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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、ノアとフィナの誕生日を祝う

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558/939

553 クマさん、シーリンの商業ギルドに行く

 日が沈む前にシーリンの街に到着する。


「流石、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんね」


 くまゆるとくまきゅうが本気を出せば、こんなものだ。でも、今日は山とクリモニアを往復させ、シーリンの街まで走らせてしまった。平気な顔をしているけど、落ち着いたら、労ってあげないとダメだね。

 わたしとミレーヌさんが乗る、くまゆるとくまきゅうが街の門に近付くと、門に立つ門番は、わたしと、くまゆるとくまきゅうを見て驚く。そして、「もしかして、領主様が言っていたクマか?」と独り言が聞こえ、くまゆるとくまきゅう、それからわたしの格好についても、尋ねられることもなく、街の中に入ることができた。

 もしかして、グランさん? それとも、息子のレオナルドさんが、門番にわたしのことを伝えてくれたのかもしれない。

 前に来たときは、くまゆるとくまきゅうが街の中を走り、住民を驚かせてしまった。だから、気を利かせてくれたのかもしれない。

 でも、門番が言っていた「クマ」とはわたしのことなのか、くまゆるとくまきゅうのことなのか、気になるところだ。


「ユナちゃん。急ぎましょう」


 街の中に入ったわたしとミレーヌさんは、商業ギルドに向かう。もちろん、くまゆるとくまきゅうは送還したので、ここからは走っていく。「くま?」「クマ?」「くまさん?」「あのときのくまさん?」

 クリモニア以外だと、こういう反応をされるよね。


「ユナちゃんの格好は目立ちますね」


 ミレーヌさんはそう言うと、人通りの少ない道を走り出す。


「ミレーヌさんはシーリンの街に詳しいんですか?」

「クリモニアの周辺の街には行きますから、ある程度を知っているぐらいですよ」


 そう言うわりには迷うこともなく進み、どこかの建物の裏口に到着する。


「商業ギルドの裏口よ。ここから入りましょう」


 ミレーヌさんは自分の部屋に入るようにドアを開けて、建物の中に入る。

 建物の中に入ると、商業ギルドの制服を着た女性がいて、いきなり入ってきたわたしたちに驚く。


「あなたたちは?」


 驚くギルド職員に、ミレーヌさんはギルドカードを見せ、「ギルドマスターに会いたいのだけど」と言うと、ギルド職員は「クリモニアの」と一瞬驚くが、すぐにギルドマスターのところに案内してくれる。

 流石、ギルドマスターだと知ると、話も早い。

 ただ、ギルド職員がジッとわたしのことを見ていたけど、気にしないことにする。


「ギルドマスター、クリモニアのギルドマスターのミレーヌ様がいらしてます」


 ギルド職員が声をかけると、部屋の中から驚いた声があがる。


「ありがとう。あとは大丈夫だから」


 ミレーヌさんはギルド職員にお礼を言うと、中から許可がでる前に部屋の中に入る。わたしも部屋の外にいるわけにもいかないので、ミレーヌさんについていく。

 部屋の中には30歳ほどの細身の男の人がいた。

 男性はミレーヌさんが部屋に入ってくると、驚いた表情をして立ち上がる。

 この人が新しいギルドマスターなのかな? 聞いた話では、ガマガエルの貴族と繋がりがあった商業ギルドのギルドマスターは辞めさせられ、新しいギルドマスターに代わったとのことだ。


「ミレーヌさん!? ど、どうして、シーリンに? 呼んでいただければ、自分がクリモニアまで行きましたのに」


 ミレーヌさんのほうが若いのに、なにか男性のほうが立場が低いように見える。年齢でなく、ギルマス歴が長いと短いの差とかあるのかな?

 そもそも、この若さでクリモニアのギルドマスターをやっているのは、クリモニアの謎の一つだ。


「ミレーヌさん。新しいギルドマスターと知り合いなの?」


 やっぱり、ギルマス繋がりで知っているのかな?


