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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、ユーファリアの街に行く
527/904

522 クマさん、クマを作られる

 水魔法の出し物は終わり、今度は風魔法が行われる。

 風魔法は水魔法と違って、形を作り出すことはできない。だから、湖に向かって風の刃を放つ。風の刃は1本の線を作り出す。2本、3本。上手な学生は円を作ったり、小さいながらも渦を作ったり、湖のキャンバスに絵を描いていく。


「これは少し、後ろから見たほうがいいかな?」


 後ろのほうは高くなっているので、湖の表面が見やすい。ほかの人たちが移動を始める。それにならって、わたしたちも移動する。


「上手です」


 素早く描かないと、描いた線が消えてしまうので、素早さが重要になる。主に、図形を描く生徒が多い。まあ、複雑な絵は無理だろう。風は飛ばした後、方向を変えるのはほぼできない。飛ばす瞬間に曲げることによって、カーブみたいなことはできる。それを応用して、円を描く。一周は無理なので、左右の腕を振って、半円を描き、綺麗な円が出来上がり、最後には風魔法同士がぶつかって、水しぶきがあがる。それも演出となって、綺麗だ。

 それからも生徒たちが考えた図形のアートが湖のキャンパスに描かれる。

 グラウンドでもできるけど、水の上だから綺麗に見えるね。

 湖にいる生物にはいい迷惑だね。

 まあ、こんだけ魔法を使っていれば、魚は逃げていくだろう。

 ユーファリアの生徒は湖があるから練習できるけど、王都の生徒はプールで練習したのかな?


「面白かったね」

「はい」


 火は形にするのが難しいのか、苦労している生徒が多い。円を作ったり、手を動かして、文字を書いたりする。魔法によって用途が違うってことだね。


「お姉様、出ませんでしたね」

「うん、違う魔法で出るんじゃないかな?」


 火の魔法にシアは出なかった。でも、出ないとは言っていなかったので、次の土魔法で出てくるはずだ。


 最後に、土魔法が行われる。土魔法はどうするのかと思ったら、湖の前でやるらしい。

 土魔法は今回のメインらしく、学生が一斉に横に並ぶ。その中には、シアの姿もある。


「お姉様です」


 それぞれの学生が一斉に思い思いに土魔法で作り上げていく。生徒が一斉に作るので、周囲は盛り上がる。


「あっ、お姉様、クマさんを作っています」


 本当だ。土魔法でいろいろな物を作る学生の中、シアはクマの置物を作っていた。

 しかも、リアルクマでなく、わたしが作ったような愛嬌があるクマだ。


「うぅ、ズルいです。クマさんはわたしが作ろうと思っていたのに」


 先ほど宣言したばかりなのに、先にシアにクマを作られて、ノアは口を尖らせる。

 意外と好評なのか、シアのクマの前には人が集まっている。

 全員がそれぞれ、土で作った物を完成させると拍手が起きる。

 そして、最後には壊され、残念がる声があがる。

 これで、湖での製作による魔法が終わり、グラウンドに移動することになる。わたしたちもグラウンドに移動しようとしたとき、シアがやってくる。


「お姉様、酷いです。どうして、先にクマさんを作っちゃうんですか!?」

「えっ、なにが?」


 いきなり、ノアにそんなことを言われて、シアは戸惑う。

 わたしは先ほどのノアとの会話を、シアに説明する。


「ノアが魔法を覚えたら、作るつもりだったのを、先にシアが作ったから」

「お姉様はズルいです」

「でも、どうして、クマなの?」

「実は、学園祭でユナさんが作ってくれたクマを見てから、練習をしていたんです」


 学園祭のときに、綿菓子を売れるように宣伝のため、クマの置物を作ってあげたことを思い出す。


「それで、ノアが来るから喜んでもらえるかなと、思ったんだけど、ごめんね」


 シアはノアの頭を撫でながら謝る。

 だから、今まで内緒にしていたんだね。


「そんなことを言われたら、怒れません。お姉様が作ったクマさん、可愛かったです」

「つまり、二人とも、似たもの同士ってことだね」

「ユナさんに影響されただけだと思います」


 そんなことを言われても困る。

 でも、ノアがクマ好きになったのも、シアがクマの置物を作ったのもわたしの影響じゃないと、言い切れないところが辛い。ノアがクマ好きになったのは、間違いなく、わたしの影響だ。

