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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、誕生日会に参加する
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171 クマさん、ファーレングラム家に到着する

 馬車を救った翌日。昼食を食べる前にシーリンの街が見えてきた。

 門構えはクリモニアに似ている。


「クリフ、ちょっと待って」


 わたしはクリフに声をかけて、くまきゅうを止める。


「どうした?」

「このまま行くと驚かれるから、くまきゅうたちを戻してもいい?」


 初めて行く街だから、なるべく目立つことはしたくない。


「ああ、確かにそうだな」


 クリフはくまゆるとくまきゅうを見て頷く。


「え~、くまゆるとお別れですか」


 ノアが嫌がるようにくまゆるの首に抱きつく。後ろに座っていたフィナは素直にくまゆるから降りてくれる。


「戻すだけだよ。それにくまゆるたちが街の人に怖がられたら可哀想でしょう」

「なら、小熊にすれば」

「小熊でも街中に入るなら檻に入れないと駄目だろう」


 クリフが助け船を出してくれる。


「ノアはクマたちを檻に入れたいのか?」


 ノアは首を振る。


「それに帰りは一緒でしょう」

「……はい。わかりました」


 ノアは素直にくまゆるから降りてくれる。


「くまゆる、くまきゅう。ここまでありがとうね。また帰りはお願いね」


 ノアは最後に撫でて別れの挨拶をする。

 別れの挨拶が終わると、わたしはくまゆるとくまきゅうを送還させる。

 これで、ここからは歩いて街まで向かうことになる。もう、見える距離まで来ているから大丈夫なはず。

 ノアとフィナも文句1つ言わずに歩き始める。

 しばらく歩くと、街の入口が見えてくる。

 そして、街の入口ではいつもの洗礼を受けることになる。好奇な目を向けられたり、小声でクマって単語が聞こえてきたりする。いつものことだけど、良い気分はしないね。

 わたしは顔が見えなくなるほどフードを深く被る。


「身分証の提出をお願いします」


 わたしたち一行が街の入口に近付くと警備兵に言われる。

 そして、クリフのカードを見た瞬間、警備兵の顔色が変わる。


「どうぞ。お入りください」


 やっぱり、貴族相手だと態度が違うね。

 クリフは受け取ったカードを水晶板に触れてから街の中に入る。

 そして、護衛、ノアと続き、最後にフィナとわたしとなる。フィナは市民カードを出して何事もなく街の中に入る。そして、わたしの番になり、ギルドカードを出す。その瞬間、警備兵の顔色が変わる。


「冒険者のユナさんですか?」

「そうだけど」


 警備兵はカードとわたしを見比べている。

 わたしみたいな女の子が冒険者なのが驚いているのか? 冒険者ランクに驚いているのか? はたまた商人ランクで驚いているのか? もしかすると職業クマで驚いている可能性もある。


