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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、和の国に行く
435/904

430 クマさん、フルーツパフェをだす



 わたしたちは庭園にやってくる。

 相変わらず、庭園には色とりどりの花が咲いている。タールグイや蜂の木に咲いていた花も綺麗だったけど、城にある花も綺麗だ。そんななか、マリクスとシアは緊張するように歩いている。


 花を眺めながら歩いていると国王、エレローラさんに王妃様の姿があった。王妃様を見つけたフローラ様は嬉しそうに駆け寄っていく。その後ろを子熊化したくまきゅうが追いかけていく。王妃様はやってきたフローラ様の頭を撫でる。


「マリクス、王妃様もいるわよ」

「王族が4人……」

「こんななかで食事をするんだね」


 マリクスはお腹をさする。

 たしかに普通に考えたら、王族が四人もいるわけだから、とんでもない状況だよね。


「ユナさん、お待ちしていました」


 フローラ様のお世話役のアンジュさんがやってくる。


「アンジュさん、こんにちは」

「お久しぶりです。それでは皆様、こちらの席にお座りください」


 アンジュさんはわたしたちを席に案内してくれる。

 大きな円形のテーブルに国王陛下、王妃様、フローラ様と座り、国王陛下を挟んだ反対側にはティリアが座る。

 フローラ様の隣にわたしが座り、エレローラさん、シア、マリクスと座る。

 マリクスの隣がティリアになる。

 フローラ様が椅子に座ったとき、王妃様がくまきゅうに気付くと、くまきゅうは後ずさりする。

 そんなくまきゅうを見て、王妃様は微笑んで、くまきゅうに向かって手を差し出す。くまきゅうは動かないでいると、王妃様は席を立ち、くまきゅうを抱きかかえる。

 王妃様がくまきゅうを離さなかったときのことが脳裏に蘇る。


「可愛い子ね」

「うん。くまさん、かわいいよ」

「そうね」


 王妃様はくまきゅうの頭を撫でると離してくれる。

 あれ?

 前回同様に離さないかと思ったんだけど、予想が違った。くまきゅうも「くぅ~ん」と首を傾げる。

 ちなみにくまゆるはティリアの膝の上に座っている。


「それでユナ。冷たい、美味しい物ってなんだ?」


 国王が一番待ち遠しそうに尋ねてくる。


「一応、フローラ様のために持ってきたことは忘れないでよ」


 今更だけど、どうして国王の分まで用意しないといけないのかな?

 まあ、本当に今更のことなので、クマボックスからクマの形をした冷凍庫を出して、作ってきたものを取り出す。透明のガラスにアイスクリーム、生クリーム、プリン。そして、シュリと一緒にタールグイの島で採ってきたいろいろな果物が乗っている。

