表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、学園祭に行く
252/904

248 クマさん、フローラ様の質問に困る

とりあえず、三日更新。早めに。


 わたしはお屋敷を出るとフローラ様に絵本を渡すためにお城に向かう。

 ノアとシュリを王都にか……。

 くまゆるたちで移動するのはなにも問題はない。

 くまゆるたちは二人乗り可だ。

 でも、クマの転移門もあるし、ノアとシュリだ。教えてあげてもいいかもしれない。

 教えてあげれば面倒な移動はしなくて済むし、時間も有効活用ができる。

 でも、重要なことだから、ちゃんと考えないといけない。

 クマの転移門について考えて、お城に向かって歩いていると、お城の門に到着する。

 そして、いつもながら、門の前に立つ兵士がわたしの方を見ている。

 まあ、わたしの格好は遠くからでも目立つからね。

 わたしが兵の人に挨拶をしようとしたら、


「これはエレローラ様」


 エレローラさんの名を呼んで敬礼をする。


「ご苦労さま」


 真後ろからそんな声が聞こえてくる。

 振り返ると笑みを浮かべているエレローラさんが立っていた。


「エレローラさん? いつからそこに?」

「ふふ、ユナちゃん。わたしが後ろを歩いているのに気づかないから、可笑しかったわ」

「人の後ろを付けるなんて、人が悪いですよ」


 考えごとしていたから、エレローラさんが後ろから付いてきていることに気付かなかった。


「ユナちゃんの歩く後ろ姿が可愛かったわよ。小さなシッポが揺れて」

「人のお尻を見ないでください」


 お尻にあるシッポを隠す。

 くまゆるとくまきゅうの尻尾を見るのはわたしも好きだ。でも、改めて自分の尻尾を見ていると言われると恥ずかしい。


「可愛かったのに」


 尻尾を隠すと残念そうにする。


「それで、なんで後を付けたりするんですか、声をかけてくださいよ」

「始めは追いかけて、声をかけようとしたのよ。でも、ユナちゃんの尻尾が気になって、眺めていたら、お城まで到着しちゃったのよ」


 この人は……。


「それでエレローラさんは仕事ですか?」

「まあね。ユナちゃんのお店だけがわたしの仕事じゃないからね」

「ちゃんと、仕事をしているんですね」

「ユナちゃん、酷い。わたしはいつも真面目に仕事をしているわよ」


 『いつも』は怪しいところだけど、お店の話や卵の話を聞く限りでは仕事はしているのはたしかみたいだけど。

 でも、いつものエレローラさんの行動を見ていると、サボっているようにしか見えない。


「とりあえず、こんなところで立ち話もなんだから、フローラ様のところに行きましょう」


 えっ、仕事をするためにお城に来たんじゃないの? という突っ込みは入れない。疲れるだけだから、スルーをする。

 たとえエレローラさんが仕事をサボっても、困るのは国王であって、わたしじゃない。

 わたしとエレローラさんは兵士の許可をもらい、お城の中に入る。


「それにしても、砂糖だけであんなお菓子ができると思わなかったわ。ユナちゃんはどうして、あんなことを知っているの?」


 なにかを探ろうとしているのかな?

 だからと言って異世界から来ましたとは言えない。


「もちろん、秘密ですよ」

「あら、残念。でも、気を付けてね。ユナちゃんの料理は珍しい物が多くて、気にする人もいるから。もし、なにかするときは、なるべく声をかけてね。力になってあげることはできると思うから」


 もしかして、エレローラさんは綿菓子をシアたちに教えたことを心配してくれているのかな?


「そのときはお願いします」


 素直にお願いしておく。


「だから新しい食べ物があったら、真っ先に持ってきてね」


 それが本音ですか?

 どうも、エレローラさんの本心は掴み難い。

 ノアとシアはエレローラさんに似ずに育ってほしいものだ。


「ユナちゃん。今、凄く失礼なことを考えなかった?」

「いえ、エレローラさんが優しいと思っただけですよ」

「ほんとう?」


 疑いの眼差しで見られるが、先ほどの心に思ったことを口にすることができない。

 目を逸らし、フローラ様の部屋に向かう。


「ユナちゃん、ちゃんとこっちを見てくれないかな?」

「行かないなら、一人で行きますね」

「行くわよ」

「仕事はいいんですか?」


 聞くつもりは無かったのに聞いちゃったよ。


「大丈夫よ。やることはやっているから」


 本当なのかな?