「なにか、問題でもあるの?」

「いえ、水晶板に触れてから中にお入りください」


 わたしはカードを返してもらい、水晶板に触れてから街の中に入る。

 もちろん、水晶板は犯罪者を示す赤色には変わらない。


「こいつはファーレングラム家の客人だ。報告はいらんぞ。責任は俺が持つ」


 クリフが警備兵に向かって言う。


「はい。分かりました」


 警備兵は背筋を伸ばして返事をする。

 クリフはやっぱり偉いんだね。

 なにごともなく、シーリンの街の中に入ったわたしたちは、グランさんのお屋敷に向かう。

 そして、街の中に入って数分。


「見られているな」

「見られてますね」

「見られてます」

「みんな、見てるよ」

「…………」


 クリフ、護衛2人、ノア、最後にフィナと続く。そして、最後に全員がわたしの方を見る。


「たぶん、クリフとノアが貴族だから、みんな見ているんだね」


 護衛を付けて、それなりの格好をしている二人は目立つのも仕方無いことだ。

 わたしだって貴族が歩いていたら、なんだろうって感じで見る。


「違うわ! みんな、お前を見ているんだ。そうだよな。お前さんの格好はクマなんだよな」


 額に手を置き、思い出すように言う。


「今さらなによ」

「いや、お前さんの格好が一般常識から離れていることを忘れていたよ。どうやら、知らないうちに俺はおまえに毒されていたらしい」

「ユナさんの格好は変じゃありません。可愛いから大丈夫です。見ている人もユナさんの格好が可愛いから見ているんですよ」


 本心だと思うけど。一生懸命にフォローをしてくれるノア。

 まあ、人の視線は今さらだけど。この着ぐるみ装備が無いと、安心してこの世界で暮らせないしね。


「そんなに目立つのが嫌なら別れる?」

「別れるなら、わたしはユナさんと一緒に行きます」

「わたしもユナお姉ちゃんと行くよ」


 2人はわたしの服を掴む。

 優しいたちだね。  


「お前たちだけにしたら、厄介ごとになりそうだから却下だ。だから、急いで行くぞ」


 急ぐと言っても乗り物が無いわたしたちは歩くことになるんだけど。

 クリフがノアを自分の馬に乗せようとしたが、


「ユナさんと一緒に歩きます」


 と言って断られ、クリフは少し落ち込んでいた。

 街の視線を集めながらしばらく歩くと、クリフのお屋敷と同等の大きさのお屋敷が見えてくる。

 貴族の家ってどこも大きいね。

 お屋敷の前にくると門の前には兵士がいる。


「クリフ・フォシュローゼだ」

「お待ちしてました。確認のためカードと招待状をよろしいでしょうか?」


 クリフはカードと招待状を渡す。


「はい。確認ができました。クリフ様と御息女のノアール様ですね。只今、案内する者が参りますので少々お待ちください」


 兵士の一人がお屋敷に向かう。そして、残った兵士がわたしの方を見る。


「それで、一応確認なのですが、そちらのクマの格好した女の子もクリフ様の付き添いの方でしょうか?」


 兵士が怪しむって言うよりも、どのように対応したら良いか困っている感じだ。


「一応関係者だが、俺の付き添いは護衛の二人だけだ。娘の友人とクマはミサーナ嬢の誕生会に呼ばれている」

「ミサーナ様の……、もし招待状があれば確認をさせてもらってもよろしいでしょうか?」


 わたしとフィナはそれぞれが招待状を渡す。

 兵士は紹介状に目を通すと、態度を変える。


「これは失礼しました」


 背筋を伸ばして謝ってくる。

 招待状があればお客様になる。平民だろうが冒険者だろうが、クマでも歓迎されるみたいだ。下手に礼儀を忘れてお客様を怒らせたら、主人であるグランさんやミサに怒られる可能性もある。

 そして、お屋敷からメイドさんがやってくる。


「クリフ様、お待たせしました」


 メイドさんは礼儀正しく、頭を下げてクリフに挨拶をする。

 年齢は20歳前後で茶色の髪をした綺麗な人だ。

 ララさんもそうだけど、メイドさんは顔で選ぶのかな?

