表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、ユーファリアの街に行く
524/928

519 クマさん、シアを応援する。その1

 ノアの誕生日のことを話している間も風魔法の的当ては続く。風の刃で切るだけでなく、空気弾のように飛ばして的を破壊する生徒もいる。人それぞれにイメージしやすいものが違うってことだろう。

 風の刃なら、鋭い風をイメージしなければ、的を切ることはできない。刃にならなければ、風が吹き抜けるだけだ。それでは敵を倒すことはできない。

 今、的当てをしている男子学生は拳に纏わりつかせた空気弾を飛ばして的を破壊していく。空気弾は傷を付けずに倒すときに重宝する風魔法だ。

 ちなみに、的当ては男女の区別もなく行われている。

 魔法に男女の差はない。あるのは魔力の差とイメージの差だ。腕力は関係ないので女の子でも男の子に勝つことができる。

 魔力と魔法を構築するイメージがあれば誰でも魔法は使える。

 逆に言えば一定の魔力量がなければ、魔法は使えない。それが一番理不尽なところだ。


「それにしても、杖を持っている子が少ないね」


 杖を持っている子もいるけど、持っていない子もいる。

 魔法を使うとき、媒体にするものがあると魔力が集めやすく、魔法が使いやすくなる。冒険者は後方にいるとはいえ、自分の身を守ることもあるので、杖を持っている魔法使いが多い。でも、身を軽くしたい魔法使いはナイフや指輪などのアクセサリーにする者もいる。

 もちろん、杖などの媒体がなくても魔法は使える。あくまで、魔力を集めやすくするための媒体だ。


「そうですね。見た感じ、指輪や腕輪、ペンダントを使っていますね」


 ここからではよく見えないが、確かに指輪や腕輪が見える。そして、ペンダントを握り締めて魔法を使う子もいる。

 ちなみに、魔力を集めるクマさんパペットの代わりに、杖などを試したことがあったけど、魔法は使えなかったよ。

 わたしはクマさんパペットをパクパクさせる。


「あっ、セレイユ様です」


 ノアが指さす先には的当てに挑戦するセレイユの姿がある。

 セレイユは人気があるのか、登場すると周りから声援があがる。まあ、地元の領主の娘だ。性格もおせっかいだけど、嫌がらせや虐めをしたり、権力を笠に着るような貴族ではない。だから、人気があるのかもしれない。それに、わたしと違って、スタイルが良くて美人だしね。出ているところは出ているし、へこんでいるところはへこんでいる。

 なんだろう。自分で言っていて悲しくなってくる。

 セレイユは観客席に軽く手を上げて声援に応える。


「セレイユ様、人気がありますね。王都だったら、お姉様もきっと負けませんのに」


 シアも貴族だ。王都では人気があるのかもしれない。

 でも、学園祭のときのティリアのことを思い出すと、人気はティリアに持っていかれるような気がする。ティリアは人気があった。


 セレイユは真剣な表情で的と向き合う。

 右手にしているブレスレットに魔力を集め、確実に的を切っていく。練習をしていると言うだけのことはある。

 もちろん、他の生徒も練習をしていると思う。

 そして、最後に登場したセレイユが風の的当てで最高得点を得る。

 風の試合が終わった次は、火の魔法の的当てが行われるという。


「終わり? まだ、参加してない生徒もいると思うけど。シアの出番もなかったし」


 それぞれ、学園から、5、6人ぐらいだ。


「風、火、水、土と分けてやるみたいです。お姉様は火と土魔法が得意ですから、どちらかに出ると思います」


 初めてシアと会ったときのことを思い出すと、火の魔法を使っていたね。


「火は分かるけど、土も得意なんだ」

「ユナさんがスリリナと花壇を作りましたよね。それでお姉様も花壇を作るのを手伝ったり、花壇の手入れを手伝うようになって、土魔法の扱いが上手になったと手紙に書かれていました」


 魔法は使えば使うほど上達する。わたしもクマ魔法を使うようになって、クマのイメージ力が上がった。使わなければ上達しない。花壇作りで土魔法の扱いが上手になったなら、一石二鳥だね。


「ユナさんは使えない魔法はあるんですか?」


 わたしには不得意な魔法は無い。得意な魔法はクマ魔法になりつつあるけど。


「一応、4種類の魔法なら使えるよ。得意も不得意もない感じかな」


 他に雷とか氷とかあるけど、ちなみに氷は水魔法の上位魔法になる。


「流石、ユナさんです。わたしもいろいろな魔法を使ってみたいです」

「でも、一つの属性を極めるのもいいよ」


 平均的な魔法は一つの最強の属性に劣る。ゲームでも属性の最強魔法の出番は多い。火属性相手には最強の水魔法が活躍する。逆に風魔法では相性が悪くて、活躍の場は難しい。

 でも、中途半端な魔法よりは活躍の場は多い。


「そうですが、せっかくだから、いろいろな魔法を使ってみたいです」


 ノアの気持ちは理解できる。わたしもいろいろな魔法を使うのは楽しい。別に魔王やこの世界のボス的な魔物を討伐しに行くわけではない。せっかくの魔法だ。楽しんだほうがいい。


