フィナとシュリのお話みたいだ。
そういえば、アニメでは2人はまだ結婚してなかったっけ。
フィナとシュリのために、2人には幸せになってほしいものだ。
それからミニアニメの新しい公開の情報から、グッズの新しい情報が出ている。
キーホルダーにアクリルスタンド、マグカップ、パスケース、新しいわたしのTシャツ、トートバッグ、本当に増えている。
わたしとフィナのマグカップ。並べると同棲しているカップルが使っているように見える。これは少し恥ずかしいかも。
それからわたしの声をしている声優さんのネットサイン会があるらしい。
内容を確認すると、キャ○アニで12月11日までにTVアニメ「くまクマ熊ベアー」第1巻【Blu-ray】または第1巻【DVD】をキャ〇アニ.comにて先着でご予約頂いた方を対象に特典として、「ユナ」役の声優による直筆サインとお宛名を入れた「くまクマ熊ベアー」特製ミニ色紙にリアルタイムでサインをするみたいだ。
これって、サインしながら、自分の名前が呼ばれるってこと? 全員とは書いていないけど。
ペンネームでもいいらしいけど。フルネームでお願いしたら、本名を呼ばれたら、恥ずかしいかも。
でも、わたしも好きな声優さんのサインだったらほしいかも。
元引きこもりとしては、アニメもよく見ていた。
※詳しいことは活動報告や公式サイトにてお願いします。
それから、ABE○Aにて、#01から#06までの一挙配信とキャスト特番『「くまクマ熊ベアー」ABE○Aで振り返るんだべあー!』の独占生配信があるみたいだ。
つまり、また、わたしの下着姿が全国に流れるってことだ。
元の世界に戻れるなら、魔法を使って、破壊しに行きたい。
さらには「ABE○Aアニメチャンネル」にて、2020年11月15日(日)の夜7時より特別番組『「くまクマ熊ベアー」ABE○Aで振り返るんだべあー!』の独占生配信をするらしい。わたしとフィナとノアの声をしている声優さんが出て、アニメの第6話までを振り返るトークコーナーや、バラエティーコーナーが予定されているらしい。
どんな人がわたしたちの声をやっているか見てみたいけど、このテレビでみることはできるの?
「神様どうなの?」
「…………」
返事がない。
いつもならあるのに。
※詳しいことは活動報告や公式サイトにてお願いします。
なんだかんだで次回で半分だ。
早いものだ。
【お知らせ】
本日より、くまクマ熊ベアーアニメ6話の放映が始まります。
よろしくお願いします。
AT-X 毎週水曜日 21:00~
TOKYO MX 毎週水曜日 23:30~
BS11 毎週水曜日 25:00~
サンテレビ 毎週木曜日 25:00~
KBS京都 毎週金曜日25:00~
他にもネット配信などもあります。
そちらはアニメ公式サイトにてお願いします。
【コラボカフェ開催中】
マチ★アソビCAFE様にてコラボカフェが始まっています。
詳しいことは活動報告にて、お願いします。
【本編再開について】
11月下旬か12月上旬を予定しています。
現在予定の仕事が前倒しになってしまって、書けていません。
でも、緊急の仕事が入らなければ、大丈夫かと思っています。
しばらくは、番宣小説を楽しんでいただければと思います。
本編の楽しみに待っている読者様にはご迷惑をお掛けします。
※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。
一部の漢字の修正については、書籍に合わせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。