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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、エルフの里に行く
222/904

218 クマさん、エルフの里に到着する

 ルイミンは腕輪を取り戻してから、笑顔が増えた。

 今までは申し訳ありませんって感じで、無理に笑うことが多かった気がする。

 まあ、それも今の笑顔を見ているから気付いたことだ。

 たぶん、今まで無理に笑っていたんだね。


「もうすぐですね」


 ルイミンがくまゆるに乗りながら口を開く。


「本当ね。こんなに早く到着するとは思わなかった」


 サーニャさんの話では今日中には着くそうだ。

 くまゆるたちが走る先には大きく広がる森が見える。

 森って言葉が正しいか分からなくなる。ジャングルと言った方が分かりやすいかもしれない。

 あの森の中にエルフが住む村があるらしい。

 これだけ広いと、クマの地図のスキルが無かったら、迷う自信はある。

 まあ、迷ったら木の上にでも登って確認する方法があるから、大丈夫だけど。

 それだけ、広く、深い森だ。


 くまゆるたちが森の入り口に到着する。

 道らしき物はない。

 もしかして、生い茂っている中を通るの?

 と不安に思っていたら、


「この先に馬が通れる場所があるわ」


 移動すると馬車は通れないが、馬が一頭ほどの広さはあった。

 そのため、くまゆるたちは並走して進むことはできないので、サーニャさんとルイミンが乗るくまゆるが先頭を進んでいく。

 森は生い茂っているが、木々の間から光が射し込んでくるほどの明るさはある。

 この先にエルフが住む場所があると思うと楽しみだ。

 なにか、面白い物や食べ物があると嬉しいんだけど。

 ルイミンやサーニャさんが持っている加護の腕輪の作り方でも、教えてもらえると嬉しい。

 でも、石が貴重らしいから、そこが問題だよね。

 まずは石の入手方法を聞かないとダメかな。

 作れたら、フィナへのお土産になる。


「でも、懐かしいわね」

「10年でしたっけ」

「あまり、覚えていないよね。エルフはそういうの気にしないから。わたしとしてはそんなに時間は経っていないと思うんだけど」

「間違いなく10年ですよ」

「言い切るわね」

「里に戻れば分かります」


 ルイミンは言い切り、それ以上は教えてくれなかった。 

 くまゆるたちは進み、その途中で小さな川があり、渡ることになるが、橋がちゃんと掛かっているため、水上歩行の出番はなかった。

 そして、橋を渡りきった瞬間、違和感を覚えた。

 体全体に触れられた感じだ。

 なにか、薄い膜のような魔力に触れたような感覚だった。

 わたしがその感覚の正体を探すためにキョロキョロと周囲を確認しているとサーニャさんが話しかけてくる。


「もしかして、なにか感じた?」

「橋を渡った瞬間に体全体に変な魔力っぽい物を感じたんだけど」


 感じたままに答える。

 説明が難しい。

 そもそも魔力の膜ってなにって感じだ。


「ユナちゃん、敏感ね。たぶん、結界の中に入ったときに感じたのね。でも、普通は感じ取れないものなんだけど」

「そうなの?」

「感じ取れるのは、この結界を作ったわたしたちの家族ぐらいなものじゃないかしら。たぶん、結界を作ったわたしたちの一族だから、魔力が近いせいもあって感じ取れるみたいなの。だから、ユナちゃんが感じ取れる訳は無いと思うんだけど」


 そうは言われても感じ取れたものはしょうがない。


「それじゃ、ルイミンも感じ取れたの?」

「はい。でも、感じ取れたのはほんの少しだけです」


まあ、わたしも少しだけだった。たぶん、クマさん装備のおかげで感じられたんだろう。脱げばそんなものは感じることはできないはず。


「でも、ちゃんと結界は発動はしているみたいね」

「うん。でも、たまに魔物が入り込んでくるの。お爺ちゃんが言うには結界が弱まっているって」

「わたしには分からないけど、お爺ちゃんが言うなら間違いないかな」


「お爺ちゃんっておさをしているんだっけ?」

「ええ、優しいから、ユナちゃんのことも歓迎をしてくれるわよ」


 結界の中に入り、くまゆるたちは道なりに進む。

 相変わらず、道は細いけど、ちゃんと道は続いている。

 まだ、着かないのかな?

 川を渡って、かなり進んだと思うんだけど、まだ着かない。

 くまゆるたちで走れば直ぐに到着するかもしれないが、くまゆるたちはゆっくり進んでいる。

 わたしは探知魔法を使って、エルフの集落が無いか確認する。

 えっ、なに?

 探知魔法にはわたしたちの周りに人が4人いると表示されていた。

 左右に二人ずついる。

 反応はわたしたちの移動に合わせて動いている。

 もしかして、つけられている?

 反応がある方を見てみるが、分からない。

 考えられるのはエルフだけど、なんで後をつけたりするのかな?

