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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、学園祭に行く
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268 クマさん、二日目の学園祭を楽しむ

「ユナさん、ごめんなさい。クマさんの格好じゃなかったから、すぐに分からなくて」


 ノア、それは全然慰めになっていないからね。クマの格好って言うたびにわたしの心は削られていくよ。もう、信じられるのはフィナだけだよ。フィナを後ろから抱きしめる。


「でも、いつものクマさんの格好も可愛いですが、制服姿も似合っていますよ」

「ユナ姉ちゃん。かわいいよ」

「はい、似合っています」


 きっと、みんなはわたしを慰めるために心にもないことを言ってくれているんだ。

 もう、シアには悪いけどクマに着替えてこようかな。

 わたしは一生クマの格好して生きていくんだ……。


「ユナお姉ちゃん、本当に似合ってますから」

「本当?」

「はい、本当です」


 いじけるわたしにフィナも優しく褒めてくれる。

 今まで、クマの着ぐるみの格好をしていたわたしの責任もある。フードを被っていると正面からしか顔を見ることができない。横を歩いていたら、わたしの顔は見れないもんね。なら、顔を見る機会が少ないノアたちじゃ仕方ないよね。

 それに逆に言えばノアたちが気づかないなら、わたしのことを知らない人がわたしのことを見ても昨日のクマとわたしが同一人物だと気づかれることは無いってことになる。

 つまり、変装(普通の格好)をすればわたしだと気付かれない証明になったと、良い方向に考える。

 それにいつまでも、チビッコたちに心配をさせるわけにはいかない。だから、気持ちを入れ替える。

 

「冗談だから、そんなに気を使わなくてもいいからね」


 笑顔で返事をすると皆も安堵の表情を浮かべてくれる。子供たちは悪くないからね。悪いのはクマの着ぐるみにチート能力を与えた神様だ。わたしがこんな目に遭っているのも神様のせいだ。

 不幸なことは全部神様が悪いことにする。


「それにしてもお店は順調のようだね」


 話を変えるためにお店の方を見る。まだ、始まったばかりだというのに、それなりにお客さんが並んでいる。


「ユナお姉ちゃんに付いてきた人たちが、買っていきましたよ。それから、どんどん、お客さんが増えて」

「その人たちは?」

「ユナさんがお姉様に連れて行かれたのを知らなくて、いなくなったことに気づいたら、去って行きましたよ」


 なんだかんだで、シアのおかげでストーカーからも逃げ出せたみたいだ。クマの服に着替えると、またストーカーに付け回される可能性もあるから、制服姿は正しいかもしれない。ノアたちを守るわたしが、わたしが原因で付け回されて、トラブルの原因を作るわけにはいかないしね。


「それじゃ、わたしたちも、そろそろ行こうか?」


 制服姿が落ち着かないけど、学園祭の間は我慢することにする。


「シア。それじゃ、制服はありがたく借りるね」

「なにか、その姿は姿で、トラブルが起きそうな気がするのは気のせいかな?」


 なにを言っているのかな?

 クマの着ぐるみを着ていないんだから、トラブルがやってくることはない。他の人から見ればわたしは普通の学生になる。先生とかに捕まったりしないかぎり大丈夫なはずだ。まあ、そのときはシアの名前を出させてもらうけど。


「そういえば、今日はティリアは来ないの?」


 今日はお手伝いするようなことを言っていたけど。


「朝は用事があるので、それが終わり次第、手伝いに来てくれることになっていますよ。それに、他の友達にもお願いしてますから、今日は昨日のようにはならないはずです」

「ユナさんのおかげで、作る機械も三つになったしな」


 今はマリクス、ティモルの二人で作って、シアが裏方作業しながら、人が増えれば人員整理や三台目の機械で作ることになっているみたいだ。


「カトレアは学園祭の見学?」

「ええ、みんなで交代して見回ることになっているんです。本当はユナさんと一緒に行きたいのですが、約束がありまして」

「ううん、気にしないでいいよ。昨日、ティリアがいろいろと案内してくれたから、大丈夫だよ」


 わたしたちは綿菓子を作るシアたちと別れて、フィナたちを連れて学園祭に出発する。


「ミサはどこか見たいところや、食べたいものはある?」


 綿菓子を美味しそうに食べているミサに尋ねる。綿菓子を食べているのはミサのみで、他の三人は食べていない。どうやら、三人は断ったみたいだ。まあ、昨日も食べたし、その前も食べているしね。


「みんなと一緒なら、どこでもいいです」

「それじゃ、わたし。もう一回、ナイフ投げに挑戦したいです! リベンジです」


 ミサが行きたいところが無いと答えると、ノアが手を上げて、自分が行きたいところを主張する。


「みんなは?」


 一応、フィナとシュリにも尋ねる。


「わたしはどこでも」

「わたしも、もう一回、ナイフ投げやりたい」


 シュリがノアの案に1票入れ、どこでも良い票が2票になる。わたしもどこでも良いので、3票になる。だから、ナイフの的当てに行くことになる。

 でも、わたしはシアには目立たないように言われているため、参加はできない。


「いいけど。わたしはシアに目立つことはしないように言われているから、景品が取れなくても、代わりに取ってあげることはできないからね」


 良い景品を手に入れて目立ったら、変装? した意味がなくなる。まして、制服だから、どのクラスとか尋ねられても答えることはできない。だから、目立つことは自重する。

 ただ、問題はちびっ子たちの上目遣い攻撃にわたしが耐えられるかどうかが問題だ。昨日はそれでやり過ぎた感がある。

 でも、やるなら、無難に真ん中の景品を狙えばいいんだけど。それは元ゲーマーとして、なにか違うような気がする。それにゲームに参加したら、絶対に難しいのに挑戦したくなる。

