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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、学園祭に行く
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258 クマさん、周りがくまさんだらけになる

 エレローラさんと話しながら庭園の中央に向かう。椅子やテーブルがあり、座りながら周りの花を見ることができて、屋根もあるので、休むには適した場所だ。

 角を曲がると目的の場所が見えてくる。その場所にはフィナたちの姿が見えた。でも、そこにいたのはフィナたちだけじゃなく、フローラ姫に王妃様、アンジュさんの姿もあった。

 そして、ここからでも見えるけど、テーブルの上にはくまゆるとくまきゅうぬいぐるみが、仲良く並んでいる。くまゆるぬいぐるみはフローラ様が、くまきゅうぬいぐるみはシュリが持っていたものだと思うんだけど、なにをしているのかな?


「あら、ユナちゃん」


 正面から歩いてくるわたしたちに王妃様が気付き、その声に反応したフローラ様がわたしの方を見る。


「くまさん!」

「こんにちは」


 フローラ様に挨拶をしてから、王妃様とアンジュさんに挨拶をする。シュリはくまきゅうぬいぐるみを出してフローラ様と仲良く遊んでいる。

 どうして、お花を見ていたはずなのに、ぬいぐるみで遊んでいるのかな?

 近寄ると背中で見えなかったけどフィナもくまゆるぬいぐるみを抱きしめていた。フィナは緊張しながら、わたしの方を見る。困ったような目で見るので、軽く手をフィナの頭の上に乗せる。

 ノアもどうしたら良いか分からず、エレローラさんを見ている。

 う~ん、どうしてこんな状況になっているか分からないんだけど。


「キティア様にフローラ様。こちらに、いらっしゃったんですか?」

「ええ、フローラと一緒に散歩していたの。そしたら、この子たちが来たから、一緒にお茶に誘ったのよ」


 フィナたちの前にはアンジュさんが入れたお茶が置かれている。

 それを見たエレローラさんは自分もお茶を貰うためにノアの隣に座る。


「ユナちゃんも座ったら?」


 その言葉に従ってフィナの隣に座る。すると、アンジュさんがお茶を差し出してくれるので、お礼を言う。


「フィナ、どうなっているの?」


 小さな声で隣に座るフィナに尋ねる。


「それが、お花を見ながら歩いていたら、ここに王妃様とフローラ姫がいたんです。それでフローラ姫がくまゆるぬいぐるみを持っていることに気付いたシュリが、駆け寄っちゃったんです」

「いきなり、シュリちゃんが「くまゆるちゃん」って言って近寄ってきたときは驚いたわ」


 わたしたちの小声話を聞いていた王妃様が笑顔を向ける。どうやら、盗み聞きしていたようだ。でも、駆け出すって、フローラ様も王妃様も優しい人だからいいけど。性格の悪い王族だったら刑罰があったかもしれない。シュリにはもう少し気を付けてほしい。

 まあ、そんな性格の悪い王族だったら、わたしはお城に出入りはしないし、フィナたちを連れてくるつもりもないけど。


「それで自己紹介をしたら、エレローラとユナちゃんと一緒にお城に来たって言うから、お茶に誘ってお話をしていたのよ。ノアールちゃんとは何度か顔を合わせてるから知っているしね」

「はい」


 ノアは緊張しながら返事をする。貴族のノアでも王妃様が相手だと緊張するみたいだ。まあ、用が無ければ貴族でも会える人じゃないからね。まして、ノアはクリモニアに住んでいるから、会う機会は余計に少ないはずだ。そう考えると、毎回、お城に来ると王族に会うわたしって、おかしくない?


「でも、二人ともフローラと同じクマのぬいぐるみを持っているのには驚いたわ」


 なんでも、始めはフローラ様はシュリの出現に不安そうにしていたらしい。でも、シュリがくまゆるって名前を出すと不安そうな顔が消え、「わたしも持っているよ」と言うシュリの言葉や、実際にフィナがぬいぐるみを出し、わたしの話をするとフローラ様は警戒心が無くなったそうだ。

 クマのぬいぐるみで王族と平民が仲良く話し合うって、世間一般的にどうなんだろう? 

