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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、エルフの里に行く
216/904

212 クマさん、商人と交渉する その2

今回は短いです。

 クマの水上歩行。

 水の上を移動することが可能になる。

 召喚獣は水の上を移動することが可能になる。


 こんなスキルを覚えていたんだけど、使い道が無かった。

 一度、クリモニアの近くの川で使ってみたけど、面白かった。

 水の上を走ったり、ジャンプしたり、まるで忍者になったような気分を味わうことができた。

 さらにくまゆるたちに乗って川登りをしたりした。

 普通では絶対に経験ができないことだ。


 もし、このスキルをクラーケンのときに覚えていたら、違った戦い方があったかもしれない。

 まあ、あの方法で無事に倒せたから問題は無かったけど。このスキルがあれば、もっと楽に倒せたかもしれない。


「ユナちゃん、本気なの?」

「ユナさん、わたしの腕輪のために無理をしないでください」


 エルフ姉妹が心配してくれるが、無理はしていない。

 イメージ的に動く道を走り抜けるだけだ。川が荒れていたとしても、でこぼこの道を走るだけだ。それも、長くても数百メートルぐらいだろう。

 数分も掛からずに渡れると思う。

 何も問題はない。


「ユナちゃん、なにか考えがあるのね?」


 サーニャさんが真剣な表情で確認してくる。

 サーニャさんとしても腕輪を欲しがっている商人と無理に話し合うよりは、関わらないで済む方が良いと思っているはず。

 面倒ごとは回避したいだろう。


「大丈夫だよ。わたしが何とかするよ」


 わたしは安心させるために笑顔で言ってあげる。


「分かったわ。ユナちゃんを信じるわ」


 サーニャさんは決意すると、ドグルードさんの方を見る。


「ドグルードさん、その絵に関してはわたしたちに任せてもらえますか?」

「任せるって、どうやって絵を運んでくると言うんですか? 船は動かないんですよ。泳ぐなんてありえない」

「ユナちゃんができるって言うなら、その言葉を信じます」


 サーニャさんの真剣な心からの言葉がドグルードさんに向けられる。

 信用してくれるのは嬉しいけど、少し恥ずかしい。

 ドグルードさんがサーニャさんからわたしの方へと視線を移す。


「失礼な言い方になりますが、そのクマの格好をした女の子が、どうにかできるとは思えないのですが」


 まあ、普通はそう思うよね。

 こればかりは、クマの着ぐるみとは関係なく、水の流れが激しい川の反対側の街に行くと言えば、誰しもが問い掛ける言葉だと思う。


「別にわたしたちが絵を運んでこられなくても、ドグルードさんには迷惑は掛からないですよね」

「それはそうですが」


 わたしたちが絵を運んでこられなくても、現在の状態となにも変わらない。

 進むことも戻ることもない。

 ただ、絵を手に入れることができなければ、ルイミンの腕輪がその商人に渡るだけだ。


「あと相手の商人との交渉も諦めます。腕輪もその商人に譲っても構わない。だから、絵については任せてもらえないかしら? わたしたちが絵を明日の昼までに運んできたら、腕輪はわたしに買い戻させてほしい」


