141 クマさん、鉱山に潜る、その2
ジェイドさんたちが土ゴーレムを簡単に倒す。
見た感じ、土ゴーレム相手なら風魔法を使えば簡単に倒せそうだ。
足と腕さえ切り落とせば動けなくなる。まあ、それは、どの魔物でも共通なことだけど。
ただ、ゴーレムの場合、頭を切り落としたらどうなるのかな?
動くのか? または動き続けるのか? そこは検証が必要だね。
魔物同様、頭を切り落とせば動かなくなってくれれば楽なんだけど。でも、メルさんは頭じゃなく、足を切り落としたってことは、頭を切り落としても意味が無いってことなのかな。
ジェイドさんたちの戦いを思考しながら、坑道を進んでいく。
途中で土ゴーレムに遭遇するけど、4人が不安無く倒していく。
さすが、ランクCと言うべきか、土ゴーレムが弱いのか分からないところだ。
ただ、わたしの出番が無いね。
楽でいいけど、暇なのも考えものだ。
地図を見ると、進んだ分だけ坑道の地図が完成されていく。
坑道に入ってみて分かったこと。当たり前のことだが、分かれ道などには看板が付けられている。出口はどっちなのか、進むとどこに向かうのか書かれている。
A-1、A-2、って感じで付けられている。
Aは坑道の名前、番号は奥に進むに連れて増えていく。
例えばA-3-2の看板があると。A坑道の3つめの分かれ道の二番通路になる。
まあ、基本、そこまで入り組んでいない。ほとんどが一本道で、時折、発掘したあとがあるのと、大きな広場みたいな場所もある。
まあ、看板があろうと、クマの地図が便利なのは変わらない。
ジェイドさん側の地図が完成したら、今度はバカレンジャーの方の地図も完成させたいところだ。
ゲーマーとしてはマップ100%表示は常識だ。
次に探知魔法を発動させると、この先に4体の土ゴーレムの反応がある。
暇だし、ゴーレムの強さも知りたいから、1体ぐらいわたしに倒させてくれないかな。
ジェイドさんたちの実力なら、簡単に倒しちゃうから、わたしの出番が無いんだよね。自分から言うのもあれだし。
ジェイドさんたちは周りを確認しながら、進んでいく。少し開けた場所に出る。そこには土ゴーレムが3体いた。
あれ、もう1体は?
探知魔法で確認すると、右方向にある大きな岩山の後ろにいるみたいだ。
ここからだと、死角になっているね。
ジェイドさんたちは死角にいるゴーレムの存在には気付いていない。ジェイドさんたちは目の前にいる3体のゴーレムに向かって走り出す。1体でも、2体でも、3体でもパーティーの連携攻撃に陰りはない。
土ゴーレムぐらいなら、数体いても、同様に処理をしてしまう。
でも、もう1体の存在には気付いていないようだから、わたしが攻撃してもいいかな?
