表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、誕生日会に参加する
192/904

188 クマさん、モグラ退治を終えて、お屋敷に戻る

 無事にビッグモグラを退治することができた。


「これで、ビッグモグラは大丈夫だな」


 マリナが言うにはビッグモグラは2匹以上は現れないらしい。

 出産時に食べ物がたくさんあるところに現れて産んでいく。

 ビッグモグラが産む数は多く、処理が遅れると食物が食われて被害が大きくなるらしい。

 さすが異世界。元の世界とはいろいろと違うね。

 あとはビッグモグラが産んだモグラを退治するだけだ。

 でも、そろそろ良い時間になる。帰りが遅くなると心配する者も現れるかも知れないから、わたしたちはこの辺りで帰ることにする。


「マリナ、エル、今日はありがとうね」

「いえ、わたしも久しぶりにミサーナ様と一緒に居れて嬉しかったです」

「ミサーナ様、なにかあればいつでも呼んでくださいね」


 マリナたちはまだ帰らずに、エルの魔力が尽きるまで頑張るそうだ。

 モグラ探しを続けるマリナたちと別れて三人娘を連れて歩きだす。

 途中で昼寝に適した大きな木の横を通りかかる。そう言えば、ここに人がいたよね。歩きながら確認しようとしたけど。誰もいなかった。ビッグモグラを退治する前にはいたのに。もしかして、ビッグモグラの騒ぎで移動したのかな?

 

 お屋敷に帰る途中。隣を歩く三人娘を見ると、服や顔が汚れている。まあ、畑の中を歩けば汚れるよね。とくに下半身の汚れが酷い。

 このまま帰ると怒られそうだ。このままじゃ、不味いかな?

 服は無理だけど、顔の汚れだけは落としておく。


「三人とも、じっとしててね」


 水魔法でタオルを濡らして三人の顔を拭いてあげる。

 顔は綺麗になったけど、服は無理そうだ。怒られるかな?

 言い訳を考えながらお屋敷に戻ってくると、見知った人物がお屋敷に入ろうとしている姿があった。


「お母様!」


 ノアがお屋敷に入ろうとするエレローラさんに向かって走りだす。ノアの声に気付いたエレローラさんは振り向く。


「ノア!?」


 振り向いたエレローラさんはノアの顔を見ると笑顔になる。


「元気そうね」

「はい。元気です。でも、なんでお母様がいるんですか?」

「もちろん、愛する娘に会いに来たのよ」


 娘を抱きしめようとするエレローラさん。

 でも、途中で止める。


「ノア、あなた汚れているわね」


 ノアは改めて自分の姿を見る。

 綺麗な服が少し汚れている。

 言い訳も思い付かなかったので、保護者であるわたしが怒られることにする。


「エレローラさん、ごめん。わたしがこの子たちを畑に連れていったから」

「違います。わたしが行きたいって言ったから」


 わたしの言葉にミサが否定する。


「だから、ユナお姉ちゃんは悪くないです」

「ふふ、別に怒っていないわよ。それにわたしが子供の頃はもっと汚れていたわ」


 エレローラさんは笑いながら、汚れを気にしないでノアを抱きしめる。


「お母様、汚れます」

「汚れているからと言って、娘を抱きしめない母親はいないわ」

「お、お母様!」


 ノアは苦しそうにしているが、微笑ましい光景だね。


「でも、本当になんでエレローラさんがいるんですか?」

「うーん、娘に会いに来たのは本当だけど。一応、一割が仕事で、一割がクリフに会いに、八割がノアに会いに来たの」


 えっと、どこからつっこんだらいいの?

