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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、和の国に行く
440/904

435 クマさん、村に向かう

 朝になって、目覚まし時計のくまゆるとくまきゅうが起こしてくれる。くまゆるとくまきゅうに起こされずに朝を迎えたってことは、誰も来なかったようだ。

 わたしは起きると、くまゆるとくまきゅうにお礼を言って、朝食まで時間があるので温泉に入る。

 そして、コノハが持ってきてくれた朝食を食べ、玄関に向かうとコノハとシノブの姿があった。


「おでかけですか?」

「戻ってくる予定だけど、夕刻まで帰ってこなかったら、食事はいらないからね」


 代金は三日分支払っているので、明日まで大丈夫だ。


「はい、かしこまりました」

「それで、2人はなにを話していたの?」

「世間話っす。クマの格好した女の子が可愛いとか。そんな話っすよ」


 つまり、わたしの話をしていたと。


「それじゃ、行きましょうか」


 わたしとシノブは旅館を出る。


「それでシノブはどうやって、村まで行くつもりなの? 馬車でも用意してあるの?」

「それは町を出るまで、ないしょっす」


 シノブは子供がイタズラを思い付いたような顔で言う。

 何を隠しているのかな? 


「それにしても、ユナの格好は可愛いけど、動きにくそうっすね。本当にその格好でかまいたち討伐に行くっすか?」

「もし、わたしのことが不安だったら、置いていってもいいよ」

「そんなことを言わずに一緒に行きましょうよ」


 わたしに馴れ馴れしく抱きついてくるので、引き剥がす。


「それじゃ、今度、わたしの格好について尋ねたら、帰るから」

「わ、分かったっす。もう、言わないっす」


 わたしたちは町の外までやってくる。


「助かったよ」


 一応お礼を言っておく。


「いえいえ、役に立てて良かったっす」


 街を出るときに、門番に怪しまれるように見られ、引き止められてしまった。だけど、シノブが話をしてくれたことで、無事に街の外に出ることができた。

 他の場所だと怪しまれても、止められることはなかったのに。やっぱり、着ぐるみのせいなのかな?


「それで、街の外に来たけど、どうするの?」

「それは……」


 シノブは指と指を合わせて、印を結ぶような仕草をすると、手に魔力が集まり、目の前に馬が現れる。


「……召喚?」

「ハヤテマルって言うっす。わたしの相棒っす」


 そう言って、シノブは馬の首を撫でる。

 サーニャさんの召喚鳥以外で召喚を見るのは初めてだ。

 ただ、シノブに1つ言いたい。


「でも、カエルやヘビやナメクジじゃないんだ」

「なんすか、それは? そんな物を召喚して、どうするっすか? 移動なんてできないっすよ」


 まあ、実際はそうだけど、忍者の召喚の有名どころだと、カエル、ヘビ、ナメクジだ。

 乗ることを考えると、大きなカエルに大きなヘビ、大きなナメクジ。想像しただけで、気持ち悪い。

 そう考えるとくまゆるとくまきゅうで良かった。


「それじゃ、さっそく乗りましょうか?」


 シノブがわたしの格好を見てから、馬を見る。


「着替えないっすか? 改めてみると、その格好だと2人で乗れないっす」

「着替えないよ。それに大丈夫だよ」


 面倒なので、わたしは右腕を伸ばして、くまゆるを召喚する。


「くまっす。クマが現れたっす。召喚っすか?」

「同じ召喚だよ」


 シノブは少し驚いたけど、驚愕はしていない。


「なにか、強そうっていうより、可愛いクマっすね」

「くぅ~ん」


 くまゆるはシノブの言葉に顔を引き締める。

 どうやら、くまゆるは強く見せようとしているみたいだ。

 でも、逆に可愛く見えるのは気のせいかな?


「名前はなんて言うっすか?」

「くまゆるだよ」

「くまゆるっすか。可愛い名前っすね。触ってもいいっすか?」


 わたしが許可を出す前に、シノブはくまゆるを触りだす。


「うわぁ、なんすか、この柔らかさ。モコモコっす。乗っていいっすか? 乗りたいっす」

「ハヤテマルが悲しそうにしているけど、いいの?」


 わたしが馬のほうを見ると、ハヤテマルが悲しそうに首を下げている。


「うわあああ、ハヤテマル、ごめんっす。ハヤテマルが一番っすよ」


 シノブはハヤテマルの様子を見ると、くまゆるから離れてハヤテマルに謝罪する。

 どこでも一緒なんだね。主人が他の(クマ)に乗ったら、寂しそうにするみたいだ。


「くまゆるに乗れないのは残念っすが、行きましょうか」


 シノブはハヤテマルに飛び乗り、わたしもくまゆるに乗る。

 そして、かまいたちが現れた村に向かう。

 シノブのハヤテマルとわたしのくまゆるは並走するように駆ける。


「それで、かまいたちって、風の魔法を使ってくる魔物でいいんだよね?」

「そうっすよ。威力によっては、腕を持っていかれますので、気を付けてくださいっす。だからと言って、鉄防具でガチガチに固めても、かまいたちの動きについていけなくなるっす」


 鉄などは切れないらしい。でも、重い鉄で防御しても、動きが速いかまいたちにはついていけないので、倒すことができない。逆に魔法使いが魔法で倒すにはそれなりの実力が必要になる。

 近づけば命中率が上がるが、かまいたちの攻撃を喰らう可能性が高くなる。動きやすい格好をしている魔法使いは防御が低い。だから、遠距離でも正確に魔法攻撃を与えられる魔法使いが必要になる。