 わたしが知っているファンタジーものなら、有り得ない。このように近付くことも許されないし、普通なら土下座をして謝罪するシーンが頭に浮かぶ。

 そんなクマのぬいぐるみのせいで、ここにはクマのぬいぐるみが3体あることになる。


「くまさん。くまさんがいっぱい」


 フローラ様が嬉しそうにぬいぐるみを見ている。でも、一人だけぬいぐるみを持っていないノアが少しだけ寂しそうにしている。可哀想なので、小熊のくまゆるとくまきゅうを召喚をして、くまゆるをノアに渡してあげる。 


「くまゆるちゃん、くまきゅうちゃん」

「くまゆる、くまきゅう」


 くまゆるとくまきゅうを召喚すると年下の二人が反応する。


「ユナさん?」

「貸してあげるよ。ノアだけ、いないのは可哀想だからね」

「ありがとうございます」


 ノアは嬉しそうにくまゆるを膝の上に乗せて抱きしめる。


「ノア姉ちゃんずるいです」

「くまゆる……」

「うふふ」


 今度は年下の二人が羨ましそうにノアを見る。

 でも、二人の視線はノアが抱いているくまゆるから、わたしが抱いているくまきゅうに視線が移る。


「二人はぬいぐるみがあるでしょう」

「ユナ姉ちゃんずるい」

「くまきゅう」


 二人は羨ましそうにわたしが抱いているくまきゅうを見る。


「これは喧嘩にならないように、わたしが預かりますね」


 知らないうちにわたしの横に立っていた王妃様が、くまきゅうを抱き上げる。


「おかあしゃま!」

「くまきゅう!」


 王妃様は嬉しそうにくまきゅうを持って自分の席に戻る。

 えっと、わたしのくまきゅうなんだけど。ちゃんと返してくださいね。


 あらためて見ると、変な状況になっている。クマが全部で5体もある。

 わたしとエレローラさん、立っているアンジュさん以外は全員、クマを持っている状況になっている。


「ユナちゃん、わたしも寂しいわ。わたしだけ、クマがいないなんて」


 わたしだけ?


「わたしも持っていませんよ」


 くまきゅうを王妃様に取られてしまった。


「だって、ユナちゃんは初めからクマでしょう」


 そうだよね。他人から見たら、わたしはクマ扱いだよね。

 とりあえず、これ以上クマを増やすわけにはいかないので、エレローラさんには諦めてもらう。


「ふふ、でも、変な集まりになっちゃったわね。これじゃ、フォルは参加できないわね」


 フォルはフォルオート国王のことらしい。まあ、こんな女の子だらけのところでは居心地は悪いだろうし、来たくないと思う。まして、子供率が高い。

 それにシュリが国王にたいして、なにかしないか心配なので、いない方が助かる。


「でも、ここにユナちゃんがいるってことはフォルはフローラの部屋にいるのかしら?」

「呼びに行きましょうか?」


 アンジュさんが申し出る。


「大丈夫よ。今日は兵士には呼びに行かせてないから、国王陛下はユナちゃんが来ていることは知らないわ。今日はこの子たちのお城見学で来ただけだからね」

「そうなの? それじゃ、今日は美味しい食べ物はないのかしら?」


 王妃様は残念そうにする。

 もしかして、この夫婦はわたしが来ると食べ物を持ってくると思っているのかな?

 毎回、持ってくるわたしのせいでもあるけど、それはあくまでフローラ様のおみやげであって、国王様や王妃様のためじゃない。


「ユナちゃん、綿菓子を出してあげたら」


 少し残念そうにしている王妃様を見て、エレローラさんがそんなことを言い出す。


「綿菓子ですか?」

「あら、なにかしら?」

「雲みたいな、おかしだよ」


 ぬいぐるみで遊んでいたシュリが答える。


「くも?」


 シュリの言葉にフローラ様が首を傾げる。


「雲って空に浮かぶ雲かしら?」


 王妃様は空を見る。屋根の下から白い雲が浮かんでいるのが見える。


「おかあしゃま。くもって、たべられるの?」

「そうね。白くて美味しいかもしれないわね」


 王妃様は笑顔で娘にとんでもないことを教える。

 それとも、この世界の住人は雲のことを詳しく分からないから、食べられるとでも思っているのかな?

 娘をからかっているだけで、本気で言っているわけじゃないよね。でも、教育上良くないので、正しいことを教えてあげることにする。


「フローラ様、雲は食べられませんよ。その代わりに雲みたいなお菓子ならありますよ」


 クマボックスから綿菓子機を取り出し、中央にザラメを入れてスイッチを押す。すると中央の鉄部分が熱を持ち出し、高速回転をし始める。中央の無数の小さな穴から白い糸が出てくる。


「なんか、でてきた」


 フローラ様がテーブルの上に乗り出すように、中央から出てくる綿を見ている。わたしは綿菓子をまとわり付けるために棒を準備する。


「ユナ姉ちゃん。わたしがやってもいい?」


 棒で綿菓子を巻き付かせようとしたら、シュリがそんなことを言い出す。


「いいよ。でも、ちゃんと作るんだよ」


 わたしはシュリに棒を渡してあげると、綿菓子を作り出し始める。その様子を見ていたフィナが何か言いたそうにしているが、声には出さない。

 シュリは棒をくるくると回し、だんだんと白い糸が棒に巻きつかれて大きくなっていく。こないだ孤児院で作っただけなのに、作るのが上手くなっている。もしかして、才能があるのかな?

