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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、和の国に行く
439/904

434 クマさん、依頼を受ける

深夜に書き終わったので、朝に予約投稿します。

 わたしの言葉に男性は顔を上げて、わたしのことを見る。


「クマ?」


 どうやら、わたしのことには気づいていなかったみたいだ。


「わたしが、その魔物を倒そうか?」

「嬢ちゃん、ふざけているのか?」

「えっと、かまいたちは動きが速く、さらに離れた場所から風の刃を飛ばしてくる厄介な魔物で、討伐するのは大変なんです。さらにイツキさんの話では数体いるそうです。だから、初心者向けの依頼では……」


 ギルド嬢が少し、言いにくそうにかまいたちの説明をしてくれる。

 どうやら、わたしのことを初心者冒険者だと思ったみたいだ。


「さらに、不利と思うとすぐに近くの森に身を隠す。簡単には倒せない」


 男性がいらつくようにギルド嬢の言葉に付け足す。

 動きなら負けない。隠れても魔物ならクマの探知スキルで見つけることができる。


「戦ったことはないけど、大丈夫だと思うよ。でも、わたしは街を見物に来ただけだから、無理に引き受けるつもりはないよ。ただ、困っているようだったから、声をかけただけ」


 無理に依頼を受けるつもりはない。ただ、かまいたちが気になったのと、困っているようだったからだ。

 男性はわたしのことを見て、考え込む。


「確認するが、嬢ちゃんは冒険者なのか? すまないがランクは?」

「冒険者だよ。ランクはC」


 わたしの言葉に男性とギルド嬢が驚く。


「ランクC? 本当に嬢ちゃんにかまいたちを倒すことができるのか?」

「戦ったことはないけど、倒す方法はあるよ」


 男性はさらに考え込む。

 わたしが冒険者ランクCと言っても半信半疑のようだ。

 まあ、クマだし。仕方ないよね。


「それなら、わたしも一緒に行きましょうか?」


 どこからともなく、誰かが話しかけてきた。


「シノブさん!」


 ギルド嬢は驚いたように声をあげる。

 現れたのは、わたしとそれほど変わらない女の子だった。

 女の子の格好は、紺色の和装の格好をしているが、少し違う。アニメや漫画で見るような、忍び装束っぽい?


「そんなにそのクマさんの実力が不安なら、わたしが一緒に行きますよ」

「シノブさんが一緒なら、大丈夫ですね」


 ギルド嬢が安心したように言う。


「イツキさん。彼女なら問題なく、かまいたちを倒すことができます。彼女の実力はギルドが保証します」

「本当なのか?」

「彼女は優秀な冒険者です」


 どうやら、わたしは不要になったみたいだ。

 かまいたちを見ることができなかったのは残念だけど、この国に居れば会えるチャンスはあるはずだ。


「それじゃ、わたしは帰るね」


 彼女が依頼を受けるなら、わたしは必要ない。


「それはダメっす。わたしはあくまで、お手伝いってことで、付き添いってことで。だから、クマさんが受けないなら、わたしも受けないっすよ」


 シノブと呼ばれた女の子がギルドから出ていこうとするわたしを引き止める。


「どうして? あなたが倒せるなら、わたしは必要はないでしょう?」

「それじゃ、意味がないっす」


 意味が分からない。彼女が冒険者で、かまいたちを倒せる実力があれば、わたしは不要なはずだ。わたしと一緒に引き受ければ、依頼料も半分になる。


「シノブさん。待ってください。イツキさん、急いでいるんですよね? 彼女に頼まなかったら、いつになるか、わかりませんよ」


 受付嬢が男性に問いかける。

 男性は悩みながら、わたしたち2人を見る。

 片方はクマの格好をしている。もう一人は何を考えているかわからない、忍者っぽい女の子だ。


「そちらのお嬢さんなら、本当に倒せるんだな」

「はい、彼女は以前にもかまいたちを討伐していますから」


 男性は忍者っぽい女の子を見て、ギルド嬢は頷く。


「そして、そっちのお嬢ちゃんは、クマの嬢ちゃんも一緒なら、引き受けてくれるんだな?」


 男性はシノブと呼ばれた女の子に確認する。


「クマさんと一緒なら、いいっすよ」

「わかった。それじゃ、2人に頼む。かまいたちを討伐してくれ」


 男性はわたしたちに頭を下げた。

 これって、結局わたしも行くってことになったのかな?


「それでは依頼の受付をしますので、お嬢さんもそれでいい?」


 ギルド嬢が最後にわたしに確認する。

 やっぱり、わたしも参加することになっていたらしい。しかも、おまけ状態で。

 でも、わたしが引き受けないなら、引き受けないって、なんなんだろう?


「それでは2人とも依頼の受付を行いますので、ギルドカードをよろしいでしょうか?」


 わたしとシノブと呼ばれた女の子はギルドカードを出す。わたしのギルドカードを見た、受付嬢は驚きの表情をする。


「……本当にシノブさんと同じランクC」


 わたしは隣に出されたシノブのギルドカードを見ると、同じくランクCと書かれていた。

 わたしとそれほど変わらない年齢で、ランクCって。かまいたちを倒せるって言うのも分かる。

 でも、本当に彼女は何者?


