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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、和の国に行く

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493 クマさん、街に向かう

 わたしは話し声で目が覚める。目を開けて起き上がると、サクラとルイミンが話をしている姿があった。


「ユナ様、おはようございます」

「ユナさん、おはようございます」

「おはよう。二人とも早いね」


 わたしは目を擦りながら挨拶をする。


「いつも、朝は早いので」

「エルフの村でもこの時間には起きていますから」


 サクラは規則正しそうだし、森の中で暮らすエルフのルイミンも朝は早そうだ。

 布団のほうに目を向けるとシュリはくまきゅうぬいぐるみを抱いたまま寝ている。カガリさんは枕を抱いて寝ている。


「あれ? フィナは?」


 それから、くまゆるの姿もない。くまきゅうはサクラの腕の中にいる。


「フィナなら、外に散歩に行きました」

「もしかして、一人で?」

「シノブが一緒ですから、心配はないですよ。それにこの辺りに危険はありませんから。それからくまゆる様も一緒です」

「くまゆるが付いていったの?」


 いないと思ったらフィナに付いていったみたいだ。


「くまきゅう様とくまゆる様がお話をしたと思ったら、くまゆる様が2人のあとを付いていきました」


 もしかして、いつもお願いしているから、フィナの護衛に付いていってくれたのかな? しかもくまゆるとくまきゅうが話し合うって、そんなレアな状況見てみたかった。


「サクラとルイミンは行かなかったの?」

「みなさんが起きたときに、わたしとフィナが居なかったら、心配すると思いましたので、わたしは残りました」

「わたしは、まだ寝ていました」


 確かに起きたとき、フィナたちがいなかったら心配したかもしれない。シノブが拐ったとか、勘違いしたかもしれない。


「起きていたフィナが家の周りを歩いてきても大丈夫かと尋ねられたので、大丈夫とお答えしました。でも、起きていたシノブが一緒に行くことを申し出てくれました」


 シノブも早起きだね。


「ユナ様はフィナのことが気になるんですね」

「まあ、預かっている娘さんだからね」

「ユナ様に心配されるフィナが羨ましいです」

「サクラのことも気にかけているよ。大蛇のことだって、サクラが可哀想と思ったから、手を貸そうと思ったわけだし」


 わたしの言葉にサクラは驚いた表情をする。


「……ユナ様はカッコいいです」

「こんな格好だよ? クマだよ」


 わたしは自分が着ている白クマの服を摑んでみせる。こんなクマの姿をカッコいいと思うサクラは目が悪いみたいだ。治療魔法で治るかな?


