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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい大陸を発見する
610/928

605 クマさん、水から逃げる

 わたしがミアからもう一冊のノートを受け取ると文字が浮かび始めた。

 間違いなく、ミアが持っている時点では文字は書かれていなかった。もし、文字が書いてあれば、ミアが反応していたし、読んでいたはずだ。


「…………」

「ユナお姉ちゃん、どうしたの?」


 ジッとノートを見ているわたしに、フィナが尋ねてくる。


「ううん、なんでもないよ」


 もう一冊のノートの内容が気になるけど、この手のことは知らないことがよかったり、他の人には話さないほうがいいと相場が決まっている。

 でも、内容は気になるので、あとでゆっくりと一人で読むことにする。わたしは二冊のノートをクマボックスに仕舞う。


「それじゃ、他の部屋を探しましょう」

「ミアちゃん、慌てると危ないよ」


 ミアとキャロルは部屋から出ていこうとする。その瞬間、部屋が明るくなる。


「な、なに!?」

「ごめんなさい。わたしが魔石に触れたみたいで」


 キャロルが申し訳なさそうに謝る。


「なんじゃ、驚かすんじゃない」

「ちょっとまって、さっきわたしが触ったとき、点かなかったわよ」


 確かに、そういえばそうだ。

 ミアが部屋の光を点けようとしたとき、点かなかった。

 ミアがキャロルのいる壁に近寄り、魔石に触れる。すると、部屋の光が消える。さらにもう一度触れると、明るくなる。


「お主、ちゃんと触ったのか?」

「触ったわよ」

「えっと、アイテム袋も使えるみたいだよ」


 フィナがアイテム袋から、タオルを出してみせる。

 それを見た、ミアとキャロルもアイテム袋を使ってみる。


「本当だ」

「どうして、使えるようになったのかな?」

「でも、これで魔道具が使えるようになったから、調べやすくなったわ」


 ミアはアイテム袋から、ランタンのようなものを取り出して、光を灯す。ミアの周辺が明るくなる。

 ミアの言葉にフィナが残念そうにして、そっとクマの光を消していた。

 わたしはフィナに近づく。


「もう、必要ないかなと思って」

「フィナ……」

「なに言っているのよ。こんな光じゃ、手元しか明るくならないわよ。まだ、あなたの魔法が必要よ」


 フィナの声が聞こえていたのか、ミアが魔法の光を消したフィナに対して言う。


「……ミアお姉ちゃん」

「部屋の外は暗いでしょう。ほら、さっさとクマの光を出してちょうだい。まだ、あなたには役に立ってもらうんだから」


 キャロルもできるのに、ミアはフィナに頼む。


「う、うん」


 フィナは、消したクマの光をもう一度出す。


「ありがとう」


 ミアがお礼を言うと、フィナは嬉しそうにする。

 そして、フィナのクマの光がドアの外に出ると、ミアが声をあげる。


「なにこれ!」

「どうしたの?」


 ぴちゃ


 足下で音がする。


「なに?」

 

