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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、異世界に来る
18/930

14 クマさん報告する

誤字、脱字、矛盾点とか書き忘れが多くて困る。

「ユナちゃん! ユナちゃん! 起きてよ」

「うるさいわね」


 眠い目を擦り体を起こす。


「やっと起きた」

 

 小さな窓からルリーナが覗き込んでいる。

 背を伸ばして筋肉を伸ばす。


「わたしが頑張って解体しているのに、家を作って寝ているなんてずるいわよ」

「だって解体はルリーナさんの仕事でしょう。それで終わったの?」

「終わったよ。終わって洞窟から出てきたら家があるから驚いたよ。中を覗けばユナちゃんが寝ているし。中に入ろうにもドアがないし」


 魔法で穴を開けて外に出る。

 空を見ると日が傾いている。

 だいたい午後3時ぐらいかな?


「ゴブリンの数が多すぎで大変だったよ。ユナちゃん手伝ってくれなかったから」


 文句を言っているが無視をして会話を変える。


「洞窟の中に必要な物ってある?」

「ないけど」

「それじゃ、他の魔物が住んでも面倒になるから、穴を塞いじゃうね」


 土魔法を使って入り口を塞ぐ。

 これで魔物が住み着くことはなくなるだろう。


「それじゃ、帰ろうか」

「わたし、疲れているんですけど……」

「大丈夫、わたしが抱きかかえてあげるから」


 のんびりと帰るつもりはない。


「ユナちゃん……もしかして……」

「山だから、道が悪いからしゃべらないでね」


 にっこりと微笑んでみる。

 あきらめ顔のルリーナを抱えて山を降りる。

 ジャンプ!ジャンプ!ジャンプ!

 山を下っていく。

 ジャンプする度にルリーナが叫び声をあげる。

 耳元で騒がれるとうるさいんだけど。

 ルリーナの叫びは無視して走り続ける。

 村の入り口近くに着くとルリーナを降ろして門番に向かう。

 ルリーナの足がフラフラしていたのは気のせいだろう。

 門兵に挨拶をして村長の家に向かう。


「えーと、お早いお帰りですが、無理だったのですかな」

「いえ、終わりました」

「なんと」

「ゴブリンの討伐の依頼は終了しました。これがゴブリンの討伐部位の魔石になります」

 

 ルリーナがアイテム袋から、皮袋を取り出す。

 皮袋の紐を解き、村長に中身を見せる。

 たぶん、ゴブリンの魔石が入っているだろうな。

 わたしは絶対に見ないけど。

 大量の血みどろの魔石なんて見たくない。

 見たら食事ができなくなってしまう。

 水で綺麗に洗い流してあればいいけど、あの洞窟に水場があったとは思えない。


「おお、ではゴブリンを討伐してくれたのですね。でも多くありませんか?」

「100匹近くいましたから」

「100匹!」


 村長が驚く。

 そりゃ、予想の倍以上のゴブリンが村の近くにいれば驚くだろう。 


「安心してください。全て倒しましたから。ゴブリンが作っていた巣も塞ぎましたから新しく魔物が住み着くこともないと思います」

「あ、ありがとうございます」


 村長が頭を下げる。


「それでは、本日泊まる宿を用意させますので」

「はい、ありがとうございます「いえ、帰ります」」


 ルリーナの言葉とわたしの言葉が重なる。


「ユナちゃん、もう、遅いよ」

「夕暮れ前には帰れるよ」


 二人は見つめ合う。


「もしかして、またお姫様抱っこですか」

「二度も、三度も同じでしょう」

「でも、せっかくの厚意ですし」

「面倒ごとは早く終わらせるのがわたしのモットーだから」

「……本当に帰るの?」


 頷く。


「わかったよ。わたしもゴブリンキングのことも報告しないといけないし、帰りましょう」

「ゴブリンキング?」


 村長がルリーナの言葉に反応する。


「100匹のゴブリンを纏めていたのがゴブリンキングでした」

「その、ゴブリンキングは」

「大丈夫です。ゴブリンキングも討伐はしましたから、安全ですよ」

「ありがとうございます」


 村人に感謝されて村を出る。


「やさしく走ってね。あと、ジャンプは絶対に禁止よ!」

「わかってるよ」


 山を降りるときジャンプを何度かしてルリーナを怖がらせてしまったかな。

 ルリーナが自分からわたしに抱きついてくる。


「でも、悔しいけどこのクマ、抱き心地はいいのよね」

 

