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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、ノアとフィナの誕生日を祝う
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571 クマさん、フィナにプレゼントする エルフの村編 その2

「嬢ちゃん、感謝する。ルイミンもサクラの嬢ちゃんに会いたそうにしていたからな」


 部屋から出ていった後ろ姿のルイミンを見て、ムムルートさんがお礼を言う。


「喜んでもらえたら、いいよ」


 遠くにいるサクラとルイミンの縁を作ったのは、わたしだ。たまには、会わせてあげないと可哀想だ。

 それに、わたしの迷惑になると思ったのか、ルイミンには一度も和の国に行かせてほしいと、言われていない。

 だから、今回は一緒に連れていってあげようと思う。


 それから、わたしは勝手に話を決めてしまったことをフィナに謝る。


「フィナ、勝手に決めてゴメンね」

「ううん、みんなで行くのも楽しいです。本当なら、ノア様も一緒に来られたら良かったんですが」


 ノアにはクマの転移門のことを教えていないので、連れてくることができない。

 それに知っていたとしても、今回は無理だったかもしれない。魔法の交流会を見に行ったり、魔法の練習をしたり、他のことが疎かになっていた。長期のおでかけはクリフの許可がでなかったと思う。

 でも、いつかは連れてきてあげたいものだ。


「そうだね。いつかノアにも話せることができたら、一緒に来ようね」

「はい」

「なんだ。口が軽い人物がおるのか? それなら、契約魔法を使うか?」


 ムムルートさんの提案は丁重にお断りした。ノアなら、約束を守ってくれると思う。でも、教えるタイミングが中々ない。誕生日プレゼントで教えてもよかったんだけど、タイミングを逃した。まあ、そのうち、教えるタイミングもくるはずだ。そのときに教えてあげればいい。


 それから、親の許可をもらってきたルイミンが戻り、村の散策をすることになった。

 村の中を歩くと、子供たちが集まってくる。

 どうやら、ルイミンの弟のルッカが、わたしたちが来ていることを話したみたいだ。


「ごめんなさい。さっき、家に戻ったときに、ユナさんがいることを話しちゃったんです」


 まあ、村の中を歩けば、わたしの恰好ではすぐに気づかれるから、誤差の範囲だ。

 それにムムルートさんの家に来るときに会った女の子たちもいる。ルッカだけのせいではない。

 わたしは子供たちに、フィナとシュリを紹介する。


「一緒に遊んでくれると嬉しいかな」


 子供たちは頷くと、キノコや山菜採りにフィナとシュリを誘ってくれる。

 どうやら、取りに行く子供たちがいたらしい。

 フィナとシュリも行きたいと言うので、くまゆるとくまきゅうを召喚して、皆でキノコや山菜採りに行く。

 みんな、くまゆるとくまきゅうに抱きつき、フィナも村の子供たちも楽しそうにする。

 ルイミンはお姉さんらしく、子供たちのお世話をする。


「順番だからね。あまり、酷いと、ユナさんに消してもらいますよ」


 この一言で、子供たちは大人しくなり、酷いことにはならなかった。

 交互にくまゆるとくまきゅうに乗りながら、森の中に入り、キノコと山菜採りが行われた。

 フィナとシュリは、村の子供たちと一緒に集めた。

 採った中に毒キノコもあって、フィナが叫んだのは内緒だ。


 そして、今日の夕食は採ってきたキノコや山菜の料理が振る舞われた。

 料理はベーナさんとルイミンの母親のタリアさんが作ってくれた。その二人に、フィナは料理を教わっていた。

 良いお嫁さんになりそうだ。

 ぜひ、うちに来てほしいものだ。


 夕食はルッカや、ルイミンの父親のアルトゥルさんも、ムムルートさんの家にやってきて一緒に食べた。


 そして、夜になり、クマの転移門でクリモニアに帰るって話もあったが、ムムルートさんに泊まっていってほしいと言われた。

 厚意を無下にはできないし、どちらにしろ明日は一緒に王都に行くことになっているので、厚意をいただきムムルートさんの家に泊まることになった。


「今日は楽しかった?」


 布団に入り、いつもと違う天井を見ながら、左右で子熊化したくまゆるとくまきゅうを抱いているフィナとシュリに尋ねる。


「はい、とっても楽しかったです」

「うん、楽しかったよ」

「でも、疲れました。みんな元気です」

「あの子たちにとって、森の中は遊び場だからね」


 フィナもシュリも体力はあるほうだと思ったけど、エルフの子供たちはそれ以上だった。クマ装備がなかったら、わたしは数分ももたなかったと思う。


「明日は王都に行くんですよね?」

「その予定だよ」

「不思議です。エルフの村も王都も遠いのに、一瞬で行けるなんて信じられないです。ユナお姉ちゃんは、本当に凄いです」


 わたしが凄いのでなく、スキルをくれた神様が凄いのだ。クマ装備が無ければ、魔法も使えない、スキルも使えない、武器も重たくて扱うこともできない、そこらの子供の体力にも劣る存在だ。

 だから、わたしは凄くない。

 わたしが、どう答えようかと考えていると、左右から寝息が聞こえてくる。どうやら、フィナもシュリも疲れて寝てしまったみたいだ。


「二人ともお休み。くまゆるもくまきゅうもお休み」

「「くぅ〜ん」」


 くまゆるとくまきゅうは二人を起こさないように、小さく鳴く。

 わたしも疲れたので眠ることにする。



 翌朝、天井が違うことに、一瞬「あれ」と思ったが、左右を見てすぐに思い出す。わたしの左右には、くまゆるとくまきゅうを抱いたまま、気持ち良さそうに寝ているフィナとシュリがいる。いつも早起きのフィナが寝ているってことは、昨日は遊び疲れたのかもしれない。わたしは白クマのおかげでスッキリだ。