「昔、彼が大きなミスをしたときに助けたり、シーリンの街のギルドマスターが交代するとき、推薦状を書いてあげたぐらいですよ」


 ミレーヌさんの言葉に驚く。まさか、推薦状を書いていたとは思わなかった。

 シーリンのギルドマスターはお茶の用意をしようとするが、ミレーヌさんが断る。


「時間がないから、お茶はいいです」


 わたしたちはここに来た理由を説明する。

 盗賊のこと、リーデントと言う商人がこの街にいること、罠に嵌めること、を簡潔に話す。


「話は分かりました。つまり、冒険者と商業ギルドが動いたことをリーデントという商人の耳に入るようにすればいいのですね?」

「ええ、できれば、今日中にリーデントの耳に入れるようにしてほしい」


 明日、荷物の引き渡しをする。今日、もしくは明日の朝までには、リーデントの耳に入れさせないといけない。

 そうでないと、普通に捕まえるだけで終わってしまう。

 ミレーヌさん曰く、いろいろと逃げられないように追い込むらしい。


「あと、冒険者が動くのが早いと接触を避けるかもしれないから、三日後ぐらいに動く感じで伝えて」


 ミレーヌさんとギルドマスターは話を詰めていく。

 そして、話が纏まると、ギルドマスターは一人の職員を呼ぶ。


「なにか、御用でしょうか?」


 部屋に入ってきたのは20代半ばぐらいの男性だ。


「至急、頼みたいことがある」

「彼は?」

「彼は信用できる者なので安心してください」

「マランと言います」


 マランと名乗った男性は、わたしのことをチラッと見るが、何も言ってこない。

 ギルドマスターはマランにミレーヌさんと話し合ったことを説明する。


「分かりました。リーデントという名の商人を知っていますので、上手に噂を流すことができます」


 マランは心強いことを言う。


「急ぎだけど、大丈夫?」

「はい。大丈夫です。お任せください。あと、信憑性をもたせるために、冒険者ギルド職員にも手伝ってもらうのは大丈夫でしょうか?」

「ええ、もちろん。あなたに任せるわ」

「ありがとうございます」

「頼もしいわね」

「引き抜かないでくださいよ」

「そんなことはしないわ」


 本当に優秀っぽい。これが味方なら頼もしいけど、敵だったら怖いね。漫画や小説、ゲームだと、よく味方だと思っていた人物が敵だったりする場合がある。

 もちろん、そんなフラグはいらないから、味方でいてほしいものだ。

 マランを見ると、微笑まれた。

 馬鹿にされているのか、子供と思われているのか、判断がつかない表情だ。


「リーデントを知っているようだけど、リーデントってあなたの目から見てどんな商人?」

「強い者にはへつらい、自分より弱い者には強気にでる小物です」


 マランはミレーヌさんの質問に簡潔に答える。


「なら、なにも問題はないみたいね」

「そうですね」


 ミレーヌさんとマランは笑う。

 なに? このコンビ。怖いんだけど。

 久しぶりにミレーヌさんの商業ギルドのギルドマスターとしての顔を見た気がする。

 いつもは優しいけど、敵に回したら怖い人だ。そういえば、クリフに卵を売らないでほしいと頼んだら、普通に了承して、本当に領主であるクリフに売らなかった人だ。

 ミレーヌさんを敵に回すのだけはやめよう。


「あと、確認ですが、リーデントのお店を見張るんですよね」


 逃げた盗賊が来るかもしれないってことで、ブリッツたちが見張ることになっている。


「ええ、クリモニアで雇った冒険者が見張りをする予定。夜に到着すると思うけど」


 ブリッツたちが馬で向かっている。くまゆるとくまきゅうが速いといっても、距離はそれほどないので、差は付いていないはずだ。


「冒険者ギルドに頼むこともできますが」


 マランの提案にミレーヌさんは少し考える。


「そうね。いつ、到着するか分からないから、見張りをお願いしようかしら。でも、信用がおける冒険者にお願いね」


 確かに重要だ。どこで情報が筒抜けになるか分からない。

 わたしはシーリンで信用できる冒険者を知っている。


「それなら、マリナって女性冒険者が率いるパーティーは信用ができるから、彼女たちがいたらお願いをしてみて。わたし、ユナからのお願いだって言えば、引き受けてくれると思う」


 マリナたちはグランさんの護衛を何度もして、信頼されている。命がけでグランさんを守ったこともある。ガマガエル派ではないはずだ。

 シーリンの冒険者で、もっとも信用ができる冒険者だ。


「マリナですね。分かりました。彼女がいましたら、依頼をお願いいたしましょう」


 マランはわたしの言葉を素直に受け入れる。

 クマのわたしのことをなんとも思っていないのかな?

 ギルドマスターもそうだけど、マランもクマの格好について尋ねてこない。初対面だと、絶対に聞かれるんだけど。

 それから、ブリッツたちが商業ギルドにリーデントの商人のお店の場所を尋ねに来るから、その対応もお願いする。



「それでは、わたしはリーデントの耳に入るように仕掛けてきますので、これで失礼します」


 マランは頭を下げると、部屋から出ていく。


「あんなギルド職員がいたのね」

「信頼が置ける部下です」


 自慢そうにギルドマスターは答える。


「彼が目を光らせているので、かなり仕事がしやすくなっています」


 少し前まで、シーリンの街の商業ギルドはガマガエルに侵されていた。新しいギルドマスターや、新しい体制になれば、不満も出るだろう。

 どこまで、商業ギルドの腐敗が進んでいたか分からないけど、頑張ってほしいものだ。


 でも、これでリーデントへの包囲網が作られていく。あとは証拠を集めて、逃げられないようにするだけだ。



ユナとミレーヌが森に行くところまで話がいくと思ったけど、いかなかった……

それで、前回の話と繋がるはずだったのに。

上手くいかないものです。


※本当にすみません。書籍13巻の原稿は終わりましたが、書き下ろしや店舗特典などを書かないといけません。web版を優先的に書きたいと思いますので、感想の返信はしばらくお休みにさせていただきます。ご了承ください。


※いつも誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。お礼の返事ができませんので、ここで失礼します。


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― 新着の感想 ―
[一言] そっか、更に読み直してわかった。 時系列が逆なんだ。 それなら、冒頭に「話は前夜に戻る」とか、あった方が良いな。
[一言] 現在、19巻の続きになる部分を読み直してるところだけど、 今回気になる部分が… 前回の話と合わせて考えると、シーリンの商業ギルドのマスターって2人いる? それとも前回の話のラストに出てきた新…
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