ジェイドさんが気付かなかったから、攻撃をさせてもらおう。
死角にいるゴーレムにいきなり攻撃をするのも変だから、もう少し進んで視界に入ったら攻撃をすることにする。
3体のゴーレムを難なく倒したジェイドさんたちは先の通路に進む。
岩の後ろにゴーレムがいることに気付いていない。
わたしはジェイドさんたちが気付く前に攻撃魔法態勢に入る。ゴーレムがわたしの視界に入った瞬間、わたしの前を歩いているジェイドさんとメルさんが同時に反応する。気付くのが速い。音で気付いたのか、視界に入った瞬間気付いたのか分からないけど。気付くのが速かった。さすが、ランクCと言うべきなのか。
でも、すでにわたしは風魔法を放っている。
大きな岩石の後ろから出て来ようとしていた土ゴーレムの体を風魔法が切り刻む。
頭、腕、足と五ヵ所を切り落とす。
やっぱり、柔らかい。
土ゴーレムはそれほど硬くはないみたいだ。まあ、硬いと言っても土だし、限度がある。
クマ魔法を使うほどではなかった。
「もう一体いたのか!」
驚きの声をあげるジェイドさん。
「ユナちゃん、スゴい」
いや、2人とも気付いてたし、反応も早かった。後ろにいた2人の反応は見ることはできなかったけど。前の2人が反応できたってことは、後ろの2人も反応はできた可能性もある。
「今のユナの行動、おかしかった。視界に入る前に攻撃態勢に入っていた」
後ろでわたしのことを見ていたセニアさんがわたしのことを評論する。
よく見ているな。
「クマの嬢ちゃんが動いた瞬間、ゴーレムが出てきたからな」
「動きが速かった」
どうやら、トウヤさんにも気付かれていたみたいだ。
気付いていた理由は言えないので、
「女の勘かな?」
と誤魔化してみる
「女の勘?」
ジェイドさんが怪訝そうな顔をする。でも、それに反するようにメルさんが、わたしのクマさんパペットを掴んで。
「だよね。女の勘はあるよね。なのにジェイドとトウヤはそんなの無いって言うんだよ」
「女の勘はある」
セニアさんも同意している。
「でもよ。いきなり、根拠も無いのに、あっちに魔物がいるとか、こっちに魔物がいると言われてもな」
こっちではジェイドさんの言葉にトウヤさんが頷いている。
「なんで分かるんだと聞けば、女の勘だもんな」
「でも、ちゃんといたでしょう?」
納得がいかない女性陣。
それは男性陣も同様のようだ。
わたしの一言でパーティーの分裂をさせてしまった。まあ、お互い本気で言い争っているわけじゃないけど。このままだと、話が進まないので、話を変えることにする。
「そういえば、ゴーレムって、頭を切り落としても動くの?」
検証ができなかったので聞いてみる。
「動くわよ。ゴーレムは基本、どこを切られても動けるよ。動かなくさせる方法は2つ。1つは魔石を取り除くこと。もう1つは一定のダメージを与えること」
「一定のダメージ?」
「ゴーレムの動力が魔石なのは分かるわよね?」
なんとなくだが、分かるので頷く。
「ダメージを与えることで、魔石の力が減っていくの。その魔石の力が0になればゴーレムは動かなくなるわけ」
なるほど、つまり、物理攻撃でも、何度も与えれば動かなくなるのか。
そうなると、アイアンゴーレムが出てきても何とかなるかな。
魔法が使えなくても力押しでいけそうだ。
わたしの得意技、秘技、話ずらしが成功したらしく、女の勘の話はみんなの頭から消えたみたいだ。
崩れた土ゴーレムから魔石を手に入れたわたしたちは坑道の奥に進むことにする。
それから、数体の土ゴーレムを倒して、緩やかな下り坂を降りていく。
そのときにクマの地図を見ていると、地図に変化が起きた。
階層が変わったのか、先ほどまでの地図が消えて、新しい階層の地図になった。
なるほど、階層が変わると上の階層の地図が消えて、新しい階層の地図になるわけか。
ゲームと一緒だね。
階層も変わったので、探知魔法を使うと、この先に岩石ゴーレムの反応がある。
この階層から、岩石ゴーレムが出てくるのか。
「ユナちゃんなら、大丈夫だと思うけど、気を付けてね。この辺りから岩石ゴーレムが出てくるから」
探知魔法のお陰で知っているけど、素直に頷いておく。
「岩石ゴーレムって強いの?」
