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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい大陸を発見する
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ミニミニショートストーリー 勇者はクマ ノア編

前回の劇のノア視点です

 孤児院の子供たちが劇公開のチラシを見ていました。子供たちが一度も劇を見たことがないと知りました。

 本当は子供たちにチラシの劇を見せてあげたかったですが、領主の娘であるわたしが、孤児院の子供たちだけを劇に招待するわけにもいきませんでした。この街には孤児院の子供たちだけではなく、劇を見たことがない人が他にも多くいます。

 わたしは考えました。


「そんなわけで、わたしたちで劇をすることにします」

「……」

「……」


 フィナとシェリーの目が点になっています。

 わたし、おかしなことを言ったでしょうか?

 もしかすると、聞こえていなかったのかもしれません。

 だから、わたしはもう一度言います。


「そんなわけで、わたしたちで劇をすることにします」

「……わたしたちって、わたしが劇をするのですか?」


 今度はちゃんと返事が返ってきました。

 やっぱり、聞こえていなかったみたいです。


「もちろんです」

「む、無理です。わたし、劇なんてしたことないです」


 フィナが首を横に大きく振ります。


「誰だって、初めはしたことがありません。経験を積んで上手になっていくものです。それに、劇場でやっているような劇をするつもりはありません。孤児院のみんなに楽しく見てもらうものです」

「でも……」

「そもそも、わたしだって劇なんてしたことはありません。フィナと一緒で初心者です。だから、大丈夫です。安心してください」


 わたしは安心させようと言ったのですが、フィナは余計に不安そうな顔になりました。

 どうしてでしょうか?


「……その、ノアール様。わたしもですか?」


 シェリーが小さい声で尋ねてきます。


「シェリーには劇に使う衣装を作ってほしいです。あと、ちょっとしたお手伝いも頼みたいです」

「それぐらいだったら」


 シェリーはホッとした表情を浮かべます。


「でも、ノア様、お話は……」

「お話はちゃんと、わたしが考えましたので大丈夫です」


 わたしは自分が書いた台本を2人に見せます。

 タイトルは「勇者はクマ!」

 フィナとシェリーが驚きます。

 物語は黒いクマの格好した女の子と、白いクマの格好した女の子が活躍するお話です。

 その活躍する女の子が、わたしとフィナです。


「このぐらいの短いお話だったら、わたしたちでもできるはずです」


 台本は数ページしかない、短い劇です。


「うぅ、本当にやるのですか?」

「やります。フィナは子供たちの笑顔を見たいと思わないのですか?」

「それは……」

「なら、頑張りましょう」


 フィナが渋々ですが、頷いてくれます。


「シェリーにはわたしとフィナが着るクマさんの服を作ってほしいです。これが、イラストです」


 わたしは簡単に描いたクマの絵をシェリーに渡します。

 絵には黒いクマと白いクマが描かれています。

 さらに、黒と白の半分をしたクマがいます。


「クマ」

「この黒と白のクマは」

「合体します」

「合体?」

「正確には違いますが、えっと、台本を読んでください」


 シェリーは軽く台本を読みます。


「なるほど、ノアール様、面白いです」

「ありがとう。それで、フィナは、黒と白、どちらがいいですか?」


 どっちも可愛いですが、フィナにやる気になってもらうため、選んでもらいます。


「……えっと、どちらでも」


 フィナは選べないみたいです。

 なら、仕方ないですね。


「それでは、わたしは黒を着ますので、フィナは白で」

「……はい」

「それから、あとシェリーには説明係をお願いしたいです」

「説明係ですか?」

「はい。劇には演技をする他に、現状を説明をする人がいるんです」


 わたしは台本を開き、シェリーが喋る場所を見せます。


「演技をしないのでいいなら」

「喋るだけです」

「わ、分かりました」

「わたしが、その役を」

「シェリーには服を作ってもらう時間が必要です。セリフを覚える時間がありません。だから、フィナは勇者クマの役です」

「うぅ、はい」


 適任はフィナしかいませんので、他の人にやってもらうわけにはいきません。


「それでは、クマさんファンクラブ会員で頑張りますよ!」


 王都にいるお姉さまや他の街にいるミサは無理ですが、わたしが考えたお話なら、この人数で大丈夫です。シュリは幼いので、今回は外させてもらいました。


「……はい」

「……頑張ります」


 わたしが大きく手を高く上げると、フィナとシェリーも真似をして、手を上げてくれます。

 楽しみです。


 それから、わたしたちは準備を始めます。

 ユナさんのところに行って、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんにも劇に出てもらえるように、ユナさんにお願いします。

