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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、砂漠に行く
327/904

322 クマさん、取引をする

 ウラガンたちにスコルピオンを見せることになり、裏庭の使用許可をバーリマさんにもらうことになった。カリーナは「わたしがいいって言っているのに」と少しいじけていたが、やっぱり、この屋敷の主人であるバーリマさんの許可は必要だ。


 バーリマさんに頼むと、快く承諾してくれたので、みんなで裏庭に向かう。

 裏庭に集まったのはジェイドさんたちパーティーにウラガンパーティー。それにカリーナにバーリマさんも参加することになった。

 リスティルさんはスコルピオンを見て、驚いてお腹の子に何かあったらまずいので参加はしない。カリーナの弟もトラウマになるかもしれないので、参加はしない。


「それじゃ、真ん中に出すから、少し離れて」


 わたしはみんなに注目される中、クマボックスからスコルピオンを取り出す。

 ドン!

 普通のスコルピオンと違って、黒みのかかった大きなスコルピオンが裏庭に現れる。

 ウラガンたちやバーリマさんから、ため息が出る。


「でかい。これを本当に嬢ちゃんが……」

「すげえ」


 ウラガンたち冒険者は驚く。改めて見ても大きい。普通のスコルピオンだって、わたしからしたら大きいのに、ボス級のスコルピオンは化け物級だ。

 一度見ているジェイドさんたちは、ウラガンほどの驚きはみせない。


「お父様、凄く大きいでしょう」

「ああ、カリーナの言う通りだな。この魔物の体の中に水晶板が……」

「わたし、こんな魔物とユナさんが戦うって言うから、凄く心配したんですよ」


 カリーナがバーリマさんにどんな状況だったか話し始める。


「もう、ユナさんが戻ってくるまで、心配で、心配で、仕方ありませんでした。いくら待っても、戻ってきませんでした」


 ふかふかのくまゆるに抱き付いて寝ていたからね。


「なのにユナさんは何もなかったように戻ってくるんですよ」

「それじゃ、ユナさんが怪我をして、戻ってくれば良かったのかい?」


 いかに心配していたことを話すカリーナに、バーリマさんが優しく問い掛ける。


「そ、そんなことないです」

「なら、喜んだ方がいい。たしかに、カリーナは凄く心配したかもしれない。でも、ユナさんはこの大きなスコルピオンを倒して、無事に戻ってきたんだ。そのことを喜んだ方がいい。誰のために命をかけて、この魔物と戦ったのか、よく考えなさい」

「お父様……」

「カリーナが心配している間もユナさんは戦っていたんだよ。スコルピオンの尻尾を切り、どれだけ戦いが大変だったか、カリーナもこの魔物を見ればわかるだろう」

「……はい」


 ううぅ、なにか良い話が始まっているんですが。

 初めの頃はちゃんと戦っていたけど、最後はスコルピオンが海水で溺れ死ぬまで、くまゆるに抱き付いて寝ていた。もちろん、そのことはくまゆるとの二人の内緒で、話すことはできない。


「ユナさんはカリーナに心配をかけないように、何もなかったようにしてくれているんだよ」


 そんなことないです。お嬢さんが心配している間、寝てました。

 バーリマさんの話を聞いていると居たたまれなくなってくる。

 このまま、話を聞いていると申し訳なくなってくるので、少し離れることにする。

 ジェイドさんたちの方に移動すると、ウラガンたちがスコルピオンの周りをぐるぐると回っている。

 

「こんな、でかいスコルピオンは初めて見た」

「噂で聞いたことはあるが、実際にいるんだな」


 ウラガンはスコルピオンを触ったりしている。


「よく、こんな大きな魔物を倒せたな。実際に見るまで信じられなかったが、証拠を見せ付けられると、信じるしかないな。でも、ジェイドたちがクマの嬢ちゃんを信用するわけがわかった」

