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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、和の国に行く
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492 クマさん、寝る

区切りが悪かったので、少し短いです。

 温泉から出たわたしたちは部屋にもどってくる。


「それじゃ、布団を敷くっすね」

「布団あるの?」


 クマボックスから出そうと思っていたんだけど。


「ほとんど片付けてしまったっすが、少しだけならあるっす。ユナがこの建物を気にいってくれれば、泊まることもあるだろうってことで。もし、来ることがあれば、あの場にいたルイミン、フィナ、ムムルートさんが来るかもしれない。もし、来られたら、カガリ様やサクラ様が来るかもしれない。そんなことで人数分の布団は用意されているっす」


 そこまで気を使ってもらっていたんだね。断らなくてよかった。スオウ王の気持ちを裏切ることになるところだった。ありがたく、その気持ちを受けとることにする。

 ちなみに国王が使っていた布団はないよね?


 わたしたちは皆で布団を敷く。

 行ったことはないけど、部屋に布団を並べて、みんなで寝るって、なにか、修学旅行みたいだ。


「カガリ様はどうするっすか? あっちの部屋で一人で寝るっすか?」

「いや、今日ぐらいは皆とこっちで構わない」

「もしかして、寂しいっすか?」


 シノブは笑みを浮かべながら尋ねる。もしかして、お風呂のときの仕返しかな?


「お主じゃないんだから、妾が寂しがるわけがなかろう。久しぶりにサクラに会ったのじゃ、一緒にいるだけじゃ。お主が、あの部屋で寝たいなら、一人で使っていいぞ」

「遠慮するっす。温泉みたいに一人は悲しいっすから」


 やっぱり、寂しかったらしい。

 布団を敷き終わると、シュリとルイミンが眠そうにしている。シュリは一番年下だし、ルイミンは森で暮らすエルフだ。夜は早い。

 電気の代わりに光の魔石はあるが、陽が沈んだあとにお風呂に入り、時間も遅い。この時間なら、寝ている時間だ。


「お姉ちゃん、くまきゅうちゃん出して」


 シュリは小さなあくびをしながら、フィナにお願いする。

 わたしの隣にいるくまきゅうは名前を呼ばれて首を傾げる。自分はここにいるよって感じにわたしを見ている。


「ちょっと待ってね」


 フィナはシュリが言っていることを理解したのか、アイテム袋を手にすると、アイテム袋から、白いものを取り出す。


「くまきゅうちゃん……」


 取り出したのはくまきゅうぬいぐるみだった。

 シュリはくまきゅうぬいぐるみを抱きしめると、そのまま布団の上に倒れる。そして、そのまま寝息をたてている。早い。一瞬で寝てしまった。もう耐えきれなかったみたいだ。

 フィナはシュリが風邪を引かないように掛布団をかける。


「ぬいぐるみ、持ってきていたの?」

「はい。一応、お泊りのことも考えて。これが傍にあるとシュリは安心して眠れるみたいです」


 フィナはそう言いながら、アイテム袋からくまゆるぬいぐるみを取り出して、自分の枕元に置く。ちゃんと自分のくまゆるぬいぐるみも持ってきていたらしい。

 二人とも大切に使ってくれているみたいだ。


「ユナ様、そのシュリとフィナが持っている、くまきゅう様とくまゆる様は?」

「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんにそっくりです」


 眠そうにしていたルイミンとサクラの目が開き、尋ねてくる。


「クマのぬいぐるみ? それともクマの人形って言ったほうがいいのかな?」


 ぬいぐるみって意味が通じないかもしれない。でも、自動翻訳で通じているのかな?


「ぬいぐるみですか。可愛いです」


 サクラはシュリが抱いているくまきゅうぬいぐるみを見ている。この目は何度も見たことがある。


「欲しいの?」

「えっと、その、はい」


 サクラは恥ずかしそうに俯きながら答える。

 わたしは微笑みながら、クマボックスからくまゆるとくまきゅうぬいぐるみを取り出し、サクラに差し出す。


「くれるのですか?」

「うん。でも、くまゆるとくまきゅうは一緒だよ。ぬいぐるみでも、くまゆるとくまきゅうが離れ離れになったら可哀想だからね」


 サクラはくまきゅうが好きだ。でも、ぬいぐるみは一緒のほうがいい。

 サクラはくまゆるとくまきゅうぬいぐるみに手を伸ばし、抱きしめる。


「柔らかいです。可愛いです」

「大切にしてね」

「はい。一生、大切にします」


 嬉しそうに再度、抱きしめる。プレゼントして喜んでもらえると、やっぱり嬉しい。

 サクラは膝の上に乗せて、くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみの頭を撫でている。そんなサクラを羨ましそうに見ている人物がいる。