 ルリーナはわたし(クマ)を撫で回す。

 止めてほしいんだけど。

 触り方がなんか嫌だ。

 走り出せば撫で回すこともできないはずなのでお姫様抱っこして走り出す。

 平地だから山と違って走りやすい。

 遠くに魔物の反応があるが無視して走りぬける。

 時々、冒険者や馬車ともすれ違うが気にしない。

 なんか、騒いでいるけど一瞬でその声は聞こえなくなる。

 街の門が見えてくる。


「恥ずかしいから、そろそろ降ろして」


 耳元で騒ぐが無視して走り続ける。


「ユ、ユナちゃん? お願いだから」


 抱きしめる腕に力が入るが痛くはない。

 そのまま、西門にたどり着く。

 門兵は驚いている。

 ルリーナは恥ずかしそうにしている。

 わたしはクマの格好をしている。

 三人が共に黙っている。

 ルリーナを下ろして無言のままギルドカードを渡す。

 門兵は無言のまま確認をする。

 二人は無言のまま街の中にはいる。


「えーとギルドまで運ぼうか?」

「やめて!」


 恥ずかしそうな顔をしたルリーナと報告をするためにギルドに向かう。

 ギルドの入り口には仕事を終えたかなりの数の冒険者がいた。

 中に入れないなと思っているとわたしに気づいた冒険者が道を空けてくれる。

 それはモーゼの海のように道が開いていく。


「いいのかしら?」

「いいんじゃない?」


 ギルドに入ると受付も賑わっている。

 受付に並ぼうとすると後ろから声をかけられる。


「ルリーナ、どうしたんだ」

「ランズどうして、ここにいるの」


 ランズとギルが椅子に座ってこちらを見ていた。


「どうしてって、お前たちが戻ってくると思ったから待機していたんだよ。でも、その予想は当たったみたいだな。こんなに早く帰ってくるなんて、ゴブリンの数に恐れをなして逃げ戻ってきたんだろう」