 そう考えると、初心者にはキツイかもしれない。


「それでユナは、どうやって討伐するつもりっすか? 倒す方法があるって言っていましたけど」

「普通に戦うだけだよ」


 探知スキルで居場所を確認して、魔法を放つだけだ。

 かまいたちの風魔法は避けたり、防いだりすればいい。クマ装備があれば、なんとでもなる。


「そう言うシノブはどうやって倒すの?」

「ユナと同じっす。普通に戦うだけっすよ」


 ニコニコと微笑みながら、答える。本当に分からない女の子だ。


 わたしたちは休むこともなく、村にやってくる。


「くまゆるは速いっすね」

「ハヤテマルも速かったよ」


 街を出て一時間ほどで、村に到着する。

 村の入口には昨日、冒険者ギルドに来ていた男性が立っていた。


「イツキさんっすね。どうやら、わたしたちを待ってくれていたみたいっすね」


 わたしたちは男性のもとに行く。


「なんだ。そのクマは!?」


 男性はくまゆるに乗るわたしに驚く。


「そのクマは彼女のクマっすから、安全っすよ」


 わたしが説明する前に、シノブが説明してくれる。


「そうなのか?」

「攻撃を仕掛けてこなければ、なにもしないよ」

「本当なんだな」


 男性はくまゆるをジッと見る。くまゆるはジッとしている。

 男性はわたしとくまゆるを交互に見る。そして、なにかを納得するような感じをみせる。


「わかった。とりあえず、来てくれたことに感謝する」


 男性は村の中に招き入れてくれる。わたしとシノブはクマと馬から降り、村の中に入る。

 村は木で作られた家が多い。瓦屋根の家もある。村の服装も、昔の日本の映画で見たことがあるような服装だ。くまゆるを見て驚くが、男性が大丈夫だと村人に答える。

 他の村人は遠目から見るが、近寄ってこない。もしかして、くまゆるが怖いのかな?


「それで状況は、どうなんすか?」

「昨日、戻ってきたときには、新たに三頭の牛がやられていた。せめてもの救いは村人に怪我がないことだ。本当に嬢ちゃんたちに、かまいたちを討伐することができるのか? これ以上の被害は出したくない」


 男性はあらためて確認する。

 新しい冒険者に頼むにしろ、日数がかかれば、それだけ被害が増える。

 わたしたちが討伐できないと、それだけ被害が大きくなる。


「倒すことはできるけど、問題は数だけど。どのくらいいるかわからないの?」

「すまない。かまいたちが現れたら、逃げて、隠れている」


 たしかに力がない者が戦うのは無謀だ。牛と同じように切られるだけだ。


 わたしたちは男性の案内で、牧場らしき場所までやってくる。広大な牧場が広がる。その中に牛が牧草を食べている。


「それじゃ、ユナ。どうします? 適当に見張ります?」

「シノブの案は?」

「わたしっすか? 現れたら、倒すですね」


 もしかして、脳筋?


「どの辺りから、現れるぐらいは分からないんですか?」

「それなら、たぶん。あの森からだと思う」


 男性は牧場の先に見える森を指す。


「それなら、あそこにいる牛が危険なんじゃ」


 森の近くに牛がいる。

 わたしの言葉に男性は言い難そうにする。


「その、あの牛には犠牲になってもらっている。他の牛やわたしたちが逃げ出すための」


 一か所に集めると、全ての牛などが殺されてしまう。だから、ばらけさせているそうだ。

 10のうち、9を守るために1を犠牲にする。嫌な考え方だけど、仕方ないかもしれない。


「それなら、あの森の中に行けば、かまいたちはいるんだね」


 なら襲われる前に討伐すればいい。


「もしかして、森の中で戦うつもりっすか?」

「そんなの死にに行くようなものだ」


 シノブと男性がわたしの言葉に驚く。

 なんでも、死角が多い森の中では、どこからともなく風の刃が飛んでくるから危険らしい。

 たしかに、それは怖い。

 でも、魔物が来るのを待つのは性に合わない。

 それにわたしには探知スキルがある。


「大丈夫だよ。魔物が近くにいれば、この子が教えてくれるから。サクッと倒して戻ってくるよ」


 わたしは横にいるくまゆるの頭を撫でる。


「それに早く旅館に戻って、温泉に浸かりたいしね。シノブはここに残っていていいよ。わたしとくまゆるが森の中に入って、かまいたちを討伐してくるから」

「自分も行くっす」

「無理しないでいいよ」

「自分はユナの補佐だから、手伝いぐらいはしますよ」


 あまり、戦うところは見せたくないんだけど。でも、シノブの戦い方も気になる。

 そのとき、くまゆるが反応して、森の方を見る。

 わたしはくまゆるの反応ですぐに理解する。探知スキルを使うと、かまいたちの反応がある。それも一体じゃない。かまいたちの反応はもの凄い速さで移動している。


「かまいたちが来ているよ!」

「本当か!?」

「どこっすか?」

「くまゆるは、ここでイツキさんを守って」


 わたしはくまゆるに指示を出すと、かまいたちに向けて走り出す。

 わたしが向かう先にいる牛が暴れだし、何かから逃げる。そして、牛が倒れる。

 遅かった。


シノブが馬を召喚しました。

カエルではなかったですw


※皆さまにご報告があります。

この度、くまクマ熊ベアーのコミカライズ化が決定しました。

まだ、詳しいことがご報告できませんが、活動報告に出版社様の告知のリンクを貼らせていただきました。楽しみにしていただければと思います。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 蛞蝓召喚してたら鈍くて村まで到着してなかったですね(笑)
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