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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、誕生日会に参加する
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190 クマさん、誕生日ケーキを出す

 パーティーが始まるとゼレフさんの料理が運ばれてくる。

 王宮料理長の料理だよ。普通の料理は食べさせてもらったけど、パーティー料理は初めてだ。

 美味しそうな料理がテーブルに並んでいく。

 綺麗に作られた料理。定食みたいな料理ではなく、色取り取りで視覚も嗅覚も楽しませてくれる。

 料理が並び終わると、自由にお食べくださいの言葉で、皆は食べ始める。

 礼儀作法は知らないけど。普通に食べていいんだよね。

 隣を見ると、フィナも同様にどうしたらいいか迷っている。そして、わたしの方を困ったように見る。そんな目で見られても貴族のパーティーの食べ方なんて知らない。

 だから、参考になる人物の真似をするしかない。


「ノアの真似をすればいいんじゃないかな?」


 とアドバイスをしておく。

 斜め前に座っているノアはフォークやスプーンを使って美味しそうに食べている。

 それに、酷い食べ方をしない限り、文句を言ってくる者もいないと思う。もし、注意されたら、気を付ければいい。

 それにマナーに気を使って、せっかくのゼレフさんの料理の味が分からなくなっても困る。だから、適度に気にしながら食べることにする。

 手始めに美味しそうなスープを飲む。

 アンズが作るスープとは違うが美味しい。

 今度、ゼレフさんにパーティー料理の作り方でも教わって、アンズにでも教えようかな。そうすればいつでも食べれるようになるし。


 それにしても足や腕、首もとが涼しくて落ち着かない。着ぐるみは温度調整もしてくれるし、見た目さえ気にしなければ最高の服だ。あのモコモコ感が恋しくなる。

 それにドレスは借り物だから汚さないように気を付けないといけない。だから、注意しないといけない。汚すつもりは無いけど、ドレスの上に料理をこぼしたら大変なことになる。

 ドレスがいくらするか分からないけど。高いのは間違いないだろう。わたしだったら払えない金額ではないけど。

 まあ、もっとも汚したとしてもノアが弁償しろとかは言ってこないだろうと思うし、気にすることは無いと思う。でも、隣に座るフィナはドレスを汚さないように、小さな口でちょっとずつ食べている。

 そのせいか、食べる速度が遅い。


「これでミサも10歳ね」


 ミサの母親が娘を見る。


「はい。ノアお姉さまと同じになりました」

「でも、数ヵ月後にはわたしは11歳になるから、お姉さんですよ」


 ノアが同じ年の言葉に反応して、お姉さん宣言をする。

 確かに、少しでも早く産まれていればお姉さんなのは間違いない。


「あと一年早く、産まれていたらお姉さまと、同い年だったのに」


 ミサは少し残念そうにする。

 そういえばフィナも10歳だったよね。誕生日はいつなんだろう。

 フィナの今までの環境を考えると(いわ)われたことが無いだろうし。今度、ティルミナさんに聞いてサプライズパーティーをするのもいいかもしれない。

 フィナには、この世界に来て一番お世話になっているからね。

 わたしはいい案だと思い、心に留めておく。


 パーティーにはゼレフさんやボッツさんも参加している。料理の手伝いをしたメイドさんたちの付近に座って料理を食べて、ボッツさんと料理の品評会をしている。

 味付けがどうとか、濃いと薄い、他の素材を使うといいかもしれないとか、話し合っている。

 ボッツさんの腕もスプーンとフォークはどうにか、持つことができるようになっている。

 でも、腕を上げる動作で少し痛そうな顔をしている。それでも、ゼレフさんと楽しそうに料理談議で盛り上がっている。

 まだ、包丁を振るうことはできそうもない。料理には細かい作業も要求されるからね。


 ノアは久しぶりに会えたエレローラさんと、最近忙しかったクリフと一緒に楽しそうに会話をしている。

 王都にいるシアのことを聞いたりしている。聴こえてくる会話はシアの王都での行動や、わたしが学園の依頼で護衛した話などをしている。逆にノアはクリモニアの話をしている。それも、なぜか、わたしの話が中心になっている。

 普通、久しぶりに会ったら、自分たちのことを話すものじゃない?


 そして、時間も進み、ノアがミサにプレゼントを贈っている姿がある。なにをプレゼントしたのかなと思ったら、リボンを贈ったそうだ。

 10歳らしい可愛いプレゼントだ。年齢に相応しいプレゼントで安心する。もし、プレゼントが宝石やドレスなどの高級品だったら2人を見る目が変わってしまったかもしれない。

 貴族ならあり得るかと思っていたが杞憂に終わった。

 わたしがプレゼントのタイミングを計っていると、隣のフィナが「どうするの?」って感じでわたしの方を見ている。

 プレゼントはケーキとぬいぐるみの2つがある。

 パーティーも中盤に入り、テーブルの上の料理も減っている。

 そろそろケーキを出してもいいかな?


