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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、和の国に行く
454/930

449 サクラ視点 希望の光

申し訳ありません。

前回の話の一部修正させていただきました。

未来視の部分、削除させていただきました。

自分が見る未来だと、光の発見に矛盾が起きるため。

読者さまにはご迷惑をおかけします。


くまなの

 わたしはある日を境に、未来のことを夢で見るようになった。

 夢は夜が更ける頃に見る。

 初めはそれが未来とは思わなかった。普通の夢だと思った。でも、それは現実に起きる。初めは凄いと思った。でも、それは凄い力を手に入れたと同時に怖いものだった。

 未来が見えるってことは良いことだけではない。悲しいこともある。

 誕生日にお祝いされることを先に見てしまったときは、嬉しさが減ってしまったような気がした。なにより、親しい人が死ぬところは見たくない。


 この力は万能ではなかった。見たいものを見せてくれるわけじゃない。予知は勝手にやってきて、勝手にわたしに見せる。

 さらに見ることができるのはわたしが関わることだけだ。

 見る回数は年に数回程度と少ない。だから、普通の夢と気づかない場合もあって、気づかないことのほうが多い。


 そして、一月(ひとつき)ほど前、わたしは夢に見た。国の中心にあるリーネスと言われる島が黒い霧に覆われ、黒い霧は街を襲い、人々が殺される夢だった。その中にはわたしを守るために死んでいく兵士。最後はわたしがなにもできずに死ぬ夢だった。

 朝、起きたときは嫌な夢を見たぐらいに思った。

 でも、夢は3日連続で見た。

 これは未来のできごとだ。

 リーネスの島は過去に魔物が封印された場所だ。黒い霧は魔物を暗示しているのかもしれない。

 予知は全てを見通せるわけではない。一部の断片的な部分を見せる。


 わたしは見た予知のことを国王陛下に伝え、リーネスの島を調べると、封印の一部が弱まっていることがわかった。

 どうにかしないといけない。あんな夢を絶対に現実にしてはいけない。

 リーネスの島は魔物が封印されている。その魔物は負の感情を吸い取ると言われているので、人が入ることは基本禁止されている。

 結界は男性を拒み、選ばれた女性しか入れないようになっている。だから、リーネスの島で対処をすることになったら、女性しか魔物と戦うことができない。結界を解いて、男性を入れるようにすると、魔物が完全に復活してしまうから、結界を解くことはできない。

 さらに結界を張り直すには封印された魔物を一度弱らせないといけないらしい。

 国王陛下は強い女性を集めようとするが、思うように集まらない。強く清らかな女性でないとダメらしい。

 心が汚れているってことなのかな?


 対応策が見つからないまま、日が過ぎていく。夢の中では毎日、黒い闇に包まれて、人が死んでいく。

 何度も死ぬ。寝るのが怖い。でも、少しでも対処方法を探さないといけない。きっと、手掛かりがあるはず。


 わたしは闇の中、絶望の中、小さい光を見つけた。光は温かく、優しい光だ。

 わたしはその光を求めるように手を伸ばす。でも、光は遠くにあり、わたしの小さな手では届かない。

 お願い。近づいて。

 手を伸ばすが届かない。

 目を覚ます。あの光はなんだったのか分からなかったけど、とても温かかった。


 再度、夢を見る。闇の中、光を探す。

 あった。遠くで光っている。遠くだけど、温かさを感じる。

 間違いなく、希望の光だ。

 光は南の方向に見える。

 あっちにはジュベルの街がある。いや、それ以上、遠く。海?

 わたしは叫ぶ。「助けて!」「助けて!」何度も叫ぶ。

 光が近づき、姿が見える。

 光は動物のような形をしていた。馬じゃない、もっと大きく、狂暴そうな姿形をした獣だ。その獣の上に誰かが乗っている。

 この人は誰?

 獣は怖いけど、光からは温かいものが伝わってくる。

 間違いない。この光がわたしを救ってくれる。

 お願い! こっちにきて!

 届かないと分かっているが手を伸ばす。

 光の獣はゆらゆらと揺れ、離れていく。

 わたしは手を伸ばすが光に届かない。

 待って! お願い! 行かないで!