 せめて、クリフとノアを半々にしてあげようよ。

 それ以前に仕事は大事でしょう。


「あとで、ユナちゃんにも話すことがあるからね。でも、その前にグランさんに挨拶をしないといけないから、中に入りましょう」


 エレローラさんと一緒にお屋敷の中に入る。

 お屋敷の中に入るとメーシュンさんが駆け寄ってくる。

 そして、わたしたちを見ると、叫び声をあげる。


「どうして、皆さんそんなに汚れているんですか!」


 汚れた三人娘を見て少し怒った顔をする。


「メーシュン、ごめんなさい。わたしのせいなの」


 ミサは謝って、マリナと畑に行ったことを伝える。


「わたしも行きたいって言ったからミサだけのせいじゃないよ」

「わたしも」


 ノアとフィナがミサを庇う。

 そんな庇い合う三人を見て、メーシュンさんは優しい顔になる。


「別に怒っていませんよ」

「本当に?」


 その言葉にミサは嬉しそうにする。


「はい。怒っていませんから、ミサーナ様たちはお風呂に入って、綺麗にしてください。そのままじゃ食事もできませんから」


 三人は返事をして仲良くお風呂場に向かう。その姿をメーシュンさんは微笑みながら見送る。


「あんなに楽しそうなミサーナ様は久しぶりです。ユナさんも一緒に入ってきてください」

「わたしは後でいいよ。エレローラさんと話でもしたあとに入らせてもらうよ」

「……エレローラ様!?」


 メーシュンさんの目には汚れた三人娘しか見えていなかったらしい。

 エレローラさんを見て驚きの顔になる。


「メーシュン、久しぶりね」

「気付かなくて申し訳ありません」


 頭を深く下げるメーシュンさん。


「いいのよ。いきなり来たわたしが悪いんですもの。グランさんに挨拶をしたいんだけど、会えるかしら?」

「はい。大丈夫だと思います。今日お会いするお客様は全て終わっていますので」


 朝の話によると、いろんな人に会うみたいなことを言っていたね。


「ユナちゃん。わたしはグランさんに挨拶をしてくるから、先にお風呂に入ってきていいわよ」

「できればお願いします。汚れたまま、歩かれると困りますので……」


 メーシュンさんがわたしのことを見る。


「ユナ様も畑に行ったのですよね?」

「うん、行ったけど」

「そのわりには、汚れていませんね。黒い足は分かりませんが、白い足も綺麗ですね」


 メーシュンさんはわたしの足元を見たり、わたしの足を持ち上げて、クマさんの足の裏を見たりする。


「特殊な素材でできているから汚れないよ」


 洗濯不要な着ぐるみだ。一年中着ても清潔で、汚れも匂いも付かない優れもの。

 たとえ、泥水を被ろうが、汚れることはない。


「不思議ですね」


 メーシュンさんは首を傾げながらクマさん装備を見ている。


「ユナちゃん、ゆっくりお風呂に入ってきて。あの子たちの面倒を見て疲れているでしょう?」


 一緒に入って疲れが取れるかは分からないけど。

 まあ、ノアもミサも貴族だから教育ができているようで、お風呂で騒いだりはしない(注意、クマ風呂では騒ぐ)。

 フィナは大人しいから大丈夫だし。

 エレローラさんには後で会う約束をして風呂場に向かう。

 風呂場に向かうとすでに裸になっている三人がいた。


「ユナさん、遅いですよ」

「ちょっと、メーシュンさんとエレローラさんと話していたからね」

「早く入りましょう」

「すぐに行くから先に行ってて」


 三人を先に行かせて、脱衣所でクマの服を脱いで風呂場に向かう。

 たとえ、街半分の領主とはいえ、立派なお風呂がある。わたしたち四人が入っても余裕の広さだ。

 ノアがミサの体を洗い始めたところだったので、


「フィナ、おいで、洗ってあげるから」

「大丈夫です。一人で洗えます」

「いいから」


 無理やりフィナをわたしの前に座らせると、背中と頭を洗ってあげる。

 そして、自分の体と髪を洗おうとしたら、三人娘が手伝おうとしたが、丁重にお断りして、湯船に浸かるように言う。

