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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、砂漠に行く
316/904

311 クマさん、フィナに連絡をする&ピラミッドに出発する

 ジェイドさんたちが参加してくれることになって、カリーナも嬉しそうだった。

 その日の夜、わたしは子熊化したくまゆるとくまきゅうを抱きながら、クマフォンに魔力を流す。


『ユナお姉ちゃん? どうしたの』


 クマフォンから数日ぶりのフィナの声が聞こえてくる。遠くにいても会話ができるって、本当にクマフォンは便利だね。


「そっちはどうなっているかなと思って、なにもない?」

『うん、大丈夫だけど……』


 クマフォンから聞こえるフィナの声は少し困ったような感じがした。


「どうかしたの?」

『カリンお姉ちゃんとアンズお姉ちゃんたちが、ユナお姉ちゃんみたいに、体のサイズを測るのを嫌がって……』


 そんなことか。でも、カリンさんやアンズの気持ちはわたしには分かるよ。フィナも、もう少し大人になれば、体のサイズを測られる怖さが身に染みてくるよ。

 でも、カリンさんもアンズもわたしよりも大きいからいいよね。そのことに関しては仲間ではない。


「それじゃ、サイズの方は?」

『シェリーちゃんが泣きそうになったら、測らせてくれたよ』


 シェリー、泣き落とし覚えたの?

 悪女になったら困るから、男性には使わないように教えないといけないね。


『違います。ユナお姉ちゃんに頼まれた仕事なのに、できないのが悲しかったみたいです』


 どうやら、わたしの心の声が漏れていたらしい。

 シェリーは悪女でなく、生真面目な大人になりそうだ。それはそれで心配になる。


「あとは大丈夫?」

『みんなに海に行く話をしたら、凄く喜んで、お母さんと院長先生が騒ぐ子供たちを静めるのに大変そうでした』


 フィナの声から、大変さが伝わってくるけど、フィナも子供でしょうって、突っ込みを入れたくなる。

 でも、喜んでくれているみたいで良かった。喜んでもらえるのが一番嬉しい。


「それで鳥のお世話をしてくれる方は大丈夫かな?」

『お母さんがミレーヌお姉ちゃんに話していたよ。それで、たぶん大丈夫だって』


 これで、問題点の1つが解決した。

 鳥の面倒を代わりに見てくれないと、予定を考え直さないといけなくなるからね。


「水着の方は?」

『なんかシェリーちゃんが凄いやる気になって、大変みたいです』

「どういうこと?」

『作るのが楽しいみたいで、ユナお姉ちゃんが描いてくれた水着以外も作っています。色や柄を考えたりするのが楽しいみたいです』


 わたしが描いたのはモノクロだったからね。色や細かい部分はシェリーに任せてある。


「そういえば、わたしの水着ってどうなったか聞いている?」


 サイズを測っただけで、わたしは水着は決めていない。

 なにが、良いってわけじゃないけど、変なのはやめて欲しい。


『ああ、ユナお姉ちゃん。ごめんなさい。お母さんが呼んでいます』

「いいよ。行ってあげて。もし、なにかあったら連絡を頂戴ね。クマの転移門があるから、すぐに駆けつけることはできるから」

『はい、わかりました。ユナお姉ちゃんも早く戻ってきてくださいね』


 通話が切れる。

 海に向けて順調のようだ。なら、早く解決をして、帰らないといけないね。



 そして、ピラミッドに行く当日。

 ジェイドさん以外にもう1つのパーティーが参加することになったらしい。

 出発するまえに、バーリマさんの家に集まり、顔合わせがおこなわれる。

 先にバーリマさんの家に泊まっているわたしが一番、ジェイドさんがやってきて、もう1つのパーティーがやってくる。


「こないだのクマ」


 部屋に入ってきた早々、男はわたしを見て言う。

 だれ? どこかで会ったことあったっけ?

