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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、ノアとフィナの誕生日を祝う
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561 クマさん、プレゼントを渡す

 全員、クマのカップケーキを美味しそうに食べてくれる。

 ティルミナさんから相談されたときは、どうしようかと思ったけど、みんなが喜んでくれたようでよかった。

 わたしはアイデアと、基本になる作り方を教えてあげた。それをティルミナさんとエレナさんが、工夫して、今の形のクマのカップケーキを作り上げた。

 今度は、このクマのカップケーキも、お店で販売することになるらしい。

 ますます、あの店がクマに侵されていくような気がする。もう止めることはできないので、諦めるしかない。


「それじゃ、わたしとフィナ、シュリからのプレゼントも出そうか」


 わたしがそう言うと、ノアが目を輝かせる。今まで、口に出さずに我慢をしていたみたいだ。わたしはクマボックスから、等身大くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみを取り出す。


「わたしとフィナ、シュリからのプレゼントだよ」

「うわぁ、ありがとうございます」


 ノアは嬉しそうに等身大くまゆるぬいぐるみに抱きつくと、お腹に顔を埋める。


「柔らかいです」

「本当に大きいです。四人で作ったんですね」


 正確には、シェリーを入れて五人だ。でも、ミサはそのことを知らないので仕方ない。


「本当に大きいな。ユナのクマと同じ大きさか」

「このぬいぐるみの中に入れる綿を取り戻すために、盗賊討伐に参加したわけじゃな」


 ミサ、クリフ、グランさんが、それぞれが等身大くまゆるとくまきゅうぬいぐるみを見て、感想を漏らす。ティルミナさんとゲンツさんは驚いている。


「ノアも知っていると思うけど、作るの大変だったんだから、大切にしてね」

「はい、もちろんです。ユナさん、フィナ、シュリ、ありがとうございます。大切にしますね」


 ノアも一緒に作ったけど、お礼を言われると嬉しいものだ。


「ノアお姉様、わたしも触ってもいいですか?」

「もちろんです」


 ノアが許可を出すと、ミサは等身大くまきゅうぬいぐるみに触る。


「本当に柔らかいです。わたしも大きなくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのぬいぐるみが欲しいです」


 ミサが羨ましそうにする。ミサの誕生日パーティーのときとは反対になる。

 普通の大きさのぬいぐるみだったら、作ってあげてもよかったけど。流石に、この大きさのぬいぐるみを簡単に作ってあげるとは言えない。


「それじゃ、次のミサの誕生日プレゼントのときに作ってあげようか?」

「本当ですか!?」


 といっても、一年後だ。


「うん。そのときまで、ミサがぬいぐるみが欲しいって思っていてくれたらね」


 もしかすると、来年にはぬいぐるみは卒業している可能性もある。子供の成長は早いし、欲しいものが変わるかもしれない。でも、何年経っても変わらない気持ちもある。


「だから、誕生日近くになっても欲しいと思っていたら、遠慮なく言ってね」

「はい!」


 これで、次のミサの誕生日プレゼントを考えないで済むという話もある。誕生日プレゼントって、思っていたよりも考えるのが難しい。


 そして、今度はお返しに、ノアがフィナにプレゼントを渡す。


「高価な物をフィナにプレゼントしても困ると思い、何をプレゼントしたらよいか分かりませんでした。それで、ララと相談して、これを作ることにしました」


 ノアはそう言うと、アイテム袋から黒と白の物体を出す。それはくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみだった。