 見知った通路を歩いていると、前からくまゆるのぬいぐるみが二足歩行で歩いていた。

 その隣にはアンジュさんがいる。


「これはエレローラ様にユナさん?」

「くまさん?」


 アンジュさんの言葉にくまゆるぬいぐるみが喋る。

 いつのまにぬいぐるみに会話機能が……、魔法おそるべし……。

 まあ、冗談はここまでにして、わたしがプレゼントしたくまゆるのぬいぐるみを抱きしめているフローラ様が、くまゆるぬいぐるみの後ろから顔を見せる。

 フローラ様が体の前にくまゆるぬいぐるみを抱きしめて歩いていただけだ。


「くまさん!」


 フローラ様がわたしに気付くと嬉しそうに駆け寄ってくる。

 くまゆるぬいぐるみを抱いているため走ると危なっかしい。

 そういえば、わたしの名前で「くまさん」って反応しているから、わたしの名前は認識しているんだよね。

 大きくなれば「くまさん」って呼び方は無くなるかな?


「それで、どうして、二人はここにいるんですか?」


 抱き付くフローラ様の頭を撫でながら、アンジュさんに尋ねる。


「散歩の帰りです」

「散歩って、ぬいぐるみを持って?」

「くまさんとさんぽ」


 フローラ様はくまゆるぬいぐるみを抱きしめる。

 くまきゅうがいなくて可哀想と思うけど仕方ないかな。

 フローラ様の小さな体ではぬいぐるみを2つ持ち歩くことができない。


「それで、ユナさんはフローラ様にお会いに来てくださったのですか?」

「新しい絵本ができたから、持ってきたんだけど」

「えほん!?」

「絵本ですか?」


 フローラ様は喜び、アンジュさんも嬉しそうにする。

 フローラ様は分かるけど、アンジュさんまで、そんなに嬉しそうな顔をしなくても。


「それではフローラ様。ユナさんが絵本を持ってきてくださいましたから、お部屋に戻りましょうか?」

「別に散歩が終わってからでもいいよ」

「へやにもどる」


 フローラ様はくまゆるぬいぐるみを抱きながら、小さな手でわたしの服を掴む。

 どうやら、フローラ様も絵本が見たいみたいだ。

 喜んでいるみたいだから、描いてきて良かったと思う。


「それじゃ部屋に行こうか」


 フローラ様の手をクマさんパペットで掴み、フローラ様の部屋に向かう。


「やっぱり、ユナちゃんは子供には甘いわね」


 自分の行動をかえりみるとエレローラさんの言葉に「そんなことは無いよ」とは否定はできない。

 やっぱり、甘いのかな。でも、この笑顔を見て振りほどく人っているの?

 エレローラさんだって、フローラ様の笑顔を見たらできないはずだ。

 だから、わたしの甘さは常識内だから、問題はないはずだ。


 フローラ様の部屋にやってくると、フローラ様はわたしから離れるとベッドに向かう。

 ベッドの枕元にはくまきゅうぬいぐるみが置いてある。

 散歩に行けずに一人で留守番をしていたみたいだ。

 そして、フローラ様はくまゆるぬいぐるみを枕元に置くと、枕の側にあったくまきゅうぬいぐるみに替える。

 どうして?


「部屋の外に持っていくのは黒くまさんで、部屋では白くまさんになっているんですよ」


 フローラ様の行動を見ていたわたしに、アンジュさんが教えてくれる。


「どうして、そんな区別を?」

「その、外に持っていく場合、汚れたりするので、その、黒いくまさんの方が、汚れても……大丈夫なので……」


 アンジュさんが言い難そうに説明をしてくれる。

 確かにくまゆるは黒いから、汚れも目立たない。


「だから、お部屋では白いくまさん。外では黒いくまさんを持ち歩くことになっています」


 くまきゅうが除け者になっているわけではないことは分かったけど、そんな理由だとくまゆるが不憫だ。

 くまゆるが黒いのは汚れても良い理由で黒いわけじゃないけど、白いくまきゅうが汚れるよりはいいのかな?

