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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、砂漠に行く
297/928

292 クマさん、蜂退治をする

 くまきゅうがオオスズメバチが飛んでいった方を見るので、視線を向けるがとくに変わった様子はない。

 

「どうしたの?」


 さらにくまきゅうは「くぅ~ん」と鳴く。そして、わたしの背中を押す。


「なに? 追いかけろって言うの?」


 くまきゅうはわたしの言葉に「くぅ~ん」と可愛らしい声で頷く。

 もしかして、オオスズメバチが飛んでいった方になにかあるの?

 わたしは探知スキルを使うと人の反応が出る。


「く、くまきゅう。人がいるなら、そんな可愛らしい声で鳴かないで、もっと慌てて!」


 わたしはくまきゅうに飛び乗るとオオスズメバチが飛んでいった方へ走り出す。

 すると、人の叫び声が聞こえてくる。


「うわあああああああああ、オオスズメバチだ~~~~~~~」


 見えた。

 数匹のオオスズメバチが男性に襲いかかろうとしている。男性は叫びながら、持っているナイフをブンブンと適当に振り回して、追い払おうとする。でも、オオスズメバチは男の周辺を飛んで、離れる様子はない。

 そんなオオスズメバチに向かって、わたしは風の刃を飛ばし、オオスズメバチの胴体を真っ二つにする。男性はわたしのことを気付く様子もなく、ナイフを振り回している。

 わたしは残りのオオスズメバチも魔法で倒し、周辺にはオオスズメバチがいなくなる。

 これで大丈夫かな。わたしは腰を抜かしている男性のところに向かう。


「大丈夫?」

「うああああああああああ、クマだ~~~~~~~」


声の主は気弱そうな30代ぐらいの男性だった。男はくまきゅうを見て叫ぶ。そして、腰を抜かしながらもナイフを左右に振り回しながら下がっていく。


「こ、こっちにくるな~」


 うるさい人だね。


「静かにしないと食べるよ」


 わたしの声に合わせるようにくまきゅうが近付く。


「うああああああああああ、食べないでくれ」

「だから、静かにしないと食べるって言っているんだけど」

「俺を食べても、美味しくないぞ!」


 わたしを見ずにナイフを振り回す。

 うん、駄目だ。全然、人の話を聞いてくれない。

 わたしは腰を抜かしている男性に向かって、魔法で水の玉を作り、頭の上から落とす。


「うわああああああああ」

「人の話を聞いてくれるかな?」

「女の子?」


 男性はわたしを見ると、キョロキョロと周囲を見る。

 どうやら、正気に戻ったみたいだ。わたしのことをちゃんと見てくれる。


「助けてあげたんだから、お礼ぐらい、言ってもいいと思うんだけど」


 わたしが真っ二つになっているオオスズメバチに視線を向けると、男性も地面に落ちているオオスズメバチに視線を向ける。わたしと死んでいるオオスズメバチを交互に見比べる。そして、最後にわたしの方に視線が止まる。


「わたしが言っていること理解できる?」

「…………これは嬢ちゃんが倒したのか?」

「わたし以外にいないでしょう」


 まあ、わたしのせいで、オオスズメバチが逃げて、こっちに来ちゃったんだけどね。

 だけど、倒した事実は間違いない。

 男性は立ち上がるが、少し腰が引けているような気がする。


「そのクマは……」


 どうやら、くまきゅうが怖いらしい。こんなに可愛いのに。


「そのナイフで襲ってこなければなにもしないよ。それで、おじさんは大丈夫?」

「ああ、いきなり、オオスズメバチが現れて驚いただけだ。助けてくれてありがとう」


 お礼を言いながら、わたしの格好を見る。なにか言いたそうにするが黙っている。


「それで、おじさんはどうして、こんな森で一人でいるの?」

「この近くに村がある。その村にオオスズメバチが現れるようになったんだ。それで、どこから来るか突き止めるために来たんだが」


 それって、もしかして、わたしが燃やしたオオスズメバチの巣のことかな?