 美人率が高いんだけど。


「メーシュン、久しぶりだな」

「はい、クリフ様も元気そうでなによりです。ノアール様も大きくなられましたね」

「うん、背も伸びたよ」


 どうやら、このメイドさんは知り合いらしい。

 メーシュンと呼ばれたメイドさんはクリフとノアに挨拶するとわたしの方を見る。


「ユナ様にフィナ様ですね。お待ちしてました」

「わたしたちのことも知っているの?」

「はい。ミサーナ様とグラン様より、話は伺っています」


 そう言って微笑むメーシュンさん。

 どんな話か、気になるけど。ミサとグランさんと一緒にいた時間は短い。そんな変なことはしていないはずだ。


「それではお部屋に案内します」

「グラン爺さんに挨拶はできるか?」


 歩き出すメーシュンさんにクリフは尋ねる。


「はい。できますが、今は他のお客様と挨拶をしてますので」

「時間が空いたらでいい。伝えておいてくれ」

「はい。かしこまりました」


 それからメーシュンさんの案内で、わたしたちが泊まる部屋に案内をしてくれる。


「クリフ様とノアール様はこちらのお部屋をお使いください」

「え~、お父様と一緒なの?」

「はい。隣の部屋をユナ様とフィナ様にお使いになってもらう予定になっています。護衛の方は離れの部屋になります」

「わたしもユナさんとフィナと一緒の部屋がいい」

「ですが、部屋にはベッドが2つしかありませんから」

「フィナと一緒に寝るから大丈夫。フィナもいいでしょう」

「なら、わたしは床でも」

「そんなことさせないよ。一緒に寝よう」

「はい。ノア様がよろしければ」


 メーシュンは困ったようにクリフを見る。


「メーシュンすまない。俺は一人でいい」

「わかりました。では、こちらの部屋はクリフ様がお使いください。隣の部屋はユナ様、フィナ様、そしてノア様の三名でお使いください」

「ありがとう」

「それで、昼食は如何いかがしましょうか?」

「そうだな。用意してくれるか」

「はい。かしこまりました。すぐにお部屋にお運びします」


 本当は、街の中を散歩しながら屋台を回りたかったけど。自分勝手な行動は控えておく。


「それでは、お付きの方は別室にご案内いたします」


 メーシュンさんに連れていかれる護衛の二人。

 護衛が離れて良いのかなと思ったが、屋敷の中は安全だから護衛も必要は無いのかな。そもそも、自分が住む街とはいえ、ノアなんて一人で出歩くぐらいだ。それを考えると屋敷の中は安全になる。

 当の本人のクリフも気にしないで、与えられた部屋に入っていく。


「ユナさん。わたしたちも早く部屋に入りましょう」


 ノアに引っ張られてクリフの隣の部屋に入る。

 中には大きめのベッドが2つ置いてある。


「あ~、疲れました~」


 ノアがベッドに倒れ込む。


「ユナお姉ちゃん。本当にわたし、ここにいてもいいのかな?」


 フィナがどうしたら良いのか部屋の真ん中で困っている。


「それを言ったらわたしもだよ」


 平民の女の子に冒険者のわたし。どちらも貴族のパーティーに参加ができるような身分ではない。

 フィナ同様、参加しなくていいなら、参加はしない派だ。


「ユナお姉ちゃん。気が重くなってきました」

「まあ、わたしたちはグランさんのパーティーには参加しないから、それほど気を張らなくてもいいんじゃないかな」


 ミサのパーティーは身内だけって話だし。


「ズルいです。ユナさんもフィナもグランお爺ちゃんのパーティーに参加しましょうよ」

「そんなこと言われても招待状は来ていないし。ミサの身内パーティーと違って、グランさんのパーティーはいろんな人が集まるんでしょう」


 考えただけでも参加はしたくない。


「わたしもできれば、参加したくないです」


 フィナがわたしの言葉に援護射撃をしてくれる。


「うう、フィナまで……」


 ノアは頬をふくらませて不貞腐れる。

 フィナがノアを慰めているとドアがノックされ、メーシュンが食事を運んできた。


「食事を用意しました」

「ありがとう」

「お父様は?」

「クリフ様はグラン様のところに挨拶に行かれました」

「それじゃ、食事はわたしたちが先に食べていいの?」

「はい。クリフ様の分は別に用意させていただいておりますから、大丈夫です」


 クリフはグランさんに挨拶か。わたしたちは行かなくて良かったのかな? 

 必要ならクリフが呼んだだろうし。この辺の礼儀は別の世界のわたしには分からないね 。

 わたしたちはメーシュンさんの運んできてくれた昼食を食べて、グランさんのパーティーがある3日後までどうするか考えてると、ドアが開いた。



しばらく、三日おきになります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 物語自体は前から読んでてめっさ楽しいんやが、アニメ終了記念に読み返してて、貴族家に使える者の言葉遣いが気になる。 ・ラノベに細かいこと求めんな ・書籍版は修正済み(コミックしか買うてない、ス…
[気になる点] 悪いという訳ではないのですが。 馬三頭+徒歩という組み合わせで、貴族様や一般市民が一緒に町に入場するのは……誰も、不自然に思わないのか……。 しかも書いていないだけかもしれないですけど…
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