 わたしは話を逸らすため、違う話を振る。


「それで、次はなにをするの?」

「次は団体戦です。学園のみんなが集まって、試合をするんです」


 昨日、言っていたやつだね。

 魔法の交流会の最後の出し物になるらしい。


 シアの話によると、自分の陣地に旗を立て、それを魔法を使って、燃やす、切る、ぶつける。どんな方法でもいいから、魔法で旗を倒すこと。そして、相手側はその旗を、魔法を使って守るらしい。

 そんなシアの説明を聞きながら、グラウンドにやってくる。

 グラウンドの両端には旗が6本ずつ立っている。

 その6本の旗と旗の間は離れており、旗の周りには円形の白線が引いてある。

 シアの説明によると、守備側は円の中に一人入り、攻撃側から旗を守るらしい。


「それじゃ、攻撃側全員が一つずつ攻撃をしたら、攻撃側が有利じゃ」

「ルールがあります。攻撃側も一人で旗を狙わないといけない。二人以上で攻撃をしてはいけません。ただ、それには例外があります」


 なんでも、攻撃側が旗を倒すことができたら、その者はグラウンドから出ないといけない。そして、旗を取られた守備側の生徒は攻撃側に回ることができ、二人で攻撃を仕掛けることができるとのこと。

 そして、二人で攻撃を仕掛け、旗を倒した場合、攻撃をした二人の生徒はグラウンドから出ないといけない。

 つまり、旗が倒れるたびに、人数が減っていく。

 学園の主力を攻撃側に置くと、守備側が弱くなる。逆にすると攻撃側が弱くなり、旗を倒すことができなくなる。

 さらに、旗を倒すとグラウンドから出ていかないといけない、というのがくせ者だ。防御が弱い生徒に攻撃の強い生徒を当てれば、攻撃の強い生徒を追い出すことができる。

 ゲームで似たようなものがあったのを思い出す。

 いかに小さな力の差で勝つかが勝負の分かれ道になる。


 これは、意外と考えられたゲームだね。旗を取られた学生が、どの生徒に加勢するかによっても変わってくる。

 交流会の最後には面白い出し物だ。


 説明を終えたシアは学生たちのところに行ってしまう。わたしとノアは見学する場所を確保するため、移動する。


「でも、こんな実戦的なこともするんだね」

「実戦的ですか?」

「守る方は旗を護衛する人。攻撃する方は敵のリーダーを倒すってところかな?」

「そう考えると、確かにそうですね」


 わたしとノアはグラウンドの全体が見られる場所を確保する。

 グラウンドを見ると、お互いの学園の先生が、話し合っている。

 ちょっと、なにか揉めているみたいだ。揉めているというよりは、どうするか相談している感じだ。


「どうしたんでしょうね?」


 ここからでは、何を話しているのか分からない。

 先生がシアたち女子生徒がいる場所に移動して、話を始める。すると、シアが先生を連れて、他の生徒から少し離れる。シアが先生と話し始め、わたしたちのほうをチラッと見る。先生も見る。

 なんだろう?


「お姉様、わたしたちのほうを見ていますね」


 確かに見ている。先生と話したシアが、わたしたちのところにやってくる。

 そして、口を開く。


「えっと、ユナさん。この団体戦の試合に参加してくれませんか?」

「わたしが?」

「はい」


 その団体戦の試合は男女に分かれてやる。そして、女子12人対12人の試合をすることになっている。

 攻撃側6人、守備側6人の計12人。

 でも、先ほどの製作する魔法で、魔力の使い過ぎで、参加できなくなってしまった子がいるらしい。

 それで人数をどうするか相談をしているらしい。

 王都の学園の人数に合わせるか、王都が1人少ない人数で試合を行うか、話し合っているとのことだ。

 ユーファリアの学園としては、人数を減らしたくない。参加することができる生徒が参加できなくなるのだ。それは避けたい。でも、一人少ない王都の学園と戦うのも礼儀に欠ける。


