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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、ミスリルナイフを作る

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151 クマさん、解体用のナイフを作りに行く

 手を繋いだフィナとシュリと一緒にゴルドさんの鍛冶屋さんに到着する。


「ごめんくださ~い」


 と言って返事を待たずに店の中に入る。

 店の中にいるのは、いつも通りネルトさんだと思ったら違った。

 店内にはぶっきらぼうな顔で、売り物の剣を磨いているゴルドさんの姿があった。


「ゴルドさん?」

「おお、フィナとシュリ。それからクマの嬢ちゃんじゃないか」

「ゴルドさんが店にいるのは珍しいね」


 珍しい以前に初めてかもしれない。


「最近、仕事もせずに寝ていたら、ネルトの奴に蹴られてな。渋々、こうやって店の物を磨いているんじゃよ」

「そのネルトさんは?」

「近所の知り合いと出かけておるよ。それで、なんの用じゃ、王都にでかけたんじゃなかったのか?」

「行きましたよ。それでガザルさんに会ってきました。紹介状ありがとうございました」


 ネルトさんにはお礼を述べたけど、紹介状を書いてくれたゴルドさんには礼を言ってなかった。


「戻ってくるの早くないか? ああ、おまえさんには召喚獣のクマがいたな」


 1人で、疑問に思って1人で勝手に答えを導く。

 わたしはその答えに正否はしない。


「あいつは、元気にしていたか?」

「元気でしたよ」

「そうか、あいつともしばらくは会ってないからのう。暇だし、今度、会いにいくかのう」


 懐かしそうに自分の長い顎髭を触りながら言う。


「それで、ミスリルのナイフは手に入ったのか?」

「王都でも、ミスリルは不足してましたよ。ナイフは手に入らなかったけど。ミスリルはどうにか手に入れることはできましたよ」

「それじゃ、ガザルの奴に作ってもらったのか?」

「わたしの戦闘用のナイフは頼みました。それで、ゴルドさんにはこの子たちの解体用のナイフを作ってほしくて」


 わたしは姉妹の頭に手を置く。


「フィナとシュリのか?」

「うん」

「クマの嬢ちゃん。ミスリルの価値は知っておるのか?」

「知っているけど」


 ここに来る間にフィナに教えてもらいました。


「分かっておるならいいが。2人のナイフを作ればいいんだな」

「うん、お願い」

「だが、クマの嬢ちゃんのナイフはいいのか?」

「作っても使わないからね」

「嬢ちゃんは冒険者じゃったよな?」


 やっぱり、みんな思うことは同じだね。

 冒険者は解体ぐらいできないとダメなのかな。

 まあ、するつもりはないけど。


「ところで、ガザルさんにも確認してもらったんだけど。ゴルドさんも見てくれる?」


 わたしはミスリルゴーレム(ハリボテ)を出した。


「一応、ミスリルゴーレムなんだけど……」

「ミスリルゴーレムじゃと!?」


 ゴルドさんはわたしの言葉を最後まで聞かずに、ミスリルゴーレム(ハリボテ)に駆け寄る。

 そして、じっくり見て、一言。


「なんじゃ、このハリボテのゴーレムは!」


 ガザルさんと同じことを言われた。

 やっぱり、ハリボテなんだ。

 聞こうとしたことを質問するまえに答えてくれたので、聞くことがなくなった。


「鉄とミスリルの表裏の一体化か。ミスリルゴーレムを見るのも初めてじゃが、こんなゴーレムを聞くのも初めてじゃ」



 ハリボテゴーレムはゴルドさんも聞いたことが無いんだ。


「でも、十分なミスリルの量じゃのう。無い部分はガザルが取ったのか」


 ミスリルゴーレムの一部はガザルさんがわたしのナイフを作るために取っていった。


「それじゃ、わしもナイフの材料になる分をもらうぞ」


 ゴルドさんはミスリルゴーレムの一部を取り上げる。

 ドワーフは力持ちだね。


「それで、いつまでに必要だ」

「特に急いでないけど。フィナの方を先に作ってほしいかな」

「分かった。取り敢えず1本は3日後、いや4日後までに終わらせておく」

「了解。それで、代金なんだけど、どのくらい?」


 ガザルさんが作ってくれる戦闘用のナイフとは値段は違うと思うけど。

 でも、返答はわたしが思っているのとは違うものが返ってきた。


「知らん。その辺はネルトに任せている」


 このドワーフ駄目だ。ガザルさんも職人気質があったけど、その辺はしっかりしていた。でも、ゴルドさんは作ることしかできない職人みたいだ。

 だから、店内にはネルトさんしか見かけなかったんだね。


「えーと、それじゃどうしたら?」

「ネルトに聞いてくれ!」


 これって店番になっているのかな。