 わたしが首を傾げていると、側にいたカリーナが教えてくれる。


「ユナさんがわたしを守ってくれたときの冒険者ですよ」


 ああ、あのときね。それじゃ、その後ろでわたしを見て、オドオドしているのはわたしのことをブラッディベアーと口にした冒険者か。

 そして、簡単に自己紹介などが行われる。

 パーティーは五人。リーダーは例の男で、名前はウラガン。他のメンバーの名前も聞いたけど忘れた。まあ、必要ないからいいよね。

 そして、バーリマさんから依頼内容の最終確認が行われる。

 でも、前日にすでに細かい話はしてあるらしい。今日は参加するメンバーの顔合わせと、依頼の内容の最終確認となる。


「それじゃ、俺たちはこのクマと娘さんをピラミッドまで、護衛をすればいいんだな」


 先日、カリーナを押し倒した冒険者はピラミッドまでの護衛らしい。どうやら、昨日バーリマさんと話し合った結果、そうなったらしい。

 そして、ジェイドさんたちはピラミッドの中まで付いてきてくれるとのこと。


「本当にピラミッドの中まで付いてきて、娘の護衛までよろしいのですか?」

「基本、ユナが守るってことなので、俺たちはサブ的に守らせてもらいます」

「それでも、助かります」


 バーリマさんは本当に心から感謝をする。

 まあ、実際に受けてくれたのは2つのパーティーだけだから、感謝もしたくなるんだろう。

 話し合いは終わり、わたしたちはピラミッドに向けて出発する。


 わたしはくまゆるに、カリーナはくまきゅうに乗って移動する。

 ジェイドさんたちはラガルートを二頭借りて、ジェイドさんとメルさん、トウヤとセニアさんが乗っている。ウラガンパーティーもそれぞれがラガルートに乗ってやってくる。

 ウラガンたちはわたしのクマを見ると驚くが、ジェイドさんが何かしらの説明をして、微妙な顔をしている。

 それにしてもトカゲに似たラガルートが並ぶ中、くまゆるとくまきゅうが並ぶと凄い場違いに感じる。

 まあ、それでも乗るならくまゆるとくまきゅうだけどね。


 ピラミッドの近くまでやってくると、肉眼で砂漠の中を移動するワームの姿が見える。

 クマの探知スキルを使ってみる。いるね。動いていないのもいるから、肉眼では分からないワームもいる。


「おい、数が多いぞ」


 ウラガンが声を出すけど、そんなことは、みんなわかっているよ。

 でも、みんなが見えていないものまで見えているわたしにはもっといるのがわかる。


「どうするんだ。固まって、一気にピラミッドまで駆け抜けるか?」

「ユナ、どうする?」


 ジェイドさんがわたしに尋ねる。


「どうして、そのクマに聞くんだ?」

「バーリマさんからも、なるべく、彼女の指示に従うように言われていただろう」

「おいおい、Cランクパーティーのリーダー様が何を言っているんだ。本当にこんなクマのお嬢ちゃんの指示に従うって言うのか?」


 ジェイドさんの言葉にウラガンは鼻で笑う。

 そういえばわたしのランクは知らないんだっけ?

 ちなみにウラガンパーティーはCに近いDランクらしい。ってことはCランクの依頼も受けたことがあるってことなのかな?


「そりゃ、従うさ。この中で一番強いんだからな」

「本気で言っているのか?」

「おまえさんもユナの実力を知れば、納得するさ」

「クマに従って死ぬのはごめんだぞ」

「そのときは逃げればいいさ。依頼人からも許可が出ているだろう」


 バーリマさんからも、危険を感じたら戻ってきても構わないと言われている。


「わかったよ。そのときは逃げさせてもらう」


 まあ、その辺りは自由にしていいよ。カリーナはわたしが守るから。


「それで、ユナちゃん。どうする?」


 メルさんが尋ねてくる。

 どうするかと言われても、わたしは探知スキルを見て、少し考える。


「面倒だから、全部倒しちゃおうか?」


 ピラミッドの中がどうなっているかわからないし、ピラミッドの中まで追いかけてきたら、それはそれで面倒だ。それなら、先に討伐した方が安全だし、帰りも楽になる。


「おいおい、本気で言っているのか?」

「どうせ、倒さないといけないし」


 今後のことを考えれば倒すことになる。それなら、それが後になるか先になるかの違いだけだ。


「ユナ、どうにかできるのか?」

「この前と同じでいいんじゃない。みんなには頑張ってもらうけど」

「マジかよ」


 トウヤが信じられないような表情をする。

 それが一番、楽でいい。下手に砂の中で倒すものなら、その死骸にワームが寄ってくるかもしれない。


「おい、俺たちにも説明しろ」


 わたしがワームを掘り出して、他のメンバーが止めを刺す。簡単なお仕事です。

 そのことをジェイドさんがわたしに代わってウラガンに説明してくれる。ジェイドさんのこの辺りの気遣いに感謝だ。

 先ほどから、トラブルにならないように、先回りしてくれている感じに対処してくれている。

 そういえば、バカレンジャーの扱いも上手かったよね。ジェイドさんはこの手の扱いが上手いのかもしれない。


「そんなことができるのか?」


ジェイドさんから説明を受けたウラガンは驚きの声をあげる。


「できるのは俺たちが保証する。問題は俺たちがワームが砂の中に潜る前に倒すことができるかどうかだ」

「ふふ、もし嬢ちゃんが、本当にそんなことができるなら、逃げる前に倒してやるよ」


 ジェイドさんいわく、ワーム単体は弱い。ただ、ワームが生息する砂地が問題で、砂の中にいるワームが厄介だという。それはウラガンも同様のようで、できるならやってみせろって感じだ。

 まあ、やらせてもらいますけどね。


「そんなわけだ。このクマの嬢ちゃんが砂からワームを出してくれるらしい。それを俺たちが叩く。それだけの仕事だ。一匹も逃がすんじゃねえぞ」


 ウラガンは仲間に声をかけると全員が大きな声で返事をする。

 ワームの数が分からないから言える台詞だね。みんなが思っているよりも多いよ。


「それで分け前はどうするんだ? 俺たちの方が人数が多いんだから、取り分は多いんだろうな?」

「わたしはいらないから、全部あげるよ」

「そうだな。俺たちは、討伐したあとピラミッドに行く。魔物解体をそっちでやってもらえるなら、俺たちの取り分の半分をやる」

「商談成立だな」


 ウラガンが笑う。ジェイドさんも笑う。

 この商談はどっちが勝ったのかな?