 サーニャさんはわたしのことを信じてドグルードさんと交渉をする。

 わたしがどんな風に川を渡るかを聞かずに、わたしのできるって言葉を信じてくれている。

 ドグルードさんはサーニャさんの真剣な言葉に、手を頭に置き、何度か髪をクシャクシャにして、考え込む。そして、結論が出たのか口を開く。


「分かりました。絵についてはお任せします。腕輪の件も了解です。絵を運んできてくださったら、腕輪はサーニャさんにお売りすることをお約束します」

「ありがとう」

「ただし、ギルドカードの確認だけはさせてもらいます」


 その要求にサーニャさんとわたしは承諾する。

 まあ、何かトラブルや失敗などをしたときの保証もあるから仕方ない。

 何かの方法で川を渡り、絵を受け取ったわたしが逃げたら大変なことになるからね。

 わたしとサーニャさんはギルドカードをドグルードさんに渡す。

 ドグルードさんは先に受け取ったサーニャさんのギルドカードを見て驚愕の顔を見せる。


「王都の冒険者ギルドのギルドマスター!?」


 カードから目を外し、サーニャさんの顔を見る。サーニャさんはドグルードさんの驚いた顔を見れたことに嬉しそうにしている。


「少しは信用してもらえるかしら?」

「ルイミンのお姉さんが冒険者ギルドのギルドマスターとは驚きました」


 ミランダさんたちも冒険者ギルドで、サーニャさんが王都の冒険者ギルドのギルドマスターだと知ると同様に驚いていた。

 そして、なんで黙っていたのよ、とルイミンを問い詰める姿があった。

 まあ、ルイミンもサーニャさんに会うまで知らなかったのだから仕方ない。


 ドグルードさんは次にわたしのギルドカードを確認する。

 冒険者ランクCだから、わたしのギルドカードを見ても驚かれるかもしれない。

 最近、ランクCは世間ではランクが高いことを知った。

 クラーケンを倒したときにランクをBとかにしないで良かったよ。もし、ランクをBとかにしていたら、ギルドカードを出す度に驚かれることになる。

 まあ、もっとも、クマの着ぐるみを着た女の子が冒険者だっていう時点で驚かれるから、あまり変わりがないとも言えるけど。


 そして、わたしが思っていた通り、わたしのギルドカードを見たドグルードさんは驚きの顔をしている。ドグルードさんは顔を上げてわたしの方を見る。


「職業、クマ?」


 えっ、驚くところ、そっち?

 ドグルードさんは職業クマとわたしを見比べている。

 再度、ギルドカードを見る。


「冒険者ランクC?」


 普通はそっちを驚くものじゃないの?

 確かに職業欄にクマって書いてあれば、意味が分からないから疑問符を浮かべるかもしれないけど。


「えっ、ユナさん、本当にランクCだったんですか!」


 どうやら、今まで信じていなかったルイミンが驚きを見せる。それはルイミンだけでなく、ミランダさんたち冒険者も同様だ。驚いていないのはサーニャさんぐらいなものだ。しかも、一人で笑っている。


「本当にランクCなの!」

「小さくて可愛いのに」

「本当なの?」


 誰も彼も信じられないように席を立ち、ドグルードさんのところに向かい、わたしのギルドカードを確認する。

 人を見た目で判断してはいけないと、習わなかったかな。

 ゲームだって、ステータスを見なければ、見た目だけでプレイヤーの強さは分からない場合も多い。

 まあ、人によってはレア防具で固めている人もいるけどね。


「ユナちゃんはクマの格好をしているけど、優秀な冒険者よ」


 サーニャさんがわたしのギルドカードを見ている人たちにフォローなのか、よく分からない擁護をしてくれる。皆は納得したのか、していないのか、微妙な顔で席に戻る。


「わかりました。どのようにして川を渡るかは分かりませんが、お二人を信じることにします」


 それから、ドグルードさんから、絵がある支店の場所を教えてもらい、封筒に入った手紙を差し出された。


「これをお持ちになってください。引取りの証文とわたしの手紙です。これを店の者に見せれば、絵を渡してくれると思います」


 わたしは手紙を受け取る。


「明日の昼までに持ってくればいいんだよね?」

「はい。遅くても昼までにはお願いします。それまでは相手には腕輪をお渡ししないとお約束をします」


 わたしたちはお礼を言って、お店の外に出る。外はすでに夕暮れになっていた。


「ユナちゃん、確認だけど。どうするの?」

「明日の朝一番に行ってくるよ」


 ここにはミランダさんたちもいるから、余計なことは口にしない。そのことを分かってくれたサーニャさんは話を変えてくれる。


「それじゃ、今日は宿で休みましょうか」


 ミランダさんの案内で宿に連れていってもらい、お礼としてミランダさんたちに食事をご馳走することになった。



たぶん、次回で腕輪編は終わるかと、たぶん……

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― 新着の感想 ―
[一言] 中途半端なCだから、注目を避けられたんでは?B辺りから、本格的に有名冒険者になりそうだし。 それに、高過ぎるからCにするという判断をしたのはユナであって、だったらBにした方がよかった、無駄な…
[気になる点] 王城への許可証ってギルマスしか確認できないんだっけ?
[気になる点] 以前に何かスキルを覚えてたとしてもその場で隠して必要な時に出してくるとご都合主義感増し増しやなぁ
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