 まあ、後日来て、ネルトさんに聞いてもいいんだけど。

 ネルトさんが騙して暴利な値段を付けるとは思わないし。

 これはアイアンゴーレムのお土産はゴルドさんには渡さない方がいいかな。

 次来たら、武器や金物に変わっている可能性がある。

 個人的には店に飾ってほしいから、ネルトさんがいるときに渡そう。


 それから、ナイフを作るために、二人の手のサイズを見たり、握るグリップはどの素材にするか話し合っていた。

 わたしには分からない話だ。

 それはシュリも同様のようで、ナイフのことは姉のフィナに任せて、店内を見回っている。

 フィナはゴルドさんと話し合い、しばらくすると終わる。


「それじゃ、お願いします」


 フィナはゴルドさんに頭を下げる。


「終わったの?」

「はい。良いものが出来上がりそうです」


 嬉しそうにするフィナ。


「そう。良かったね」


 10歳の少女がナイフの話で喜ぶってどうなんだろう。

 決してわたしのせいじゃないはず。

 わたしと会う前からナイフは持っていたし、解体技術を教えたのはゲンツさんだし、ナイフを渡したのは目の前にいるゴルドさんだ。この2人の親父たちのせいで、目の前の状況があるわけだ。

 まあ、フィナが何だかんだで、喜んでいるようで良かった。 

 ゴルドさんにナイフを頼み、店を後にする。

 この後は、特に予定はないので、ティルミナさんのところにフィナとシュリを返しに行く。

 許可をもらったとはいえ、フィナに数日間の外泊をさせたことを謝りにいく。


「ユナちゃんになら、いつでも貸し出すから大丈夫よ。いつでも、連れ回してもいいわよ」


 謝ったら、そのように返答が返ってきた。

 娘をそのように扱っていいのかとの、突っ込みはしない。ここは素直に受け取っておく。


「ありがたく、お借りしますね」


 と返答しておく。

 その会話を聞いていた娘たちは笑っている。


「そういえば、アンズちゃんから伝言を預かっているわよ」

「アンズから?」


 なんだろう。問題でも起きたかな?


「なんでも、ユナちゃんの知り合いが店に来たから伝えてほしいって」

「……だれ?」

「さあ、わたしはそれしか聞いていないから」


 わたしの知り合いが訪ねてきたって誰だろう。

 チーズのお爺ちゃん? ジャガイモも同様だし、行くならモリンさんの店だし。それならティルミナさんが知っているはずだし。

 思い当たる節がない。

 まあ、ここで考えても仕方ないので、アンズの店に行くことにする。


「それじゃ、アンズの店に行ってみますね」


 フィナたちと別れたわたしは、話を聞くためにアンズのお店に向かう。

 現在、アンズの店は順調に固定客も付き、増やしている。

 お米も好評みたいだし、良かった。

 アンズが経営しているお屋敷の店が見えてくる。

 遠目でも、入口に立つクマの石像は、目立つ。

 待ち合わせには目立つけど、知らない人が見たら、なんだと思うかな。

 まあ、食堂とは思わないよね。

 ティルミナさんのところで長居をしたため、時間的に昼時間を過ぎている。今ならお客さんも少ないはずだから、迷惑にならないよね。

 店の中に入ると昼食の時間が過ぎているため、お客さんは少なかった。


「ユナちゃん?」


 クマの刺繍されたエプロンをしているセーノさんがわたしに気付く。


「アンズいる?」


 いると分かっているけど、一応確認してみる。


「いますよ。アンズちゃん! ユナちゃんがきたよ~」


 キッチンに向かって叫ぶ。

 その声を聞いたアンズがキッチンからやってくる。


「ユナさん、どこに行っていたんですか!?」

「ちょっと遠出していたんだけど。ティルミナさんに聞いたけど、わたしの知り合いが来たって? だれなの?」

「ブリッツさんですよ。先日、お見えになったんですよ」

「ブリッツが」


 ああ、すっかり忘れていた。

 そういえば、ミリーラの町が落ち着いたら、こっちに来るって言っていたね。


「ユナさんの居場所が分からなかったから、ティルミナさんに聞いたら、娘を連れて出掛けたって言うから、伝言をお願いしたんです」

「それで、ブリッツはどこにいるか聞いている? 泊まっている宿屋とか」

「すみません、聞いてません。しばらくはこの街で仕事をするつもりだって言ってましたよ。だから、冒険者ギルドにいると思うんですけど。今度来たら泊まっている宿屋をちゃんと聞いておきます」

「とりあえず、冒険者ギルドに行ってみるよ。会えない可能性もあるから、ブリッツが来たら聞いておいて」


 アンズと別れて冒険者ギルドに向かう。

 依頼を受けて居ないかもしれないけど、ヘレンさんに聞けばいつ戻ってくるかぐらいは分かるはず。今日中に戻ってくるような依頼なら待っていればいいだけだ。今日は特に予定もないし、待つ時間はある。