 ウラガンは報酬が多く貰えて嬉しそうだし、ジェイドさんは解体を押し付けることができて嬉しそうだ。

 これはワームが多くて、魔石などの報酬が多くて、喜ぶべきなのか。解体を押し付けられて、悲しむべきなのかは、ウラガンしか知る由がない。


「カリーナは危ないから、くまきゅうと一緒にここで残ってて。絶対にくまきゅうから離れちゃ駄目だからね」

「はい。ユナさん、気をつけてくださいね」

「大丈夫だよ。倒して、戻ってくるよ。くまきゅうもカリーナをよろしくね。もしものときは街に戻ってもいいからね」


 くまきゅうはちょっと嫌そうに「くぅ~ん」と鳴く。

 どうやら、カリーナを守るのが嫌なのではなく、わたしを置いていくのが嫌なみたいだ。


「わたしは大丈夫だから、いざとなれば、トウヤを犠牲にして逃げるから」

「おい!」


 聞いていたのか。わたしとくまきゅうの大事な話を盗み聞きするなんて、男として駄目だろう。

 まあ、そんなトウヤのことは無視して、くまきゅうを説得する。


「それじゃ、カリーナを降ろしたら、助けに来てね」


 わたしはくまきゅうの頭を撫でてあげると、くまきゅうは「くぅ~ん」と鳴いて、了承してくれる。

 そして、わたしはくまゆるに乗り、その後ろになぜかメルさんが乗ることになった。


「後ろで魔法使える人がいた方がいいでしょう」


 ってことだ。わたしにはくまゆるに乗りたいだけにしか見えないけど。


「剣を振り回すと、メルが危ないかもしれないから頼む」


 とジェイドさんに言われたら断れない。


「ふざけたら、落としますからね」

「そんなことしないわよ」


 そう言いながら、わたしの服を掴む。

 それから、セニアさんがカリーナの護衛を申し出て、くまきゅうの背中に乗る。

 どう見ても、くまきゅうに乗りたいだけだよね。


「カリーナは守るから安心して」


 でも、護衛をしてくれるなら安心だ。

 性格に難があっても、セニアさんのナイフの扱いは一流だ。ワームぐらいなら簡単だろう。


 それぞれの準備が完了すると、ワーム討伐作戦が実行される。

 くまゆるが走り出す。

 わたしの右後ろをラガルートに乗ったジェイドさんとトウヤが走り、左後ろをラガルートに乗ったウラガンパーティーが走る。

 クマさんパペットから空気弾が飛び、ウルフほどの大きさのワームが跳ね上がる。それをジェイドさんとトウヤが切り刻む。

 その後ろではウラガンパーティーは驚いている。そんな驚いている暇はないよ。

 わたしは右、左、右、右、左と空気弾を砂に打ち込む。そのたびにワームが砂から飛び出して、砂の上に落ちる。ワームは地面に落ちた魚のように跳ねて、砂の中に逃げようとするが、ウラガンパーティーも攻撃して逃がさない。さらに、メルさんが風魔法でワームを切り刻み、倒していく。

 いい感じだね。


「それじゃ、速度を上げるよ」


 くまゆるが速度を上げる。


「おい!」

「まて、クマ!」

「ふざけるな!」


 聞こえない振りをして、どんどん、ワームを掘りあげていく。大漁だね。ワームだけど。


「くそ!」

「おまえたち、砂の中に逃げ込ませるなよ」


 ウラガンも諦めたようで、頑張って追いかけてくる。

 まあ、無理そうだったら、わたしも攻撃に参加すればいい。

 あそこに5匹溜まっているね。大きな空気弾を打ち込むと、まとめて飛び出す。これがワームじゃなければ少しは嬉しいんだけど、どうも虫系は苦手だから嬉しくはない。

 わたしは探知スキルを使いながら、ワームが多く集まっている場所を重点的に狙い、攻撃をしていく。わたしたちが通ったあとには、ワームの死骸の道ができあがっていく。





そんなわけで出発です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 'ランクC'と'Cランク'の表記がバラバラなときがあります。
[気になる点] ユナが空気弾を打ち込むか、土魔法でワームを砂上に上げて、一気に風魔法で全滅させた方がカッコいい。
[良い点] セニアのカリーナ呼び捨てはないような。 依頼主&領主の娘で貴族であるカリーナを流れ者のいち冒険者が一般の子供のように扱うのは不自然。
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