「ユナさん。みんなだけズルイです。わたしもくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのぬいぐるみが欲しいです」

「ルイミンも? ぬいぐるみだよ」

「ぬいぐるみはわたしがもらっちゃダメなんですか?」

「そんなわけじゃないけど」


 あのエルフ村にぬいぐるみが存在すると、祀られたりしないよね。


「なら、わたしも欲しいです」


 わたしはクマボックスから、新たにもう1セットのくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみを取り出して、ルイミンに渡す。


「わぁ、ありがとうございます。わたしも大切にしますね」


 ルイミンも嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめる。


「くまきゅう様とくまゆる様にそっくりです。ユナ様がお作りになられたんですか?」

「これは知り合いに作ってもらったんだよ」


 裁縫が得意な孤児院の女の子、シェリーが作った。


「二人ともいいっすね。わたしも、欲しいっす」

「シノブにはあげないよ」

「どうしてっすか!?」

「なにか、ナイフやクナイの的にされそうだから」

「そんなことはしないっすよ。ユナはどんな風にわたしを見ているっすか!?」

「……なにか、胡散臭い?」

「ひ、酷いっす!」


 ショックを受けているようだけど、それも胡散臭いように見えるのは気のせいだろうか。


「誰もかも、くま、クマ、熊と、騒ぎおって」


 わたしたちがくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみで盛り上がっていると、カガリさんが頬を膨らませている。


「狐のほうがクマより可愛いぞ。それに耳も尻尾もクマより、長くてふわふわで最高じゃ」


 カガリさんは今まで隠していた狐の耳と尻尾を出す。


「「くぅ~ん」」


 くまゆるとくまきゅうは対抗するように、カガリさんに向けてお尻を向ける。


「ふふ、そんな小さな尻尾には負けぬぞ」


 また、カガリさんとくまゆるとくまきゅうが張り合いだす。両方とも可愛いでいいと思うんだけど。


「カガリ様、狐も可愛いですよ。今度、可愛らしい狐のぬいぐるみを作りましょう」

「わたしもいいと思います」

「腕の良い職人を捜さないといけないっすね」


 シェリーなら作れるかな?

 でも、見本がないと難しいかな?


「わ、妾は別に作ってほしいなんて言っておらんからな」


 カガリさんの言葉と裏腹にパタパタと尻尾が揺れている。

 どうやら、嬉しいらしい。ツンデレの狐だった。


「それにしても、お主はそんなものを作って、自分が可愛いアピールをしておるのか?」

「してないよ!」


 この幼女は、なにを言い出すかな。


「だって、その恰好といい。あの家といい。くまゆるとくまきゅうを傍に置いて、こんなぬいぐるみまで作って」

「わたしはクマの加護を受けているだけだよ。だから、この格好をしているだけ。カガリさんも狐の加護みたいなものを受けているんでしょう?」

「そうだが、もしかして、お主はクマに変化できるのか?」

「できないよ」


 わたしがそう言うとカガリさんは残念そうにする。

 なんで?

 もしかして、同類と思われたのかな?

 そもそも、カガリさんってなんなんだろう?


 それからぬいぐるみを抱いているメンバーは眠そうにし始めたので、部屋の光を消し、寝ることにする。光を消すと、遊び疲れていたのか、温泉が気持ちよかったのか、みんなは話をすることもなく、寝てしまった。そんな静かな部屋の中、たまにシュリの可愛らしい寝言が聞こえてくるぐらいだ。わたしもくまゆるとくまきゅうと一緒に眠りに落ちていく。





やっとサクラにクマのぬいぐるみを渡すことができました。あと、絵本も渡したいですが、話の流れ的に今回は保留になりそうです。


※発売日は7/27ですが、Twitterなどを見ると、すでに書籍10巻とコミック1巻が発売している書店さんもあるみたいですね。サイン本や店舗特典のSSもあります。詳しくは活動報告でお願いします。


※追記

コミカライズ11話が公開されています。ゴブリン討伐の続きです。よろしくお願いします。


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