 おじさんの話を聞くと、なんでもオオスズメバチの討伐を冒険者に依頼を出すか、出さないかで村の中で意見が分かれているそうだ。

 それで、巣が小さいようなら村で力をあわせて討伐を。巣が大きいようなら冒険者となったらしい。それで、このおじさんがオオスズメバチの巣を確認しに来たそうだ。

 数匹に襲われただけで、あんなにパニックになるのに、よく一人で巣を探そうと思ったものだ。

 でも、話によれば村の住人で手分けをして探しているらしい。オオスズメバチに襲われたおじさんは運が悪かったんだね。


「その巣なら、わたしがオオスズメバチと一緒に燃やしちゃったよ。こんな格好をしているけど、一応冒険者だからね」

「…………嬢ちゃんが冒険者?」


 改めて、わたしの格好を見る。

 まあ、クマの着ぐるみだから、信じられないのも仕方がないことだ。


「うん、オオスズメバチの巣を処理していたら、数匹のオオスズメバチに逃げられてね。それで追いかけてきたら、おじさんが襲われていたわけ」

「そうか、嬢ちゃんが来てくれなかったら、危なかったんだね。助かったよ」


 まあ、元は逃がしたわたしのせいなんだけどね。

 でも、くまきゅうのおかげだね。くまきゅうが教えてくれなかったら危なかったかもしれない。わたしのせいで死ぬことになったら、夢見が悪いからね。教えてくれたくまきゅうには感謝だ。


「嬢ちゃん。それで、オオスズメバチの巣を燃やしたって本当か。他のオオスズメバチも一緒なのか?」

「うん、燃やしたり、風魔法で斬ったりしたよ」


 討伐する予定だったらしいから大丈夫だよね。


「すまないが、その巣に案内してくれないか。一応、確認したい」


 わたしはおじさんを連れてオオスズメバチの巣に向かう。


「それにしても、嬢ちゃんの格好もそうだが、白いクマなんて初めて見たよ」


 おじさんは隣を歩くくまきゅうを見る。

 まあ、白クマは珍しいみたいだからね。そもそも、白クマっているのかな?

 この世界の北極がどのような場所か分からないけど、北極や雪山に行けばくまきゅうと同じ白クマがいるかもしれない。今度、捜してみるのもいいかもしれない。


「それで、嬢ちゃんはどうしてこんなところに? もしかして、オオスズメバチを討伐に来たのか?」

「オオスズメバチは偶然に出くわしただけだよ。それで、倒した方が良いと思って、討伐しただけ」


 わたしの言葉に呆れたようにする。


「嬢ちゃんは小さいのに、凄い冒険者なんだな」

「魔法が使えるからね」

「それでも凄いよ。おじさんは魔物が怖いから絶対に冒険者にはなれないよ」


 わたしの場合はリアルなゲームの経験があっただけだ。この世界が初めはゲームの世界と思ったぐらいだ。その経験が無かったら、わたしだって魔物退治なんてできたか分からない。


「それで、嬢ちゃんはここいらでは見かけたことがないが、どこから来たんだい?」

「王都だよ。そこから、南にある砂漠に向かう予定だったんだけど、近道をしようとして、森の中に入ったら迷った」

「近道をしようとして、森に入るって」


 呆れるようにわたしのことを見る。言いたいことは分かるよ。

 普通は近道をするからといって、森の中なんて入らないよね。道に迷う確率が上がるだけだ。

 わたしだって、地図のスキルが無ければ、無謀なことはしてない。地図を見れば自分の位置は把握できるから、迷子になるとは思っていなかった。進んだ方向に道が無かっただけだ。わたしの予想では道に合流できるはずだった。


「それで砂漠の手前に町があるみたいなんだけど、知っている?」

「たぶん、カルスの町のことだな」


 おお、町の情報をゲット。

 どうやら、町のことを知っているらしい。


「その町って、どっちにあるの?」

「う~ん、ちょっと、ここからだと分からないな。でも、村の近くまで行けば分かるよ」

「本当!?」


 たしかに森の中じゃ、自分がいる位置も方角も分かり難いかもしれない。

 でも、村まで行けば分かるだけでも助かる。

 無事に迷子から脱出できそうだ。


「村は近いの?」

「それほど遠くはない」


 村も近いそうなので、あとで案内してくれることになった。

 オオスズメバチに出くわしたが、そのおかげで人に会えて、町の方角も教えてもらえることになったから、プラスマイナスゼロってことかな?