 もっとも、将来綿菓子職人になりたいと言っても、絶対にさせないけどね。


「すごい、くもです」

「あら、本当。雲みたいにふわふわしているわね」


 どんどん、綿が大きくなっていく。大きくなる綿菓子にフローラ様は喜ぶ。シュリもみんなが嬉しそうにするので、どんどん、綿菓子を大きくしていく。


「シュリ、ストップ。とめて、とめて」


 わたしが叫ぶと、シュリは慌てて止める。でも、ときすでに遅く、綿菓子は通常よりも大きくなってしまった。

 でも、一応綿菓子が完成する。


「姫さま、美味しいよ」


 シュリが差し出すと、フローラ様は小さな手で通常よりも大きな綿菓子を受け取る。落とさないか心配になってくる。


「どうやってたべるの?」

「えっと、手で小さく千切って食べるといいですよ」


 さすがにお姫様にそのまま口で食べるようなことは教えられないので、千切って食べる方法を教えてあげる。


「あと、手が少しべた付きますから、ぬいぐるみは離した方がいいですよ」


 わたしがそう言うと、アンジュさんがフローラ様の膝の上に乗っているぬいぐるみを、テーブルの上に移動させてくれる。綿菓子を食べた手で触ったら、ぬいぐるみがベトベトになっちゃうからね。

 フローラ様は小さな手で綿菓子を千切って、口に入れる。


「あまい」


 綿菓子を口に入れたフローラ様は満面の笑みになる。女子供は甘いのが好きな人は多いからね。


「あら、そうなの。シュリちゃん。わたしの分も作ってくれるかしら」

「うん!」


 シュリは頷くと、もう1つ綿菓子を作り始める。今度は通常サイズの綿菓子が出来上がる。そして、王妃様も美味しそうに食べる。

 そして、大きな綿菓子はフローラ様一人では食べきれないので、シュリも一緒に食べてあげている。仲が良い。これも、ぬいぐるみのおかげなのかな?


「それで、わたしたちが来るまで、なにを話していたの?」


 エレローラさんが横に座っているノアに尋ねる。


「ユナさんのことと、お母様がご迷惑をかけていないか、お聞きしていました」

「失礼ね。ちゃんと、仕事はしているわよ」


 仕事をするのと迷惑をかけるのは別物だと思うんだけど。エレローラさんの中では一緒なのかな?

 まあ、仕事をしなかったら迷惑になるから、言っていることは正しいかもしれないけど。こう言う発言を聞くと、クリフも国王もエレローラさんに苦労かけられているんだろうなと、思ってしまう。


「ふふ、大丈夫よ。苦労するのはフォルだからね」

「キティア様。それではわたしが迷惑をかけているみたいではないですか」

「してないと思っているの?」

「それは……」

「お母様……」


 ノアはジト目でエレローラさんを見る。


「ちゃんとしているわよ。してなかったら、クリモニアに追い返されているわ」


 たしかにそうだね。邪魔だったら、クリモニアに帰らせているはずだ。


「でも、それもいいかもしれないわね。そうすればクリモニアに帰れるわ」

「そんなことを言ったらお姉様が怒りますよ」

「そんなにわたしに帰ってきてほしくないの?」


 エレローラさんは少し寂しそうにする。


「お母様になかなか会えないのは寂しいけど。お母様がクリモニアに戻ってきたら、わたしが学園に通うときは王都に一人になってしまいます」


 ノアは少し恥ずかしそうに答える。


「そうね。今度は二人で暮らしましょうね」


 エレローラさんは嬉しそうにノアを抱きしめる。


「ふふ、それでエレローラは大好きな娘にお城の案内をしていたのかしら?」

「可愛い娘が友達のためにお城を見せてあげたいと、お願いされたら、断ることはできないわ」


 抱きしめているノアをさらに強く抱きしめる。

 ノアは恥ずかしそうにして、逃げ出そうとするがエレローラさんは逃がさない。

 エレローラさんとノアの間に挟まれているくまゆるが苦しそうにしている。くまゆるが苦しそうだから、あまり強く抱きしめないでね。


「それで、どうして王都に? わざわざ、お城を見に来たわけじゃないでしょう?」

「娘のシアが学園祭に誘ったの」

「学園祭? 確か娘がそんなことを言っていたわね」


 王妃様がそんなことを口にする。

 娘? フローラ様が?

 フローラ様も学園祭に行きたいのかな?

 それから、お花を見たり、おしゃべりをする。途中で、フローラ様とシュリがぬいぐるみを抱いて寝てしまい、お城見学は終了となった。 


追記 ちゃんと、くまきゅうは王妃様から取り返したよ。


王妃様のキティアと名前付けました。

たぶん、付けていなかったはずw

もし、他の名前が付いていたらすみません。


次回、たぶん、学園祭だと思います。


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