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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、和の国に行く
431/904

426 クマさん、学生組に捕まる

 ノアと熊に会いに行ってから、わたしはのんびりと過ごし、引き籠り生活になっている。

 でも、テレビもゲームもパソコンも漫画も小説もない部屋では引きこもりも長くは続かない。

 わたしは出かけることにして、引きこもり生活を早々に終える。三日と持たなかった。でも、引きこもりの三日坊主は良いことになるのかな?

 わたしはキッチンであるものを作り、クマボックスにしまう。


「くまゆる、くまきゅう、出掛けるよ」


 わたし以上にだらけているくまゆるとくまきゅうに声をかける。飼い主に似るって言うけど、わたしに似たんじゃないよね?

 わたしはくまゆるとくまきゅうを送還させて、クマの転移門がある部屋に移動する。扉を開けて、移動したのは王都のクマハウス。

 リッカさんとガザルさんがどうなったか気になるところだけど、今日はフローラ様に会いにお城に向かう。


「これはユナ殿。お久しぶりです。フローラ姫にお会いでしょうか?」


 門番に声を掛けられる。初めは驚かれたものだけど、名前で呼ばれるようになった。もっとも、わたしは相手の名前は知らないんだけど。


「そうだけど。会いに行っても大丈夫?」

「はい、大丈夫です。フローラ様もお待ちになっていると思います。いつも黒いクマのぬいぐるみを持ち歩いています」


 黒いクマのぬいぐるみってことは、くまゆるぬいぐるみだね。たしか、アンジュさんの話では汚れても良いように、出歩くときは黒いぬいぐるみのくまゆるらしい。部屋ではくまきゅうぬいぐるみを抱きしめているらしい。

 ちゃんと、プレゼントしたぬいぐるみを使われているようで嬉しい。ぬいぐるみは汚れたら、洗えばいいし。ボロボロになれば、新しいぬいぐるみをプレゼントすればいい。

 飾られて、放置されるよりはボロボロになるまで、抱きしめてもらったほうがぬいぐるみも喜ぶはず。

 でも、投げ飛ばしたり、腕や足を持って、振り回すのはやめてほしい。

 孤児院で一度だけ、くまゆるぬいぐるみとくまきゅうぬいぐるみが空を飛んでいたのを見た。

 あれは悲しいね。


 そして、門兵に挨拶をしてお城の中に入ると、門兵の1人が駆け出していく。

 うん、いつもの光景だ。

 予想通りなので、ちゃんと国王陛下の分も用意はしてある。その辺りの抵抗は諦めた。


「ユナ!」


 わたしは周囲の風景を見ながら、フローラ様の部屋に向かっていると。どこからか、女の子の声で名前を呼ばれる。名前を呼んだ人物を探すと、すぐに見つけることができた。わたしに向かって、長い髪を揺らしながら走ってくる者がいるからだ。