「既に持っていると思いますが、わたしが作りました。あまり上手ではありませんが、受け取ってくれませんか? この大きさなら、部屋に置けると思います」


 クマのぬいぐるみは少し、顔の表情が微妙に違うような気がする。誰の手も借りずに一人で一生懸命に作ったのかもしれない。


「ノア様、ありがとうございます」


 フィナは嬉しそうに受け取ると、少し驚いた表情をする。


「あれ、肌触りが違います」

「気づきましたか。肌触りが良い布と、ユナさんが取り戻してくれました綿を使っています。だから、抱き心地はとても良いはずです」


 つまり、最高品質のぬいぐるみってことになる。わたしはクマさんパペットをしていない右手で触らせてもらう。

 おお、確かにわたしたちが作ったぬいぐるみより、肌触りがいいかもしれない。

 まさしく、高級ぬいぐるみだね。


「それにしても、ぬいぐるみなんて作っていたんだね」

「わたしだけ、大きなぬいぐるみを作ってもらいました。本当はフィナにも作ってあげたかったのですが、大きいと部屋に置けないと言われましたので」


 話を聞いていたティルミナさんが、小さな声で「流石に置けないわね」と言う声が聞こえてくる。


「でも、この大きさなら、大丈夫だと思ったんです。既に、持っていることは知っていました。でも、わたしには、これしか作れませんので」

「もしかして、一から作ったの?」

「ユナさんから貰ったぬいぐるみを、参考にしました」


 あれを見て作ったんだ。


「作るの、凄く大変でした」

「言ってくれたら、手伝ったのに」

「これはわたしの我が儘です。一人で作ってみたかったんです。そのほうがフィナに喜んでもらえたとき、その喜びはわたしのものですから」


 確かに多くの人数で作れば、その感謝の気持ちは分散されるような感じがする。

 百人に向かって「ありがとう」と、お礼を言われるのと、自分一人に言われるのとでは、差があるのは明確だ。

 フィナはノアの言葉に、少し恥ずかしそうにするとノアを見る。


「ノア様、ありがとうございます。大切にします。凄く嬉しいです」


 その言葉にノアは満面の笑顔になる。

 友達だね。わたしには眩しいよ。


「それでは、次はわたしですね」


 ミサはそう言うと、アイテム袋から布を取り出す。

 なんだろう? ハンカチではない。いろいろな布が重なっているように見える。


「ノアお姉様から、ぬいぐるみを作る話を手紙でお聞きしました。それで、わたしはこれを作りました」


 ミサは持っている布を広げる。


「服?」


 ミサが広げて見せてくれたのは小さな服だった。フィナたちが着る服以上に小さく、赤ちゃんの服と言ってもいいぐらいだ。


「もしかして、ノア、結婚するの?」

「し、しないです!」


 ノアは手を振って否定する。


「違います。これは、ノアお姉様の赤ちゃんの服じゃなくて、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのぬいぐるみの服です」


 ミサも慌てて否定して、誰の服か教えてくれる。


「ぬいぐるみの服?」

「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに服を着せてあげてもいいんじゃないかと思って作りました。おかしいでしょうか?」