 わたしは光を摑むことができず、目を覚ます。


 わたしは夢のことを国王陛下に伝えると、すぐに光の獣に乗った人物を迎え入れる準備をする。でも、獣がやってくる話を聞いた国王は危険を感じ、港に兵が並べられた。

 国王陛下はわたしの言葉を信じてくれる。でも、光の獣が国を救うか分からないから、用心のためだと言う。その言葉にわたしは反論できなかった。

 その日の夜、希望の光は消え、闇だけに包まれる世界の夢だった。

 わたしの話を聞いた国王陛下は兵の撤退の指示を出す。

 兵と光が戦ったのかは分からない。分かったことは光が消えた事実。間違った選択だったのは間違いない。

 もう、時間が迫っている。


 武将が会いにいく。ダメだ。

 公使が会いにいく。ダメだ。

 最後は国王陛下が会いにいく案が出るが、ダメだった。

 どうやっても、光が近づくことはない。

 時間だけが過ぎ、結界の綻びは広がっていく。

 光は揺れる。わたしの手が届くところに来てくれない。

 どうしたら、近づいてくれるの?


 つらい。

 夢の中でも辛いのに、現実はもっと辛い。

 わたしの言葉を信じてくれる者もいれば、いない者もいる。

「本当に希望の光なのか?」

「よそ者をリーネスに入れさせるのか?」「その者にリーネスの魔物を倒せるのか?」


 リーネスの島に誰とも分からない人を入れるのをよく思わない者もいる。


「その獣は人を襲わないのか?」「獣に乗っているなら、危険じゃないのか?」「その獣の上に乗っているのは信用できるのか?」


 そして、その希望の光が本当に現れたとき、その者の実力を確かめることになった。わたしを温かい気持ちにさせてくれるという言葉だけでは、その人たちを安心させることはできなかった。

 夢を見ていない者に、あの光の包んでくれるような温かさは伝わらない。

 希望の光なのに。国を救ってくれる光なのに、どうしてなの?


 そんなことをするから光が遠ざかる。待って、行かないで。お願い。わたしの気持ちと関係なく、光は遠ざかっていく。絶望しかない。

 だけど、時間は待ってくれない。結界の綻びは広がり、結界が解かれるのも時間の問題だ。もう、時間が迫っている。

 希望の光がやってくる日も近づいているのが分かる。

 時間がない。

 お願いだから、邪魔をしないで。

 そんな中、希望の光に会う者として、女性で実力もあるシノブに白羽の矢が立った。

 光は近づいた。

 でも、実力を示さないといけない。

 この国で実力があるジュウベイと戦って勝つことを示すことだ。

 ジュウベイは強い。不安になる。でも、そのぐらいの強さを示さないと希望の光とは認められないと言う。


「大丈夫っす。わたしが師匠を少しでも疲れさせるっす。そうすれば、勝つ確率が高くなるっすよ」

「でも、本気で戦うんでしょう?」


 2人が本気で戦う。聞いただけで、怖くなる。


「そうしないと、光は消えてしまうっすよね?」

「そうだけど」


 心配でしかたない。

 ジュウベイとシノブが本気で戦うことで光は近づく。

 希望の光にジュウベイと戦わせようと決めた夜、光は消えた。

 だから、ジュウベイとシノブが戦う芝居をする案がとられた。

 本当にこれでいいのか疑問になる。助けを求めるのに、どうして、こんなことをしないといけないの?

 だけど、2人が本気で戦うことで、光は消えず、少し近づいた。

 正しいの? 間違いなの?

 時間は残されていない。わたしは見守るしかなかった。

 全てはシノブにかかっている。


 シノブが南の海を監視に行って数日が過ぎたとき、連絡が来た。

 海の上を走るクマの上に乗ったクマの格好をした女の子がやってきたと報告を受けた。

 年齢は13、4歳という。

 そんなに小さい子供なの?