「ユナ、お城に来ていたのね」


 わたしを呼び止めたのはこの国のお姫様。国王の娘のティリア姫だ。フローラ様の姉である。

 でも、お城でティリアに会うのは珍しい。


「もしかして、わたしに会いに来たの?」

「フローラ様だよ」

「そこは嘘でもティリアに会いに来たって言うところじゃない?」


 どこのナンパ男ですか。そんな調子が良いことを言われても、嬉しくないと思うんだけど。

 わたしがティリアと話をしていると、ティリアの後ろから、走ってくる者がいる。


「ティリア様~。急に走りださないでくださいよ」


 見知った顔が二つやってきた。


「だって、お城の中をクマが歩いていたら、普通、追いかけるでしょう?」

「ユナさんを見つけたら、嬉しい気持ちはわかるけど。だからって、急に走らないでください」

「でも、声はかけてほしい」

「2人とも、ごめん」


 ティリアのあとにやってきたのは、シアとマリクスの2人だった。

 お城でティリアに会うことはあるかもしれないけど。シアとマリクスに会うのは珍しい。


「でも、どうしてユナさんが王都にいるんですか?」

「しかもお城に」


 わたしが2人に思っている疑問を逆に尋ねられた。


「わたしはフローラ様に会いに来ただけだよ」

「ユナは、いつもフローラに会いに、美味しい物を持ってきたり、フローラが喜びそうな物を持ってくるのよ」


 まあ、お土産がなくても、フローラ様ならくまゆるとくまきゅうがいれば喜んでもらえると思うけど。なんとなく、お城に来ると、お土産を持ってくる習慣がついてしまった。

 たぶん、その原因になったのは、とある大人たちのせいだと思う。


「ぬいぐるみなら、学園祭のときにプレゼントしたでしょう」


 学園祭でティリアに会ったとき、くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみが欲しいと言うので、プレゼントした。


「ぬいぐるみって、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのぬいぐるみのこと?」


 シアがぬいぐるみって単語に反応する。


「ええ、ユナにもらったの」

「いいな。こないだ、クリモニアの家に帰ったとき、ノアの部屋にあったけど。ユナさん、わたしもぬいぐるみが欲しいです」

「別にいいけど。本当に欲しいの?」


 別に年齢のことを言うつもりはないけど。シアの年齢になると微妙なお年頃だ。

 まあ、わたしも部屋に飾っている。


「くれるんですか?」

「ちなみに、どっちが欲しい?」

「えっ、両方くれないんですか!?」


 わたしの質問にシアは驚く。


「冗談だよ。シアはくまゆるとくまきゅうのどっちが好きかなと思って」

「どっちも可愛いから、選べないですよ」


 まあ、わたしも選ぶことなんてできない。どちらかを選ぶなんて、究極の選択だ。

 もし、片方しか助けられない場合、どちらを助ける? って問いがあるけど。両方、大切だったら選べないよね。

 わたしはクマボックスから、くまゆるぬいぐるみとくまきゅうぬいぐるみを出して、シアに渡す。


「ユナさん、ありがとう」


 シアは嬉しそうにくまゆるぬいぐるみとくまきゅうぬいぐるみを抱きしめる。


「それで、シアとマリクスはどうしてお城に?」

「わたしはお母様に付いてきました。そしたら、ティリア様に会って」

「暇だったので、お茶にお誘いしました」

「俺は親父に兵士の練習に参加させてもらうために来たんだけど、2人に捕まった」

「人聞きの悪い。練習に参加できずに、つまらなそうにしていたから、誘っただけでしょう」


 なんでも、練習に参加するはずだった兵士の部隊が仕事に出てしまい、練習が中止になったそうだ。

 でも、3人ともいるってことは、学園は休みなのかな?

