432 クマさん、温泉に入る
※前話、確認不足でコノハの年齢の修正を忘れて投稿していまいました。
コノハの年齢。
修正前、フィナぐらいの年齢。
修正後、わたし(ユナ)ぐらいの年齢。
に修正させて頂きました。
旅館に泊まることになり、コノハが部屋まで案内してくれる。
旅館は広く、奥のほうまでやってくる。部屋は旅館の離れのような場所だった。
部屋の中に入るとコノハが言っていた通りに広い部屋だった。1人で泊まるような部屋じゃないのは間違いない。まあ、わたしも1人じゃない。くまゆるとくまきゅうがいる。
「この部屋は他のお客様が通らないので、静かに泊まれるようになっています」
たしかに離れになっているので、他のお客さんは通らない。ますます、わたし向きの部屋だ。
部屋を見ると畳が床一面に広がる、懐かしき和室だ。人は無くなってから、大切な物が分かるとは言ったものだけど、本当だね。
さっそく、畳の上に上がろうとする。
「申し訳ありません、部屋に入るときは靴を脱いでください」
クマ靴のまま入ろうとしたら、止められる。
わたしのクマ靴は泥でも汚れたりはしない。だから、ベッドの上を歩こうと平気だ。でも、ここで説明するのも面倒なので、部屋に入る前にクマ靴を脱ぐ。
おお、素足で畳の上を歩くと気持ちいい。久しぶりの感触に懐かしさを覚える。
当時、自分のマンションに和室があっても、気にしたこともなかった。でも、無くなってみて、あらためてその存在に出会うと嬉しくなる。
クマハウスにも和室を作ってもいいかもしれない。畳を購入しようかな。
「お客様、嬉しそうですね」
「ちょっと、懐かしくて」
「懐かしいですか?」
「うん、昔に触れたことがあってね」
「そうなんですね。だから、畳の上で寝ることも大丈夫なんですね」
わたしが畳の感触を懐かしんでいると、コノハが隣の部屋に歩き出すので、わたしもついていく。
「こちらが温泉になっています。いつでも入ることができますので、自由にお入りください」
扉を開けると脱衣所になっており、さらに先の扉を開けると湯気が立ち上る檜風呂がある。それも家族などで入るためか広い。くまゆるとくまきゅうと一緒に入れそうだ。
それから、部屋の使い方について説明を受ける。食事の時間や出かけるときは、一言声をかけてほしいなど。
「食事は時間になったら、お運びしますが、本日はお出かけしますか?」
さて、どうしたものか。時間的に出かけても、もうすぐ日が沈む。でも、出かけたい気持ちもある。
う~ん、どうしようかな。
わたしは考えた結果、街の探索は明日の朝からすることにした。まずは、和室と温泉を堪能することにした。それにフィナにも連絡をしないといけない。
「今日は休ませてもらうよ」
「わかりました。それでは食事のほうはパンとご飯、どちらになさいますか?」
「選べるの?」
「はい、異国の方もお泊りになられますので」
「それじゃ、ご飯でお願い」
やっぱり、和の国に来たんだから、和の国の料理を食べないとね。
でも、イナゴやイモムシとか虫料理は出てこないよね?
「えっと、食べられない物がでても交換などはできませんが」
「もしかして、虫とか?」
食べたことはないけど、虫嫌いのわたしには抵抗がある。流石に食べ物でも口に入れる勇気はもっていない。食わず嫌いと言われても、虫だけは勘弁してほしい。
「いえ、お米に、味噌を使ったスープ。野菜の煮つけ、カニなどを使った海鮮料理になります」
よかった。
でも、カニだよ。カニ。楽しみだ。
「大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫」
「それではお食事の時間になったら、お運びします」
コノハは頭を下げると部屋から出ていく。
カニとか海鮮料理か、ミリーラの町でも海鮮料理は食べたけど。こっちはこっちで楽しみだ。
わたしはコノハが部屋から出ていくと子熊化したくまゆるとくまきゅうを召喚する。
「くまゆる、くまきゅう、畳だよ」
「「くぅ~ん」」
くまゆるとくまきゅうは畳の上を歩く。
せっかくの畳と温泉なので、くまゆるとくまきゅうと一緒に堪能することにする。それに一人で楽しんでもつまらない。フィナを連れてくるのもいいかもしれない。
ちょっと、クマの転移門を設置すれば連れてくることは簡単にできる。
くまゆるとくまきゅうを見ると、広い畳の部屋を駆け回っている。
「2人とも、畳は傷を付けちゃダメだからね。爪には気を付けてね。あと、人が来たら教えて。そのあとは見つからないように隠れるんだよ」
「「くぅ~ん」」
わたしは一通りに忠告する。
クマが部屋にいたら驚かれるし、ペットを隠して持ち込んでいるようなものだ。一応、その自覚はあるので、隠れてもらう。いざとなれば、送還して隠すことはできる。
くまゆるとくまきゅうは畳の上でゴロゴロし始める。