 わたしが持ってきたのはフルーツパフェだ。器は元の世界にあったような縦長のガラスの器がなかったので、ボール型のガラスの器になっている。

 アイスクリームやプリンにクリーム、いろいろな果物を乗せるなら、こっちのほうがよかった。


「あら、綺麗な食べ物ね」

「ユナさん、これはアイスクリームですか?」

「それにプリンや果物まで乗っているわね」


 アイスクリームを食べたことがあるシアとエレローラさんがフルーツパフェを見て、感想を漏らす。


「暑いときはアイスが一番だからね。それからプリンやクリーム。果物も冷えているから美味しいよ」


アイスクリームだけじゃ、味気ないので、今回はフルーツパフェにしてみた。


「ああ、もしかして、仕事が忙しくて抜け出せなかったときか」


 国王はなにかを思い出したようだ。

 たしか、前回アイスクリームを持ってきたとき、国王と王妃様はいなかったので、国王と王妃様の分を置いていった記憶がある。


「あれは冷たくて美味しかったな。ゼレフが騒いでいたのを覚えている」

「でも、前は素っ気ない感じで、こんなに豪華じゃなかったわね」


 前はカップにアイスクリームがあっただけだ。今回はアイスクリームにプリン、いろいろな冷えた果物が乗っている。

 一つのフルーツパフェに皆の視線が集まり、食べたそうにしているので、皆の分のフルーツパフェを冷凍庫から出す。


「ユナさん、お手伝いします」


 アンジュさんがやってきて、申し出てくれる。

 わたしが冷凍庫から出して、アンジュさんが皆の前に運んでくれる。国王、王妃、ティリアと運び、フローラ様の前に置こうとする。


「アンジュさん、フローラ様の分は別にあるので、他の人にお願いします」

「わかりました」


 フルーツパフェがフローラ様以外に配られる。

 そして、最後にフローラ様の前に特別製のフルーツパフェを置く。


「くまさんだ~」


 そう、フローラ様の前に置かれたフルーツパフェはアイスクリームがクマの顔の形になっている。クッキーや果物を使って、装飾してある。


「あら、フローラ様の分だけ、特別製なのね」


 エレローラさんが自分のフルーツパフェとフローラ様の前にあるフルーツパフェを見比べる。なにか、欲しそうにしている。


「全員分を作るのが面倒なので、フローラ様だけですよ」


 さすがに手間がかかるので、全員分は作らなかった。

それに国王がクマの形をしたフルーツパフェを食べるのは絵面的に問題がある。 だから、クマのフルーツパフェはフローラ様の分だけになる。

 最後にわたしはスプーンとフォークを用意する。フローラ様はフォークを持つとわたしを見上げる。


「たべていいの?」

「いいよ」


 わたしが許可を出すと、フローラ様は少し悩んで、持っているフォークを果物に刺して口に運ぶ。


「つめたくて、おいしい」


 果物も冷えている。今度はシャーベットを作ってもいいかな。


「見たことがない果物もあるな」


 そう言って、国王は輪切りになったバナナを口にする。

 この辺りだと、バナナは手に入らないのかな?


「美味しいな」

「本当ね」

「おまえはどこから、こんな果物を手に入れてくるんだ?」

「う~ん、いろいろなところから?」


 タールグイのことは言えないので、誤魔化す。


「なぜ、疑問形なんだ?」

「乙女の秘密だからだよ」

「乙女って」


 目の前にクマの格好した乙女がいるでしょう。目が悪いのかな?


