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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、ノアとフィナの誕生日を祝う
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578 クマさん、フィナにプレゼントする 砂漠の体験をさせる

 次に行く場所は砂漠の街、デゼルトだ。


「フィナはデゼルトの街は初めてだね」


 フィナは結構、クマの転移門が置かれている場所には連れていってあげているが、砂漠の街デゼルトには連れていったことがない。 

 連れていけるタイミングがなかったし、わたしが忙しかったこともある。


「はい。初めての場所なので、楽しみです」


 フィナは笑顔で答える。

 初めの頃は遠慮がちだったけど、くまゆるとくまきゅうとのお出かけを楽しんでくれているみたいだ。今もフィナの腕の中には子熊化したくまゆるが抱かれている。くまきゅうは久しぶりに会ったルイミンの腕の中にいる。

 シュリが譲っていたのを見たのは微笑ましかった。


「それじゃ、打ち合わせどおりにお願いね」


 そして、今回行くところは少し特殊な場所にあるので、みんなには少し口裏を合わせてもらうことにした。


「暑い砂漠を通ってきたことにするんじゃな」

「クマの扉のことは知らないからね」


 カリーナやバーリマさんたちと砂漠の話をするかもしれない。そのときに、困らないようにだ。

 その小道具として、水の魔石が取り付けられたマントも用意してある。王都で購入したものだ。これを着て砂漠を越えてきましたアピールだ。


「でも、こんなマントを着るほど暑いんですか?」

「暑いよ」

「海よりも、暑いの?」


 フィナの質問に答えると、今度はシュリが尋ねてくる。


「たぶん、みんなが知っているどこよりも、一番暑いところだよ」

「でも、砂漠って見たことがないから、想像ができないです。全部、砂なんですよね」


 たしかに、言葉だけでは想像が難しいかもしれない。

 元の世界では行ったことはなくても、映像や写真などで簡単に見ることができる。でも、この世界では言葉や絵によって伝えるしかない。


「草も木もないんですよね」


 あるのはサボテンぐらいだ。


「わたしも、想像がつかないです。でも、お爺ちゃんは来たことがあるんですよね?」

「ああ、昔にな。人が住むには過酷な場所じゃ」

「でも、ムムルートさんたちのおかげで湖ができ、多くの人が暮らしていますよ」


 そのおかげで人が住むことができ、国と国の行き来がしやすくなった。

 ルイミンは感心するように、ムムルートさんを見ている。


「だが、あの砂漠は一度、経験しないとすぐにボロが出ると思うぞ」


 たしかに、砂漠は普通の街道と違う。

 わたしは一度砂漠に来たことがあるし、試しに、クマさんフードを取ったら、暑かったことを経験しているから、分かっている。

 でも、知らないことは難しい。

 もし、南極や北極のことを聞かれても、寒いとしか言えないと思う。

 やっぱり、経験をしたとしていないとでは、口から出る言葉の重みが違う。

 なので、ムムルートさんの言葉を受け、砂漠を見たことがないフィナとシュリ、ルイミンのために、砂漠を経験することになった。


「それじゃ、一度、砂漠を見に行くよ。暑いから、ちゃんとマントを着るんだよ。それから、喉が渇いたら水を飲むんだよ」


 引率の先生みたいに、安全確認をする。

 探知スキルもあるし、くまゆるとくまきゅうもいるから迷子になることはないけど、念のためだ。


「うん、大丈夫だよ」

「はい、ちゃんと持ちました」


 全員、水の魔石を付けたマントをしているのを確認する。

 わたしは砂漠の入り口。カルスの町の近くに設置してあるクマの転移門へと扉を開く。


「真っ暗です」

「なにも見えないです」

「ユナ姉ちゃん、暗くてなにも見えないよ〜」


 クマの転移門は岩山の中に作ったので、外から光は入ってこない。なので、クマの転移門の開いた扉の先は真っ暗だった。

 わたしは光魔法を使って明るくする。そして、岩山の壁まで移動し、人が通れるほどの穴を空ける。日の光が岩山の中に入ってくる。

 今日も快晴のようだ。

 わたしは、フィナたちを連れて、外に出る。

 周囲は岩山だらけだ。だからこそ、クマの転移門を岩山の中に隠した。


「ここが砂漠?」

「まだ、違うかな。もう少し行った先だから、くまゆるとくまきゅうに乗って、移動しよう」


 わたしは出てきた岩山の穴を塞ぎ、フィナとルイミンが抱いているくまゆるとくまきゅうを通常サイズの大きさに戻す。くまゆるにはわたしとフィナとシュリが乗り、くまきゅうにはムムルートさんとルイミンが乗る。

 フィナとシュリの小さい体なら、一緒に乗ることができるけど、大きくなったら、乗れなくなるかな?

 そんな未来の心配をしながら、くまゆるとくまきゅうに乗って移動する。

 しばらく移動すると、岩山も消え、辺りは砂一面になる。

 みんな、くまゆるとくまきゅうから降りて、足元の砂を確認する。


「本当に、砂しかないです」

「熱いです」


 ルイミンは遠くを見渡し、フィナは足元の砂を触る。


「こんなところに人が住めるんですか?」


 ルイミンが何もない砂漠を見ながら尋ねる。


「この状態じゃ、無理だと思うよ。でも、ムムルートさんたちのおかげで砂漠に湖ができて、そこに人が住める場所ができたんだよ。今では、国と国を行き来する大切な街になっているよ」