「まあ、仕方ないわよ。初めてユナちゃんを見て、強い冒険者と思う人はいないと思うわよ」

「俺様の押しを軽く受け止めるぐらいだからな」


 そういえば、初めに会ったときにカリーナを邪魔そうに突き飛ばそうとしていたね。


「そんな、怖い顔をするな。あのときは、この街に来たばかりで疲れていたんだよ。それなのに、そこの娘がしつこかったから」

「うう……」


 話を聞いていたのか、カリーナが申し訳なさそうにする。


「でも、疲れているからと言って、子供を突き飛ばしてもいいってことにはならないよ」

「だから、そのことは謝っただろう」


 ウラガンはカリーナの方に視線を向ける。


「もう、謝ってもらいましたから、気にしてません。それにしつこくしたのは事実ですから」


 確かに、カリーナはしつこくウラガンに付きまとっていたね。


「それで、ここの甲殻はなんで無いんだ」


 スコルピオンを見ていたウラガンは水晶板を取り出した箇所を見る。そこは水晶板があったところで一部の甲殻が剥がされている。


「わたしたちが解体して、体内にある探し物を取り出したのよ」

「尻尾は?」

「ユナちゃんが切ったみたいよ」


 わたしが説明するよりもメルさんが説明をしてくれる。楽だからいいけど。

 ウラガンはスコルピオンの甲殻に触ったり、コンコンと軽く叩いたりしている。


「それにしても硬いな。これで防具を作ったらいいかもな」

「それ、俺も思った」


 ウラガンの言葉にトウヤが反応する。


「それにスコルピオンの甲殻は熱にも強いんだろう。その親玉の甲殻なら、その効果は高くなるかもしれないな」


 そういえば、炎系の魔物って遭遇したことがないけど、火山地帯とかに行くといるのかな?

 雪山にスノーダルマやスノーウルフもいたし、炎系の魔物もいるかもしれない。

 今度、行ってみようかな。クマさん装備があれば火山地帯でも大丈夫だろうし。

 でも、近くに火山なんてあるかな?


「嬢ちゃんは、この素材で防具を作ったりは…………しないな」


 ウラガンはわたしを見ると、自分で勝手に答えを出してしまう。

 たしかに作る予定は無いけど、決めつけは良くないよ。

 それに、その何か言いたそうな顔はなに? 言いたいことがあればハッキリ言ったらどうかな。そのときはクマさんパンチが飛ぶけど。


「ユナちゃんは、この格好だからいいのよ。そんな冒険者みたいな防具を作っても似合わないわ」


 メルさんが擁護してくれるけど、それは褒めていないよね。どちらかと言うとけなしている?

 でも、わたしもクマさん装備が無かったら、ゲームみたいに倒した魔物の素材で装備を作ったりしたのかな?


「それで嬢ちゃんは冒険者ギルドに報告しないなら、これはどうするんだ?」

「うーん、なにも考えていないけど、知り合いに解体をしてもらったら、アイテム袋に仕舞っておくよ」

「売ったりしないのか?」

「売ると目立つからね。だから、もしお金が必要になったら売るよ」


 お店の売上もあるし、トンネルの使用料も入ってくる。なにより元の世界で稼いだお金も余っている。現状ではお金には困っていないから、売る必要がない。


「なら、少し俺に売らないか?」

「欲しいの?」

「冒険者なら欲しいだろう。自分の命を守る防具だ。こんな防具に良い素材に会えることは滅多にない。手に入るときに、手に入れないと後悔するからな。もちろん、嬢ちゃんが嫌ならそれでもいいが」

「確かにそうだな。少しでも強度が強く、鉄より軽いならなおさらだな」


 ジェイドさんがウラガンの言葉に同意する。


「ジェイドさん。売るとしたら、いくらぐらいするの?」

「わからない。ウラガンも言ってるが、出回らない物は相場が無いようなものだからな」

「それじゃ、売りようがないんだけど。普通のスコルピオンの二倍ぐらい?」

「そんなに安くないだろう」


 ジェイドさんに呆れたように見られる。

 なにか、面倒くさい。


「それなら、口止め料として、今回はそのぐらいでいいよ」

「…………」

「…………」


 みんなから、呆れた視線を向けられる。

 だって、面倒なんだから、仕方ないじゃない。

 冒険者ギルドや商業ギルドに行けば面倒ごとになるし、欲しいって言っているのを無下にすることもできない。これが知らない冒険者だったら無視をするけど。

 一応、今日は一緒に戦った冒険者だ。ワーム討伐や解体作業をサボったりしたら、わたしだってこんなことは言わない。真面目に討伐や解体をしているウラガンだから、今回に限り言っている。


「それじゃ、交換しようぜ」

「交換?」

「ああ、これをおまえさんにやる」


 ウラガンはアイテム袋から、布袋を5つ取り出す。

 なんだろう。お金でも入っているのかな?