 わたしは獣に乗った屈強な人物をイメージしていた。大きな獣の上に、大きな剣を持ち、魔法も使える大人の女性。報告書に女の子って書かれていたけど、こんなに小さい女の子だと思わなかった。

 光は間違いだったの? それとも、人違い? 分からない。


 それにクマに乗った女の子が海から来たって、クマが本当に海の上を走ったの? シノブ、わけが分からないです。報告は分かりやすく、ちゃんとしてください。

 わたしは報告書の続きに目を通す。

 海からやってきた女の子はクマに何かをすると消えたそうだ。

 シノブはクマは召喚獣で、送還したのではと書かれていた。召喚獣のクマ。それが、あの獣の形をした光の正体なの?

 あと、分からないのが女の子の格好です。クマの格好ってなんですか?

 熊の毛皮を被っているってことなの?

 想像してみると、少し怖い。

 それから、その日は女の子の後をつけて観察したが、現状では希望の光とは判断がつかないと書かれていた。

 その日の夜、夢は見なかった。

 どのようになったか、分からない。良い方向に進んだと思いたい。


 クマに乗った女の子が現れた翌日の夜、新しい報告書が届いた。

 接触に成功したみたいです。クマの格好をした女の子の名前はユナ。

 そして、シノブと女の子が一緒に、かまいたち討伐の仕事を受けることになったらしい。シノブは魔物との戦いを見て、女の子の実力を確かめるらしい。

 それで希望の光なのか判断すると書かれていた。


 朝、起きる。今日も夢は見なかった。

 ただ、見なかっただけ? なにかが変わった?

 見ても不安になるけど、見ないのも不安になる。

 その日の夜、新しい報告書が届く。

 報告書には興奮気味に女の子が黒と白のクマの召喚獣を召喚したと書かれていた。

 クマが二匹?

 名前は黒いクマがくまゆる、白いクマがくまきゅうと書かれていた。

 可愛らしい名前です。

 そして、女の子は風魔法と土魔法を使ってかまいたちを倒したと書かれていた。

 武器を扱う戦いではなく、魔法を使って戦うようです。

 そして、親の仇として、ジュウベイと戦うことをお願いすると、了承してくれたらしい。ジュウベイとシノブが戦うのも不安だけど、女の子がジュウベイに勝てるか不安になる。もし、ジュウベイに勝てないようだったら、封印された魔物に勝てるとは思えない。


 翌日も夢は見なかった。

 そして、わたしはシノブからの報告を待つ。不安でいっぱいだ。ジュウベイとシノブが本気で戦う。さらに希望の光だと思われる女の子とジュウベイが戦う。

 全員が無事に戻ってきてほしい。そして、女の子が希望の光であってほしい。


 夜遅く報告が届く。女の子はジュウベイに勝ったと書かれていた。

 信じられなかった。

 報告書にはシノブに向けられたジュウベイの三段突きを間に入って防ぎ、二刀流の攻撃もナイフ2本で戦ったと書かれていた。

 魔法を使う戦いをすると思っていた。

 報告書によると、ナイフ二本を扱い、本気で戦うジュウベイと拮抗、それ以上の戦いをしたと書かれている。

 さらに魔法の実力を計るため、広い場所に移動した。

 魔法を使ったジュウベイと戦い、優勢に戦う。

 最後は女の子を怒らせて、最大の攻撃を計るため、クマに攻撃をしたそうだ。

 そこまでする必要があるの?

 確かに実力を示させる必要はある。中途半端な実力では、何かを言ってくる者がいる。

 わたしは息を飲んで、次の報告に目を通す。

 そこに怒った女の子が、大きな壁を出現させる魔法を使い、ジュウベイを殴り倒したと書かれていた。

 あのジュウベイに勝ったの?

 シノブと試合をするところを見たことがあった。ジュウベイはとても強かった。

 間違いなく、女の子は希望の光だ。

 わたしの目から涙が落ちた。

 早く、ユナ様に会いたい。


そんなわけで、サクラはユナに会えて、泣いてしまいました。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前話で、「サクラ自身が会いに来てお願いされていたら」について主人公が触れていますが、今話を読んでなぜサクラは自分が会いに行くという考えが全くないのでしょうか?
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