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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい大陸を発見する
602/904

597 クマさん、仲間が増える

 わたしがミアたちに付いていくことを提案する。フィナとカガリさんからは反対意見はでてこない。


「一緒に?」

「見ていたから分かると思うけど、あの甲冑騎士ぐらいなら、倒せる実力はあるよ」

「そうじゃのう。それに妾たちも一緒に付いていったほうが安心じゃ。進んだ先にお主たちの死体があったら、最悪の気分になるからのう」

「勝手に殺さないで」

「じゃが、先ほどもユナが助けに入らなかったら、危険じゃったぞ」

「範囲外まで逃げれば」


 ミアは言い訳をしようとするが、カガリさんが言葉を続ける。


「そっちの小娘が転んでいたぞ。それに、そんなナイフで倒せると思っておるのか?」

「それは……」


 ミアは握っているナイフを見る。


「……ミアちゃん」

「わたし、こんな格好しているけど、冒険者だから、それなりに修羅場を通ってきているよ」

「……冒険者。それじゃ、そっちの2人も!」


 ミアがフィナとカガリさんを見る。


「妾は違う」

「わたしも違います」


 いや、年齢的になれないでしょう。

 でも、カガリさんの場合、どうなんだろう?

 冒険者ギルドに行っても、追い出されそうだけど、スオウ王辺りが裏から手を回せば取れるかな?

 いや、短い時間だけど、大人になれるから、大人の姿で申し込めばいいだけか。


「でも、冒険者ってことは、お金を要求するんでしょう? わたし……お金持っていない」


 ミアが小さい声で呟く。

 別にお金を請求するつもりはなかったんだけど。それじゃ、納得がいかないかもしれない。


「それじゃ、もし、お宝を見つけて、わたしが欲しいものだったら、わたしに買い取りの優先権をくれればいいよ。もちろん、相場で買わせてもらうよ」

「あなた、もしかして、お金持ち?」

「ミアのお金持ちの定義は分からないけど、冒険者として、仕事もしているし、お金は持っているよ」


 嘘は言っていない。


「でも、裏切られて、お宝を持っていかれたら……」


 人を疑うことはいいことだけど。

 でも、こんなクマの格好したわたしの実力のほうを疑わないのは、少し新鮮かも。

 これも、目の前で甲冑騎士を倒しているからかな。


「ミアちゃん、疑うのはよくないよ。もし、そんな人たちなら、わたしたちを何度も助けたりしないよ。見捨てて進めばいいだけだもん」

「……」

「それに、わたしが死んだら、ミアちゃん、自分が許せなくなるでしょう」


 キャロルはジッとミアを見つめる。そんなミアもキャロルを見つめ返す。

 そして、ミアは根負けしたようで、頷く。


「……分かった。キャロルが言うなら」

「彼女のことは信じているのね」

「キャロルはたった一人の親友よ。それに、キャロルは人を見る目だけはあるから」

「ミアちゃん、酷いよ。わたし、人を見る目だけじゃないよ〜」


 笑いが起きる。


「でも、本当にいいの? キャロルの言葉じゃないけど。あなたなら、わたしたちを置いて、先に進むこともできるでしょう?」

「そうだね。もし、ミアたちを見かけただけならここまで言わないと思う。でも、何度も話して、わたしたちにいろいろなことを教えてくれたり、忠告をしてくれたり、あなたたちが悪い人じゃないことも分かったし。それに、カガリさんの言葉じゃないけど、もし、あなたたちの死体が転がっているのを見たら、自分が許せなくなると思うから」

「だから殺さないで。でも、あなたお人好しね」


 ミアは笑う。

 少しは信じてもらえたかな?


「ユナお姉ちゃんは、優しいんです」

「そうじゃのう。ここまでのお人好しは、そうはいないぞ」


 フィナとカガリさんが褒め始める。


「違うよ。わたしは自分勝手だよ。自分がしたいようにしているだけ」


 2人の死体を見たくないのは本当だ。

 知らない人の死体なら、可哀想とは思っても、悲しまないし、気持ち悪いと思い、他人事のように思う。

 わたしは、その程度の人間だ。


「それじゃ、あらためて自己紹介じゃな。妾はカガリ、こんななりをしておるが、お主たちより年上じゃから、言葉には気を付けるんじゃぞ」

「年上?」


 ミアが首を傾げるが、カガリさんがフィナの背中を押して、自己紹介をさせる。


「わ、わたしはフィナ。えっと、魔物や動物の解体はできるけど、戦うことはできないです。あと、少しだけ魔法が使えます」


 2人が自己紹介をしたので、わたしも続ける。


「わたしはユナ。この格好についてはノーコメント。聞かれても答えないから。それから、この中じゃ戦闘担当かな? それで、こっちの黒いクマがくまゆるで、白いクマがくまきゅう。わたしの召喚獣だよ。危害を与えなければ大人しいけど、わたしたちになにかしようとしたら、この子たちが容赦しないから、気をつけてね」

