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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、和の国に行く
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470 クマさん、大蛇と戦う その2

 火の大蛇と風の大蛇によって、火が燃え、風が巻き起こる。火が風によって、燃えさかる。

 風の影響で火の大蛇の体に纏わりつく炎が強くなったように見える。


 だけど、属性が違う能力を持っているってことは体内に複数の魔石を持っていることになる。

 魔物は基本、属性がある。火なら火の、風なら風の、無属性なら無属性の魔石が体内にある。つまり、この大蛇は体内に4つの魔石を持っていることになる。


「これって、体を復活させて、魔石を破壊したほうがいいんじゃない?」


 そう思わずにはいられない。

 魔石を破壊すれば、魔力の源は無くなるし、再生もなくなるはず。


「魔石は体じゃなく、頭にあるぞ」


 わたしの言葉にカガリさんが予想外のことを言う。


「頭の中に魔石が? 体じゃないの?」


 魔石は普通は体の中にある。と言っても、この世界に来てから知ったことだ。ゲームだと、魔物を倒せば素材と一緒に手に入る。魔石の位置なんて、考えもしなかったし、必要もなかった。

 でも、フィナの解体や他の魔物の解体を見た限りでは魔石は体内にあった。


「どうして魔石が頭にあるってわかるの?」


 もしかして、他の大蛇を倒したことがあるの?


「これは前に戦ったことから導きだしたことじゃ。魔力の流れ、属性の魔力から、当時の妾とムムルートはそれぞれの頭の中に属性の魔石があると判断した」

「それじゃ、全部で魔石が4つもあるの?」


 もし、大きな魔石が4つとなればそれだけで強い。もし、クラーケンと同じ大きさの魔石と考えれば、クラーケンが4体いるのと同じだ。そう考えたら、この再生能力も頷ける。

 クラーケンも足を斬っても再生したことを思い出す。



「いや、大蛇の魔石は本体部分にもあると予想している。だから、5つじゃ」

「……5つ」

「ムムルートの封印は体内にある魔石の力を抑えこむことによって封印する。だから、当時の妾たちは封印する場所が5つになった。それが正しいことを証明するように封印することができた。だから、魔石は間違いなくそれぞれの頭にあると考えている」

「それじゃ、その頭の中の魔石を破壊すれば」


 倒すことはできるはず。


「今、ムムルートが体を抑え込んでいるから、他からの魔力供給はできないはずじゃ。だから、頭にある魔石を壊すことができれば倒すことができる」


 おお、希望が出てきた。


「何を笑っておる」


 どうやらわたしは、笑っていたらしい。


「だって、大蛇の頭の中にある魔石を破壊すれば、倒せるってことでしょう?」

「簡単に言うが、頭は炎が纏わりついて近づけない。下手に近づけば焼け死ぬぞ。風の大蛇もそうじゃ。近寄れば怪我ではすまない。体が切り刻まれるぞ! それにお主も見ただろう。あの再生速度、多少ダメージを与えても傷はすぐに治るぞ」

「やりようはあるよ」


 この何度かの攻撃を見て、分かったことがいくつかある。弱点と言うべきか、そこを攻撃すれば勝てる。問題は風の大蛇に同じ方法が使えるか微妙なところだ。だけど、火の大蛇は倒せるはずだ。


「それじゃ、大蛇退治と行きますか」


 わたしは背を伸ばし、屈伸したりして、体をほぐす。


「本当にお主はバカなのか。こんな他の国のために命を張って。逃げ出しても誰も文句は言わぬぞ」

「う~ん、それはそうなんだけど。知り合っちゃったからね。シノブの気持ちも、サクラの気持ちも、そして、カガリさんの気持ちも知っちゃったから、自分だけ逃げるわけにはいかないよ」


 それにわたしが来たことで、ムムルートさんを巻き込み、ルイミンまで危険な目に遭わせてしまっている。

 わたしが和の国に来なければ、ムムルートさんは知らずにすんだから。

 でも、わたしが来なければ、大蛇を倒す希望もなかった。ここまで来たら一蓮托生だ。ムムルートさんにも頑張ってもらう。ルイミンは自分で残ると言ったんだから、自己責任って言いたいところだけど、わたしのせいだよね。ルイミンにクマフォンで連絡をして、サクラに会わせてしまったんだから。


