140 クマさん、鉱山に潜る、その1
魔女エレローラから姫を取り戻すために鉱山に到着した勇者。
勇者の目の前にはゴーレムがいる。ゴーレムが腕を伸ばすと、小石ほどの大きさの無数の石礫が飛んでくる。
勇者は避けるが、全てを避けることはできない。
頬に石礫が当たる。
ペチ、ペチ。ペチ、ペチ。
痛くない。柔らかい物が当たっている感じだ。そんな攻撃では勇者は倒せない。
勇者はゴーレムに向かって走り出す。
ゴーレムはダメージを与えられない石礫を何度も何度も放ってくる。
そんな、こけおどしの攻撃なんて痛くも痒くもない。勇者は足を止めない。
ペチ、ペチ。ペチ、ペチ。
石礫が頬に当たるが痛くない。
このまま、ゴーレムに剣を振りかざしたとき、息ができなくなった。
何かの攻撃か!?
なにかが、顔に押し付けられている感覚がある。
息苦しい……
こんな、訳もわからない攻撃で死ぬのか……。
勇者は気を失った。
「うわあぁ、苦しい」
ドサッ
わたしは起き上がると、顔から何かが落ちる。
「くまきゅう?」
目の前にくまきゅうが首を傾げている姿がある。
横にはくまゆるもいる。
「もしかして、今の夢、あんたたちの仕業?」
あの、ゴーレムの柔らかい攻撃も、最後の息苦しかったのも。
二匹を見る。
くまきゅうとくまゆるが小さくクーンと鳴く。
部屋を見渡すと陽が射し込んでいる。
どうやら、朝になったから、起こしてくれたらしい。
「ありがとうね。でも、今度は息苦しくない方法でお願いね」
くまゆるとくまきゅうは防犯のために昨夜、召喚しておいた。
寝ているときほど無防備なときはないからね。
2匹を戻して、白クマから着替えも済まして、朝食を食べるために食堂に向かう。
くまきゅうに起こされたわたしは1人で朝食を食べている。
起こしてくれるのはありがたいけど、顔に乗るのはやめてほしい。もう少しで窒息死するところだった。あと、少し起きるのが遅れたら、三面記事に載るところだった。タイトル『着ぐるみ少女死す』。
それなら、くまきゅうたちが優しく頬を叩いてくれている時に起きればいい話だけど。人は毎日寝起きがいいとは限らない。 たまには寝坊をしたいときもある。
でも、今回は仕事があるから、くまきゅうが起こしてくれたのだ。感謝をしても恨むのは筋違いってものだ。
くまきゅうたちのことを考えていると、メルさんとセニアさんがやってくる。
男衆の姿は見えない。
「おはよう、ユナちゃん」
メルさんはあいさつをしてくれて、セニアさんは軽く手を挙げて挨拶をしてくれる。
「メルさん、セニアさん、おはようございます」
「ユナちゃんは、これから潜るの?」
「一応、様子を見に行こうと思っているけど。なにも、しないわけにはいかないから」
囚われの姫も助けないといけないし。
「なら、わたしたちと一緒に潜らない?」
「メルさんたちと?」
「ユナちゃんの強さは噂で知っているけど。見た目がね」
「可愛いクマにしか見えない」
2人はそう言うとわたしの頭を撫で始める。
「強く見えないから、心配なのよ」
「だから、昨日、メルと相談して決めた」
2人がわたしのことを心配してくれていることは伝わってきた。
でも、個人的には1人の方が行動しやすいんだけど、ランクCの実力も見てみたい気持ちもある。
どうしようかな。
とりあえず、頭を撫でるのは止めようか。
2人はわたしの隣の席に座り、朝食を注文する。
「でも、ジェイドさんに聞かないとマズイんじゃない?」
「そんなのジェイドに聞かなくても大丈夫よ」
メルさんが言い切った。
いやいや、ジェイドさんはリーダーでしょう。そこは相談しないと駄目でしょう。
そんなことを女性陣と話していると、ジェイドさんたちが二階から降りてくる姿が見えた。
「みんな、早いな」
「ジェイドが遅いのよ。それから、ユナちゃんも、坑道の探索に一緒に行くことになったから」
ちょっ、わたしまだ、返事していないんだけど。
しかも、確定済み。
「ああ、わかった」
「俺もいいぞ」
おい、それでいいのか二人とも!