「ユナさんって言うんっすね。わたしはシノブっていいます。よろしくです。ユナって呼ぶので、わたしのことはシノブでいいっすよ」


 ギルドカードを見たシノブは自己紹介をする。

 それにしても、馴れ馴れしい。わたしが苦手とする人種だ。あまり、お近づきになりたくないタイプだ。


「それにしても、ランクCっすか、強いっすね」

「あなたもランクCでしょう」

「自分はたまたまっすよ」


 ニコニコと笑いながら否定する。

 怪しい。

 人のことは言えないけど、なにか胡散臭い女の子だ。


「そんなに怪しまなくても大丈夫っすよ。それで、イツキさんでしたっけ、出発は明日の朝一でいいっすか?」

「できれば、今すぐに出発したいが」

「そうっすね。わたしは準備がありますから、イツキさんは先に村に戻っていてください。わたしとユナは明日の朝一に出発しますので」


 シノブは話を勝手に進ませる。

 まあ、確かに今から出発するより、明日の朝のほうがいい。旅館も代金を払っているし。


「分かった。先に村に戻ってるが、場所は分かるか?」

「さっき、依頼ボードで確認済みっす」

「わたしは分からないから、教えてくれると助かるんだけど」

「わたしが案内しますよ。異国の地なので、分からないでしょう?」


 できれば1人のほうが良かったがシノブに押しきられる感じになり、男性は先に村に帰り、わたしとシノブは明日の朝に出発することになった。

 男性が住む村は馬車で半日ほどだと言う。

 くまゆるとくまきゅうなら、一時間もしないで着きそうだ。


「なんで、ついてくるの?」


 わたしが冒険者ギルドを出るとシノブが付いてくる。


「同じ宿に泊まったほうがいいかと思いまして」

「もしかして、同じ宿に泊まるの?」

「ユナの話も聞きたいっすから」

「なにも話すことはないよ」

「つれないっす」


 もしかして、面倒な人と関わってしまったのかもしれない。

 1人で引き受けるか、断るべきだったかもしれない。

 わたしはシノブを連れて旅館に戻ってくる。勝手に付いてきたともいう。


「いいところに泊まってますね」


 シノブは目の前の大きな旅館を見る。

 やっぱり、良い旅館みたいだ。

 旅館に入ると、コノハの姿がある。


「お帰りなさいませ」

「ただいま」

「えっと、そちらの方は?」


 コノハはわたしの後ろにいるシノブを見る。


「他人だよ。わたしは部屋に戻るから、食事をお願いね」

「うぅ、他人なんて、仕事をする仲間ですよ」

「初めに言っておくけど、部屋に来ても追い出すからね」

「ユナは意地悪っすね。それじゃ、明日の朝に旅館の入口で待ち合わせてってことで」


 わたしはコノハと会話を始めるシノブを置いて、部屋に戻る。

 本当になんなのかな?

 ニコニコと笑って、得体がしれない。

 それに冒険者ランクも気になる。人のことは言えないけど、あの年齢でわたしと同じランクC。わたしの場合はクマさん装備のおかげだ。もし、彼女の力だけでランクCなら、かなりの実力者ってことになる。

 それに1人で大丈夫なら、わたしと一緒に引き受ける必要はないはずだ。わたしが依頼を断ろうとしたら、意味がないと言い出す。訳が分からない。

 とりあえず、彼女には気を付けることにする。

 そのために、子熊化したくまゆるとくまきゅうを召喚させて、人が来たら、教えてと頼む。


 その後、シノブの襲撃もなく、コノハが食事を運んでくる。


「あの、わたしと一緒にいた女の子は?」

「はい、お泊りになられています」


 本当に泊まったんだ。


「もし、わたしのことを聞かれても、なにも答えないでいいからね」

「はい、大丈夫です。お客様の信用問題になりますので、お客様のことを聞かれても、お話ししないことになっています」


 ちゃんと教育されているようで安心する。

 この宿に泊まって良かった。


「ありがとう」

「いえ、それでは後で、下げにきますので、ごゆっくりとお食事をなさってください」


 わたしはお言葉に甘えて、食事を頂く。


 そして、食事を終え、まったりしていると、くまゆるとくまきゅうがドアのほうを見て、「くぅ~ん」と鳴く。

 探知スキルを使うと部屋の近くに人の反応がやってくる。そして、反応はドアの前で止まり、動かない。コノハなら、ドアの前で止まったりしない。それに先ほど、食べ終わった食器を片付けたばかりだ。

 わたしはくまゆるとくまきゅうに隠れるように言って、足音を立てずに、ゆっくりとドアを開ける。


「うわぁ」


 ドアの前にいたのはシノブだった。


「なに?」

「えっと、明日の相談をしようと思いまして」


 笑いながら答える。

 どう見ても誤魔化しているよね。


「相談もなにも、シノブは一人でも倒せるんでしょう? いざとなったら、任せるから」

「自分まかせっすか?」

「だって、強いんでしょう?」

「いえいえ、そんなことはないっすよ。スミレさんが大袈裟に言っているだけっす。自分は弱いっすから」


 スミレって、ギルド嬢のことかな?

 もう少し、ギルド嬢にシノブのことを聞けば良かったかもしれない。


「でも、よく自分が部屋に来たって分かったっすね」

「足音が大きかったからじゃない?」


 わたしは適当なことを言う。


「足音っすか?」


 本当のことを言うつもりはない。


「それはありえないっすよ……」


 シノブは小さな声で呟く。


「なにか言った?」

「いえいえ、独り言ですから、気にしないでください」


 怪しい。


「ちなみに、ユナは一人っすか?」

「そうだけど」


 何かを確認するように部屋の中を確認しようとするが、くまゆるとくまきゅうは隠れている。


「それじゃ、明日の朝、遅れないで来てくださいね」


 シノブは帰っていく。

 本当に何しに来たのかな?

 それから、わたしは温泉や寝るときにくまゆるとくまきゅうに人が来たら、教えてくれるように頼んで睡眠についた。


怪しい、女の子登場です。

一緒にかまいたちを討伐しに行くことになりました。

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