「それで、ユナさんに参加してくれないかと思って」


 シアが申し訳なさそうにする。


「シア、わたしのことを知っているよね?」

「はい。でも、これしか方法が思いつかなくて。その、ユナさんは適当にしてもらえれば……」


 そう言われても困る。

 参加したら、適当ができない。

 元ゲーマーのわたしはこういうゲームみたいなことが好きだ。昨日から、やってみたいという気持ちが出ている。参加したら、真面目に遊ぶわたしがイメージできる。

 何より、負けず嫌いのわたしが、手加減して負けるようなことはできない。間違いなく、むきになって、魔法を使うと思う。


「でも、わたし、学園の生徒じゃないよ。すぐにばれるんじゃ」


 それが一番の問題だ。


「それは大丈夫です。学園にはたくさんの学生がいます。全ての顔と名前を憶えている学生はいませんよ。あと、先生はシューグ先生だから、ユナさんのことを知っています」


「シューグ先生?」


 名前を言われても、記憶にはない。


「ユナさん、一度会ってますよ」


 なんでも、シアたちを実習訓練したときに、挨拶をした先生だと言う。

 グラウンドを見ると、あのときの先生かもしれない。


「お母様より、ユナさんが何かした場合、先生に相談するように言われてました」

「……エレローラさん」


 わたしが何かをすると思って、保険を掛けていたらしい。

 ありがたいけど、人をトラブルメーカーと思っているのかな?


「だから、シューグ先生はユナさんのことを知っていますから、大丈夫です」

「それだと、余計にわたしが生徒じゃないことを知っているんでしょう?」


 冒険者として、挨拶をしている。


「大丈夫です。知ってて、許可をもらいました」


 先ほど、先生と話していたのが、それだったみたいだ。


「でも」


 わたしの力はチートだ。一生懸命に練習してきた学生の中に混じっていいのか。


「ユナさん、わたしもユナさんとお姉様が一緒に頑張る姿が見たいです」


 ノアまでそんなことを言い出す。

 わたしだって、昨日からシアたちの競技を見て、やってみたいと思っていたよ。


「ユナさん、お願いします」


 シアは手を合わせる。

 断るのは簡単だ。でも、交流会の最後がしっかり終わらないのもシアたちが可哀想だ。


「分かったよ。でも、わたし、手加減が分からないから、旗を守る側にして。下手に攻撃側で、大きな魔法を使ったら、大変だから」


 旗を守るだけなら、相手に合わせることができる。攻撃側に回り、手加減した魔法を防がれでもしたら、意地になって、強力な魔法を使ってしまいそうだ。


「ユナさん、ありがとうございます」


 シアは嬉しそうにする。


「それで、ユナさん。名前はどうしますか?」

「名前?」

「学園祭のときみたいに、ユーナって名乗りますか? 先生は名前を知っていますが、生徒たちは知りませんから」


 確かにシアの言う通りだ。でも、改めて聞いても、その名前って、偽名になっていないよね。

 いきなり考えたとはいえ、センスがない。


「そうだね。ユーナでお願い」


 学生服を着ているわたしはユーナにしておくことにする。


「分かりました。それじゃ、ユーナさん、行きましょう」

「お姉様、わたしも近くに行っていいですか?」

「いいよ」

「ありがとうございます」


 わたしとノアはシアについていき、グラウンドに向かう。


遅くなって申し訳ありません。

団体戦の構想が予想以上に難しく。手間取ってしまいました。

プロットが団体戦としか、決めていなかったので、いざ、書くとなると、かなり大変でした。

なので、少し特殊なルールで試合をさせていただくことにしました。

バトルロワイアルは無理です(笑)

みなさんも、小説を書くときはしっかりとプロットを書いたほうがいいですよ。あとで苦労します。(作者は書きませんが(笑))



【お知らせ】1/25にクマ11.5巻が発売します。初版数はかなり、かなり少なめになっていますので、購入を考えている読者がいましたら、予約をしていただければと思います。

それから、サイン本の配布先を活動報告にて、書かせていただきましたので、よろしくお願いします。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] シアがユナに出場を依頼するのは、お茶を断ったシアの性格からしておかしいと思います。もう書籍化されていると思いますから書きますが、出場選手の具合が悪くなったことを知ったセレイユがユナを出…
[一言] 違うお茶飲むのはズルいって言ってるのにヤバいやつ参加させるのは?
[良い点] ルトゥムさん倒したユーナ再び降臨(笑) [一言] プロット考案お疲れ様でした
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