 失敗したと思っているランズは汚い笑みを浮かべる。

 わかっているのか。わたしが失敗したら自分たちが失敗することになることを。


「ランズ、残念だけど。依頼なら終わったわよ」

「はぁ?」


 ルリーナの言葉にアホ面がさらにアホ面になる。


「依頼は終了。ゴブリン100匹とゴブリンキングのおまけ付きで」

「はあ、なに言ってるんだ。ゴブリン100匹? ゴブリンキング? 冗談もそこまでいくと笑えないぞ」

「それが冗談じゃないのよ」


 ランズの大きな声のせいでギルドの中にいた冒険者がこちらを向く。


「ゴブリン100匹?」

「ゴブリンキング?」

「嘘だろう」

「ゴブリンキングなんて倒せるわけないだろう」

「ゴブリン100匹! 2人じゃ無理だろう」

「でも、あのクマだぞ」

「あのクマだな」

「あのクマならありえるのか?」

「クマだしな」


 冒険者たちはわたしたちの言葉を聞いてそれぞれが口を開いている。

 それにしてもクマだからって言うのはなんだ。


「ルリーナさん、ゴブリンキングって本当ですか」


 ヘレンがやってくる。


「少しお話をお聞きしたいのでこちらに来てください」


 人が並んでいない受付に案内される。


「それではお話をお聞きします。ルリーナさんが受けた依頼はトーズ村付近に現れたゴブリンの群れの討伐でしたよね。その数は50匹ほどの」

「はい、でも、行ってみたら、ゴブリンは100匹いました」


 そう報告すると、後ろに聞き耳立てている冒険者が騒ぎ出す。


「失礼ですが、討伐証明の魔石はお持ちですか?」


 ルリーナはアイテム袋からゴブリンの討伐証拠の魔石が入った袋を取り出す。


「確認させてもらいます」


 討伐部位の魔石を受け取るとカウンター内にある装置を操作する。


「はい、間違いなく本日討伐された魔石になります。それとゴブリンキングって聞こえたのですが本当ですか?」

「はい、ゴブリンの親玉はゴブリンキングでした」

「本当ですか。それじゃ、Cランクパーティーに緊急依頼をしなくては」

「大丈夫です。ユナちゃんが倒しましたから」

「…………ゴブリンキングを一人で倒した…………」

「クマがゴブリンキングを倒した」

「クマが…………」

「クマが……」


 エコーのように広がって行く。


「それは本当でしょうか。魔石がありましたらお願いします」

「ゴブリンキングの死体、持ってきているんだけど」

「ああ、ユナさんのクマのアイテム袋ですね。えーと、大きいですよね。すみませんが隣の部屋にお願いします」



 ぞろぞろと冒険者がヘレンとわたしたちの後ろを金魚のフンのように付いてくる。


「こちらに出してもらえますか」


 白クマをかざしてゴブリンキングを取り出す。

 周りからため息と、叫び声と、唸り声といろんな声が漏れる。


「これは間違いなくゴブリンキングですね」


 ゴブリンキングの顔は恨み殺せそうな顔をしている。

 その顔を見た冒険者は恐怖を覚える。

 さらにそのゴブリンキングを倒したユナに驚愕する。

 ゴブリンキングの肉体には壮絶な戦いを示す傷が多数見える。

 だれも一方的な虐殺だと思っていない。


「ありがとうございます。ゴブリンキングはこちらで買い取らせてもらってもよろしいでしょうか」

「ゴブリンキングの素材って使えるの?」

「そうですね。ゴブリンキングは皮はゴブリンとは違って強度も耐久度もありますから防具に使用できます。骨も武器、魔法の道具などに使われます。魔石も強力なのでいろんな用途に使用できます」

「わたしはいいけど、ルリーナさんは」

「わたしも良いですよ」

「それではすみませんが、受付の方によろしいでしょうか」


 再度、受付に戻ってくる。

 冒険者も金魚のフンなので一緒についてくる。

 

「この依頼はルリーナさんのパーティーがお受けになっています。ですが、ユナさんが手伝っていますので、どういたしましょうか」

「わたしたちのパーティーとユナちゃんの共同依頼でお願いします」

「ルリーナ?」

「倒したのはユナちゃんです。それをわたしたちの物にするわけにはいかない。わたしがしたことは剥ぎ取りと交渉ぐらいです」

「わかりました。ではそのように処理させてもらいます。それではルリーナさんを含めたパーティーメンバーの皆さんギルドカードの提出をしてください」

「俺はいい」

「ランズ?」

「俺はなにもしていない。本当はその女が逃げ戻ってくると思って傍観していただけだ。一人でゴブリンの群れなんて討伐できるわけがないと笑っていただけだ」

「俺もいい。何もしてない」

「ギル?」

「わかりました。ではこの依頼はルリーナさんとユナさんの二人で処理させてもらいます。それでよろしいでしょうか」

「はい、よろしくお願いします」

「ではこちらが依頼達成料とゴブリンの魔石の買取になります。あと別にゴブリンキング討伐の褒賞金と買取のお金になります」


 二つの袋を渡してくれる。

 ルリーナはそのゴブリンキングの褒賞金を袋ごと渡してくれる。


「これはわたしが受け取るわけにはいかない。あとこれは半分」


 依頼達成料の入ったお金を半分に分け、渡してくれる。


「いいの?」

「二人でした仕事だからね。もっともわたしは剥ぎ取りしかしてないけど。でも全部は渡せないから半分こ」


 素直に受け取りクマボックスに入れる。


「あと、今回はごめんなさい。デボラネは勿論、ランズにも言っておくから」


 後ろでランズがバツの悪い顔をしている。


「ううん、わたしも楽しかったし、ゴブリンキング相手に魔法の練習もできたし無駄じゃなかったから」


 ゴブリンキング相手に魔法の効果を確かめられたのは本当に利益になった。ゴブリンキングを倒せるなら他の魔物も十分に倒せることになる。

 ギルドを出るとルリーナに食事を誘われ、ルリーナのオススメの店でルリーナ、ランズ、ギルの四人で食べることになった。

 ランズも改めて頭を下げて謝ってきた。

 ギルもゴブリン討伐に同行しなかったことを謝ってくる。

 許すことにして夕食を4人で頂く。


「ほんとうにいいのか。おごってもらって」

「いいわよ。ゴブリンキングの褒賞金もあるし、デボラネの治療費とでも思ってくれればいいよ」

「そうか、それじゃ、遠慮なくごちそうになる」

「ありがとう」


 四人でそれなりに楽しい食事をして宿に戻る。

 エレナに夕食はいらないことを伝え部屋に戻ると風呂に入らないでベッドに潜り込んだ。

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― 新着の感想 ―
漫画から来たけど原作も面白いね。
[良い点] なんだかんだで、ランズも『仕事』に対しては誠実だと読み取れる点。 だから、あーだこーだ文句たれてたのも、『嫌がらせ』とかじゃなく、ただ正直なだけと思えるね。 どこだったっけ、議論で激しく罵…
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