 冒険者ギルドに入ると、中は静かなものだ。時間的なものもあるけど、王都と違って、不快な視線は飛んでこない。目を向けても『クマか』って感じで、みんな視線を戻す。

 わたしは部屋を見渡すがブリッツたちはいない。

 やっぱり、依頼を受けていて、いないのかな。


「ユナさん、こんな時間にどうしたんですか?」


 部屋を見渡していると、受付に座っているヘレンさんが声をかけてくる。

 それに依頼を受けるとしても時間的に遅いからね。


「ヘレンさんに聞きたいことがあって」

「わたしにですか?」

「最近、ブリッツという冒険者が来たと思うんだけど、今どうなっているかわかる?」

「ブリッツさんですか?」

「少し顔が良いからって、女を3人もはべらせている男なんだけど。しかも、その女性も美人だったり、可愛い女の子だったり、守ってくれる女性だったり。そんな男の夢を現実に叶えている、男の敵のような冒険者なんだけど」

「えーと、後ろにいる人がそうかと思います」


 後ろを振り向くと、仁王立ちしているブリッツがいた。


「久しぶり」


 クマさんパペットを上げて挨拶をする。


「久しぶりじゃねえよ。どんな聞き方をしているんだ!」

「分かりやすく、聞いたつもりだけど」

「どこがだよ」


 わたしはブリッツの後ろにいる3人の女性を見る。


「間違っていないよね?」


 わたしの言葉に曖昧な笑顔をする3人。


「ユナちゃん。久しぶり」

「トメアさん久しぶりです。みんなも元気そうだね」

「当たり前よ」

「ユナも元気そうで良かった」


 ランにグリモスも元気そうだ。


「仕事は終わったの?」

「今日は受けていない」


 ぶっきらぼうに答えるブリッツ。


「さっきまで、街の中を見物していたの」

「この街大きいね」


 ブリッツの代わりにトメアさんとランが答えてくれる。


「それじゃ、どうして、冒険者ギルドに?」

「明日、依頼を受けようと思って、それで、現状でどんな依頼があるか、確認しに来たところだったの」

「そしたら、どこかのクマが俺の悪口を言っていたわけだ」

「被害妄想だよ。わたし、ブリッツの悪口なんて言ってないよ」

「どこがだよ。少し顔が良いからって……」


 初めから聞いていたんだね。


「褒めているでしょう」

「女を3人もはべらせている男……」

「事実でしょう」

「男の敵のような冒険者……」

「それも事実でしょう。それとも、ブリッツは、他の男が美人や可愛い女の子を連れまわしていたら、どう思うの?」

「そ、それは……でも、これとそれは……」

「同じことだよ」


 わたしは部屋にいる他の冒険者の方を見る。

 ブリッツも同様に同じ方を見ると男性冒険者は頷いている。

 その反応を見たブリッツは黙るしかない。

 黙ったブリッツは外野に捨てて、トメアさんと会話を続ける。


「それじゃ、ユナちゃんはアンズちゃんに聞いてギルドまで来てくれたんだ」

「さっき、聞いてね。昨日まで仕事をしていて、クリモニアにいなかったから」

「いろんな人に、ユナちゃんのこと聞いたけど。ユナちゃんを知らない人はいないね」

「1人でブラックバイパーにゴブリンキング。ありえない」


 トメアさんとランがわたしのことを聞いた感想を言う。


「それにアンズちゃんの店に、もう1つの店も、ユナちゃんの店だって言うし」

「しかも、両方とも美味しいし」

「今日のお昼はパンだった。美味しかった」


 変化の少ないグリモスの顔が少しだけ、笑顔になっている。


「もう、食べたんだ。ご馳走しようと思っていたんだけど」

「別に何度食べても問題ないから、ご馳走してくれてもいいんだよ」


 トメアさんは笑顔で言う。一応Cランク冒険者なら、それぐらいの稼ぎはあるでしょう。

 でも、約束は約束だ。


「それじゃ、夕飯でもご馳走するよ。どっちの店がいい?」

「アンズちゃんの料理も美味しいし、あのパンも美味しいんだよね」

「どっちなんて選べない」


 トメアさんとランが真面目に悩んでいる。


「トメアさんたちにはお世話になったから、両方ともご馳走するよ。しばらくはクリモニアにいるんでしょう?」

「うん、そのつもりだよ。しばらくは依頼を受けながら街を楽しむつもりだから」

「それじゃ、今日はアンズの店に行こうか。お昼はパンを食べたんでしょう」


 夕飯はみんなでアンズの店で食べることになり、時間的にまだ早いけど今から向かうことになった。



これで、鉱山編終了です。


次回から、しばらくはまったり話になると思います。

あくまで、予定になります。


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― 新着の感想 ―
[良い点] クマさんのおかg      ε=ε=ε=(ノ゜∀゜)ノでせんとおしいんとかなんとかあってもまったりできてる件♪
[気になる点] >男の敵のような冒険者なんだけど こういう言い回しは男性のセリフです 女性が喋るなら「女の敵」になる筈です
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