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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、和の国に行く
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482 クマさん、一休みする

 和の国から帰ってきたわたしは久しぶりに爆睡した。それはカガリさんも同様だったようで、わたし以上に寝ていた。

 もしかすると、大蛇の復活が近いことを知ってから、サクラ同様にあまり寝ていなかったのかもしれない。そして、いつ大蛇が復活してもおかしくない場所で1人で守っていた。わたしが思っていたよりも緊張して、疲れていたのかもしれない。


 太陽が真上に上がったころ、布団から起きる。くまゆるとくまきゅうもベッドの上で気持ちよく寝ている。わたしが起きるとくまゆるとくまきゅうも起き上がろうとする。


「眠かったら寝てていいよ」


 声をかけると、くまゆるとくまきゅうは起き上がる。どうやら、わたしに付いてくるらしい。

 それから隣の部屋で眠るカガリさんを確認すると寝ていた。起こすのも可哀想なので、1人で遅くなった朝食兼昼食を食べる。くまゆるとくまきゅうにはハチミツをたっぷりと乗せたパンをあげる。

 食べ終わったわたしは、エルフの森にあるクマの転移門を回収する。ルイミンに連絡をしようかと思ったけど、ルイミンも魔力を消耗して疲れているかもしれないので、すぐに戻ってくる。


「うぅ、お腹が空いたのじゃ」


 クマの転移門を回収して戻ってくると、大きな和服を着たカガリさんが裾を引きずりながら、部屋にやってきた。あとで服を用意しないとダメかな?

 買いにいく? それとも、サクラに連絡して和の国の服を用意をしてもらったほうがいいかな?

 前にミリーラの町のジェレーモさんに頼んで和の国から買った物の中に和服があったけど、カガリさんのサイズはなかった。

 カガリさんは大きい服を気にした様子もなく、椅子に座る。


「パンでいい? それともお米がいい?」

「お稲荷」

「ないよ」

「用意が悪いのう」

「扉を開けるけど、帰る?」

「すまない。冗談じゃ。できればご飯がいい」


 わたしは作り置きしていたご飯と味噌汁、焼き魚、漬物をクマボックスから出してあげる。


「おお、早いのう」


 カガリさんはテーブルに並べられた朝食(昼食)を食べていく。


「ご飯も、味噌汁も美味いのう」

「口にあったみたいでよかったよ」


 カガリさんじゃないけど。今度、お稲荷さんを作って、フィナたちに食べさせてあげるのもいいかもしれないね。


「カガリさん」

「なんじゃ」

「いつ元の姿に戻るの?」

「分からん。今日なのか、明日なのか、一年後なのか、百年後なのか」

「そうなの?」

「全ての力を使いきったからのう。体への影響が大きかった。だから、いつ元の姿に戻れるかは分からん」


 わたしが思うより、体への負担は大きかったみたいだ。


「でも、なんで、そんなことを尋ねる? もしかして、妾を追い出す算段をしているのか?」

「それもあるけど。今、カガリさんが着ている服、大きいでしょう。動きにくいんじゃないの?」

「確かに動きにくいのう。だが、くまゆるの上に乗って移動すれば、問題なしじゃ」

「くぅ~ん」


 ソファーで寝ている子熊のくまゆるが否定の鳴き声をあげる。


「なんじゃ、くまゆるの子供か? 小さくて可愛いのう。狐には負けるが」

「くぅ~ん」


 くまゆるが再度否定の声をあげる。


「くまゆるの子供じゃないよ。くまゆる本人だよ」

「なにを言っておる。くまゆるは大きいクマじゃろう?」

「カガリさんと同じように、小さくなることができるんだよ」

「なんじゃと。それじゃ、この子熊があのクマだと言うのか?」

「わたしのクマは特別なんです」

「だが、大きくなれるなら、問題はない。移動するときはくまゆるの背中に乗って移動すればいい」

「カガリさんの国じゃ、クマが街の中を歩いてもいいの?」


 クリモニアじゃ、くまゆるとくまきゅうのことは徐々に知れわたっているから、大丈夫だけど。他の街じゃ、大きいサイズのクマのままでは驚かれるから無理だ。


「無理じゃな」

「だから、くまゆるに乗って移動するのは却下だよ。だからサクラに服をお願いするつもりだけど、それともこっちの国の服を着る?」

「狐の妾にクマの服を着ろと言うのか?」


 もしかして、わたしが着ているクマの服が一般的な服とか思っている?

 フィナの服だって見ているのに。


「昨日、フィナって子がいたでしょう。あんな感じだよ。わたしの格好は特別で、クマの格好をしているのは……一部しかいないよ」

「お主のような格好をしているものがいるのか!?」


 お店の子供たちが着ているから、嘘ではない。


「それなら、狐の服にすればいいじゃろう」

「「くぅ~ん」」


 くまゆるとくまきゅうが否定の鳴き声をあげる。


「なんじゃと、狐のほうが可愛いじゃろう」

「くぅ~ん」

「狐じゃ!」

「くぅ~ん」

「狐じゃ!」


 本当に会話ができたりしていないよね?