 わたし一人なら、まだ、理由は分かるけど、こっちにはサーニャさんもルイミンもいる。

 後をつける必要性がわからない。別に襲い掛かってくるわけでもない、一定の間隔でついてくる。

 なにか、理由があるにしろ、無いにしろ、落ち着かないのはかわりない。

 その反応の1つが後ろに移動する。さらにもう1つが右斜め前に移動する。

 これで、左右に後ろ、右斜め前にいるので囲まれた。

 もし、敵だった場合のことを考えると面倒だ。


「サーニャさん」

「なに?」

「たぶん、エルフだと思うけど、そのエルフに囲まれているみたいなんだけど」


 わたしの言葉に驚いたように目を大きくする。


「ユナちゃん、気付いていたの!?」

「そ、そうなんですか!」


 サーニャさんは気付いていたらしい。でも、ルイミンは気付いていなかったらしく、周りをキョロキョロと見渡す。


「でも、ユナちゃんは凄いわね。優秀なエルフが尾行しているはずだから、普通は気付かないはずなんだけど。つけている者はまだまだってことね」


 さすがに、探知魔法のおかげとは言えない。

 十分に尾行は凄いです。


「わたしでも集中して、やっと感じ取れるのに」

「これって大丈夫なんですか?」

「わたしたちがいるから大丈夫よ」

「だからと言って、四人も尾行する必要はあるんですか?」

「ユナちゃん、人数まで分かるの!?」


 あっ、ミスった。

 探知魔法に反応がある人数をそのまま言ってしまった。

 サーニャさんはなんとなく、気付かれた程度に思っていたらしい。

 それを人数まで言い当ててしまったから、驚いている。

 ちょっと、ミスったね。


「それじゃ、人数が分かるってことは方向も分かるの?」


 答えても良いのだろうか。

 でも、すでに人数を言い当ててしまったから、嘘をついても意味がないよね。


「左右に二人と後方に一人、右斜め前に一人ですね」

「ユナさん、本当なんですか!? わたし全然分かりません」


 ルイミンは左右を見たり、後ろを見たり、右斜め前を見たりしているが、分からないみたいだ。

 わたしだって探知魔法のおかげだ。無ければ分からない。


「たぶん、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのせいね。わたしたちがクマに乗って現れたから驚いたんでしょうね」

「いきなり、攻撃をしたりしてこないですよね」

「大丈夫よ。ユナちゃんは心配性ね」


 そう言うと、サーニャさんは森の方へ視線を移し、


「ラビラタ~~~~~~!」


 叫んだ。


「サーニャさん?」


 サーニャさんが誰かの名前を森の中に向けて叫んだ。

 しばらくすると、斜め前の木が揺れると、葉がパラパラと落ちてくる。

 そして、その木の上には男性のエルフが立っていた。


「気付いていたのか?」


 男が声をかけてくる。

 イケメンエルフなのかな?

 エルフって基本、美男美女が多いって説が多いけど、その説は正しいかも、サーニャさんも美人だし、ルイミンも可愛らしい。そして、木の上にいるエルフもイケメンフェイスをしている。


「ラビラタ、久しぶりね」

「ああ、でも、よく俺がいるって気づいたな」

「この森の監視はあなたの仕事でしょう」

「そうだったな」

「このクマを心配しているなら大丈夫よ。わたしが保証するわ」

「そのクマもか」


 わたしの方を見る。


「あなたの目には危険に見えるの?」

「……見えないな」

「それじゃ、付き纏うのはやめてくれる? 少し不愉快だから」

「……わかった。先に村に戻って報告をしておく」


 ラビラタと呼ばれたエルフは少し考えてから返答した。


「他の三人にも言っておいてね」


 ラビラタはサーニャさんの言葉に顔色を変える。


「サーニャ、おまえそこまで気付いていたのか!?」

「左右に二人、後ろに一人」


 わたしが教えてあげたことを、そのまま口にする。


「まあ、気付いたのはそこのクマの格好をしたユナちゃんだけどね。つけ回されて、気分が悪いから止めてほしいそうよ」


 サーニャさんがわたしの方を見る。


「ちょっ……」


 わたしはそこまで言っていない。

 つけ回されているけど、気分が悪いとは言っていない。襲われる心配をしただけだ。


「そのクマが気付いたのか?」


 ラビラタがわたしの方を観察するような目で見る。


「ユナちゃんはこんな可愛らしい格好をしているけど、強いから襲いかかっちゃダメだよ」

「そんなことはしない。わかった。三人は引き下げる。それでいいな」

「お願い。あと、この子たちと一緒に行くから、驚かないように言っておいて」


 サーニャさんは乗っているくまゆるを撫でる。


「分かった」


 男は一言だけ言うと消えてしまった。

 まあ、探知魔法を使っているから、離れて行く様子は分かるんだけどね。

 そして、笛の音か、そのような小さな音が鳴ると、わたしたちの周辺にいた三人も移動し始めた。

 ちゃんと約束は守ってくれたみたいだ。


「それじゃ、わたしたちも行きましょう」

「サーニャさん、さっきの人は?」

「このエルフの森の監視役かな。危険か危険じゃないかの判断をしているわ。基本、このエルフの森に来るのは商人ぐらいだからね」

「でも、サーニャさんとルイミンがいるんだから、監視なんてしなくてもいいんじゃない」

「たぶん、ユナちゃんの格好とくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに驚いたんじゃない?

 でも、さっきの会話で危険はないと分かってくれたから、もう大丈夫だと思うわよ」


 なら、良いんだけど。

 くまゆるたちは進み、森を抜けた先には、畑が広がり、村が見えてくる。ついにエルフの里に到着した。

とりあえず、無事にエルフの里に到着しました。

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