505 クマさん、シアに交流会の話を聞く
344話のルリーナさんとの水着の会話で、湖がある街のウォールズールからユーファリアの街に名前を変更させて頂きました。
読者様にはご迷惑をお掛けします。
くまなの
「でも、来週だったら、いなかったから、ユナさんが今日来てくれてよかったです」
飴細工とポップコーンを美味しそうに食べながらティリアと同じようなことを言われる。
学園が休みのときと、わたしの王都に行く気分が重なっただけだ。その日の気分で動くので、難しいところだ。でも、来週って?
「来週って、なにかあるの?」
「ユーファリアの街に行くので、王都にいないんです」
ユーファリアの街? 微妙に聞き覚えがあるような、ないような。
頭のどこかに引っかかる。
「シアは来週、そのユーファリアの街に行くの?」
「今度、ユーファリアの街にある学園と魔法の交流会が行われるんです。お互いの学園の生徒の魔法の実力を示すって言うんですか。まあ、簡単に言えば、お互いの学園の生徒が魔法の実力を示して、競い合うのが目的です。負ければ、来年は勝とうと頑張ります。勝てば、来年も勝とうとします。そんな交流会が行われるんです。それにわたしが参加することになっているんです」
「それに選ばれたなんて、シアは凄いね」
「数人のうちの一人です」
「でも、選ばれたんなら、凄いよ」
「貴族って身分も入っているかもしれません」
「そんなことはありませんよ。シア様が、どんなに練習をしていたか知っています。ちゃんと実力ですよ」
スリリナさんがシアの言葉を否定する。
「それにもし、ユナさんが学園に通っていれば、ユナさんは絶対に選ばれていましたよ」
残念ながら、わたしは学園に通っていない。
「でも、ユーファリアってどこかで、聞き覚えがあるんだけど」
なんとなく、頭の片隅に引っ掛かっている。
「たぶん、あのときじゃないですか?」
「あのとき?」
って、どんなとき?
わたしは首を傾げる。
「ほら、ユナさん。みんなでミリーラの町に海に行ったことがあったでしょう」
フィナやノア、孤児院の子供たち、それから王都から来たシアとミリーラの町に行ったことがある。
でも、それがユーファリアの街に関係が?
「覚えてませんか? ユナさんがルリーナさんを誘っていたときに水着の話になって、ルリーナさんがユーファリアに行ったことがあるから、水着を持っているって」
……ぽん。
わたしはクマさんパペットを叩く。
ああ、そんな会話をした記憶がある。ルリーナさんの水着をどうしようかと心配したら、湖がある街があって、その街で買ったから、持っているって。
ルリーナさんから聞いた街がユーファリアだったんだ。だから、微かに聞き覚えがあったんだ。
「シア、よく覚えているね」
「ユナさんのクマのゴーレムの乗り物でしたっけ、あのときの印象が強くて、ユナさんとルリーナさんの会話をなんとなく覚えていました」
シアは笑いながら答える。
記憶力がいいね。
「でも、そんな交流会があるんだね。面白そうだね」
漫画なら学園バトルものだ。もしくは、それぞれの部活同士が競う運動会とか?
「ユーファリアの街に行けるのは楽しみですけど、交流会は学園のみんなの気持ちを背負っていますから、面白くないですよ。それなら、ユナさんが参加しますか?」
「わたしは生徒じゃないよ」
「そこはわたしがプレゼントした制服を着て」
「他の生徒や先生に怒られるよ」
「そこはユナさんの実力を見せれば納得しますよ」
残念ながら、わたしの実力ではない。クマチートの力だ。クマ装備がなければ魔法は使えない。
「丁重にお断りさせてもらうよ」
「残念です。ユナさんが出れば、間違いなく勝てるのに」
「そこはシアが頑張って」
わたしの言葉にシアは苦笑いをする。
そんなに嫌なのかな?