 それから、サクラにカガリさんの服を頼むことにする。やっぱり、着なれた服がいいそうだ。


『分かりました。用意をさせて、シノブに持っていかせますね』

「お願いね」

『やっぱり、カガリ様はユナ様のところに行っていたのですね。シノブから連絡があって、カガリ様のお家が壊れていたと聞きました。カガリ様の姿もなく、代わりにユナ様のお家があったと言ってました。ユナ様のクマさんのお家に向かって呼んだけど。出てこなかったので、カガリ様もユナ様のところに行っていたんじゃないかと言っていました』

「カガリさんも疲れていたみたいだしね。今まで寝ていたよ」

『そうなんですね。カガリ様をよろしくお願いいたします』


 まあ、元気になるまでならいい。

 今はほとんどが寝ているだけだ。


「それで、そっちはどう?」

『昨日、シノブから聞いた話によれば女性によって確認をしただけで終わったそうです。あとのことは、聞いていないので分かりません。その、実はわたしも先ほどまで、寝ていました』


 クマフォンから申し訳なさそうな声がする。


『でも、こんなに気持ちよく寝ることができたのはユナ様のおかげです。ありがとうございました』

「サクラ、一ついい?」

『はい、なんでしょうか?』

「もう、お礼は禁止ね。何度も聞いているよ」

『その、申し訳ありません。わたしにはお礼を伝えることしかできなくて』

「そういう意味じゃないよ。サクラの気持ちは十分に伝わっているから、大丈夫だよって意味だよ」

『ユナ様……』

「だから、大蛇に関することでのお礼は不要だよ。もう十分にもらったからね。それに感謝のお礼は何度も言うと、お礼の価値が下がるよ」

『……お礼の価値が下がる、ですか?』

「そうだよ。いつも、お礼を言っていると、その人は簡単にお礼を言う人だと思われるよ」

『わたしは、そんなつもりでは……』

「分かっているよ。サクラがそんな気持ちで言っていないぐらいは。でも、同じことで何度もお礼を言っていると、わたしに会うたびにお礼を言う癖が付いちゃうよ」


 このままだと会うたびにお礼を言われそうだ。


『わ、わかりました。もう、大蛇に付いてのお礼は言いません。でも、他のことだったらいいんですよね?』

「まあ、違うことだったら」


 新しいことでお礼を言うのは仕方ない。逆に言うべきだ。やってもらうのが当たり前になり、お礼も言えなくなったら困る。

 それから、他愛のない話をする。


「それじゃ、カガリさんの服をお願いね」

『はい、分かりました』


 話を終え、クマフォンを仕舞う。

 さて、どうしようかな。和の国は、まだ行けないし、わたしも今日はのんびりしようかな。

 カガリさんは食事を終えると、裾を引きずりながら、部屋に戻っていった。

 白クマの着ぐるみのおかげで疲れは取れたけど、心の疲れは残っているような気がする。

 わたしはカガリさんを見習って、くまゆるとくまきゅうと一緒に休むことにする。


 翌日、サクラから連絡があった。シノブがクマハウスの前にカガリさんの服を置いておいたそうだ。

 わたしはお礼を言って、和の国にあるクマハウスに転移する。

 ドアを開けると、目の前に風呂敷に包まれたものが置かれていた。

 どうやら、これがカガリさんの服らしい。

 わたしは風呂敷を手に取り、クリモニアに戻ってくる。

 しばらく、のんびりとしていると、カガリさんがやってくる。


「お腹が減ったのじゃ」


 カガリさんはやってくると、テーブルの上にうつ伏せになる。


「今、用意するよ。その前にサクラから服を受け取ってきたから、着替えて」

「別にこのままでもいいじゃろう」


 カガリさんがぶかぶかの服の裾を持ち上げる。


「なにか危ないから、着替えて」

「意味が分からんぞ」


 どうやら、わたしの気持ちは伝わらないらしい。

 もしかすると、元の世界のわたしにしか分からないことかもしれない。


「とりあえず着替えて。着替えないなら、もう食事の用意をしないよ」

「わかった。わかった。着替えれば良いんじゃろう。食べ物で脅迫するなんて、とんでもない娘じゃのう。お主もとんでもない者を主人に持ったものじゃのう」


 カガリさんはソファーに座るくまゆるとくまきゅうに向かって言う。


「わたしはくまゆるとくまきゅうにそんなことはしないよ」


 わたしはくまゆるとくまきゅうに対しては甘い。どんなことをしても許してしまうかもしれない。そもそも、くまゆるとくまきゅうは悪いことはしない。わたしの指示に従ってくれる。それが嫌なことだとしても。あとでイジケルけど。


 カガリさんはサクラが用意してくれた着物を着る。サイズも合っているようで、着崩れたりはしていない。


「少しきついのう」

「太ったんじゃない?」

「妾が太るわけがなかろう」


 ただ単に、いつもゆったりと着崩れた格好をしていたのをちゃんと着たせいだと思う。


「それは寝間着?」

「そうじゃな、いろいろと用意してくれたみたいじゃな」


 旅館にあるような浴衣を着ている。色は白い。


「妾は寝る」


 食事を終えたカガリさんはそう言うと部屋に戻っていく。カガリさんが起きているのは食事ぐらいだ。まるで動物のように食べては寝ての繰り返しだ。それが一番早く回復するのかもしれない。



クリモニアに帰ってきたユナはのんびりと過ごしました。

次回、和の国に戻るかも?


※次回の投稿、遅れるかもしれません。それと感想の返信もできないかもしれません。ご了承ください。

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