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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、ノアとフィナの誕生日を祝う
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564 クマさん、魔法を教える その1

 魔法の話をしていると、「くぅ〜ん」と鳴き声がする。鳴き声がしたほうを見ると、シュリが子熊化したくまゆるに抱きついて寝息をたてていた。

 寝てしまったシュリをくまゆるが教えてくれたみたいだ。


「シュリ、ベッドで寝ないとダメだよ」


 フィナが手を伸ばしてシュリを起こそうとするのを、わたしは止める。


「フィナ、起こさないでいいよ」


 わたしはシュリに近寄ると、くまゆるに抱きついているシュリを抱き抱える。クマ装備があれば、シュリと子熊のくまゆるを抱き抱えるぐらい簡単だ。

 抱き抱えた二人を、そのままベッドに運ぶ。


「きっと、騒ぎすぎて疲れたんだね」


 シュリはドレスを着て、いつも以上に元気だった。そして、お風呂に入り、夜になり、抱き心地の良いくまゆるを抱いていたら眠くなってしまったんだと思う。


「シュリ、嬉しかったんだと思います。こんな誕生日パーティーは初めてですから」


 今まで、フィナとシュリは誕生日パーティーらしきものはしてこなかったかもしれない。

 たとえ、姉のフィナの誕生日パーティーでも、嬉しかったのかもしれない。

 わたしはシュリの頭を軽く撫でる。

 シュリの誕生日のときも、ちゃんと祝ってあげないといけないね。


「それじゃ、もう遅いし、わたしたちも寝ようか」

「そうですね。くまゆるちゃんはシュリに取られてしまいましたので、くまきゅうちゃんは、わたしと一緒に寝ましょう」


 ノアはそう言うと子熊化したくまきゅうを抱きかかえる。


「ノアお姉様、ズルイです。わたしもくまきゅうちゃんと一緒に寝たいです」


 ミサはくまきゅうの手を握る。これで引っ張り合いが起きたら、大岡越前だね。


「それなら、くまきゅうを挟んで一緒に寝たら? ベッドが繋がっているんだから大丈夫でしょう」

「それです!」

「流石、ユナお姉様です」


 二人はシュリが寝ているベッドとは反対側に移動し、くまきゅうと一緒にベッドの上に移動する。

 くまきゅうは左右から二人に抱かれる。

 くまきゅうはわたしのほうを見るが、くまゆるもシュリの相手をしている。それに今日はノアの誕生日だ。一日ぐらい、一緒に寝てあげてもいいと思う。


「それじゃ、わたしたちも寝ようか」

「はい」


 わたしはフィナに声をかけ、部屋の灯りを消すとベッドに移動する。

 ベッドには、五本の線と2つの点ができる。右からミサ、くまきゅう、ノア、わたし、フィナ、くまゆる、シュリとなっている。そして、全員、クマだ。

 もし、こんなところを他の人に見られたらと思うと、流石に恥ずかしいところだ。

 でも、みんなが楽しんでくれたみたいだから、クマパーティーも悪くはなかった。


「みんな、おやすみ」

「みなさん、おやすみなさい」

「はい、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

「うぅ、くまゆるちゃん……」


 いろいろとあったが、楽しい一日だった。

 流石に、わたしもドレスなどを着て、疲れも出てきたようで、布団に入ると眠くなってくる。

 わたしは左右をクマの格好をした少女たちに囲まれながら、眠りに就いた。


 翌朝、わたしが目を覚ますと、くまゆるとくまきゅうがわたしの隣で寝ていた。

 左右を見ると、四人は気持ちよさそうに寝ていた。

 わたしが寝ている間に、なにがあったのかな?

 わたしは黒クマに着替えると、みんなを起こす。


 そして、誕生日パーティーも終わり、数日後にはミサはグランさんと帰っていった。もちろん、護衛で来ていたマリナたちも一緒だ。

 わたしのお店にも行ったようで、料理が美味しかったと言ってくれた。その言葉は純粋に嬉しい。


 それから、フィナもクリフからもらったプレゼントで、家族と高級レストランで食事をしてきた。

 そのときにティルミナさんから、魔法を使うときの媒体になる指輪を借りたと教えてくれた。

 わたしは約束通りに、ノアとフィナに魔法を教えることにする。


「それじゃ、魔法の練習をしようか」

「はい」

「がんばります」


 魔法の練習場所はノアの家の庭だ。ノアの家の庭は広いし、何かあれば誰かを呼ぶこともできるし、休憩もできる。別に大きな魔法を使うわけでも、危険な魔法を使うわけでもない。魔法の練習には最適の場所だ。

 わたしたちは庭にシートを敷き、座る。


「ユナさん、今日はよろしくお願いします」

「お、お願いします」


 ノアがわたしに頭を下げて、お願いをすると、フィナもマネして頭を下げる。


「前にも言ったけど、魔法を使ったことがない子に魔法は教えたことがないから、上手に教えられるか分からないからね」


 新人冒険者の女の子には教えたことはあるけど、魔法を一度も使ったことが無い子に教えるのは初めてのことだ。

 水泳ができる子に速い泳ぎ方を教えるのと、一度も水の中にも入ったこともない子に、泳ぎ方を教えるのでは、教え方はまるっきり違う。


「はい、分かっています」

「はい」


 本当に分かっているのかな?