「岩石ゴーレムは、岩を魔力で少し強化した感じかな。その岩が動くと思ってくれればいいと思うよ」
なるほど、わからん。
岩が少し魔力で強化と言われても分からない。
まあ、言いたいことはなんとなく分かるような気がする。
ようは、普通の岩より硬いってことだよね。
さすがにクマ魔法で倒せないことはないと思うけど。
考えた結果、戦ってみないと強さは分からないってことだね。
練習相手に1体、回してもらおうかな。
少し坑道を進むと、岩石ゴーレムと遭遇する。
岩石ゴーレムは石や岩がくっついて出来上がったゴーレムだ。
なんか、殴ったら簡単に崩れそうなんだけど。
岩石ゴーレムはわたしたちの存在に気付くと、腕を伸ばして野球ボールほどの岩を飛ばしてくる。
時速160km(勝手なわたしの想像です)の豪速球が先頭にいたジェイドさんとメルさんを襲う。
メルさんは、後ろにいるわたしたちのことを気にかけたのか、避けることはせずに、土魔法で壁を斜めに作り、岩を誰にも当たらないように逸らす。
再度、ゴーレムは岩を飛ばそうとするが、ジェイドさんがメルさんが作った壁から駆け出し、自ら囮になる。
そこにメルさんが、岩には岩と言わんばかりに、魔法で野球ボールほどの岩を出す。放たれる先はゴーレムの右足。放たれる岩は一つではない。ゴーレムの足が破壊されるまで、何度も岩を放つメルさん。
足が破壊されたゴーレムはバランスを崩して、倒れこむ。
倒れたゴーレムにジェイドさんが攻撃を与える。
一定のダメージを与えると、岩石ゴーレムは動かなくなり、接合部分全てが崩れ落ちて、岩と石の塊の山と化す。
なんか、普通の魔物と違って変な感じだね。
それから、何度か岩石ゴーレムや土ゴーレムが現れるがジェイドさんたちが倒していく。
メルさんの魔法が足を壊し、セニアさんがナイフを関節部分に投げて、ゴーレムの動きを鈍くさせる。そこにジェイドさんとトウヤさんが攻撃をするパターンが行われる。
慌てることもなく、各自がやることを理解している。
作業的な倒し方を見ると、ゲーム時代を思い出す。
経験値稼ぎをするため、戦いをパターン化して、効率よく経験値を稼ぐ。
わたしもよくやったもんだ。
もちろん、パーティーメンバーを組んでやったよ。
たまにだけど……、ボッチじゃないから経験はあるよ。
でも、岩石ゴーレムとも1回ぐらいは戦ってみたいな。
そんなことを考えたせいか、岩石ゴーレムが5体出た。
おこぼれが貰えるかな。
「ジェイド、どうする?」
メルさんが尋ねる。
今まで岩石ゴーレムは多くても2体だった。
それが倍以上に増えた。
ジェイドさんがわたしを見る。
「ユナ、1体頼めるか」
「別にいいけど」
おお、やっと回ってきた。しかも、お願いされた。これって信用されているってことだよね。
いろいろ、試したいけど。とりあえず、耐久度をしりたいからクマパンチかな。でも、魔法も試したいな。
「助かる。倒したら、すぐに向かう」
全員がそれぞれに対する岩石ゴーレムに向かう。
攻撃方法を決めずにいると、岩石ゴーレムが近寄ってくる。
とりあえず、岩石ゴーレムの伸ばす腕をかわして、思いっきり、クマパンチを胸に撃ち込む。
岩石ゴーレムは吹っ飛んで、壁にぶつかって、崩れ落ちる。
見事な三段活用。
えっと、クマパンチ、一発で終了?
わたしの様子を見ていた4人も呆気に取られている。
一応、助けた方がいいんだよね。
わたしは4人が戦っている岩石ゴーレムに向かうと、クマパンチを撃ち込む。
残りの4体の岩石ゴーレムも壁まで吹っ飛ぶと崩れ落ちる。
弱い。
「ユナちゃん、本当に強かったんだね」
「噂通り」
女性2人が近寄ってくる。
「ブラックバイパーやタイガーウルフを1人で倒したって本当だったんだな」
「まさか、クマの嬢ちゃんがこれほど強いとは思わなかった」
うーん、岩石ゴーレムがこんなに弱ければ、アイアンゴーレムも大丈夫そうかな。
前回はお騒がせしました。
とりあえず、タブレットとパソコンが調子が良いときに書きます。
バックアップも取ったので、いつ、壊れても安心?
今回、書いてて分かったこと、やっぱり戦闘シーンは苦手ですw
これは、小説を読むときに戦闘シーンがあると、ページを飛ばして、結果だけを読む癖のせいですねw