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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、ユーファリアの街に行く
505/928

500 クマさん、絵本を描き終える

 わたしは絵本を描きだした。

 女の子の家族が頼ったのは冒険者ギルドのギルドマスターだった。


「知り合いはお父さんじゃないんですか?」


 フィナが知り合いがギルドマスターだったことについて尋ねる。


「くまさんと一緒にいる許可が欲しいから、ここは一番偉い人にしたほうがいいと思ってね」


 ここでくまさんが迫害を受ける話を描いても楽しくないし、この辺りは力を持った人を登場させたほうがいい。悪いけど、ゲンツさんだと力不足だ。


「確かにお父さんじゃ、無理ですよね」


 そんなことを言ったら、ゲンツさんが可哀想だよ。

 でも、わたしもそう思ったから、ギルドマスターにしたので反論ができない。

 それにギルドマスターが知り合いだったのは、ティルミナさんが元冒険者だったことも考慮している。


「でも、くまさんとギルドマスターは知り合いなんですね。しかも、お漏らしって」


 フィナがくまさんの言葉に笑みを浮かべる。


「くまさんと知り合いのほうがギルドマスターの力を借りられるからね。お漏らしは、弱みを得るためだから、実際のギルドマスターとは違うからね」


 一応、ギルドマスターの名誉のために言っておく。そもそもギルドマスターの過去なんて知らない。


 そして、女の子たち家族は無事にギルドマスターのお世話になる。


「お母さん、冒険者ギルドで働くんですね」

「孤児院もないし、コケッコウもいないからね」


 一応、くまさんの案内で、森の中でコケッコウを育てる話も考えたんだけど、商業ギルドが出てきたり、勝手に商売を始めた女の子が嫌がらせを受ける話になりそうだったので、やめた。そんな話を描いても楽しくない。