「それにわたしには扉があるから、いつでも逃げることはできるよ」

「そうじゃったな。それなら、もしものときは妾も逃げさせてもらおう」


 そんなことを言っても、カガリさんは最後まで逃げないんだろうと思う。

 逃げるなら、とっくの昔に逃げている。


「それで嬢ちゃん。どうやって倒すのじゃ? 何か考えがあるんじゃろう?」

「試したいことはあるよ。わたしが火の大蛇の頭を破壊するから、カガリさんは風の大蛇を引き付けてもらえる」

「わかった。その役目引き受けよう」


 わたしが説明することもなく、引き受けてくれる。

 そして、カガリさんが拳をわたしに差し出してくる。


「ほれ、お主も拳をだせ、約束をするときにやるものじゃぞ」


 そんなのがあるんだ。

 カガリさんが差し出す拳にわたしもクマさんパペットを合わせる。


「恥ずかしいね」

「妾もじゃ、いったい誰が考えたんじゃろうな」


 わたしたちはそれぞれの大蛇に向かって走り出す。わたしは燃えさかる炎の中を、カガリさんは風が巻き起こる中に向かって走る。

 クマさん装備が無ければ熱いんだろうけど、快適なものだ。

 でも、草木を燃やされるのは気分がいいものじゃない。生活で使うなら仕方ないけど、破壊目的だけで燃やすのは良くない。

 わたしは火の大蛇の周囲を時計回りに回って、タイミングを計る。

 カガリさんのほうを軽く見ると攻撃を仕掛けているが、火の大蛇と別の理由で厄介のようだ。大蛇の体に纏わりつく風が邪魔をしている。

 カガリさんは注意を引くためにわたしと反対方向に動いている。でも、あまり、そっち側に行くとルイミン、サクラがいる建物がある。

 あまり、火の大蛇に時間をかけている時間はなさそうだ。

 走りながらクマ魔法の水を放って、火の大蛇の注意をわたしに向けさせる。

 顔、こっちに向け。

 わたしはクマの水魔法を、火の大蛇の顔に当てる。大蛇は嫌がる反応をし、わたしを見つける。

 火の大蛇がわたしを捉える。

 火の大蛇の顔がわたしのほうを向く。

 わたしはタイミングを合わせて、火の大蛇の顔正面に向かって飛び上がる。


「嬢ちゃん!」


 カガリさんが叫ぶ。

 わたしのことを見ている余裕なんてあるの? と思いつつ。わたしは火の大蛇の顔に接近する。

 クマの服が無ければ、ここまで接近すれば火傷をしていた。

 火の大蛇が大きく口を開けると魔力が集まりだす。その魔力が真っ赤に燃える炎に変化しようとする。だけど、わたしはさせない。

 腕を伸ばして、大きく開いた口の中にクマの岩を作り出す。炎を作る場所があるなら、そこを塞げばいい。

 クマの岩が開いた大蛇の口の中に立って、魔力が集まる場所を塞ぐ。

 魔法は魔力を集めて、初めて魔法を使うことができる。

 手なら手から魔法。足なら足から魔法。

 大蛇は体全体から魔力を放出して、炎を体から出してる。そして、もう一ヶ所魔力を集めている場所がある。それは炎を吐き出すときの口の中だ。


 魔物は体内のどこかで炎を作り、それを吐き出す。ゲームで火袋や水袋、雷袋ってアイテムがあったぐらいだ。レア物になると、火炎袋、爆炎袋、水流袋、激流袋とあったものだ。

 だけど、この大蛇は体内で炎を作り出しているわけじゃない。魔力を炎に変えている。口から炎を吐き出すとき、口の中で魔力を溜めて、炎を放っていた。だから、口を塞げば、大蛇は口の中で炎を作り出すことができない。

 火の大蛇は口を閉じようとするが、クマの岩が邪魔をする。

 火の大蛇は頭を左右に振って、口の中の岩を取ろうとする。わたしはクマの岩を摑んで、振り落とされないようにする。さらに、自分の頭を地面に叩きつけ、口の中のクマの岩を破壊しようとする。大蛇の頭が地面に叩きつけられる前にわたしは離れる。