わたしはそんな姿を見ながら、クマフォンを取り出して、フィナに連絡をする。
『ユナお姉ちゃん?』
「フィナ、わたししばらくいないと思うから、よろしくね」
『どこかに行くんですか?』
「行くって言うか、来ているって言うか」
わたしはタールグイから陸が見えたので、その陸に来ていることを伝える。
『大丈夫なんですか? 危なくないんですか?』
「大丈夫だよ。どうやら、和の国みたいだから」
『和の国ですか?』
「うん、お米や醤油などを仕入れている国だね」
『そんな遠くに』
「だから、しばらくこっちにいるから、なにかあったら連絡を頂戴ね」
『わかりました』
「フィナも来る?」
『行きたいけど、あまり家を空けるとお父さんが悲しむから』
……ゲンツさん。
まあ、ドワーフの街に行くときフィナと離れ離れだったからね。
あれから、それほど日は経っていない。
「もし、許可が下りたら、いつでも連絡を頂戴ね」
『はい、わかりました。ユナお姉ちゃんも気を付けてくださいね』
クマフォンを切ったわたしは夕食まで、温泉を堪能することにした。
「くまゆる、くまきゅうもおいで、温泉に入るよ」
わたしが呼ぶと、畳の上でゴロゴロしていたくまゆるとくまきゅうがやってくる。どうやら、2人も畳が気に入ったようだ。買って帰らないとダメだね。
わたしはくまゆるとくまきゅうを連れて、脱衣所に移動する。
脱衣所でクマの着ぐるみを脱いで、温泉に突入する。
湯けむりが凄い。筒らしきものから、温泉が出ている。
わたしは檜風呂に手を入れて温度を確認する。
「熱い!」
温度は高めのようだ。
でも、くまゆるとくまきゅうは普通に温泉に入る。
さすが、寒さも暑さも強い二人だ。
わたしはかけ湯をして、ゆっくりと足から入る。
熱いけど、ゆっくり入れば大丈夫そうだ。
そして、肩まで浸かる。
「ハァ~」
気持ちいい。
温泉は至高の贅沢だね。
くまゆるとくまきゅうは檜風呂の枠に首を乗せて気持ち良さそうにしている。
外の風景が見たいけど、露天風呂じゃないから、見れない。
どこかに露天風呂もあるのかな?
だけど、クリモニアのお風呂にも温泉が欲しいな。でも、クリモニアには温泉はないよね。
温泉を堪能したわたしは風呂場から出る。
しっかりと体を拭き、くまゆるとくまきゅうの体も拭いてあげ、ドライヤーで乾かしてあげる。
白クマに着替えたわたしはマッタリモードだ。
くまゆるとくまきゅうの毛をブラッシングしていると、くまゆるとくまきゅうが鳴いて、ドアのほうを見る。
人が来たみたいだ。
ドアがノックされる。
わたしはくまゆるとくまきゅうに隠れるように言い、ドアを開ける。そこには部屋に案内してくれたコノハがいた。
「食事をお持ちしました」
「あなたが持ってきてくれたの?」
「母のほうがよかったでしょうか?」
「そんなことはないよ。あまり、この格好は見られたくないからね」
わたしは自分の白クマの格好を見る。
「白いクマですね」
「ちなみに、この格好もノーコメントだからね」
わたしが先手を打つと、服についてはなにも聞いてこなかった。
コノハは料理を並べながら、別のことを尋ねる。
「温泉はいかがでしたか?」
「気持ち良かったよ」
「それは良かったです」
「お客様は、お一人で来たのですか? ご家族の方は一緒ではないのですか?」
「わたし1人だよ」
「1人で、こんなところまで来たんですか?」
「わたしはこれでも冒険者だからね。少しぐらいの危険は大丈夫だよ」
「冒険者……?」
コノハは手を止めて、わたしのことを見る。
その目は信じていないね。
まあ、信じられても対応に困るけど。
「ユナさん、冒険者なんですか? もしかして、凄い魔法を使ったりできるんですか?」
「まあ、少しは」
「凄いです。それなら、ユナさんみたいな女の子でも1人で、こんなところまで来ることができるんですね」
どうやら、魔法使いってことで信じられたみたいだ。
「この街にも冒険者ギルドはあるの?」
「はい、ありますよ」
あるとは思っていたけど、本当にあるとはね。
和の国の冒険者ギルドか、明日にでも、覗いてみようかな。
武器は刀なのかな? 魔法使いってどんな感じなのかな?
コノハは料理を並べ終えると、部屋からでていく。
わたしは隠れているくまゆるとくまきゅうを呼ぶ。
夕食はご飯にお味噌汁、野菜の煮つけ、茹で上がったカニなど、豪華な料理が並ぶ。
うぅ、美味しそうだ。
「いただきます!」
わたしはお茶碗と箸を持ち、料理を頂く。
温泉回です。
畳の上で動物はダメですよね。
でも、くまゆるとくまきゅうなら、大丈夫ですw
毎回、宿屋でくまゆるとくまきゅうを召喚しているけど、あれって、バレたら別料金になるのかな?
その前に追い出されるかな?
※次回の投稿、なにも無ければ通常取りに三日後に投稿します。