 それに実際の話と掛け離れてしまうと、今後の展開を考えるのが面倒になる。

 孤児院やコケッコウの話が絵本に組み込めそうだったら、そのときに描けばいい。


「やっぱり、女の子は解体をするんですね」


 母親は冒険者ギルドで働くようになって、女の子も冒険者ギルドでお手伝いをするようになり、解体を覚える。


「女の子はフィナを元にしているからね」

「うぅ……」


 フィナは恥ずかしそうにするが、そこは仕方ない。女の子はフィナであり、くまさんはわたしでもある。

 だから、女の子はフィナのように解体ができるようにする。


「女の子、お散歩ですか?」

「このあと、ノア役の女の子を出そうと思うんだけど。ちょっと、くまさんに活躍してもらおうと思ってね」


 現実だとわたしがいろいろな魔物を倒して、それがノアの耳に入って、ノアに呼び出されることになる。それがノアとの出会いだ。


 とりあえず、絵本の女の子を領主の娘に会わせるために、女の子とくまさんに少しだけ魔物と戦ってもらって、領主の娘に女の子とくまさんのことが耳に入るようにする。


「女の子はユナお姉ちゃんみたいに冒険者にはならないんですね」

「幼いし、本人には力がないからね」


 女の子に力がないのは現実のわたしもそうだ。クマ装備が無ければわたしに戦う力はない。絵本の女の子もくまさんがいなければ戦う力はない。

 でも、初めはクマ使いの女の子として、冒険者にすることも考えた。だけど普通に考えて、母親が許さないような気がしたので、現状では冒険者にするのはやめた。

 それに実際のわたしって、冒険者らしいことをしていない気がする。


 そして、絵本は使い回しのネタの馬車が襲われるシーンになる。


「もしかして、この馬車の家族って、ミサ様の誕生日パーティーに行くときに会った家族ですか?」

「よく、分かったね」


 自分が経験した内容を元に描いている。そのほうが絵本の内容を考えるのが簡単だからね。


「車輪が溝に入って、止まっているところが同じだから」


 フィナもあのときには一緒にいたから、流石に分かったようだ。他の人が読んでも分かることはない。


 そして、女の子とくまさんは、魔物に襲われている家族を助ける。


「女の子は逃げないんですね」

「絵本を読んだ子に、困っている人がいたら、助ける気持ちになってほしいからね」


 絵本を読んだ子には自分が助けられたなら、同じ境遇の人がいたら、手を差し伸べてほしいという気持ちを込めて描く。

 女の子は馬車が魔物に襲われたとき、母親に守られ、くまさんに助けられた。

 もし、転んだとき、手を差し伸べてもらったなら、転んだ子をみたら、手を差し伸べる。

 お手伝いをしてもらったら、お手伝いをする。

 困っている人がいたら、目を逸らさずに助けたいって思う気持ちが大切だ。

 もちろん、自分でできる範囲内だ。自分の手に収まらないことはしては駄目だ。冒険者に魔物から救われたと言っても、冒険者と同じように魔物を倒すことなんてできない。

 誰か助けを呼びに行くとか、見捨てないことが大切だ。

 だから、絵本の女の子は自分には助けることができないことを理解し、くまさんに頼んだ。


 それから、女の子とくまさんが魔物を倒した(追い払った)ことが広まり、ノア役の領主の娘の耳に入る。


「ノア様ですね」

「登場を、お願いされたからね」


 それからしばらくすると、女の子とくまさんはギルドマスターに呼ばれ、領主の家に行くことになる。

 この辺りもわたしが経験したことだ。

 あのときは貴族からの呼び出しだから、嫌だった記憶がある。行かなかったら、ノアに会えなかったんだよね。

 今、思い出すと懐かしい。

 あのわたしとの出会いが、ノアをクマ好きにさせる切っ掛けになった。そう思うと、人一人の人生を狂わせたのかな?

 わたしは悪くないと思いたい。


 そして、ノア役の女の子が登場。長い金色の髪をした女の子だ。


「ふふ、ノア様の絵、可愛いです」


 あの時はクリフがいたけど、面倒臭いので絵本では登場をカットする。問題はエレローラさんだけど、一緒に家に住んでいてもいいような気がするけど、今回の登場はノア役の女の子だけにする。


 そして、女の子はくまさんを通じて、貴族の女の子と仲良くなる。

 この辺りも、フィナとノアのように一般人と貴族が身分の差とは関係なく、仲良くしてほしいって願いを込める。


「女の子もフィナのように貴族のノアと仲良くしてほしいからね」

「はい」


 最後の絵は女の子2人がくまさんと楽しそうにしている絵で終わる。


「少し恥ずかしいです」


 わたしは最後の描き込みをして、絵本が完成する。


「疲れた~」

「お疲れ様です」


 フィナがお茶を差し出してくれる。


「美味しい」


 わたしの言葉にフィナは嬉しそうにする。


「ユナお姉ちゃんは、本当に絵が上手です」


 わたしが描いた絵を見ながら言う。


「サクラにも言ったけど、練習あるのみだよ。フィナだって、解体は何度も何度もやって覚えたんでしょう。それと同じだよ」


 誰だって、初めからできる人はいない。


「でも、ユナお姉ちゃん。冒険者としても凄いし、料理もできるし、絵も描ける。困っている人がいれば助けます。ユナお姉ちゃんは凄いです」

「それはわたしがフィナより、少しだけ大人だからだよ。料理は子供の頃からやっていたし、絵も暇なときには描いていたからね」


 魔力は神様からもらったものだけど、戦闘技術はゲームで学んだ。

 困っている人は全てを助けているわけではない。わたしの目が届く範囲で、わたしが助けたいと思った人だけだ。だから、フィナが言うほど、偉いわけではない。

 ただ、他の人よりお金を持っており、料理の知識があり、魔法が使え、戦闘技術があっただけだ。

 他の人より、救える範囲が広かっただけだ。

 わたしより、王族、貴族のほうが救える人の数は多い。

 わたしはフィナに出会って救われている。フィナのような優しい女の子に出会っていなかったら、この世界に来ても捻くれていたかもしれない。わたしは手を伸ばしてフィナの頭を撫でる。