 大蛇は苦しそうに何度も頭を地面に叩きつけるが、クマの岩は外れないし、砕けない。

 さらに口を大きく開けて、飲み込もうとするが立っている岩のクマを飲み込むことはできない。

 噛み砕こうとするが、クマの岩を噛み砕くことはできない。

 わたしは止めをさすために、燃えさかる大蛇の頭の中に突っ込む。炎が熱くないのは証明済みなので、怖くない。

 わたしは火の大蛇の口の中にあるクマの岩に触れると魔力を注ぎ込む。

 クマの岩は大きくなり、最大に開いていたと思われる火の大蛇の口はどんどん開いていく。

 火の大蛇は苦しそうに頭を振り始める。わたしは振り落とされないようにクマの岩を摑む。

 火の大蛇の体の炎が噴き出すように、炎が強くなる。だけど、わたしはクマの岩に魔力を注いで大きくさせる。クマの岩の隙間から呻くような声が漏れる。

 だけど、止めない。

 大蛇の口の一部が裂ける。岩のクマの巨大化は止まらない。最後には大蛇の顎を破壊する。

 うぅ、思ったよりもグロい。

 顎を破壊された大蛇は地面に大きな音を立てて倒れる。そのときにクマの岩も転がる。

 取れてよかったねと言おうとしたら、大蛇の顎の部分が炎に包まれて再生を始める。

 ちょ、ここまでやって再生するの?

 だけど、再生させない。

 クマの水で炎を消す。すると再生が止まる。やっぱり、炎の魔力で再生していたようだ。再生する場所の火を消すことで、再生は起きない。

 わたしは電撃クマを頭に向けて放つ。再生能力を失った頭は破壊され、大きな赤いものが飛び出してくる。

 それと同時に火の大蛇の動きは鈍くなり、首は地面に倒れ、動かなくなった。

 近寄って赤い物を確認すると魔石だった。

 魔力の源である火の魔石を失った火の大蛇は再生できなかった。さらに、ムムルートさんが体を抑え込んで他からの魔力供給を断っているおかげかもしれない。

 とにかく、火の大蛇は倒した。

 まずは一体目。

 わたしは一応、再生されないように火の大蛇の火の魔石をクマボックスに回収しておく。

 なにか、回収しておかないと、飛び散った肉片がこの魔石に集まってきて、再生しそうだからだ。

 アニメや漫画の読みすぎかな?

 まあ、あとで回収しておけばよかったと思うよりはいい。


「嬢ちゃん!」


 カガリさんが風の大蛇を相手にしながら、叫んでいる。


「本当に倒したのか!」

「倒したよ」

「信じられん」


 カガリさんは破壊された火の大蛇の頭と岩のクマの置物を見ている。


「弱めるでなく、倒すか」


 でも、問題は風の大蛇だ。

 頭の周りっていうか、体全体に風が纏わり付いている。

 あれ、近づいたら、クマ装備なら斬られることはないかもしれないけど、普通に弾き飛ばされるよね?


遅くなって申し訳ありません。

まず、火の大蛇に討伐になります。


今更ですが、魔法の説明です。

魔力で魔法を出現させる場合。そこに空間が必要です。

小さな箱ががあるとします。そこに魔力を込めて、岩に変化させた場合、箱以上の大きな岩を作ることはできません。

なので、大蛇の口以上の大きさの岩を出現させることはできません。でも、その岩に魔力を込めて大きくすることはできます。


※コミカライズ6話が公開されています。魔法の練習回です。よろしくお願いします。

※次回の投稿、少し遅れると思います。

※書き下ろし、SSの希望ありがとうございました。参考にさせていただきます。


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― 新着の感想 ―
土魔法で頭ごと埋めるのかと思ったけど似たような展開だった
[一言] もし映像化するなら和の国編って完全なる劇場版案件ですよね。
[一言] 火の大蛇だから口の中にくまの転移門を投げ込んで海水攻めで倒す作戦かと思ってました。
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