表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、和の国に行く
471/904

466 クマさん、見守る

「サクラ?」


 サクラの言葉に全員がサクラのほうを見る。


「魔法陣の使用方法はムムルート様に教わりましたので、扱い方法はわかります。わたしの魔力でも、発動はできるはずです」

「待て、魔力を注ぎ続けないとならないと説明したはずだぞ。まだ子供のお主が無理に魔力を注ぎ続ければ、今後魔法が使えなくなるかもしれぬぞ」


 ちょっとした魔道具を使うなら問題はないけど、子供が大きな魔法や魔力をたくさん使うと、成長してから影響が出るとノアから聞いたことがある。だから、この世界に子供の魔法使いはいない。

 でも、サクラはムムルートさんの言葉にゆっくりと首を振る。


「わたしが魔法が使えなくなるだけで国が救われるなら、わたしは構いません。国と魔法のどちらかを選べと言うのでしたら、わたしは迷わず国を選びます」


 サクラは真剣な目でムムルートさんに答える。

 だけど、ムムルートさんには会ったばかりの少女の決断に頷くことができない。

 わたし、カガリさん、ムムルートさんが封印強化に向かえば、復活した大蛇と戦う者がいなくなる。だから、サクラの言葉は理解できる。でも、危険なことをさせたくない気持ちもある。

 魔法使いを他から呼んでくる方法だけど、一番、早いのはエルフの住民。でも、クマの転移門のことを説明したとき、ムムルートさんやルイミンがどうなるか分からない。さらに、関係ないエルフを危険な目に遭わせていいのかとなる。

 たぶん、ムムルートさんがさせないと思う。

 それに大蛇の説明を聞いて、すぐに首を縦に振るう人がいるのか。頷いたとしても、周りが止めるかもしれない。そんな人たちを説得する時間はないし。今、ムムルートさんに離れられても困る。

 ムムルートさんが答えられずにいると、隣にいたカガリさんが、ジッとサクラを見つめ、口を開く。


「サクラ、いいのじゃな? 命を落とすかもしれぬぞ」

「はい。わたしにできることがあるのに、安全な場所に逃げるわけにはいきません。でも、わたしには大蛇と戦う力はありません。ですが、大蛇の復活を遅らせることはできます」

「サクラ……」

「もし、わたしが危険な目にあったとしても、助けに来ないでください。皆様の足手まといにはなりません。少しでも封印を長引かせます。だから、大蛇をお願いします」


 サクラは頭を下げる。

 そんなサクラの姿を見て、カガリさんは唇を強く噛みしめる。

 大蛇が復活するかもしれない場所に行くのだ。大蛇だけでなく、魔物が来る可能性も残っている。

 だけど、カガリさんは全てを理解し、口を開く。


「わかった。封印の一つはサクラに任せる」

「カガリ様……」


 この中で一番サクラのことを知っているカガリさんが決めた。だから、口を挟むことはできない。

 わたしだって、答えが分からないんだから。

 それに、さっきから小さいが地面は揺れている。いつ復活してもおかしくはない。時間がないのだ。

 