「フィナも凄い子だよ」

「なんで、いきなり頭を撫でるんですか!?」

「なんとなく?」


 ただ、いろいろと考えていたら、撫でたくなっただけだ。

 フィナはわたしの心を分からずにいるので、頭には「?」マークが浮かんでいる。



 絵本を描き終えたあと、フィナにはもう少し残ってもらう。

 『クマの道しるべ』を調べるためだ。

 わたしは『クマの道しるべ』を手に入れたあと、クリモニアに戻ってきてから、名前からして面倒ごとを運んできそうだったけど、気になったので調べた。でも、何も分からなかった。

 時がくれば、示してくれるのか。どこかに持っていかないといけないのか。なにも分からなかった。もう少し、情報を寄越せって思う。ゲームだったら、クソゲーだ。


 とりあえず、わたし以外触れることができなかったのを、もう一度確かめることにする。

 わたしは『クマの道しるべ』をテーブルの上に出す。


「これはなんですか?」

「珍しいアイテムを手に入れたんだけど、わたしにしか触れないみたいなんだけど、触ってみてくれる?」

「えっと、はい」


 フィナはゆっくりと手を伸ばし、『クマの道しるべ』に触れようとするが、やっぱり触ることはできない。


「……手がすり抜けます」


 フィナは不思議そうに何度も『クマの道しるべ』に触れようとするが、触ることができない。

 次にわたしは布を出すと、『クマの道しるべ』を摑んで上に乗せる。


「ユナお姉ちゃんは触ることができるんですね」


 わたしは布の四隅を摑み、布袋みたいにして持ち上げる。もちろん、何も抵抗もなく、『クマの道しるべ』が入った布袋は持ち上がる。


「フィナ、持ってみて」


 わたしは布をフィナに渡す。

 フィナが布を受け取った瞬間、布から『クマの道しるべ』がすり抜け落ち、床に『クマの道しるべ』が転がる。


「うわああ、ごめんなさい」


 フィナは慌てて拾おうとするが、手がすり抜けて拾うことはできない。

 わたしが拾う。

 やっぱり、ダメだったみたいだ。

 今度はお皿の上に乗せてみるが、結果は同じだ。

 最後はテーブルに乗っていた『クマの道しるべ』を、フィナがほんの少しテーブルを動かしたら、テーブルの下に落ちた。

 どうやら、他人が動かそうとすると、逃げるように通り抜けるようだ。


 ちなみに庭で地面に置き、地面を掘ったら、土だけが掘れる現象が起きた。

 これは、もしかして、手品に使えるんじゃない?

「タネも仕掛けもありません」とか「あら、不思議、玉が通り抜けました」とか、できそうだ。と、馬鹿なことを考えてしまった。


 あと、最後に一つ実験をした。

 くまゆるとくまきゅうが触れることができるかどうかだ。

 これは触れることができた。くまゆるとくまきゅうが、『クマの道しるべ』で遊び始めるから、最後は取り上げた。

 猫や犬じゃないんだからと思いつつ、クマも丸い物で遊ぶのが好きなのかな?




祝、500話達成です。

ここまでお読みになっていただき、ありがとうございます。

しばらくクリモニアでまったりしましたら、新しいお話になると思います。

これからも、くまクマ熊ベアーをよろしくお願いします。


【お知らせ1】ニコニコ動画のニコニコ静画 (マンガ)でくまクマ熊ベアーが9/13(予定)により始まります。

一話から毎週公開される予定になっていますので、見逃した読者様や、もう一度見たい読者様がいましたら、ニコニコ静画 (マンガ)で見れるようになりますので、よろしくお願いします。


【お知らせ2】しばらく、感想の返信ができないと思います。ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
> これは触れることができた。くまゆるとくまきゅうが、『クマの道しるべ』で遊び始めるかr それ↑だw
[一言] クマの絵本の内容はともかく、今回は長いですね。 今作だけで前回の3巻分以上になりそう。
[一言] ギルマスの耳に絵本の話が届きそうなフラグが
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