「お爺ちゃん、凄い」


 孫娘に褒められてムムルートさんは嬉しそうにする。


「でも、ユナ姉ちゃん。このマント着ても暑いよ」


 シュリが暑そうにわたしを見る。そのシュリの額には汗が浮かんでいた。


「シュリ、ちゃんとマントの魔石に触れた?」


 わたしはハンカチでシュリの額の汗を拭いて、シュリのマントの中に手を入れ、魔石に触れる。


「あ〜、少し、涼しくなったよ」


 どうやら、ちゃんと水の魔石のマントが作動してなかったみたいだ。

 マントに付けられている水の魔石に触れると、マントの中に縫い組まれている魔力線が体を冷やしてくれる。

 このマントがちゃんと機能していなければ、暑いのも当たり前だ。


「それにしても、ユナさんは、そんな恰好して本当に暑くないんですか?」


 ルイミンがわたしのクマの恰好を見る。

 フィナとシュリはミリーラの町にクマの恰好で炎天下にいたことを知っているので、もう突っ込んではこない。でも、ルイミンにとっては、わたしが砂漠でクマの着ぐるみでいる姿は異様に映るみたいだ。


「大丈夫だよ。そのマントと同じような仕組みになっているから、快適だよ」


 どこにいても、温度が変わらない優れものだ。

 だから、周りにいる人が寒いのか暑いのか、分からないので、気にかけてあげることができないのが難点だ。


「そうなんですね。でも、このマントがないと、凄く暑いです」


 ルイミンがマントにあるフードを外して、確かめている。


「日焼けしちゃうから、あまり取らないほうがいいよ」


 わたしがそう注意した瞬間、横でルイミンの真似をしようとして、フードを取ったシュリが、慌ててフードを被る。


「痛いのヤダ」

「日焼けってなんですか?」


 ルイミンがフードを被りながら尋ねてくる。

 もしかして、森の中で暮らしているエルフは日焼けを知らない? それとも、エルフの白い綺麗な肌は日焼けをしない?


「簡単に言えば、太陽の熱で肌が火傷して、肌が痛くなることかな?」


 紫外線とか、いろいろと細かいことを言っても分からないと思うので、理解しやすいように説明する。


「太陽の熱ですか?」


 ルイミンは手で目を隠しながら太陽を見る。


「太陽は見ないほうがいいよ」

「あんなに遠くにあるのに、火傷ですか?」

「すぐにはしないけど、長い間、熱い日の下にいると、日に焼けて肌がヒリヒリしたりするよ」

「お風呂に入るとき、すごく痛かったよ」


 シュリが体験談をルイミンに話してあげる。

 でも、日に焼けたほうが健康的に見えるけど、将来的に考えたらあまり日に焼けるのもよくない。

 わたしは日に焼けたルイミンを想像してみる。

 黒いルイミン。

 それって、ダークエルフ?

 もしかして、ダークエルフは日に焼けたエルフのことだったのかもしれない。

 ここで、新しいダークエルフ説が生まれた瞬間だった。


「ユナさん。わたしの顔をジッと見て、どうしたんですか?」

「なんでもないよ」


 勝手な想像して、ルイミンを凝視してしまった。


「でも、この砂の大地は、どこまで続いているんですか?」

「ずっと、続いているよ」


 正確なことは分からないけど、かなり広いことは間違いない。


「ユナお姉ちゃん、あの遠くにある棒のようなものはなんですか?」


 フィナが遠くにある柱を指差す。


「あれは街への道しるべだよ」

「まだ、残っておったんじゃのう」


 ムムルートさんが懐かしそうに柱を見る。


「ムムルートさんが来たときにもあったの?」

「あったもなにも、わしたちが作ったからのう」


 新事実が判明した瞬間だった。


「湖ができたとき、迷わないように作ったんじゃよ。せっかく湖があっても来ることができなかったら、意味がないからのう」


 歴史の教科書があったら、間違いなくムムルートさんの名前は残りそうだね。

 でも、ムムルートさんが作ったと知ると感慨深いものがある。


「それじゃ、そろそろ、クマの転移門のところに戻って、デゼルトの街に行こうか」


 いつまでも、ここにいても仕方ない。三人とも砂漠の暑さと光景は見た。砂漠の経験は、これで十分だろう。


「このまま、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに乗って行かないの?」


 シュリがくまきゅうを撫でながら尋ねる。


「ちょっと遠いからね」


 せっかく、便利なクマの転移門があるんだ。使わない手はない。

 それに、くまゆるとくまきゅうがいるとしても、子供を連れて、砂漠を移動はしたくない。

 気温の変化で体調を崩したりするかもしれないし、魔物もいる。なにより、砂漠の移動は面倒くさい。


「できれば、わたしもクマさんの門で移動したいです。このマントがあっても暑いです」

「そうじゃな。わしも、あの門で移動してもらえると助かる」


 エルフの二人からはクマの転移門を使って移動したいと言われる。とくにムムルートさんは砂漠横断の経験をしているから、余計にその辛さも知っていると思う。


「シュリも我儘言わないの」

「うん、ごめんなさい」


 フィナがシュリを説得すると、シュリもそれ以上の我が儘を言わず、謝る。

 まあ、シュリはくまゆるとくまきゅうに乗って、移動したかっただけなのかもしれない。

 わたしたちはカルスの町の近くにあるクマの転移門が隠してある岩山に戻った。帰るときはちゃんと、くまゆるとくまきゅうを乗り換えた。

 そして、岩山があるところに戻ってきたけど、どの岩にクマの転移門があるか見事に分からなかった。でも、くまゆるとくまきゅうが迷うこともなく、岩の前まで連れていってくれた。

 本当に優秀な子たちだ。



次に行く場所は和の国かデゼルトの街か悩みましたが、デゼルトの街となりました。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。お礼の返事ができませんので、ここで失礼します。

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― 新着の感想 ―
[一言] 大亀にも関係してたりしないよね 岩山のは忘れてると思ってました
[良い点] 柱を建てたのがムムルートさんだったとは、ホントに教科書に載せないといけない偉人さんかも。
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