「それじゃ、まずは魔法のことを知らないフィナもいるし、魔法の知識の勉強を軽くしようか」

「え~~」

「嫌なら、フィナと二人でするけど」

「嫌なんて言ってません。勉強します」


 といっても、わたしも詳しいことは知らない。なので、ここは魔法の予習をしているノア先生にお願いすることにする。


「それじゃ、ノア先生。魔力の基本的なことを教えてくれる?」

「わたしですか?」

「自己流のわたしより、しっかり勉強をしているノアのほうが最適でしょう。フィナもそう思うよね」

「はい。ノア先生、お願いします」


 わたしとフィナが先生呼びをすると、ノアは嬉しそうにする。


「分かりました。任せてください」


 チョロい。


「それで魔力ってなに?」

「魔力は大なり小なり、人は誰しもが持っています。そして、魔法は10歳前後で使えるようになります」

「なんで10歳前後なの?」


 再確認のため尋ねる。


「昔から言われていることなので。小さいときに魔力を集めると、大人になると魔法が使えなくなる多くの事例があったみたいです。だから、魔法を使うのは10歳過ぎになってからが良いと言われています」


 人類の過去の経験から基づいているんだろうね。

 最近、この世界にやってきたときには、10歳以上だったわたしは、関係なく魔法が使えたのかな?

 それとも、神様のおかげ?

 考えても答えはでないので、ノアの話を聞く。


「そして、魔法は魔力を集めて発動させます。なので、本来持っている魔力量が少なかったり、もしくは魔力を一ヶ所に集めることができないと、魔法を使うことができません」


 これはクマさんパペットに魔力を集めることと同じことだね。


「ノア様、わたしは魔法は使えるんでしょうか?」


 話を聞いていたフィナが不安そうに尋ねる。


「誕生日パーティーのときにも話しましたが、魔法が使えるかどうかは、やってみないと分かりません。両親が魔法を使えなくても、子供が使える事例はあります。でも、その逆の話も聞きますので、わたしも使えない可能性があります。フィナはお母様が魔法を使えるのですから、可能性は高いですよ」


 ノアはフィナを安心させるために、優しく微笑む。


「ノア。それで、初めはどの魔法を覚えるものなの?」

「初めは光魔法ですね。光はもっとも身近なものです。人は暗闇より、明るいところを好みます。だから、光がもっともイメージがしやすく、一番初めに覚える魔法と言われています」


 わたしはお手本をみせるため、黒クマさんパペットに魔力を集め、光魔法を作り出す。


「クマさんです」


 クマの顔の形をした光が浮かび上がる。

 無意識にやっても、クマの光になるから質が悪い。


「それじゃ、光魔法を使ってみようか」


 わたしがそう言うと、フィナは少し困った表情をする。


「ユナお姉ちゃん。どうやって、魔力を集めるんですか?」

「やってみてと言われても、魔力の集め方が分かりません」


 たしかにそうだ。

 やってみようかとかと言って、できれば先生なんて必要はない。

 だからと言って、魔力の集め方なんて上手に説明はできない。魔力を集めるのは感覚的なものだ。

 簡単に魔力を集めることができれば、誰も苦労しない。先ほど、ノアが言っていたけど、魔力を集めるのは難しいらしい。


「ノア。普通、魔法って、どうやって覚えるものなの?」

「体内にある魔力を動かす練習と言うか、集める練習ですね。先ほども言いましたが、魔力を集めないと魔法は使えません」

「ちなみに、その練習方法は知っている?」

「えっと、体の中の魔力を動かすのは簡単にはできないみたいなので、魔法が使える人が、魔力の移動の感覚を教える、だったと思います。わたしもその辺りは教わっていないので、細かいところまでは分かりません。ユナさんが魔法を覚えたときはどうだったんですか?」


 ゲームで覚えましたとは言えない。


「どうだったかな?」


 わたしは笑って誤魔化す。

 でも、魔力の感覚を教えるか。

 なんとなくだけど、分かった気がする。

 まあ、できるかどうかは試しにやってみよう。


「それじゃ、やってみるからわたしの手を握ってみて。どっちから、やってみる?」


 わたしは二人を見ると、フィナが遠慮がちに口を開く。


「わ、わたしは後で、先にノア様が」

「分かりました。先にわたしがやってみますね」


 黒クマさんパペットを差し出すと、ノアはペンダントを握ったまま掴む。


「それじゃ、魔力を動かしてみるよ」

「はい」


 わたしは自分の体の魔力をノアの体の中で動かすようにしてみる。


「ユナさんの手から、何かが流れてきます。これが魔力なんですね」

「自分の魔力って分かる?」

「なんとなく分かります。ユナさんの魔力と一緒に流れているみたいです」


 わたしはノアの体の隅々に魔力を動かしてみる。


「足まで、流れています。魔力の流れが分かってきました」


 どうやら、魔力の流れを感じることができたみたいだ。


「それじゃ、手を離してみるから、自分の魔力を手に集めてみて」

「はい」


 ノアは目を閉じ、エレローラさんから貰った首飾りを握りしめ、集中する。


「魔力が集まってくるのが分かります」

「えっと、それじゃ、光らせてみて」

「はい」


 ノアは目を閉じて、「光って!」って叫ぶと、ノアの握りしめる手が光る。


「光りました。ユナさん、光りましたよ」


 ノアは嬉しそうに自分の光っている手と、わたしを見る。


「うん、光っているね」

「ノア様、おめでとうございます」

「ありがとう」


 ノアは嬉しそうに、自分の光っている手を翳している。


「それじゃ、次はフィナの番だね」

「はい」

「フィナ、頑張ってください」


 わたしはクマさんパペットを差し出すと、フィナは恐る恐るクマさんパペットを握る。



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