 ミアが足元を見ると、水で濡れている。


「どうして、水が?」


 部屋の外にある貯水庫に目を向けると、水が溢れていた。


「もしかして、水が増えているの!?」

「そうらしいのう」

「これじゃ、他の部屋を調べられないじゃない。でも、少しなら時間はある?」

「ミアちゃん、危ないよ。このまま増えたら、逃げられなくなって死んじゃうよ」


 ここは地下だ。地上とは違う。水が溢れれば、危険なのは間違いない。


「少しぐらい、大丈夫よ」


 ミアとキャロルが話し合っていると、くまゆるとくまきゅうが「「くぅ~ん!」」と鳴く。

 その瞬間、貯水庫の水がせり上がる。


「な、なに!」

「分からないが、お主たち、逃げるぞ」

「くまゆる! ミアとキャロルを乗せて!」


 わたしはフィナを掴むと、くまきゅうに乗るカガリさんの後ろに飛び乗る。


「えっ」

「くぅ~ん」


 くまゆるはミアとキャロルの傍に移動する。


「早く!」


 ミアとキャロルはくまゆるの背中に乗る。


「くまゆる、くまきゅう、走って」

「「くぅ~ん」」


 くまゆるとくまきゅうは走り出す。

 貯水庫の横の通路を走り、破壊したドアに向かう。

 貯水庫の水が生き物のようにうねり、わたしたちに向かってくる。

 普通の水じゃない。


「くまゆる、くまきゅう、急いで!」

「「くぅ~ん」」


 くまゆるとくまきゅうは、わたしが壊したドアを抜け、通路を走る。


「フィナ、しっかり掴まって」

「うん」

「カガリさんも落ちないでよ」

「わかっておる。じゃが、妾をぞんざいに扱うんじゃない」


 カガリさんを落ちないように抱いているわたしに文句を言う。


「クレームは後で聞くよ」


 今はここから脱出することが先決だ。


「水が迫ってくるわよ」


 くまゆるに乗っているミアが叫ぶ。

 後ろを見ると、水が迫ってくる。


「もうすぐ、階段だから、そこまで行けば」


 くまゆるとくまきゅうは通路を駆け、階段を上がっていく。

 後ろを確認する。水はせり上がってくる。


「くまゆる、くまきゅう。そのまま、ミアたちの馬がいるところまで走って」

「「くぅ~ん」」


 くまゆるとくまきゅうは、さらに加速する。

 建物から脱出すると、そのままミアたちの馬がいるところまで走る。


「ミア、馬を」

「分かっているわ」


 ミアはくまきゅうから降りると、馬のところに駆け寄る。

 フィナも出したままにしてあったクマの光を消す。


「早く町の外へ」


 ミアは馬を連れて、壁の穴から馬を連れて出る。わたしたちもそれに続く。

 わたしは念のため、穴を土魔法で埋める。


「ちょっ、あれはなんなのよ。いきなり、水が溢れてくるなんて」

「じゃが、少し変じゃった。まるで、水が生き物のように動いているように見えた」

「あんたも? わたしもそう見えたよ」


 わたしも、同様に生き物のように見えた。

 くまゆるとくまきゅうが「「くぅ~ん」」と、何かを教えるように鳴く。

 もしかして、魔物?

 わたしは探知スキルを使う。


「嘘」


 スライムの文字がわたしの目に飛び込んでくる。

 それも、一匹や二匹じゃない。

 町の中はスライムの文字で埋め尽くされていた。


「どうしたの?」

「いや、その」


 どう説明をしたらいいか困る。


「はっきりしないわね。なにか分かったらなら、話しなさいよ」


 ここで黙っていても話は進まないので、わたしは素直に答える。


「スライムかも」

「あれが、スライムじゃと言うのか?」

「っは? スライム? スライムって、たまに見かけるけど、無害なスライム」


 この世界ではどうなっているか知らないけど、わたしの知っているスライムは最弱でもあり、最強でもある生物だ。


「お主は知らぬのか」

「なによ」

「スライムはお互いにくっつき、大きくなることがある」

「聞いたことがあります。それで、動物や人を襲うとか」

「そうなの?」

「ミアちゃん、もう少し勉強したほうがいいよ」


 もしかして、あれが全部くっついたスライム?

 だから、無数にスライム反応?

 でも、どうして、探知スキルに反応がなかったの?

 くまゆるとくまきゅうも気づかなかった?

 もしかして、貯水庫の奥深くにいたから?

 答えはでない。


「ちょっと、確認してくるから、待っておれ」

「確認って、どうやって……」


 ミアが言い終わる前に、カガリさんの体が浮かび上がって、町を囲う壁より高く上がっていく。


「ちょ、あの子、空を飛んだわよ!」


 ミアは空を飛ぶカガリさんを驚いたように指差す。


「今は、気にしないでもらえると助かるよ」

「気にするなって、空を飛んでいるのよ!」


 やっぱり、ここでも空を飛ぶのは非常識らしい。

 カガリさんは上空で確認したのか、下りてくる。


「あんた、空を飛べるの?」

「今は、そんなことを言っておる場合じゃない。やばいぞ、巨大なスライムになっておる」

「巨大なスライムって、クマぐらい?」


 ミアはくまゆるとくまきゅうを見ながら尋ねる。


「バカ言うな。巨大と言ったじゃろう。町を覆い尽くそうとしている。こんな大きいスライムなんて見たことも聞いたこともないぞ」

「どうして、そんなスライムがどこから」

「あの、妾たちが出てきた入り口だけじゃなく、地下から、湧き出ている感じじゃった」


 それじゃ、やっぱり地下に?