「どの果物も美味しいし、プリンもある。味も一つじゃないから、楽しめる。色とりどりの果物が乗っているから、豪華に見える。王族のパーティーに出しても目立つわね」


 果物はバナナ、オレン、モモ、イチゴ、さくらんぼ、ぶどうが飾られている。


「ユナちゃん、飾りつけのセンスもあるわね」

「服のセンスはないけどな」


 エレローラさんが褒めてくれているのに、国王がわたしの格好を見る。

 別にわたしが選んで着ているわけじゃないよ。センスがないのは、わたしにクマの着ぐるみを着させた神様だ。


「なにを言っているのよ。とっても可愛いでしょう」

「可愛いと、着たいのは別だぞ。おまえさんは、着たいと思うのか?」

「う~ん、娘たちに着せたいわね」


 そのエレローラさんの言葉にフローラ様と王妃様以外の全員がシアのほうを見る。


「お断りします」


 シアは丁寧に母親の希望を断る。


「ええ~、マリクスも似合うと思うわよね?」

「えっと、その」


 いきなり話を振られてマリクスは困り始める。

 マリクスはエレローラさんとシアを見てから口を開く。


「本人が嫌がることは、しないほうがいいと思います」


 悩んだ結果、シアを擁護する感じに答える。

 でも、クマの着ぐるみを着ることが、嫌がることなんだ。

 まあ、わたしがシアの立場だったら、同じ気持ちなので、責めることはできない。


「母親のお願いを断るなんて、意地悪ね。それじゃ今度、ノアにお願いしてみようかしら」


 ノアなら、喜んで着そうだ。くまさんの憩いの店の制服も着たがったし。

 エレローラさんはそんなことを言いながら、フルーツパフェを食べる。


「フローラ様、美味しいですか?」

「うん、おいしいよ」


 満面の笑顔で答えてくれる。

 どうやら、嫌いな果物はなかったみたいだ。

 フローラ様は果物を食べながら、クリームが付いたプリンを食べたりする。口にクリームが付いているので、ハンカチで拭いてあげる。


「くまさん、つめたくておいしいよ」


 フローラ様はくまのアイスを食べる。初めは食べるのを戸惑っていたけど、ひとくち食べると、クマのアイスはじきに消えていった。


「果物も美味しいけど、プリンもクリームも合うわね。それにこの冷たい食べ物がおいしいわ。アイスクリームだっけ?」


 エレローラさんがアイスクリームを口の中に入れると美味しそうにする。

 国王も王妃様も美味しそうに食べている。


「暑いときにはいいでしょう」

「確認だが、城の外ではこんなものが食べられているのか?」

「う~ん、売っているところは見たことはないわね」


 国王はエレローラさんから、マリクスとシアのほうへ視線を向ける。


「自分も知らないです」

「わたしはユナさんから頂きました」


 2人の答えに国王がわたしに視線を向ける。


「もしかして、またなのか?」

「またって?」

「誰も知らない食べ物かって意味だ」

「知っている人は知っているよ」


 わたしが考えた食べ物じゃない。


「おまえは、いったいどこから……」


 国王はなにか言いたそうにしたが、口を閉じた。


「まだ、食べたいようだったら、いくつか置いていくよ」

「ああ、そうだな。頼む」


 フルーツパフェが好評に終わり、食べ終わったフローラ様とティリアはくまきゅうとくまゆると遊んでいる。それを微笑ましそうに王妃様が見ている。

 シアはエレローラさんに着ぐるみの格好を着させられようとしているが、一生懸命に断っている姿がある。

 国王陛下が騎士について語っている。それをマリクスが緊張しながら聞いている。

 わたしは冷凍庫から残りのフルーツパフェを出すと、アンジュさんが城の冷凍庫に運んでいく。もちろん、ゼレフさんとアンジュさんの分もある。


 それから、国王とエレローラさんは仕事に戻り、それと同時にマリクスとシアも去っていく。


「ユナさん。今日はありがとう。少し、勉強になった気がする」

「ユナさん、試合もそうだけど、フルーツパフェも美味しかったです。また、食べさせてくださいね」


 そして、わたしも帰るので、フローラ様とくまきゅうのお別れの時間になる。


「約束したよね」

「う、うん」


 フローラ様は悲しそうにくまきゅうから離れる。くまきゅうも「くぅ~ん」と鳴いてから、わたしのところにやってくる。その様子を見たティリアも黙ってくまゆるから離れる。

 どうやら姉として、我がままを言うことはしないみたいだ。


「くまきゅう、くまゆる。またね」


 フローラ様は小さな手を振る。


「「くぅ~ん」」


 くまきゅうとくまゆるも鳴いて返事を返す。

 わたしはくまゆるとくまきゅうを送還させる。

 フローラ様は悲しそうにするが、くまゆるのぬいぐるみを持ったアンジュさんが現れ、くまゆるぬいぐるみをフローラ様に渡す。

 フローラ様はくまゆるぬいぐるみを抱きしめる。

 どうやら、ぬいぐるみが役にたっているみたいだ。





本当はマリクス視点で、王族に囲まれて緊張するマリクスを書こうとしたのですが、フルーツパフェの話を書こうとするとユナ視点でないと書けないので、今回は断念しました。

時間があればSSの方で書ければと思います。


次回の投稿より、新章に入ります。

楽しみにしていたければと思います。

これからもよろしくお願いします。


次回の投稿はなにもなければ通常通り3日後にさせて頂きます。

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[一言] 別に同じ話でも別視点でガンガン書いてええんやで()
[良い点] 安心する面白さ [気になる点] エレローラさんの体重・・・ [一言] いつの間にかフローラ様が「おいちい」から「おいしい」になってる!! ちゃんと絵本読んで成長してるんだな~
[気になる点] ここの文で  くまきゅうとくまゆるも鳴いて返事を返す。  わたしはくまゆるとくまきゅうを送還させる。  フローラ様は悲しそうにするが、くまゆるのぬいぐるみを持ったアンジュさんが…
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