「今日、得たワームの魔石500個だ。これと甲殻の一部と交換だ。もちろん、嬢ちゃんがこのスコルピオンを倒したことは黙っておく」


 魔石500個か。使い道あるかな? でも、ただであげようとしたスコルピオンの一部を魔石と交換して、さらに口外しないと約束してくれるなら、わたしとしても悪い取引ではない。


「別にいいけど。いいの?」

「時間をかければワームぐらい倒せる。でも、このスコルピオンの素材は手に入れようとしても簡単には手に入らない。ハッキリ言って、俺たちの方が得している。出す場所に出せばかなりの金額になるはずだ」

「おい、ちょっと待て、勝手に話を進ませるなよ。その魔石は俺たちの分も入っているんだろう」


 勝手に魔石を取引材料とするウラガンにトウヤが止めに入る。


「お前たちも、この甲殻は欲しいんだろう?」

「まあ、それはな」

「だから、甲殻を魔石と交換する。もちろん、おまえたちの分もある。人数的に俺たちの方が多いから、少し多目に貰うが、魔石の取り分も俺たちの方が多いから問題はないだろう」


 たしかに魔石の割合がどうなるか分からないけど。ウラガンたちが多く貰うことになっている。

 ジェイドさんたちは考え込む。


「ユナは本当にそれでいいのか?」

「いいよ。ちゃんと約束を守ってくれればね」


 個人的にはお金より、魔石の方がいいかもしれない。

 いらなければ売れば良いだけだしね。


「それじゃ、有りがたく貰うことにするよ」


 ジェイドさんの言葉にトウヤが喜んでいる。


「それじゃ、ジェイドさんたちが解体してくれた甲殻でいいかな」


 わたしは水晶板を取り出すために剥ぎ取った甲殻の一部をクマボックスから出す。


「大きくないか?」


 甲殻の一部と言っても、くまゆるたちの数倍の大きさがある。


「面倒だから、ジェイドさんたちと分けて、余ったら、好きにしていいよ」

「ジェイド」


 ウラガンがジェイドさんに視線を向ける。それに対して、ジェイドさんは首を横に振る。ウラガンはため息を吐く。なに、その二人で分かりきった顔は。もしかして、そういう関係なの? 


「それなら、余ったらユナちゃんに返すってことでいいんじゃない?」

「そうだな。クリモニアまで届けに行けばいいか」


 ああ、多く渡したから呆れていたんだね。

 てっきり、目で通じ会うほど、仲が良いのかと思ったよ。


「本当にいらないからいいよ」

「それじゃ、本当にもらうぞ! いいんだな。返せって言っても返さないぞ!」


 ウラガンがわたしの言葉に再度確認する。


「いいよ。でも、喧嘩はしないでね」

「おい、ジェイド。おまえが預かれ。そして、王都で防具を作るぞ。余ったら、折半だ。それでいいな」

「でも、わたしから手に入れたことは言わないでね」


 商人や冒険者が売ってくれと来ても面倒だからね。

 ジェイドさんはスコルピオンの甲殻をアイテム袋に仕舞う。ジェイドさんが持っているアイテム袋はどのくらい入るのかな?

 かなりの量が入りそうだ。


「ユナ、おまえは分かっていないから、言っておくが、鋏と尻尾の部分が一番価値があるからな。簡単に売ったり、やったりするなよ」

「それなら、鋏の部分をあげようか?」

「だから、忠告したばかりで、そんなこと言うな。とにかく忠告はしたからな」


 わたしはジェイドさんの忠告を素直に受け取る。

 でも、鋏や尻尾の部分が価値があると言っても、クマさん装備があるわたしには必要がないんだよね。




次回、ピラミッド再突入できるかな?


申し訳ありません。

書籍作業の最終確認で時間がとれないので感想返しは出来てません。

来週から再開します。


表紙の画像貼りました↓

029先生が可愛く描いてくれました。

白くまコンビ、可愛いです。

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