「ルイミンさん。あの約束は守れそうもありません。ですが、もし、生き残って、魔法が使えるようになりましたら、また誘ってください」


 どんな約束をしたのか分からないけど、サクラは笑顔でルイミンに言う。

 それに対して、ルイミンは何も言えずにいる。


「ルイミンさん、会えて、嬉しかったです」

「サクラちゃん……」


 ルイミンはサクラの言葉に何も言えずにいる。

 何かを口から言い出そうとするが、なんて言葉にしていいか、悩んでいるようにも見える。

 そんな中、カガリさんが口を開く。


「時間がない。手分けをして、封印の強化をするぞ。最悪、応援が来るまで耐えればいい。ムムルート、早く妾に魔法陣の使い方を教えろ」

「待ってください」


 ルイミンが声をあげる。全員がルイミンを見る。ルイミンの顔は何かを決心した表情をしている。


「なんじゃ?今は時間がない。嬢ちゃんは自分の家に戻れ。ここは戦いの場になる」

「わ、わたしも手伝います。今は1人でも魔力が必要なんですよね」

「ルイミンさん!」

「なにを言っている!?」


 ルイミンの言葉にムムルートさんが驚く。

 もちろん、わたしもだ。ルイミンは帰ってもらうつもりだった。


「お爺ちゃん。だって、カガリさんに魔法陣を説明している時間はないでしょう。わたしなら、さっき、お爺ちゃんがサクラちゃんに説明していたのを見ていたから分かる。だから、もう一つの封印はわたしが行くよ」

「ルイミン……」


 ルイミンはサクラの代わりではなく。もう一つと言った。

 今、足らないのは魔法陣に魔力を注ぎ込む者だ。それをルイミンは理解している。


「ルイミンさん、ダメです。危険です」

「二人で二つを封印すれば、ユナさん、カガリさんの二人が戦えることになるんだよ。そうすれば、勝てる可能性が上がるよね」

「ルイミンさん……」

「お爺ちゃん、お願い。わたしにも手伝わせて!」


 ムムルートさんはルイミンをジッと見る。


「ダメじゃ、お前は帰れ」

「お爺ちゃん! 初めはユナさんのお手伝いができると思って、来ただけだったけど。知り合ったサクラちゃんが大変なことになっているんだよ。わたし1人だけ、逃げることはできないよ」


 ルイミンはムムルートさんの服を掴み、説得をする。


「ルイミン……」

「お爺ちゃんだって、カガリさんやユナさんに帰れって言われても帰らないでしょう?」

「だが……」


 地面が揺れる。

 徐々に大きくなっている。

 話している時間はなくなってくる。


「お爺ちゃん、お願い。わたしにも手伝わせて」

「ムムルート、言い争っている時間はない。酷かも知れぬが、すぐにお主が決めろ。妾の意見を言えば、残ってくれるなら助かる」


 さらに大きく地面が揺れる。

 今までで一番大きい揺れだ。


「お爺ちゃん!」


 ムムルートさんは苦しそうに決断する。


「ルイミン、約束だ。もし、危険と分かったら、すぐに逃げるんだぞ」

「……お爺ちゃん。うん、わかった。危ないと思ったら逃げるよ」


 確かに、これが現状で一番の方法だ。

 ルイミンとサクラが決めたのなら、わたしは2人をサポートするだけだ。

 わたしは心の中で、くまゆるとくまきゅうに呼びかける。


「すまぬ。お主の孫娘まで、危険な目に遭わせてしまった」

「ルイミンが自分で決めたことだ。2人ともアイテム袋は持っているな」

「はい」

「うん」


 ムムルートさんはアイテム袋から絨毯と小袋を2人に渡す。2人はムムルートさんから受け取るとアイテム袋に仕舞う。


「わしが体の中心に向かう。2人は頭を頼む」

「わかりました」

「うん」

「ルイミンもサクラも扉は開けておくから、最悪のときは逃げてきて。大蛇も扉の中までは入ってこれないはずだから」


 大きな体だ。クマの転移門を通れないはずだ。


「わかりました」

「はい」


 二人は頷く。

 全員が動こうとしたとき、地面で気を失っているシノブに目が行く。

 このまま寝かしておくのは危険だ。


「そっちの扉の先に寝かしておくか?」

「大丈夫だよ。信用できる子に面倒を見てもらうよ」


 わたしはクマフォンを取り出す。

 まもなくして、相手がでる。


『ユナお姉ちゃん?』

「フィナ、悪いけど、今すぐにわたしの家に行って」

『えっ、どうしたんですか?』

「ごめん、説明している時間はないの。転移門の前に人を寝かしておくから、見ててもらえる? 服に血が付いているけど、気を失っているだけだから、大丈夫だから」

『ユナお姉ちゃん?』

「なにか、あったら連絡をちょうだい」

『ユナお姉ちゃん!』


 フィナがなにか言っているが、説明する時間はない。

 わたしはクマの転移門の扉を一度閉じ、クリモニアのクマハウスに繋げる。

 そして、シノブをお姫様抱っこで、抱きかかえると、転移門を通り、シノブを寝かす。そして、このままじゃ、フィナがクマハウスの中に入れないので、フィナがクマハウスの中に入れるようにしておく。