「ミサ、ちょっといいかな?」

「はい、なんですか?」

「わたしとフィナからもプレゼントがあるんだけど」

「プレゼントですか?」

「お菓子だけど、食べてくれると嬉しいかな」


 クマボックスからフィナと作った二段ケーキを取り出して、ミサの前に持っていく。

 初めて見るケーキにミサは興味津々になる。

 ケーキにはイチゴが綺麗に並び、中央にフィナがイチゴのクリームで書いてくれた『誕生日おめでとう』の文字がある。


「綺麗なお菓子ね」


 母親がケーキの感想を言う。


「はい。食べるのがもったいないです。でも、どうやって食べるんですか?」


 ホールの二段ケーキのままだ。

 さすがに一人分とは思っていないと思うけど。切り分ける旨を伝える。


「切るんですか!?」

「切り分けないと食べられないからね」

「う~、せっかくの文字がもったいないです」


 その言葉にフィナが恥ずかしそうにしている。


「文字はケーキの味と一緒に心の中に記憶してくれると嬉しいかな」

「わかりました。覚えておきます」


 ミサは文字が書かれているケーキを見て頷く。ミサから了承を得たので、ケーキを切り分けることにする。

 ケーキにナイフを入れると、ミサの口から「ああ」と少し悲しそうな声をあげる。

 こればっかしは仕方無い。我慢をしてもらう。


「ユナさんとフィナの2人で作ったんですか?」


 切り分けているわたしにノアが尋ねてくる。


「フィナがミサのプレゼントで悩んでいたから一緒に作ろうって話になってね。ケーキなら美味しいし、ミサも喜んでもらえると思ったからね」

「う~、ずるいです。2人だけでケーキを作るなんて、わたしも一緒に作りたかったです」


 ノアは少しイジケルような仕草(しぐさ)をする。


「それじゃ、今度一緒に作ろうか?」

「本当ですか? 約束ですよ」

「わ、わたしも作りたいです」

「それじゃ、プリンみたいに、みんなで作ろうか?」


「いいんですか?」

「うん、いいけど。その代わりに作り方は二人とも内緒だよ」

「はい!」


 ノアとミサと約束をしたわたしは二段ケーキを八等分に切り分ける。

 文字も八つに分けられる。

 ミサ、ミサの両親、グランさん、エレローラさん、クリフ、ノア、フィナの分になる。

 わたしの分がないが気にしない。フィナが「いいの?」って感じで見てくる。


「エレナさんとお店の子たちが作ってくれた分があるから気にしないでいいよ」


 他の人の分はエレナさんたちが作ったケーキを分けてあげる。

 二段ケーキじゃないけど、作り方は同じだから味は変わらないはず。

 全員に配り終わると、皆がケーキを食べ始める。


「美味しいです」

「本当に美味しいのう」 

「前にも食べたが美味しいな」

「わたしも一緒に作りたかったです」


 初めて食べるミサやグランさんたちを含め、一度食べたことがあるノアやクリフたちからも、お褒めの言葉をもらう。


「ユナ、おまえさんはこんな美味しいものまで作れるのか。冒険者をしなくても、料理人としてやっていけるんじゃないか?」


 わたしのことを知らないグランさんが聞いてくる。


「グラン爺さん。こいつはすでに自分のお店を2つ持っているし、他の商売もしているぞ」

「そうなのか?」

「しかも、人気のお店で、娘も出入りしている」

「だって、ユナさんのお店の料理、美味しいから」

「ノアールお姉さま、ズルイです」


 なんか知らないけど。ミサの誕生日パーティーなのにわたしの話で盛り上がり始める。

 ノアが自慢気にわたしの店のどの料理が美味しいか話す。ミサは羨ましそうに聴いている。

 時々、「ズルイです」って言葉が何度か聴こえてくる。


 わたしはゼレフさんたちが座っている方に視線を移すと、ケーキを食べたボッツさんとメーシュンさんたちが驚いている姿がある。


「美味しい。プリンもそうだったが、あの嬢ちゃんはなんなんだ?」

「冒険者でわたしが尊敬する料理人ですよ」


 ゼレフさんがボッツさんのいに答える。

 尊敬とか止めてほしいんだけど。

 王宮料理長に尊敬されるとか、そんなことが広まると大変なことになる。

 それにわたしは料理人ではない。


「でも、これどうやって作るんだ」


 ボッツさんはクリームをスプーンですくって食べる。


「わたしはユナ殿に教わりましたから作れますよ。でも、ボッツには教えることはできませんよ」


 なぜか、ゼレフさんが優越感にひたりながら言う。

 その態度にボッツさんが悔しそうにして、わたしの方を見るがスルーしておく。

 作り方を教えることはできない。

 まだ、販売し始めたばかりだし、王都にお店を出す予定だ。なのに王都にお店を出す前にこの街で作られたら困る。


 ミサたちの方に視線を戻すと、わたしの会話も終わり、ケーキは食べ終わったようだ。

 ミサはまだ食べたそうにしているが、他の料理も残っている。それに二段ケーキは大きい。通常のケーキの二倍の大きさはある。

 あれだけでもお腹は膨れているはず。

 食べ過ぎで、お腹を壊しても困るから、追加分は出さないでおく。

 まだ、食べたいようだったら、明日に出してあげればいい。せっかく、ゼレフさんが作ってくれた料理だ。残したらもったいないからね。


「美味しかったです。ユナお姉ちゃん、フィナちゃん。ありがとうね」

「頑張って作ったから、喜んでもらえて良かったよ」


 隣に座っているフィナも嬉しそうにしている。

 あとはクマのぬいぐるみだね。

区切りが悪かったので、今日は少し短いです。

本当はぬいぐるみまで終わらせたかったけど無理だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] イラストでもユナちゃんのドレス姿を見て見たいですね! パペットや靴は、ブレスレットに形状を変えたり、足用のアンクレットに形状を変えたりしてもいいのではないでしょうか? ご都合良すぎかな?
[一言] ボルツが教えられないの草
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