「壁を見て!」

「水が」

「スライムか!?」


 壁の隙間から水が出てくる。


「ここから急いで離れるぞ」

「わたしが馬に乗るから、キャロルはそっちのクマに乗せてもらいなさい」

「でも」

「わたしは大丈夫だから。それに、この子に2人も乗せて走らせたら、長くは持たないわ。ユナ、キャロルをお願い」


 もちろん、断ることはしない。

 ミアは馬に乗り、キャロルはくまゆるに乗り、くまきゅうに乗っているわたし、カガリさん、フィナはそのままくまきゅうに乗って、走り出す。

 町の壁沿いを走り、町の正面に向かう。そこから使われなくなった道を使って、逃げる。

 わたしたちは町の正面まで移動する。


「嘘でしょう」

「ユナお姉ちゃん!」


 ミアとフィナが叫ぶ。

 町の門の入り口を塞いでいる岩の隙間から水が出てきている。


「スライムが」

「急ぐよ」

「でも、この道は木が倒れていて」

「わたしが道を切り開くから、そのまま走り続けて」


 わたしを先頭に廃れた道を走る。


「ユナ! 木が!」

「絶対に止まらないで」


 馬にしろ、何でも一度止まれば、最高速度になるまで時間がかかる。それが命取りになる場合もある。

 まして、ミアは馬だ。くまゆるとくまきゅうと違って、再加速は簡単にできない。


「ユナ!」


 ミアが叫ぶ。

 わたしは目の前に倒れている木をクマの風魔法で切り裂き、コマ切れになった倒れた木を風魔法で吹き飛ばす。

 道が開く。

 その道をわたしとフィナ、カガリさんが乗るくまきゅう、ミアが乗る馬、キャロルが乗るくまゆるが駆け抜けていく。


「ちょ、甲冑騎士を倒したときも、信じられないと思ったのに、本当に信じられないことを簡単にするわね」

「安心するのは早いぞ」

「分かっているよ」


 道を塞ぐ木は一本ではない。

 わたしは道を塞ぐ木々を、同様の方法で吹き飛ばし、廃れた道を駆けていく。




申し訳ありません。再開ではありません。

いろいろとお知らせがあるため、投稿させていただきました。


まず、本日15巻が発売です。

今回もサイン本や店舗購入特典などがあります。

詳しいことは活動報告に書かせていただきましたので、そちらからよろしくお願いします。


また、PASH!ブックス 5周年フェアが行われます。

PASH!ブックスの電子書籍が55%OFFとなります。

くまクマ熊ベアーも14巻までが対象になるそうです。

行われる電子書籍店様などは、活動報告にてお願いします。


次回の再開はもう少し、お待ちください。


16巻のショートストーリーも活動報告にて募集中です。

よろしくお願いします。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部、漢字の修正については、書籍に合わせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。


くまなの


追記

PASH! ブックスのTwitterのフォロー&ツイートをすると5周年記念図書カードが抽選でもらうことができるキャンペーンをおこなっています。

絵柄は029先生のイラストでユナになります。

詳しいことは活動報告にて、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
「くまゆる! ミアとキャロルを乗せて!」  逃げ出す時はくまゆるなのに、ミアが馬に乗り換える時にはくまきゅうになっている‥‥謎!!
[良い点] 水が溢れ出してからの緊迫感とスピード感がたまらない!! ミアとキャロルが可愛い!! つまり、最高ってことです!
[気になる点] ミアがうざ過ぎる ミアは死んだ方がスッキリしそう
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