 ノアが文句を言うが気にしないでおく。

 風呂からあがったわたしたちはしっかりとドライヤーで髪を乾かす。

 風邪を引いたら大変だからね。

 風呂場から出て部屋に戻ってくると、三人娘はリバーシをやり始める。

 そんな3人の様子を眺めながら休んでいると、エレローラさんが部屋にやってきた。


「お母様」

「みんな、綺麗になったわね。あとで、わたしもお風呂を借りようかしら」


 綺麗になった娘の頭を撫でて、部屋の中に入ってくる。


「ユナちゃん、今回はありがとうね」

「…………?」

「クリフとグランさんから話を聞いたわ。ユナちゃんがゼレフを連れてきてくれなかったら、かなり危なかったって」

「連れてきたのはわたしだけど、パーティーで頑張ってくれたのはゼレフさんだよ」

「ええ、聞いたわ。料理にケチを付けたガジュルドにゼレフが怒ったって。見たかったわ」


 残念そうに言う。

 たしかにわたしも、噂のバカ貴族が悔しそうにする姿は見たかったね。


「それで、ゼレフのことだけど。王都にはわたしが連れて帰るから、ユナちゃんは安心してね」

「いいの?」

「ええ、その代わりにクリフとノアのことはお願いね」


 王都に一度戻らないで済むのはありがたい。なんだかんだで、面倒なのは変わりない。


「助かりますけど、エレローラさんは一人で来たんですか?」

「部下が数名一緒よ。出発するまで宿に泊まってもらっているわ」


 だよね。さすがのエレローラさんでも一人でこんなところまでは来ないよね。


「本当はわたしは一人でも良かったんだけど。国王陛下が連れていけってうるさくて。だから、仕方なくてね」


 仕方ないって、エレローラさんは貴族なんだから護衛は必要でしょう。


「お母様。一緒に居られるんですか?」

「少しは大丈夫かな。お仕事があるけど」

「お仕事ですか?」

「ええ、意地悪な国王陛下の命令でね。本当はそんなの無視して、ノアと一緒にいてあげたいんだけど」


 ゴメンね、と謝るエレローラさん。

 そういえば仕事で来たって言っていたっけ。1割が仕事だと。


「仕事はすぐに終わるんですか?」

「うーん。昼間は無理かな。でも、夜は時間はあるから一緒にいましょう。それでユナちゃん、昼間はノアのことをよろしくね」

「それで仕事ってなんですか? 話せないようだったら聞きませんけど」


 面倒ごとに巻き込まれるのは困る。

 でも、フィナたちが面倒ごとに巻き込まれるなら聞いた方が良い。


「この街の視察ね。国王陛下が文官を送ろうとしていたのを、わたしが横取り、じゃなくて、わたしが申し出たのよ」


 今、この人、横取りって言ったよ。


「でも、よく国王が許してくれましたね」

「一生懸命にお願いをしたからね。娘に会いたい。夫に会いたい。娘に会いたい。娘に会いたい。夫に会いたい。って呪文のように陛下の前で唱えたら、呪文の効果が発動して、許可がでたのよ」


 国王、うるさかったんだね。


「それで視察って」

「大したことはしないわよ。街を歩いて情報収集するだけ。あとはグランさんとクリフから話を聞いてから、今後のことは考えるわ。明後日はミサーナのパーティーに参加するつもりだし」


 なんとも、自由な視察だ。


「だから、本格的に動くのはパーティー後かしら? 街を見回ったり、冒険者ギルドや商業ギルド、サルバード家にもいかないといけないし」


 それから、メーシュンさんが夕食に呼びに来るまでの間、リバーシを見つけたエレローラさんが参加することになった。





エレローラさんの登場で、サルバード家包囲網が徐々に完成していきますねw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] クマ装備を盗まれないようにただの着ぐるみだと思わせていないといけませんね
[良い点] サルバート家終わりの回
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