 ユナさんとくまゆるちゃんにくまきゅうちゃんは快く引き受けてくれました。


「わたしも見てもいい?」

「ダメです。ユナさんも当日まで内緒です」

「その、まだ、練習もしていないから、恥ずかしいから」


 わたしはユナさんの背中を押して、部屋から追い出します。


「それでは練習を始めましょう」


 それから、わたしとフィナは練習をします。

 シェリーも説明係をしっかりしてくれます。

 くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんの出番です。


「シェリー、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんの服は作ってくれましたか?」

「はい」


 シェリーが大きな布を出します。


「くまゆるちゃん、くまきゅうちゃんはこれを着てください」


 シェリーに作ってもらった魔獣の服です。と、言っても、角が付いた布を覆い被させるだけです。


「くまゆるちゃん、くまきゅうちゃん、魔獣の役でごめんなさい」

「「くぅ~ん」」


 くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんは鳴くと、素直に魔獣の役をやってくれます。

 くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに魔獣の説明をします。

 わたしの言っていることを理解しているので、本当に凄いです。

 わたしもこんなクマさんがほしいです。

 くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに演技の説明をすると、練習の再開です。


「ここで変身です」


 わたしとフィナは着替えます。


「フィナ、ここは早く着替えないといけませんからね」

「うぅ、はい」 


 わたしたちは素早くクマさんの衣装に着替えます。


「シェリーが、まさか、1日で作ってくれるとは思いませんでした」

「はい、いつも作っている複雑な服ではなかったので」


 確かにわたしが着ているような服と違って、クマさんの服は簡単そうです。


「やっぱり、恥ずかしいです」


 クマの衣装に着替えたフィナが恥ずかしそうにする。


「そのセリフ、ユナさんの前で言ってはダメですよ」


 わたしの言葉にフィナは口を閉じます。

 劇をするのが恥ずかしいことは分かります。でも、クマさんの格好が恥ずかしいはダメです。


「それに、フィナはお店でも着ているでしょう」

「そうですが、みんな着ているし、ユナお姉ちゃんとそっくりな服は、なにか恥ずかしいです」

「着ていれば、そのうち慣れますよ」


 フィナを説得して、練習を再開します。


「ブラッククマ!」

「ほ、ホワイトクマ!」

「フィナ、恥ずかしがってはダメです」

「うぅ。ノア様は恥ずかしくないのですか?」

「恥ずかしくありません。だって、自分が考えたお話です。それに、孤児院の子供たちに劇を見てもらいたいって気持ちもあります。だから、恥ずかしいって気持ちはありません」

「ノア様……、わたし頑張ります」


 劇の練習は続き、最後のところです。


「やっ!」

「くぅ~ん」

「えい!」

「くぅ~ん」


 わたしがパンチをすると、くまゆるちゃんは合わせて避けてくれます。

 ここで、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんの攻撃で、わたしとフィナはやられて、倒れます。


「ここで、倒れたわたしとフィナが力を合わせます。光の魔石も用意してありますので、使ってください」


 フィナに光の魔石を渡します。

 わたしとフィナはお互いの手を握ります。その握った手の間には光の魔石があります。


「ブラックの力をホワイトに」

「ほ、ホワイトの力を、ブラックに」


 わたしとフィナが握っている魔石が光りだす。


「この間に、着替えます」


 ここで、わたしとフィナは黒と白の半分の色をしたクマの服に着替えます。

 わたしとフィナの力が混ざったイメージです。

 そして、白黒のクマの服に着替えたわたしたちは、魔獣役のくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに攻撃をします。

 攻撃を受けたくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんは倒れます。


「止めを刺します」

「「くぅ~ん」」


 くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんが弱々しく鳴きます。

 うぅ、可愛いです。ですが、ここは倒さないといけません。


「ノア様、可哀想じゃ……」


 わたしが攻撃をしようとするとフィナが止めます。


「ですが、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんは人を襲う魔獣役ですから」


 わたしだって、可哀想だと思います。

 でも物語ですから、仕方ないんです。


「えっと、それじゃ、先ほどのわたしたちの力をくまゆるとくまきゅうに注ぎ込むのはどうですか?」


 フィナが魔石を光らせて、くまきゅうちゃんに触れます。そしてフィナは、くまきゅうちゃんが被っている魔獣の布を取ります。

 布の下から、くまきゅうちゃんが出てきます。


「これで、わたしたちの仲間にすれば」

「採用です! フィナ、お話を考える才能があるのでは」

「わたしは、ただ、くまゆるとくまきゅうが可哀想だと思って」


 フィナは恥ずかしそうにしますが、とっさにアイデアが出るのは凄いことです。


「それでは、最後のセリフを変えますね」


 わたしはペンを持って、最後を修正します。

 完璧です。

 最後はくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんが仲間になって、終了です。

 

「お話の流れはこんな感じです。本番までに、しっかり練習をしましょう!」

「はい!」

「頑張ります」

「「くぅ~ん」」


 わたしたちは仲良く、手を高くあげます。


申し訳ありません。

本編の時間稼ぎのショートストーリーです(笑)

この話を書いたり、他の仕事したりして、本編の書きだめは増えていません。

すみません。


お知らせがあります。

本日、動画配信サイト、ABEMA様にて「くまクマ熊ベアー」#01 の先行配信があります。

【日時】9月19日(土)23:30~

リアルタイム配信となりますので、ご了承ください。


さらに、クマアニメ配信先が増えました。

ネット環境があれば、見ることができるかと思います。

配信サイトなどは、活動報告に書かせていただきましたので、そちらで確認していただければと思います。


さらにアニメ公式Twitterにて、クマアニメの台本プレゼントキャンペーンもやっています。

こちらのほうも、よかったら応募してください。


活動報告にて書籍16巻の店舗特典購入特典の情報も載せましたのでよろしくお願いします。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部、漢字の修正については、書籍に合わせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
そのうち、エニ熊とか出てくるパターンかな?
[一言] 冗談抜きにユナは自覚無いけど「英雄」というか「勇者」的な行為を沢山やってるよね・・・。
[一言] これ見た日が9月21日・・・・チーン(T_T)
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