「応援に行こうか?」
「応援ですか?」
シノブ並みの学生が多くいるとは思わないけど、同年代の魔法の実力を知るにはいい機会だ。
王都の学園にしろ、ユーファリアの街の学園にしろ、一度見るのもいい。学園祭でも魔法を使うのは見たけど、全力ではなかったし、競い合うものではなかった。
「そうだ。一緒にノアを連れていこうか? それならシアもやる気も出るでしょう? その前に、わたしが行っても、見ることができるの?」
学園の運動会とかだったら、関係者以外はお断りが普通だ。ノアは見れてもわたしが見ることができなければ意味がない。でも、学園祭のように一般人にも開放していれば、わたしも見ることはできる。
「学生や関係者なら大丈夫ですよ」
「それじゃ、ノアを連れていってみようかな?」
最近、フィナばかり連れ回していたからね。こういうときじゃないと、ノアを連れていく機会はない。
「でも、ノアをクリモニアから連れてくるって、大変じゃありませんか?」
「大変じゃないよ。くまゆるとくまきゅうがいるし、ノアは我が儘を言うけど、聞き分けがいい子だからね」
ダメと言えば、頬を膨らませながらも、聞き入れてくれる。駄々を捏ねることはしない。
でも、クマに関することだと暴走するのが難点だ。
「それじゃ、ノアが来られるようでしたら、水着も忘れずにと伝えてください」
「泳げるの?」
「はい、まだ泳げるはずですよ。毎年、交流会が終わった後は泳ぐ話を聞きますから」
「もしかして、シアは初めてなの?」
「はい。だから、緊張します」
まあ、大会で緊張しない者は少ないと思う。
場慣れでもしなければ、大概の者は緊張する。
「でもお父様、許してくれるかな? お母様にお願いをしてみますか?」
「う~ん、今回はわたしの提案だし、自分で頼んでみるよ。それにエレローラさんに借りを作ると、あとで面倒になりそうだからね」
「うぅ、否定ができない。それじゃ、わたしから、お父様にお手紙を書きますから、渡してもらえますか?」
「クリフもエレローラさんより、シアの手紙のほうが嬉しいかもね」
「そうですか?」
「父親って、娘が可愛いものだよ」
わたしのところは違ったけど、世間一般的に父親は娘に甘いものだ。
「学園祭のときだって、ノアに近寄ってくる男のことで心配していたし。だから、シアが甘い言葉を書けば大丈夫だよ」
エレローラさんが鞭なら、シアは飴だ。
「分かりました。それじゃ、部屋で手紙を書いてきますから、少し待っていてください。スリリナ、ユナさんにユーファリアの場所を教えてあげて」
シアはスリリナさんに頼むと部屋から出ていく。
わたしはスリリナさんから、ユーファリアの街の場所を教えてもらう。
「クリモニアとは反対のほうにあるんだね」
ユーファリアの街は王都から見て、クリモニアとは反対の方角にあった。
この地図がどこまで正確か分からないけど。地図上だと、王都からクリモニアに向かう距離と、さほどかわらなそうだ。
「はい、なので少し時間がかかるかもしれません」
「そこはくまゆるとくまきゅうがいるから、大丈夫だよ」
「そうですね。ユナ様はこうやって、王都に何度も来ていますからね」
それはクマの転移門のおかげだからだよ。
ノアにもクマの転移門のことを教えれば、楽だけど。今回もくまゆるとくまきゅうに乗っていけることに喜ぶと思う。
しばらく、スリリナさんとお話をしているとシアが戻ってくる。
「ユナさん、お待たせしました。お父様に渡してください。どこまで力になれるか、分からないけど」
「もし、ダメだったらゴメンね」
「そのときは、ユナさんだけでも見に来てください。ユナさんが来てくださるだけでも、嬉しいですから」
そのときはフィナでも連れていこうかな?
でも、フィナは和の国に連れ回したから、しばらくは止めたほうがいいかな?
それから、交流会の日程を確認する。
「ユナさんが王都から一緒に行ってくれれば、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに乗れたんだけど、残念です」
「他の学生も一緒なんでしょう? くまゆるとくまきゅうが一緒だと驚かれるから、遠慮するよ」
シアは王都で合流して、一緒に行く案を申し出たが、断った。
騒ぎになるのは面倒だし、困る。
それにシアだけならまだしも、知りもしない人と一緒に行動するのは遠慮したい。クマハウスも使えないし、気疲れする。
それから、わたしはユーファリアの街の話を聞き、待ち合わせ場所を確認する。
「それじゃユナさんとノアが来るのを楽しみにしていますね」
「頑張ってクリフを説得してみるよ」
まあ、ノアの日頃の行いがよければ、クリフも許可を出してくれると思う。
あとはシアの手紙に期待しよう。
【お知らせ】少し書籍の仕事が来ましたので、次回の投稿が遅れるかもしれません。それにともない、感想の返信もできないかもしれません。ご了承ください。
【お知らせ】ニコニコ漫画で「くまクマ熊ベアー」の8話の前半が公開されました。よろしくお願いします
【お知らせ】前回は気づきませんでしたが、10月13日をもって、4周年となりました。今後もクマをよろしくお願いします。
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