 わたしが3人のことを見ていると、マリクスがわたしを見ている。


「なに?」


 わたしが尋ねるとマリクスは少し言いにくそうに口を開く。


「……ユナさん。暇だったら、俺の剣の相手をしてくれないか」

「剣の相手?」

「ユナさん、強いし。あとルトゥム様と試合をしたんだろう。シアたちはその試合を見たのに俺だけ見ていないし」

「見たのは、ティリア様とわたしだけで、ティモルとカトレアは見ていないよ」

「そうだけど。あの試合を見た知り合いから聞いたけど、凄い試合だったんだろう。ユナさん、頼むよ」


 マリクスは手を合わせて頼むが、分からないことがある。


「その前に聞きたいことがあるんだけど、そのルトゥムって誰?」


 わたしの脳にそんな名前の人物と試合などをした記憶はない。

 でも、わたしの言葉に3人はアホの子を見るような、呆れるような目でわたしのことを見る。


「ユナさん、本当に言っています?」

「ルトゥム様と試合したんだよな」

「だから、そのルトゥムって誰?」


 知らないものは知らない。


「誰かと勘違いしていない?」

「どうやら、本当みたいです」

「信じられない」

「ユナさんがわたしのために、学園祭で試合をした騎士隊長ですよ」


 …………ぽん。

 わたしは片方のクマさんパペットの口を広げて、もう片方のクマさんパペットで叩く。


「ああ、あのムカつくおじさんのことね」


 どうやら、学園祭でシアのために試合をした相手の名前だったみたいだ。

 ルトゥムとか言うから、すぐに思い出せなかった。


「ユナさん、本当に忘れていたんですか?」

「だって、そんなおっさんの名前なんて覚えていないよ」


 学園祭で喧嘩した相手って言ってくれたら、すぐにわかったのに。名前を言われても、わたしが覚えているわけがない。


「おっさん……」

「ルトゥム様を、おっさん呼ばわりするのはユナさんぐらいですね」


 マリクスは呆れ、シアは笑う。


「でも、ユナさんと試合って、マリクス死にたいの? ルトゥム様だって勝てないのに」

「誰も黒虎(ブラックタイガー)を倒すユナさんに、勝てると思っていない。ただ、時間があれば手合わせをと思っただけだ。強い人と試合するのは良い勉強になるからな」


 マリクスは尊敬するような眼差しでわたしを見ている。

 本当に人は変わるもんだね。初めて会ったときの録画があったら、マリクスに見せてあげたいね。


「う~ん、ユナさんと手合わせか。それなら、わたしもお願いしようかな」


 マリクスに続いて、シアまでそんなことを言いだす。


「でも、ティリアとお茶をするところだったんじゃないの?」


 面倒臭いので、逃げ道を探してみる。


「お茶でもしようと思っていたけど、わたしもユナの戦うところを見てみたいかな」


 ティリアまで、マリクス、シアに続く。

 わたしは引きこもりを止めて、フローラ様に会いに来ただけなのに。


「わたしはフローラ様に会いにいかないといけないから。それに他の人がいるところで、あまり目立つことはしたくないから」


 わたしは逃げるように言う。

 試合となれば、場所が限られる。練習している兵士や騎士がいるかもしれない。そんな中で試合なんてしたくない。


「それなら、奥の室内訓練場なら、使っていないから大丈夫なはずよ」


 わたしが逃げようとしているのに、ティリアが逃げ道を塞ぐ。


「ティリア様、いいのですか?」

「いいよ。許可なら、わたしがしておくから。それじゃ、ちょっと、室内訓練場の鍵を借りてくるね。場所はわかるよね」


 どんどん、話が進んでいく。

 わたしはここに来た目的を再度、口にする。


「わたしはフローラ様に会いに行くんで」

「そっちも大丈夫。わたしがフローラを呼んでくるよ。それならいいでしょう? 室内場の鍵を借りて、フローラを連れていくから、シアとマリクスは先にユナと訓練場に行っていて」


 ティリアはそう言うと、わたしの返答を聞かずに走り出す。

 残されたわたしは、マリクスとシアと一緒に訓練場に行くことになった。




フローラ様に会いに来ましたら、ティリアとシア、マリクスの三人に捕まりました。

久しぶりの登場ですね。

※一応、確認したのですが、シアがぬいぐるみをもらっていましたら、すみません。


※今週末から、来週にかけて書籍の仕事が入ることになっています。そのため、来週はお休みになるかと思います。

あと、感想の返信もできないかもしれませんが、ご了承ください。

 次回の投稿は大丈夫なはずです。

 


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― 新着の感想 ―
[一言] う~ん、やっぱなんだかんだで意地でもちっこいくまさんを離そうとしなかったあの母親の娘なだけあるねぇ~wwwww そしてエレローラさんも似た感じのとこあってという事は・・・がんがれ王様wwww…
[一言] ティリアとシア、ちょっとワガママで嫌いだわ〜。少しは諦めること覚えようよ。ユナちゃんが困ってるじゃないか〜。地味にイライラする。ノアの方がまだ素直。お話なんだけど読んでたまに出て来るとイラッ…
[一言] 学園の休みを知るためにカレンダーを貰わないんですね。 時計もこの世界には無いような。砂・日時計なら作れるかも。
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