 落とせば汚れる可能性がある。判断に悩むところだ。


 そして、くまきゅうのぬいぐるみを抱いたフローラ様が戻ってくる。

 絵本を読むためにテーブルがある場所に移動する。


「はい、新しい絵本です」

「ありがとう」


 嬉しそうに絵本を受け取ってくれる。そして、椅子に座ると絵本を広げる。

 その後ろにアンジュさんが移動して、フローラ様の後ろから絵本を覗いている。

 アンジュさん、内容が気になるんだね。 


「エレローラ様、この絵本は?」

「ええ、もちろん配布するから、安心していいわよ」

「ありがとうございます」


 アンジュさんは嬉しそうにする。


 フローラ様はゆっくりと絵本を捲っていく。

 アンジュさんは見たそうにしていたが、わたしたちにお茶を入れるために少し離れる。

 備え付けのお茶の道具でお茶を用意してくれる。


 わたしはお茶を飲んで一休みする。

 今日も国王は来るのかな?

 兵士が走っていく姿はあった。

 お茶を飲みながらそんなことを考える。


「くまさんとおわかれ……」


 フローラ様が悲しそうにする。

 ペラ

 ページが捲られる。


「くまさん!」


 今度は嬉しそうにする。

 くまさんの登場でもしたかな?

 そして、全て読み終わると、


「くまさんって小さくなれるの?」


 その質問にこの部屋にいた全員が即答はできなかった。

 普通の大人ならクマが小さくならないことは知っている。

 フィナやシュリぐらいの年齢なら、説明をすれば理解してくれる。

 フローラ様ぐらいの年齢だとどうなんだろう?


「フローラ様、くまさんは小さくはなったりはしません」


 アンジュさんがわたしの代わりに説明をしてくれる。


「でも、くまさんのくまさん、小さくなったよ」

「それは……」


 アンジュさんは困ったようにわたしとエレローラさんを見る。

 フローラ様は召喚獣のくまゆると本物の熊と一緒にしている。

 そもそも区別が難しいし、説明ができない。


「フローラ様。普通の熊は小さくなりませんよ。ユナちゃんのクマは特別なんですよ。そして、絵本に出てくるくまも特別です」

「とくべつ?」

「はい、特別のクマです。だから、普通の熊は小さくなったりはしません」


 エレローラさんがアンジュさんの代わりに説明をする。

 でも、フローラ様は首を傾げる。

 説明が難しい。

 これは変な認識を与えてしまったわたしの失敗だ。

 これがくまゆるやくまきゅうのことを知らない子供なら、絵本の中だけの空想の話で済ませるけど。フローラ様はくまゆるとくまきゅうが小さくなることを知っている。


「くまさん、小さくならないの?」


 くまきゅうぬいぐるみを抱きしめる。


「わたしのクマが特別なんですよ。だから、小さくなったりはしませんよ」


 優しく説明をしてあげる。

 フローラ様は納得したような、していないような微妙な表情をしていた。

 まさか、クマが小さくなるところを聞かれるとは思わなかったよ。

 もし、逃げた人のことを尋ねられたら、エレローラさんか、国王になすりつけようと思っていたのに、今回は予想外だった。


 そして、予想よりも遅れて王妃様がやってきて、さらに遅れて国王がやってきた。

 今日はすぐには抜け出せなかったようだ。

 持ってきた絵本を見せると感謝された。

 そして、食べ物がテーブルの上に無いことに気付いた二人は少し残念そうにしていた。

 毎回、新作料理は無理だよ。

 とりあえず、仕方ないから茶碗蒸しを渡してあげたら、喜んで食べてくれた。



3巻発売2日前です。

1巻、2巻ともによろしくお願いします。


絵本も無事に渡せました。

フローラ様は逃げた人よりも、小さくなるクマに興味を持ちましたw




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ・・・そおそお、繰り返し行っていると、それがさも当たり前かのよおに認識されるのあるある。 よくまあユナは、うまいこと対処できてるよね。元引きこもりとは思えないと言うか、やっぱり心は元から引き…
[一言] 新作料理はあったのでは
[良い点] 確かに毎回料理持ってくるのきついユナ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