「クリフやエレローラさんと相談して決めるといいよ。最終的には自分のことだから、自分で決めないとね」

「はい」


 ノアは返事をした。

 そして、先生によって、新たな的が作られ、火の的当てが始まる。

 火の魔法は風の魔法と違って盛り上がる。離れた場所からだと分かりにくい風魔法と違って、火の魔法は離れた場所からでも、よく見える。

 火の大きさもいろいろだ。小さい火の玉もあれば大きい火の玉もある。さらに、同じ大きさの火の玉でも、当たってすぐに消える火もあれば、的に命中しても燃え続ける火もある。

 火に込められている魔力の違いだろう。

 魔力が少なければ、すぐに消える。魔力が多ければ、命中した後も燃え続ける。

 風魔法よりも、その実力の差が分かりやすいので、周りも盛り上がる。

 もし、クマ魔法を使ったら、大変なことになりそうだね。

 そんなことを考えながら見ていると、シアの名前が呼ばれる。

 ノアの言う通り、シアは火の的当てに参加するみたいだ。


「シアの番みたいだね」

「お姉様~~~~。頑張ってください!」


 ノアは立ち上がって、大きな声で応援する。

 その声がシアに届いたのか、シアは恥ずかしそうにするけど、手を挙げてくれる。

 ノアの応援のおかげか、シアは次から次へと確実に的に当てていく。周りからも歓声があがる。

 これは上位にくい込めそうだ。

 順位は種目ごとにポイントのようなものが与えられ、一番ポイントが高い生徒が優秀者になるらしい。

 種目別の優秀者でなく、総合的な優秀者になるらしい。

 火、風、土、水と優秀者が1人選ばれると言う。


 シアは最終的に9枚の的まで当てて、火の部門で一番になる。だが、次に出てきたユーファリアの生徒も9枚当て、シアに並ぶ。ユーファリアを応援する生徒はシアの記録を超えられなかったため、悔しそうにする。

 こっちはこっちで並ばれて悔しい。

 でも、一番なのは変わらない。

 次に王都の生徒が挑戦するが、シアとユーファリアの学生の記録を追い越すことは出来なかった。

 たぶん、人数的にあと一人ぐらいだ。このままいけばシアが火の的で同率だけど、一位になれる。

 でも、次に現れたのは、


「セレイユ? さっき、風の魔法に出たよね?」

「それは、セレイユ様が全てに参加するためですよ」


 わたしの質問に答えたのは隣にいるノアではなく、声は後ろからした。後ろを振り向くと、ユーファリアの制服を着た女の子がいた。


「そうなのですか?」


 いきなり声をかけられたことに気にすることもなく、ノアはユーファリアの学生の女の子に尋ねる。


「本来は魔力を温存するために、一つの属性に参加するのですが、セレイユ様は魔力も多く、どの属性も高い実力を持っているので、全てに参加しているんですよ」

「凄いです」

「他の生徒から文句はなかったの?」

「セレイユ様はいつも練習をして、誰よりも頑張っていることを、ユーファリアの学生なら、みんなが知っています。セレイユ様に対して文句を言う人はいません」


 女の子は自分のことのように嬉しそうに話す。貴族って身分でなく、実力で得た結果だから皆も納得しているってことみたいだ。

 教えてくれた女の子にノアがお礼を言うと、女の子はセレイユの応援をするため近くに向かう。

 セレイユは剣だけでなく、魔法の練習もしていたんだね。

 でも、どうしてそこまで頑張るんだろう? セレイユの身分なら護衛を付ければいいと思うんだけど。

 火の的当てに参加したセレイユはシアの記録を超え、火の的当てでも最高記録を出した。シアは残念ながらセレイユに負けた。


「残念だったね」

「はい。でも、セレイユ様、凄かったです」

「さっきの女の子が言っていたけど、セレイユは物凄く練習をしたんだよ」


 わたしと違って、毎日練習したんだろう。

 でも、ゲームのときはわたしも毎日のようにインして、魔法を使ったよ。ゲームで遊んだとも言うけど。


「お姉様が負けたのは残念ですが、お姉様は二番です。十分に凄いです」


 わたしもそう思う。恥じるような成績じゃない。上級生がいるなかで、十分に凄いことだ。

 それから、火魔法の的当ては終わり、水魔法が行われる。ここでもセレイユが登場する。三種目連続だ。


「セレイユ、魔力は大丈夫なのかな?」


 わたしはクマ装備のおかげで、大丈夫だけど。セレイユは一般人だ。


「魔力の配分をしているから、大丈夫だと思いますよ。先ほどの学生の人が言ってましたが、大丈夫だから、先生も許可を出したと思います」


 確かに、ダメなら先生が許可を出さないだろう。

 そして、水魔法の的当てが終わる。わたしの心配は杞憂に終わり、セレイユは3番手の記録で終わるが、それでも凄いことだ。


 そして、最後の的当てになる土魔法では火魔法に続きシアが再登場し、ノアが応援する。

 ただ、好成績を残したシアだったけど、セレイユに負けることになる。

 シアは残念だったけど、自分より年上もいる中で十分な成績だ。全体的にセレイユが一歩抜きんでている感じだ。


残念ながらシアは上位に食い込めましたが、セレイユには負けました。


※誤字脱字の報告ありがとうございます。

新システムの誤字脱字のお礼の返信が書けないので、ここで失礼します。


【お知らせ】活動報告にて、12巻の店舗特典と書籍の書下ろしのSSショートストーリーのリクエストを募集しています。参考にさせていただければと思いますので、よろしくお願いします。


※感想の返信ができず、申し訳ありません。来年まで無理そうです。

※年末年始はお休みにさせて頂きます。ご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