 ミサが少し、恥ずかしそうに尋ねる。


「ううん、おかしくはないよ」

「本当ですか?」


 元の世界でも、普通にぬいぐるみに服を着せることはある。季節ごとやイベントごとに服を着せたりするから、おかしくはない。

 そのことに気づいたミサが凄い。


「よく、そんなことを思いついたね」

「服を着ているお人形を見て、思い付きました。ノアお姉様、フィナちゃん、どうですか?」

「とっても、良いアイデアだと思います」

「はい、わたしもそう思います」

「よかった。いろいろ作ってきましたので、是非、着させてあげてください」


 ミサはテーブルの上に服を並べる。


「戦士に魔法使い、それから騎士に神官、料理人、メイドさん、商業ギルドの服も作ってみました」


 いろいろな職業の服を作ったみたいだ。


「それでは、部屋からぬいぐるみを持ってきますね」

「ノアール様、わたしが持ってきます」


 ノアが部屋にぬいぐるみを取りに行こうとすると、部屋の隅で給仕をしていたララさんが部屋から出ていく。


「それでは、先にフィナの持っているぬいぐるみに着せてみましょう。フィナはどれがいいですか?」

「えっと、魔法使い?」


 フィナは魔法使いの服を指差す。


「それでは、もう片方は戦士にしましょう」


 ノアがそう言うと、ノアが作ったくまゆるとくまきゅうぬいぐるみの着替えが始まる。

 戦士くまゆると魔法使いくまきゅうが完成する。

 おお、思っていたよりも良い感じだ。


「それにしても、上手に作ったね」

「その、メーシュンに手伝ってもらいました」


 確か、メーシュンさんって、ミサの家で働いているメイドさんだよね。誕生日パーティーのときには、いろいろとお世話になった。


「メーシュンは裁縫が得意なんですよ。ノアお姉様は一人で作ったのに、わたしはダメですね」

「そんなことはないと思うよ。誰だって、初めは誰かに教わって作るものだよ」


 本にしろ、人は何かしらから学ぶものだ。

 何も知らないところから作り出せるのは、一握りの天才だけだ。


「そうです。わたしも、大きなぬいぐるみを作ったことで、作り方を知りました。一緒に作らなかったら、作ることはできませんでした。だから、恥ずかしいことはありませんよ」

「わたしもそう思います。解体もそうです。解体をしたことがない魔物は、上手に解体をすることはできません。わたしもお父さんに教わって、できるようになりました。だから、ミサ様がダメってことはありません」

「わたしも、お姉ちゃんとお父さんに教わっているよ」


 ノア、フィナ、シュリが擁護する。


「ノアお姉様、フィナちゃん、シュリちゃん、ありがとうございます」


 ミサは嬉しそうにする。

 それから、ララさんが、ノアのくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみを持ってくると、四人はぬいぐるみに服を着させ始める。


 そして、くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみ四体の着替えが終わる。フィナは戦士と魔法使い。ノアのぬいぐるみは料理人とメイドさんだった。

 どっちも可愛く似合っていた。

 ミサのプレゼントも終わったので、わたしの番になる。


「フィナ、わたしからのプレゼントはこれ」


 わたしは一枚の紙を渡す。


「えっと、ありがとうございます?」


 フィナは意味も分からず、紙を受け取る。


「何を貰ったんですか?」


 ノアとフィナが紙を見る。そこには「くまゆる、くまきゅうとのお出かけ券」と書かれている。小さく、わたしの名前も入っている。


「まあ、紙に書かれている通りだよ。くまゆるとくまきゅうとお出かけできる券だよ」

「なんですか、それ。わたしも欲しいです」

「ノアには大きなぬいぐるみをプレゼントしたでしょう」


 わたしは大きなぬいぐるみに目を向ける。ここにはいないシェリーを含め、五人で作ったとはいえ、作るのにどれだけ大変だったか。


「そうですが、羨ましいです」


 そうはいっても、肩たたき券みたいなものだ。ノアたちに比べたら、大したものではない。


「フィナも、そんなのでごめんね」

「そんなことないです。嬉しいです。大切にします」

「いや、使ってね」


 フィナのことだから、使わないで引き出しに仕舞ったままになりそうなので、使わせることを考えている。


フィナにプレゼントするものは悩みました。

高価なものにならず、フィナが喜ぶもの。

ユナではないですが、プレゼントを考えるのは難しいですね(笑)


【お知らせ】コミックPASH!で「くまクマ熊ベアー」の30話が公開されました。よろしくお願いします。

http://comicpash.jp/kuma/30/


【お知らせ】ニコニコ漫画で「くまクマ熊ベアー」の27話(前半)が公開されました。よろしくお願いします。

http://seiga.nicovideo.jp/comic/36795



※いつも誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。お礼の返事ができませんので、ここで失礼します。


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― 新着の感想 ―
[一言] 話を繋げていくのが面白い
[気になる点] ・・・肩たたき券ならぬお出かけ券 一回のみなのか無期限なのか そして小さくユナの名前がある・・・ユナも対象って事ですねw
[一言] 等身大と実物大は異なるため、綿の量が小熊ぬいぐるみに比べ10倍以上100倍以上で変わると思います(数話前):大人が2人乗れる大きさ 「本当に大きいな。ユナのクマと同じ大きさか」
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