 そして、おじさんを連れて、オオスズメバチの巣まで戻ってくる。地面にはわたしが風魔法で倒したオオスズメバチが落ちている。


「本当に倒されている」

「あの洞窟がオオスズメバチの巣になっていたみたいだよ」

「クマ?」


 わたしがクマさんパペットを巣になっていた洞窟に向けると、洞窟はクマの石像で塞がれている。


「気にしないで」


 わたしはクマの石像をどかす前に探知スキルで洞窟の中を確認する。オオスズメバチの反応はない。無事に洞窟の中にいたオオスズメバチも倒せたみたいだ。クマの石像をどかすと、熱風が出てくる。炎のクマさんの影響だ。


「あ、熱い」


 わたしは平気だけど、おじさんは洞窟から離れる。


「嬢ちゃん、これは?」

「炎の魔法を放り込んで、さっきのクマの石像で塞いで、オオスズメバチを全滅させただけだよ。もし、確認するなら、しばらく時間が経ってからにした方がいいよ」


 洞窟の中は熱が篭っている。普通の格好じゃ、入れたものじゃない。もう少し、待つか。水で冷やさないと入れたものじゃない。

 おじさんは洞窟を覗くが、すぐに諦める。

 そして、落ちているオオスズメバチのところに移動する。


「嬢ちゃん、このオオスズメバチを1つもらってもいいか。村に持って帰って、皆に見せたいんだが」

「好きなだけ持っていっていいよ」

「嬢ちゃんはいらないのか?」


 オオスズメバチは食べられるのかな?

 蜂を食べているところはテレビで見たことはあるけど、わたしは絶対に食べたくはない。だから、食べられるとしても、食べるつもりはない。

 でも、最近、フィナが解体の勉強していることを知っている。そして、解体を教わるために冒険者ギルドにも顔を出している。

 そして、解体の技術を磨くには、数はもちろん、いろんな種類の魔物や動物の解体をすることが勉強になるらしい。

 だから、わたしはいらないけど、フィナの解体用として、オオスズメバチを数匹だけもらうことにする。


「少し、もらえればいいよ」

「嬢ちゃん冒険者なんだろう。素材を売ったりはしないのか? 魔石はもちろん、オオスズメバチの針も羽も売ればお金になると思うんだが」

「そうなの?」

「そんなことも知らないのか? 嬢ちゃんは本当に冒険者なのか?」

「数ヶ月前になったばかりの新人の冒険者だから、詳しくないの」


 嘘は言っていない。

 一年目は新人扱いだ。

 だから、わたしは新人冒険者であっている。


「たしかに嬢ちゃんの年齢ならそうか。それで、どうする。持ち帰るか?」

「さっきも言ったけど、数匹だけ、もらえればいいよ。あとはおじさんの好きにしていいよ」

「そうか、それじゃ、ありがたく貰っておく」


 わたしは綺麗な状態のオオスズメバチを数匹選ぶとクマボックスに仕舞う。

 おじさんも一匹選ぶと持っていた袋に入れる。

 そのとき、くまきゅうが「くぅ~ん」と鳴く。それと同時にブ~~~~~~~~~~ンと大きな羽音が聞こえてくる。


「なに?」


 羽音がする方を見ると大きなオオスズメバチが飛んでいた。わたしが倒したオオスズメバチよりも大きい。くまきゅうぐらいの大きさがある。


「あわわわわわわわ」


 おじさんは腰を抜かす。探知スキルを使う。表示はオオスズメバチ。そこは女王蜂とか、キングオオスズメバチとか表示されないの?

 絶対に倒した普通のオオスズメバチと違うでしょう。


「おじさん、あれは?」

「あわわわわわわわ」


 駄目だ。驚いて、腰を抜かしている。

 とりあえず、区別を付けるために女王蜂かもしれないけど、キングオオスズメバチと呼ぶことにする。

 キングオオスズメバチは死んでいるオオスズメバチを見ると、口をカチカチと音を立てて、羽を強く振動させる。気持ち悪い。

 そして、キングオオスズメバチはわたしたちを敵と認識したみたいだ。




道案内役ゲットですw


前回のあとがきで書きましたアンケートの締め切りが残り1日みたいです。

よろしくお願いします。

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