そこは、普通、話し合ったり、相談したり、色々あるんじゃないかな。
わたしの心の声は誰にも届くこともなく。結局、なし崩しに一緒に行くことになった。
坑道の入り口は複数ある。
何十年、何百年掘られたか分からないけど、坑道には古い坑道はもちろん、新しい坑道もある。
ゴーレムが現れたのは一番新しい坑道。ここ数年、掘り進めた坑道だそうだ。
一番初めに発見されたゴーレムに向かうには、入口が2つあるそうだ。どちらから入っても途中で坑道は合流して、目的地には着くらしい。
バカレンジャーはいつも同じ入口から入るそうなので、ジェイドさんたちは違う入口から入るようにしているとのこと。
獲物を取ったとか、絡まれないようにするためだそうだ。
正しい、バカの対処方法だ。
バカは叩き潰すよりも、近寄らないのが一番だ。
バカはいちゃもんつけるわ。自己中だったり、人の話を聴かなかったり、自己陶酔したり、自分の良い方に脳内変換したり、暴走をしたり、失敗すると他人のせいにする。ゲームでも、そんなバカは沢山いた。そんなバカには近寄らない方がいい。
バカから、近寄ってきたら叩き潰すけど。
鉱山は町から少し進んだ場所に入口がある。
目的の鉱山の入口に到着するが、坑道の中は真っ暗だ。魔法の光が必要かなと思ったら、ジェイドさんが入口付近の壁に手を触れると、坑道の中が光に照らされていく。
どうやら、ベアートンネルと同じ仕組みのようだ。
魔力線によって、光の魔石が繋がっていて、スイッチのようなものを押すと坑道の中に光が付く仕組みになっている。
まあ、どこの家庭の家でも使われている点灯方法だ。
坑道の大きさは馬車が一台が余裕で通れるほどの大きさはある。
足元を見るが、トロッコやレールは敷かれてない。どうやら、この鉱山にはトロッコはないみたいだ。
この世界にトロッコが存在するのか、しないのかは分からないけど。どうやって、鉱石を運んでいるのかな。
そのことをジェイドさんに聞くと、布袋に鉱石を入れてアイテム袋に入れて運ぶそうだ。
さすが、異世界ってことかな。アイテム袋に入れれば持ち運びも楽だ。トロッコを使うよりも労働力は少なくてすみそうだし。アイテム袋の入る量によっては一度に運び出せる量も多くなる。
ただ、量が沢山入るアイテム袋は高級品になるため、鉱山では使用してはいないそうだ。
坑道の中に入ると、かなり奥の方まで続いている。入口からでは、どこまで続いているのかは把握はできない。
スキルのクマさんの地図を使ってみる。
坑道の入口部分が表示される。
無事に使えるようだ。これなら、迷うことはない。ただし、自分が通った場所しか表示されないけど。
まあ、進めば勝手にマップが生成されていくから問題はない。
次に探知魔法を使ってみる。
この先に数体のゴーレムの反応がある。でも、地図が出来上がっていない状態では、黒いマップの先にゴーレムがいることしかわからない。この反応が、先に進めばいるのか、地下にいるゴーレムの反応なのかは現状ではわからない。
まあ、今回はその確認ができるので、クマのスキル確認にはちょうどいい。
先頭にジェイドさん、2列目にメルさんとわたし、3列目はセニアさんとトウヤさんの順で進んでいく。
「初めの方は土でできたゴーレム、さらに進むと岩でできたゴーレムが出てくる」
「土のゴーレムと岩のゴーレムは倒すのは楽でいいけど、魔石しかお金にならないのが難点なのよね」
土のゴーレムか、うちのクマさんのゴーレムと勝負させてみるのもいいかも。
そんなことを考えたせいか、土でできたゴーレムが現れた。先程のゴーレム反応があったところだ。
大きさは2.5mほど。でも、腕も足も太い。
こんな太い腕で殴られたら、たまったもんじゃないね。まして、一般人じゃ危険だ。
ジェイドさんはパーティーメンバーに指示を出すと駆け出す。
いつもの行動なのか、メルさんは風魔法でゴーレムの腕を切り落とす。でも、土ゴーレムはこちらに進める歩みは止めない。次に、ジェイドさんが剣で土ゴーレムの足を切り落とす。土ゴーレムは足を切り落とされると、その場に前かがみで倒れこむ。そこに、セニアさんが動けなくなった土ゴーレムの背中に飛び乗る。そのまま、背中から、心臓部分にナイフを突き刺し、穴を開けると、そこに手を入れて魔石を引き抜いた。
すると、土ゴーレムはその場で崩れ落ちる。
流れるような、チーム連携だった。
トウヤさんの役目は周囲の確認をしていた。
もしかして、魔石を壊せばゴーレムは止まるのかな。
魔石に拘りが無ければ壊した方が早いかも。
今の戦闘でパーティー構成が分かった。
ジェイドさんは少し大きめの剣を扱い、トウヤさんは一回り小さい剣を使い、メルさんは魔法使い、セニアさんは短刀使いみたいだ。
申し訳ありません。パソコンの調子が悪く、何度もフリーズしたり、パソコンが立ち上がらなくなったりしてます。
今後、パソコンの調子次第では投稿が遅れると思います。
あと、感想返しも出来ないかもしれません。
ご了承ください。