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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、ドワーフの街に行く
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377 クマさん、押し花を作る

 クリモニアに戻ってきた。

 クマバスの中で寝ていた子は目を擦りながら帰っていく。元気のある子供はコケッコウに会いに走り出す。その後をリズさんが追いかける。


「ユナさん、今回はありがとうございます。子供たちも楽しかったと思います。ユナさんに会ってから、子供たちに笑顔が増えました。これもユナさんのおかげです」


 元気に駆け出す子供たちを嬉しそうに見る院長先生。

 院長先生は小さく頭を下げると、小さい子の手を握り孤児院に帰っていく。そんな姿をクリフが見ている。


「そうだな。俺の監督不行届で、あの子供たちの笑顔を消していたんだな」


 クリフは小さな声で呟く。この街のトップであるクリフに責任は無いとは言わないけど、部下だった男が横領とかしていればね。ただ、早く気付いていればと思う。

 どこの世界でも、トップがしっかりしていても、下が優秀とは限らない。テレビでも会社のお金を使い込んだとかの話はよく聞いた。でも、それを管理するのが上に立つ者の仕事だ。人を扱うのは難しい。

 そう考えると、もしお店で働く子供たちが悪いことをしたら、わたしの監督責任になるのかな? まあ、子供たちが院長先生やリズさんに迷惑がかかるようなことはしないと思うけど。

 もし、他人に迷惑をかけるようだったら、大人が責任を取るしかない。大人のわたしとか、わたしとか。でも、そうならないようにしないといけないね。

 院長先生と子供の背中を見ていると、ニーフさんがやってくる。


「ユナちゃん、今回はありがとうね。町に戻って知り合いに会ったら、心につっかえていたものが取れて、一歩踏み出せた気がするの。これもユナちゃんと院長先生のおかげよ」


 ニーフさんがお礼を言う。知り合いに会いに行くように言ったのは院長先生だ。わたしはミリーラの町に連れていっただけで、なにもしていない。

 ニーフさんは頭を下げると、小走りで子供たちを追いかける。

 そんなニーフさんをアンズとミリーラ組が嬉しそうに見ている。もしかして、ミリーラに帰りたいとか言い出さないよね。言い出したら、引き止めることはできないけど。


「それじゃ、わたしたちも明日から仕事頑張ろうか」

「お店は明後日からだね」

「ユナさん、楽しかったです。ありがとうございました」

「ユナちゃん、ありがとうね」


 アンズたちは手を振ってお店の方に向かって歩き出す。

 それから、モリンさん、カリンさん、エレナの3人もお礼を述べると去っていく。


「それじゃ、わたしたちも行くわね。ユナちゃん、とっても楽しかったわ」

「ユナお姉ちゃん、ありがとうね」

「ユナ姉ちゃんありがとう」

「楽しかった。でも、明日から、しばらく休みなく仕事だ」


 ティルミナさん家族も帰っていく。ゲンツさんは仕事を休んでいたから仕方ない。それに別に明日から仕事をするのはゲンツさんだけじゃない。孤児院の子供たちはコケッコウのお世話がある。アンズたちもモリンさんたちも開店に向けての準備がある。食材の仕入れにも行かないといけないし、お店の掃除もしないといけない。やることはたくさんある。

 休みがあるのはわたしとノアたちぐらいだ。


「それじゃ、ユナさん。明日、家で待っていますね」


 そうだった。ノアと押し花を作る約束をしていたんだ。

 ミサはグランさんに頼んで、数日はクリモニアに残ることになった。わたしが送っていっても良かったんだけど。グランさんはミサと一緒に帰ると言う。グランさんは孫娘のミサが可愛くて仕方ないみたいだ。

 ノアたちもお礼を言うとお屋敷に帰っていく。

 ルリーナさんとギルはマスリカとイティアと一緒に冒険者仲間として、食事をしにいくそうだ。


 全員帰り、わたし1人になる。わたしは1人で寂しく……。いや、子熊化したくまゆるとくまきゅうと一緒に家に帰る。2人はわたしの家族だから寂しくはない。くまゆるとくまきゅうと一緒にお風呂に入り、一緒に寝て、旅行の疲れを取る。



 翌日、旅行から帰ってきた次の日ぐらいはのんびりしたいけど、押し花を作る約束をしているので、フィナとシュリを連れてノアのお屋敷に向かう。

 お屋敷に着くとララさんが出迎えてくれて、ノアの部屋に案内してくれる。部屋にはノアとミサ、シアの3人が待っていた。


「ユナさん、待っていましたよ。フィナもシュリもいらっしゃい」

「今日はお招き、ありがとうございます」

「ありがとう」


 フィナが挨拶をするとシュリもフィナの真似をして挨拶をする。


「そんな、挨拶はいいから、さっそく作りましょう」

「はい!」

「うん!」


 ノアはフィナとシュリの手を取る。

 わたしはそんな3人の後を歩き、テーブルの前にやってくる。テーブルの上には押し花に必要な道具やら花が用意されている。


「この花は?」

「お姉様とフィナたちには花があるのに、わたしとミサは無いから買ってきたんです」

「別に用意しなくても、わたしが取ってきた花があるって言ったんだけどね」

「せっかく作るんです。いろいろな花があっても良いかと思います。フィナもシュリも好きな花を使っていいからね。その代わりに、2人が取ってきた花を使わせてくださいね」

「はい!」

「うん、いいよ」


 2人はノアの提案に快く承諾する。

 わたしはテーブルの上に、3人がタールグイで摘んできた花を出す。こちらも色とりどりの花がある。


「見たことがない花ですね」

「ノアは花に詳しいの?」

「いえ、そんなに詳しくはないです。ララが家に花を飾ったりしていますから、見たことがないと思ったぐらいです」

「わたしの家でも見たことがないですが、どの花も綺麗です」


 ミサが花を手に取る。

 貴族の2人が見たことがないのか。まあ、地域によって咲く花は違うからね。まして、動く島、タールグイの上に咲いていた花だ。タールグイが世界中を回っていれば、この辺りでは見たことが無い花があってもおかしくはない。