「ふふ、行動、言動。ユナ様の心がカッコいいってことです。ユナ様が男性だったら、結婚してもよかったです」

「わたしは女の子だからね」

「はい、残念です」


 どこまで本気か分からないけど、サクラは微笑む。


 それから、黒クマに着替えたわたしはシュリとカガリさんを起こす。

 シュリが寝ぼけてわたしのことを「お姉ちゃん、もう少し」とか、カガリさんが「もう、一年」とか言ったりしたが、二人は起きる。


 布団を片付け終わった頃、シノブとくまゆるを抱いたフィナが戻ってきた。


「お帰り。散歩はどうだった?」

「森の中は気持ちよかったです。あと、湖も綺麗でした」


 どうやら、湖まで散歩してきたらしい。


「お姉ちゃん、ずるい。わたしも行きたかった」


 散歩の話をするフィナに、置いてきぼりにされたシュリは頬を膨らませている。

 わたしも同じ気持ちだ。散歩に行くならわたしも起こしてくれればよかったのに。


「ごめん。早く起きて、外を見たら、気持ち良さそうだったから。シノブさんが付き合ってくれるっていうから」

「大事な客人っすからね。それにくまゆるも護衛に来てくれたっすから」

「くまゆる、ありがとうね」


 わたしはフィナが抱いているくまゆるの頭を撫でる。


「それで朝食はどうする? パンでよければ用意するけど」

「それでもいいっすが、どうせなら、街に行って食べるのはどうっすか? 今度はわたしが奢るっす」

「羽振りがいいね」

「褒賞金を貰ったっすからね」

「シノブは貰ったんだね」

「普通は貰うものっすよ。断るユナとカガリ様がおかしいっす」


 まあ、わたしはお金でなく、お屋敷をもらったから、金額的にわたしのほうが高いと思う。お金はあっても困らないけど、温泉付きの家がいい。


 そして、話し合った結果、朝食は街へ食べに行くことになったが、カガリさんはお屋敷に残るそうだ。


「今日はスズランの奴も来ることになっておる。いないと可哀想じゃろう。それに妾はもう少し寝る。お主たちで行くといい」


 と言う、カガリさんを残して、わたしたちは街に向かうことになった。


「あっ、そうだ。街に行くならルイミンにこれを渡しておかないと」


 わたしはスオウ王から預かっていたギルドカードみたいなカードを取り出す。


「ギルドカードですか?」

「似たようなものだって、スオウ王が通行書の代わりになるって言ってたよ。これがあれば街の中にも入れるし、サクラにも会えるみたいだよ」

「それをわたしの家の門番に見せれば、通してくれるはずです。ムムルート様とのお約束です。ルイミンさん、いつでも会いに来てくださいね」

「うん、分かった。行くよ」


 カードに魔力を流してもらい、カードはルイミンのものとなる。

 その様子を見ていたシュリがわたしの服を掴む。


「ユナ姉ちゃん、わたしのは? そのカードがないと街に入れないの?」


 シュリが不安そうに尋ねてくる。


「シュリのはないけど、わたしと一緒なら大丈夫だよ」

「本当? よかった」

「だから、わたしから離れちゃ駄目だよ」

「うん!」


 わたしとルイミンはくまゆるに、シュリとフィナとサクラはくまきゅうに乗る。


「くまきゅう、三人乗せても大丈夫?」

「くぅ~ん」


 大丈夫だよ。って感じに返事をする。

 普通の大人なら二人乗ることができるから、子供なら、三人ぐらい乗ることはできる。


「よろしいのですか?」

「くぅ~ん」


 わたしでなく、くまきゅうが返事をする。

 サクラが一番前に乗り、その後ろにシュリ、一番後ろにフィナが乗る。くまきゅうは三人が乗っても平気そうに立ち上がる。


「それじゃ、出発するっすよ」


 ハヤテマルに乗るシノブを先頭に城がある街に向かって出発する。


「でも、サクラちゃんとも食事がしたかったです」

「ごめんなさい。一度戻らないといけないので。でも、午後は時間があるから、一緒にいられます」

「それなら、家でみんなで朝食を食べればよかったんじゃないですか?」

「みんなが盛り上がっていたのに水を差すことはしたくなかったので、申し訳ありません」


 サクラから朝食が一緒にできない話を聞いたのは、出発して移動している途中だった。

 なんでも、用事があるそうだ。気を使ってくれたのだろうけど、少し残念でもある。シノブも知らされていなかったようだ。知っていたら、街で朝食とは言い出さなかったはずだ。

 でも、午後から一緒に居られると言うのだからいいだろう。


 しばらくすると、街の入口が見えてくる。


「シノブ、あのカードでくまゆるとくまきゅうに乗ったまま行って大丈夫なの?」

「う~ん、カードを見せれば、黙って通してくれると思うっすが、流石に驚かれるっすね」


 カードを見せるまでが面倒になりそうだ。


「これは途中から歩いたほうがいいかな?」

「余計な騒ぎを起こさないようにするなら、そうしたほうがいいっすね」


 わたしは門の手前でいつも通りにくまゆるとくまきゅうを送還して、歩いていくことにする。

 そして、門に近づくわたしたち。女の子だけで6人。しかも、1人はクマの格好をしている。門番は近づくわたしに目が向けられている。怪しんでいるというよりも、「あの格好はなんだ?」って的な不思議なものを見るような目だ。


 わたしはスオウ王にもらったカードをクマさんパペットに咥えさせる。門の近くにやってくると、門番の人がわたしたちを見ている。わたしは無言でカードを見せる。すると門番は一瞬驚いた表情をして、わたしとカードを見比べている。でも、シノブの言う通りになにも言わない。


「どうぞ、お通りください」


 ルイミンもカードを出すが、わたしと同じくなにも言われない。


「わたしはいいの?」


 シュリもフィナも心配そうにするが、なにごともなく入ることができた。

 街の中に入るとシュリとフィナはキョロキョロと辺りを見る。なにもかもが、新鮮に見えるのかもしれない。建物も服装もクリモニアとは違う。

 キョロキョロと辺りを見るシュリの目が止まる。


「ユナ姉ちゃん、あれなに?」


 シュリが指差す先にはお城があった。


「お城だよ」

「え~、違うよ。お城じゃないよ」


 シュリが知っているお城はシュリが住んでいる国のお城や、本に描いてあるお城だ。だから、必然的に目の前にある日本城っぽいお城は、シュリの目にはお城には見えないらしい。シュリの目には不思議な建物に映っているのかもしれない。


「あれもお城だよ。お城は国によって違うんだよ」

「そうなの?」

「ほら、周りの家も着ている服もクリモニアと違うでしょう?」


 わたしは目の前の風景に視線を向ける。全てにおいてクリモニアとは違う。


「うん、違う」

「文化って分かるかな? その地域に暮らす人たちの歩んできた道。う~ん、なんて言えばわかるかな」


 どう説明したらいいか困っているとフィナが口を開く。


「えっと、シュリ。ユナお姉ちゃん、ルイミンさん、サクラちゃん。みんな服装が違うでしょう? それぞれ、住んでいる場所が違うと違うんだよ。三人の服装はクリモニアでは見かけないよね?」


 ルイミンのような服装は見かけることはあっても、わたしとサクラの服装は見かけることはない。


「その国や街では違うんだよ」

「うん」


 それぞれの国には歩んできた文化があり、違うものだ。

 シュリも分かったようで、頷いている。

 でも、1つ訂正したい。わたしの故郷でも着ぐるみを着て、出歩いている人なんていないから。いてもパジャマぐらいだから。もしくは何かのイベントで着ている人ぐらいだ。決して一般的に着ぐるみを着て、生活をしている人はいないからね。

 だけど、それを今否定すると、説明がややこしくなるので、グッと言葉を飲み込む。


「分かります。エルフの村とも違うから、わたしも街やお城を初めて見た時は驚きました。でも、国が違うと、こんなにも違うものなんですね」

「そんなに違うものですか?」

「わたしが知っているお城や建物は違うよ。サクラちゃんのような服を着ている人はいないし」


 サクラは自分の着ている和服を見る。クリモニアや王都では見かけない。


「冒険者や商人は、結構いろいろな服を着ている人が多いっすよ」


 その辺りは他の国から来た者が多いんだろう。


ユナたちは街に行くことなりました。和の国の見学になりそうです。



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― 新着の感想 ―
[一言] どっかに二足歩行の獣人の国があればいいのにね☆彡
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