 もう少し寝かしてあげたいけど、今日もお出掛けの予定があるので、二人を起こすことにする。


「二人とも、朝だよ。起きて」


 わたしは二人の体を軽く揺らす。


「お姉ちゃん、もう少し」


 シュリはくまきゅうを抱きしめる。


「もう、朝ですか? ユナお姉ちゃん、おはようございます」


 フィナはすぐに起き上がる。そして、シュリを見る。


「まだ、眠いみたい」


 フィナは立ち上がり、シュリの横に座ると、シュリの体を強めに揺らす。


「シュリ、早く起きて、起きないと朝食抜きだよ」

「うぅ、それは嫌だよ」

「なら、起きて」


 シュリがムクっと起き上がる。

 流石、姉妹。起こし慣れているね。


「お姉ちゃん、おはよう。……ここは?」


 周りを見ながら、尋ねる。

 まだ寝ぼけているのかな?


「ルイミンさんのお爺ちゃんの家だよ。忘れたの?」

「あっ、そうだ。遊びに来たんだ」


 どうやら思い出したみたいだ。

 まあ、寝起きは仕方ない。わたしも一瞬、「ここはどこ?」と思った。


 わたしたちは着替えると、部屋を出て、いつもの部屋に向かうと、すでにムムルートさんがいた。


「ムムルートさん、おはよう」

「おはようございます」

「おはよう」


 それぞれがムムルートさんに挨拶をする。


「よく寝れたかのう?」

「ぐっすりと眠れました」


 ムムルートさんと挨拶をしていると、ベーナさんが朝食を運んてきてくれる。それを見たフィナが手伝いを申し出て、運ぶのを手伝う。それを真似して、シュリも運ぶのを手伝う。


「ムムルートさん、しばらく、村を離れても大丈夫なの?」


 奥さんを見ながら、小声で尋ねる。

「大丈夫だ。嬢ちゃんと契約魔法を使ったことは知っている。だから、話せないことも理解している。妻には悪いと思うが、契約じゃからな」

「……」


 何か悪いことをしているような気がする。あのときは初めて会ったばかりで、ムムルートさんが契約魔法の話を持ちかけてきたので、流れで契約魔法を使ってしまった。


「契約魔法、解きます? 解けるんですよね?」

「解けるが、このままで問題はない。誰にも話さないと約束をしたのだ。それなら、契約があろうとなかろうと同じこと。それが、妻相手でも一緒のこと、それが嬢ちゃんとの約束じゃ。それにベーナも分かっているから何も聞いてこない」


 格好いい。


「でも、ベーナさんに黙っているのが辛くなったら、言ってね。ムムルートさんやベーナさんが、他の人に話すような人じゃないことは分かっているから」

「そうじゃな、そのときは頼もうかのう」


 それから、朝食が食べ終わる頃に、ルイミンがやってきた。

 全員揃ったので、クマの転移門がある場所に向かう。


 村に出ると、くまゆるにムムルートさんとルイミンに乗ってもらい。わたしとフィナ、シュリはくまきゅうに乗る。フィナが前に乗り、次にわたし、そして、わたしに抱きつくようにシュリが乗る。

 ギリギリだね。

 ムムルートさんは初めてくまゆるに乗ったとき、何か嬉しそうな表情をしていた。もしかして、今まで乗りたかったのかな?


「ふふ、楽しみです」

「王都に初めて来たときみたいに、迷子にならないでね」

「うぅ、あのときは……」


 嬉しそうにしていた、ルイミンの表情が落ち込んでしまう。

 ちょっと、からかい過ぎた。


「冗談だよ。王都は広いから仕方ないよ。それに初めてだったんだから誰でも迷うよ」


 どこでもそうだけど、初めて行くところは分からないものだ。スマフォがあるわけでもないし、地図もない。そんな状態で知らない場所に行けば、迷うのは仕方ないことだ。

 わたしだって、王都のことを全てを知っているわけじゃない。迷ったこともある。でも、基本、お城が見えるので、お城を目指せば、最悪、家には戻ってこられる。

 まあ、クマの地図があるから、一度行ったことがある場所なら、迷子にはならない。


「ユナさんも迷ったんですか?」

「わたしの場合、道案内してくれる人がいたから、大丈夫だったけど、一人じゃ迷子になったと思うよ」


 わたしは、ルイミンを慰める。


 そして、クマの転移門が置いてある場所までやってくる。


「嬢ちゃん。あの扉はどこにでも、行けるのか?」


 ムムルートさんがクマの転移門を見ながら、尋ねる。


「この門を置いてある場所だけだよ。だから、一度はその場所に行かないとダメだよ」


 ゲームでも、一度行ったことがある場所しか行き来はできなかったので、それが普通だと思う。

 行ったこともない場所に自由に行けたら、ゲームとして成り立たないし、つまらないと思う。

 なにより、行ける場所は、自分の足で行ったことがあるところだけで十分だ。


「それじゃ、王都に向けて扉を開けますね」


 わたしはクマの転移門の扉を王都に向けて開ける。


遅くなりました。

次は王都に行きます。


【お知らせ】

すでに発売している場所もあるみたいですが、

本日、書籍クマ13巻とコミック3巻の発売日になります。

本屋さんで見かけましたら、手に取っていただけると嬉しいです。

サイン本や店舗購入特典のSSもあります。

詳しくは、活動報告を見て頂ければと思います。

よろしくお願いします。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。お礼の返事ができませんので、ここで失礼します。


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― 新着の感想 ―
[一言] もしかして行きたい場所があるとかかな 世界中を旅した冒険者だし
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