 もしかして、花屋さんをやれば商売になるかもと、脳裏をよぎるが面倒なので、すぐに却下する。なにより、わたしが花屋さんって、考えただけで苦笑がこぼれる。小学生の夢の1つによくお花屋さんってあるけど、わたしにはそんな可愛らしい夢は似合わない。


「ユナお姉ちゃん、どうしたんですか?」

「うん? なんでもないよ」


 自分が花に囲まれて花を売っている姿を想像したら、笑ってしまったとは言えない。フィナなら花屋さんは似合うかもしれない。花をお世話するフィナを想像してみる。可愛いエプロンをしたフィナが花の世話をする。クマの着ぐるみを着たわたしより、数十倍似合う。

 わたしがフィナのことをジッと見ていると、フィナは首を傾げる。


「それじゃ、押し花を作ろうか」

「ユナ姉ちゃん、どうやって作るの?」

「簡単だよ。やってみるから見てて」


 わたしは小さい白い花を手に取り、布の上に花を置く。そして、ピンセットを使って、花びらが綺麗になるようにする。いい感じになったら、布を載せる。


「シア、アイロンとって」

「はい」


 わたしはアイロンを受け取ると、布の上からアイロンを数十秒押し付ける。アイロンを離し、花から熱が抜けるのを待つと、またアイロンをかける。その作業を数回行なうと、押し付けられた花が色が残ったまま残る。

 それを見たシュリは小さな手で花を手の平に乗せる。


「花がぺっちゃんこになっちゃった」

「あとはこうやって、額の中に入れて飾れば、いつでも綺麗な花を見ることができるよ」


 まあ、細かい部分もあった記憶があるが、概ねこんな感じだったはず。


「シア姉ちゃん。アイロン、1つしかないの?」

「3つあるよ。2人ずつに分かれて作りましょう」


 そんなわけで、ノアとミサ、フィナとシュリ、わたしとシアに分かれる。

 それぞれが気に入った花を手に取り、押し花にしていく。次に額に飾るように花を並べる。


「ユナさん、こんな風にしたらどうですか?」

「いいと思うよ」


 シアは黄色や赤色の花を使って飾っていく。小学生の授業で作ったきりだけど、覚えているものだ。まあ、若干間違っていたとしても、大きな失敗をしなければ問題はない。

 それぞれが思い思いに花を並べていく。

 乾燥剤が必要か分からないけど、シアが用意してくれたので、額の中にいれる。

 そして、それぞれの作った押し花が完成する。


「う~、やっぱり、ユナさんが一番上手です」

「そんなことないよ。ノアも上手だよ」


 ノアの押し花は明るい色の花を中心に使って、少し派手な感じになっている。でも、元気さがある押し花だ。ノアらしいと言えばノアらしい。ノアは自分の部屋に飾るそうだ。

 それに対してミサの押し花は薄い花を中心に出来上がっている。街に残っている両親にプレゼントするそうだ。

 わたしはフィナとシュリのほうを見る。

 シュリの押し花は大きな花を中心に出来上がっている。


「お母さん喜んでくれるかな?」

「シュリが一生懸命に作ったんだから、喜んでくれるよ。フィナも上手にできたね」

「はい、わたしとシュリの部屋に飾ろうと思っています」


 心の中でゲンツさんには誰も贈らないんだな~と思いつつ、口には出さないでおく。


「シアはエレローラさんに?」

「お母様にわたしが押し花をプレゼントするより、ノアがプレゼントしたほうが喜ぶから、これはカトレアにでもプレゼントします」

「わたしがお母様にプレゼントするんですか?」

「そのほうが喜ぶよ。花も残っているし、作ってくれればわたしがお母様に渡すよ」

「わかりました。それじゃ、作ります。でも、お姉様も一緒に作りましょう」


 ノアとシアは2人でエレローラさんへのプレゼントする押し花を作り始める。

 それを見た他の3人も新たな押し花を作り出す。


 わたしは作ってもプレゼントする相手がいない。部屋に飾っても良いんだけど。そんな女の子らしいものはわたしには似合わないような気がする。まあ、クマのぬいぐるみを飾っている段階で似合っていないんだけど。

 それなら、フローラ姫にプレゼントしたら、喜んでもらえるかな? でも、クマじゃないからフローラ姫が喜ぶか微妙だ。お城には綺麗な花壇もあるし、押し花を飾る必要はない。

 それなら、押し花でクマの顔を作る? 考えてみるが無理そうなので諦める。まあ、喜んでもらえるか分からないけど、とりあえず、フローラ姫にプレゼントする押し花を作ることにする。

 フィナが「お店に飾ってもいいですか」と聞いてきたから了承した。確かに、お店に飾るのは良い考えだね。わたしが作った押し花も自分の部屋に飾るより、有意義なアイディアだ。




桜の花の押し花も考えたんですか、一応危険な可能性がある花で作るのはあれかと思い、断念しました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 15巻小説の最後に何か違和感があったので読み返したらなるほどと思いました。 ティルミナさんグッジョブですw
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