あとはフィナが面倒を見てくれる。

 わたしは扉を閉じ、再度エルフの森へと扉を開ける。


「ユナ様、誰と話していたのですか?」

「わたしが一番信用できる女の子だよ。シノブのことは心配しないでいいからね」

「わかりました」


 シノブのことを心配させたくないので、サクラに安心させるように言う。

 準備が整ったとき、地面が一番大きく揺れる。

 揺れは収まらない。

 さっきまでなら、揺れてもすぐに止まった。

 でも、今度の揺れは止まらない。

 揺れが徐々に大きくなっていく。

 ルイミンとサクラがバランスを崩して倒れそうになる。

 そんなとき、くまゆるとくまきゅうがやってきて、2人を支える。


「くまゆるちゃん!」

「くまきゅう様!」


 2人はくまゆるとくまきゅうに抱きついて、倒れないようにする。

 だけど、揺れは続く。

 地面は揺れ、大きな音が響く。地下から何かが盛り上がってくるような感覚。

 探知スキルを見る。

 大蛇の一部分が完全に表示されている。

 ゴゴゴゴゴゴと、地割れの音がする。

 遠くで樹木が倒れる音が聞こえてくる。

 地面から出てくる。

 そして、離れたここからでも分かる大きなものがそびえ立つ。


「大蛇か……」


 高くそびえ立つ、ビルのようなものが、揺れている。

 大きい。


「あれが大蛇……」

「大きいです」

「二度と見たくなかったな」

「それには同意だな」


 誰だって、会いたいとは思わないよね。


「二人とも、もう引き下がれないぞ」

「……はい」

「……うん」


 サクラとルイミンの2人は大蛇を見ながら、返事をする。

 2人の手が震えているような気がする。

 これから、この大蛇の頭が封印されている場所に向かうのだ。怖くないはずがない。


「くまゆる、くまきゅう。ルイミンとサクラをお願いね。もしものときは2人を連れて、転移門の中に逃げて」

「「くぅ~ん」」


 もし、二人が逃げ出さないようなことがあっても、くまゆるとくまきゅうが無理やりにでも引っ張ってくれるはずだ。それに魔物が近寄ってきても、2人を守ってくれる。

 くまゆるにはルイミンが乗り、くまきゅうにはサクラが乗る。


「それじゃ、行ってきます!」

「行ってきます」


 2人を乗せたくまゆるとくまきゅうは走っていく。


「それじゃ、わしも行く。2人とも無理はするなよ」

「任せておけ、きっちり弱らせてやる」

「別に倒してもいいんでしょう」

「ふふ、それが一番楽でいいな。嬢ちゃんが言うと、本当にやりそうだな」


 ムムルートさんは笑うと、走り出す。


「それじゃ、妾たちも行くとしようか」


 わたしたちは復活した大蛇の頭に向かって走り出す。


時間がないのに、話さないといけないことがたくさんあると困りますね。

その辺りをもう少し上手に書けるようになりたいです。


※活動報告にて、10巻の店舗特典と書き下ろしのSSショートストーリーを募集中です。

 よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] > わたしはクマの転移門の扉を一度閉じ、クリモニアのクマハウスに繋げる。 ↑和の国にある転移門から、クリモニアのクマハウス内の転移門へ。 > そして、シノブをお姫様抱っこで、抱きかかえると…
[良い点] 緊迫感ひしひしで鬼気迫る臨場感
[一言] 『わたしは扉を閉じ、再度エルフの森へと扉を開ける』 …クリモニアにシノブを送って戻るのだから、エルフの森じゃなく、和の国だよね?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