 だから、今回は見るだけにする。


 二人にはわたしがやらないことを了承させて、昨日と同じナイフの的当てにやってきた。

 髪飾りが景品のせいか、昨日同様にカップルや女性が多い。


「ノアお姉様の髪飾りは、ここで手に入れた物なんですか?」

「ええ、これは小さいけど、今日は大きいのを手に入れてみせます」


 ミサはフィナを見て、シュリを見る。


「シュリちゃんはしていないんですか?」

「わたし、取れなかったから、ユナ姉ちゃんに取ってもらったの。でも、それが一番良いものだから、目立つから、付けたら駄目だって」

「そうなんですか?」

「だから、今日は頑張って、自分で的に当てるの」


 シュリが力強く宣言する。

 なんか、シュリがノア同様にやる気になっている。どうにか、的に当たることを祈ろう。

 3人はナイフの的当てに並びに行く。三人?


「フィナは行かないの?」

「はい。わたしは持っていますから、ユナお姉ちゃんと待っています」

「もっと、良いものを狙ってもいいんじゃない?」

「わたしにとっては、これでも十分に良いものです」


 フィナは髪飾りに軽く触れる。フィナの育った環境を考えれば、そうなるのかな?


「それじゃ、二人でみんなを応援しようか」

「はい!」


 三人を応援するために、近くに寄るが、誰一人「クマだ」と言ってわたしを見る人はいない。先ほど、お店の学生と目が合ったけど、わたしが昨日のクマだということには気づいていない。まあ、服装も違うし、お姫様のティリアもいないし、目立つ要素はないからね。

 それにしても、人に見られないって落ち着くね。


「ユナお姉ちゃん。あそこ」


 わたしが少し嬉しそうにしていると、フィナが賞品が並んでいる場所を指で差す。

 フィナが見ている場所を見ると、わたしが昨日、手に入れた髪飾りよりも、同等以上の髪飾りが飾られていた。

 まだ、あったんだね。


「ユナお姉ちゃん、一番高いところに書かれていることって……」

「書かれている?」


 わたしは賞品の下に書かれている文字を見る。


「……クマレベル、クリア賞品」


 と書かれていた。クマレベルってなに?


「あれって、ユナお姉ちゃんのことだよね」


 間違いなくそうだ。だからと言って、クマレベルってなんなの?

 そんなことを考えていると、ノアの前にいる男性がクマレベルに挑戦する。すると、綺麗な女性から声援が飛ぶ。彼女なのかな?

 どうやら、彼女のためにクマレベルに挑戦して、良いところを見せるみたいだ。大丈夫かな?

 クマレベルを受けると、生徒の一人が一番奥に行き、右端に移動する。すると、男性が準備を整えると、山なりに的を投げる。それに向けて男性がナイフを投げるが外れる。

 これは動く的に当てるってこと?

 クレー射撃みたいだね。

 でも、これって、かなり難しいんじゃない? 遠くにある的さえ、難しいのに。山なりで遅くても動いている。それなりの、実力がないと的には当たらないと思う。

 男性はやっぱりと言うべきか、すべてのナイフを外してしまった。

 応援をしていた女性は残念そうにしていたけど、これは仕方ない。無謀な挑戦だった。冒険者だって、空を飛んでいる魔物に当てるのは難しい。


 そして、ノアの順番になり、クマレベルの賞品を見ている。いや、無理だからね。挑戦するだけ、無駄だからね。ノアがわたしの方をチラッと見るので、首を横に振る。目で『駄目だよ』と伝える。

 でも、わたしの気持ちが伝わらなかったのか、ノアは受付の人に「クマレベルでお願いします」と言う。

 あの子は……。

 結果はもちろん、的に当たることはない。

 そして、シュリとミサの二人は無難に一番近くの的を当てて、髪飾りを手に入れていた。

 ノアは悔しそうに、シュリとミサは嬉しそうに戻ってくる。


「あんなの無理です」


 いやいや、普通に考えて無理だと分かるからね。

 そもそも、挑戦すること自体が間違っているから。

 そんなノアと違って無難に賞品を手に入れたシュリとミサは嬉しそうにしている。


「ユナ姉ちゃん。付けて」


 シュリが自分で手に入れた髪飾りをわたしに持ってくる。わたしは受け取った髪飾りをフィナと同じ位置に付けてあげる。姉妹だから、そっくりだね。


「可愛いよ」


 わたしが褒めるとシュリは嬉しそうにする。

 ミサはノアにお願いをして付けてもらっている。これで、全員が小さな髪飾りを付けることになる。


「ユナお姉ちゃんも、髪飾りをしたらお揃いでしたね」

「ユナ姉ちゃんにもらった、大きいの付ける?」


 シュリの提案は丁重にお断りする。そんなことをすれば、クマの着ぐるみを脱いだ意味がなくなる。それから、同様に出し物を回ったら、クマレベルの賞品があったり、無かったりした。

 

とりあえず、ちびっ子はお揃いにしたかったので、ミサにも髪飾りを手に入れてもらいました。

来年から、どこの店も最高点はクマレベルって表示されることになりそうですねw



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― 新着の感想 ―
[一言] こうして、学園祭の七不思議だかなんだかが増えたのであった?w
[一言] 数年後にノアちゃんが学園に通い学園祭にユナさんが久々に訪れたら「クマだ」「クマが出たぞー」「伝説のクマが現れた」とか喧々囂々(けんけんごうごう)になったりして(笑)そして的当てでクマレベル全…
[良い点] クマレベル難易度MAXでクリアゼロかも?(笑)
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