「……くまゆる、くまきゅう」


 ミアとキャロルはジッとくまゆるとくまきゅうを見ている。

 わたしたちの自己紹介より、くまゆるとくまきゅうのほうが気になるみたいだ。


「えっと、前にも名乗ったけど、わたしはミア、有名な冒険家になるのが夢よ」

「わたしはキャロルです。ミアちゃんの幼馴染で、冒険家で有名になれたらいいなと思っています」


 などの簡単な自己紹介をする。

 ミアはジッとくまゆるとくまきゅうを見ている。


「くまゆるとくまきゅうに触りたいの?」

「そんなんじゃないけど。触っていいなら、触らせてもらうわよ」


 ミアは嬉しそうにしながら言う。


「違うなら、別に」

「じょ、冗談よ。触りたいです。触らせて」


 わたしが拒否すると、ミアが低姿勢になる。

 人のことは言えないけど、面倒臭い性格しているな。

 わたしが触る許可を出すとミアはくまきゅうに近づき、体に触れる。


「柔らかい。気持ちいい。それに真っ白で綺麗」

「くぅ〜ん」


 綺麗と言われて、くまきゅうは嬉しそうに鳴く。


「わたしも、触らせてもらっていいですか?」

「いいよ」


 わたしはキャロルにも許可を出すと、キャロルはくまゆるに近づき触る。


「本当に柔らかいです。それに大人しいです」

「くぅ~ん」


 2人は撫でたり、乗りたがったり、くまゆるとくまきゅうを堪能しまくった。


「これから、出発と言いたいところだけど、今日のところはここまでにしましょう。そろそろ日が沈むわ」

「そうだね」


 ミアの言葉にキャロルも頷く。

 たしかに、もうすぐ日が沈み始める。

 それは、2人がくまゆるとくまきゅうを触り過ぎたせいだと思う。

 まあ、本格的に探索するなら、日を変えたほうがいいのは確かだ。


「それじゃ、外に行きましょう」

「外?」

「あなたたち、本当に何も知らないのね」


 ミアが呆れるように言う。


「ミアちゃん、そんな言い方ダメだよ。わたしたちだって、初めてのときは知らなかったんだから」

「どういうこと?」

「この町の中だと、魔道具が使えないのよ」


 ミアとキャロルの話によると、町の中だと魔道具が使えないそうだ。

 だから、アイテム袋から物が取り出せないので、お泊りセットが出せないってことらしい。


「信じられないなら、確かめてみたら」


 クマボックスで確かめてみようと思ったけど、わたしのクマボックスはスキルになる。アイテム袋とは違うのかもしれない。

 なので、フィナにお願いする。


「取り出せないです」


 フィナはアイテム袋から、物を取り出そうとするが、出てこない。


「だから、外で休むのよ」


 ミアは勝ち誇ったような顔をする。

 でも、キャロルの話では、ミアたちもアイテム袋が使えなくなったときは、慌てたらしい。それで、町の外まで戻ると使えることに気づいたと言う。


「アイテム袋が使えないときは慌てたわよ。食糧を出すこともできないし。でも、町の外に出たら使えるようになって安心したわ」

「それで、次の日は魔道具が使える範囲を調べたりしていたんです。それで、町の中だと使えないことが分かったんです」

「だから、水などは出しておかないと、飲めないのよ」


 それで、一晩明かすには魔道具が使える町の外で休むそうだ。


「不便で仕方ないわよ」


 クマボックスはどうなんだろう。

 わたしはクマボックスから水筒を出す。

 あっ、普通に出た。


「ちょ、今、どこから出したの!」


 どうやらミアが見ていたらしい。


「アイテム袋からだよ」


 わたしはミアに向けて、白クマパペットをパクパクさせてみせる。


「どうして、出せるのよ」


 ミアは自分のアイテム袋から出そうとするが出ない。


「わたしのアイテム袋は特別だから」

「特別ってなによ」


 ミアが白クマさんパペットを掴む。


「それにしても、アイテム袋までクマなんて、あなた、本当にクマが好きなのね」


 その言葉に、わたしは否定はできなかった。

 だって、くまゆるとくまきゅうが見ているし、それにクマは嫌いではない。


「どうする? 食糧ならわたしが持っているけど」


 わたしのクマボックスは使えるみたいだから、外に行かなくても食事はできる。


「ごめんなさい。わたしたちが乗ってきた馬がいるから、一度様子を見に行きたいんです」


 馬もいるということなので、わたしたちは、ミアたちが乗ってきた馬がいる所まで戻ることになった。


「それにしても、どうして、ユナのアイテム袋は使えるのかしら?」

「こ奴は、非常識の塊じゃから、考えるだけ無駄じゃぞ」

「わたしとしては、カガリさんだけには言われたくないんだけど」


 大人になったり、幼女になったり、空を飛んだり、狐になったり、何百年も生きていたりする。わたしからしたら、カガリさんのほうが非常識の塊だ。


「フィナもそう思うよね?」

「いや、ユナのほうじゃよな?」


 わたしとカガリさんに挟まれるようになったフィナは、わたしとカガリさんを交互に見ると口を開く。


「えっと、どっちも、どっちかな?」


 フィナは笑みを浮かべながら、誤魔化した。


クマさんに仲間が増えました。


【お知らせ】

ニコニコ漫画にて、読める話数が4/16(木)11時まで増量中です。

もし、読んだことがない読者様がいましたら、この機会に読んでいただければと思います。

よろしくお願いします。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。お礼の返信ができないため、ここで失礼します

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― 新着の感想 ―
[良い点]  どんぐりの背比べ(良い意味で。  非常識の塊という意味では、似た者同士の二人。 (*'ω'*)ノ  フィナちゃんはそのまま、純粋なまま居て欲しい。
[良い点] クマさんは確かに自分勝手かもしれないけど、自己中心的ではないのでやっぱりお人好しですよね。
[一言] >あなた、もしかして、お金持ち? 大金持ちですw こっちの世界に来る時点で結構なお金を持ってた上、更に大量に稼いでるからなあ…… まあ、余程桁違いの額のものとか、諸事情で国でないと所持が許さ…
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