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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、ミスリルナイフを作る
142/928

138 クマさん、鉱山の話を聞く

後半、ほとんど書き直しました。

読んでもらえると幸いです。

 わたしたちはサーニャさんにギルドマスターの部屋に連れていかれる。サーニャさんは思い出したかのように、部屋に入る前に職員に飲み物の指示を出す。

 ギルドマスターの部屋はそれなりに広く、奥の窓際に大きな机があり、そこがサーニャさんの仕事場になっている。

 机の左右の壁には本棚があり、資料らしきものも並んでいる。

 どこかの市長の部屋みたいだ。

 部屋の中央にはテーブルがあり、椅子が挟むように置かれている。ちょっとした会議スペースになっている。

 サーニャさんは奥の自分の椅子には座らずに、中央にある椅子に座る。


 どうして、こんなことになっているんだろう。

 ナイフ1本を得るために、こんな面倒なことになるとは思わなかった。

 しかも、ここで得られるのはミスリルのナイフじゃなくて、鉱山の情報だけだ。

 う~ん、これなら、昼寝でもしてたらよかったかな。でも、黒虎(ブラックタイガー)の解体はしたかったし、ミスリルのナイフも欲しかった。

 しばらくはミスリルのナイフは諦めた方がいいかな。

 これから、どうしようかと頭の中で考えていると、サーニャさんに椅子に座るように勧められる。 


「適当に座って」


 言われるままにわたしとフィナは適当に椅子に座る。

 すると、タイミングを計ったように、ドアがノックされる。ドアが開き、職員が飲み物を運んでくる。職員はそれぞれのテーブルの前に飲み物を置いてくれる。

 置いてくれたときに、礼だけはしておく。


「ユナちゃんは何度か会っているけど、フィナちゃんは久しぶりね」

「はい、サーニャさん、お久しぶりです」


 頭を下げてお辞儀をするフィナ。


「それでギルドで聞きたいことってなに?」


 わたしはこれまでの経緯を話し、冒険者ギルドに来た理由を説明した。


黒虎ブラックタイガーを解体するためにミスリルのナイフをねぇ」

「クリモニアで買おうと思ったら手に入らなかったから、王都まで来たんだけど」


 クリモニアの鍛冶屋→王都→王都の商業ギルド→王都の鍛冶屋→王都の冒険者ギルド→続く。

 ゴールが見えない。


「まあ、元から貴重な鉱石だからね。手に入る量も少ないし、まして、今は掘れない状態だからね。売っていたとしても高いわよ」


 値段は気にしないけど、ぼったくり価格では買いたくはない。

 まあ、仕入れ価格が上がっているから高くなるのは仕方ないけど、やっぱり、通常価格で購入したい。


「鉱山でなにがあったの? 鍛冶屋のガザルさんから聞いたら、ゴーレムが出たって聞いたけど」


 長年掘っている鉱山からいきなり、ゴーレムが現れるって意味が分からないし。

 異世界なら、そんなこともあるのかな。


「その言葉通りね。鉱山からゴーレムが現れたのよ。坑夫が穴を掘り進めていたら、大きな空洞を掘り当てたんだけど。そこの空洞には1体のゴーレムが寝ていたそうなのよ」

「ゴーレムが?」

「坑夫の証言によれば、ゴーレムに近づくと、ゴーレムは起き出し、襲ってきたの。坑夫は慌てて命からがら逃げたそうよ 」

「そのゴーレムが鉱山で暴れているわけ?」


 1体だけなら普通に冒険者が倒しそうなものだけど。

 もしくは道を埋めて封鎖するとか。


「暴れているって言うか、居座っているのが正しいのかな。鉱山の中からは出てこないから。でも、鉱山の中に入ると襲ってくるみたいなの」


 ゴーレムだから、なにかを守っているのかな?

 よく守護者としてゲームや小説には出てくるけど。


「冒険者は討伐に行ってないの?」

「すでに、何人かの冒険者は討伐に向かっているわよ。ただ……」


 サーニャさんは少し言いづらそうにしている。


「厄介みたいなの」

「厄介?」

「どうやら、ゴーレムが1体だけじゃないみたいなの」

「何体もいるの?」

「すでに、数体倒している報告を受けているわ。現状だと、鉱山の中にどれだけのゴーレムがいるか、把握できていないわ」


 ゴーレムの無限湧きかな?

 これがゲームなら経験値稼ぎだって喜ぶところかな?

 でも、ゴーレムの数か、探知魔法を使えば分かるかな?

 鉱山の中で魔物は探知できるかが問題だ。

 洞窟なら、ゴブリンの巣で可能なのは立証済みだけど、鉱山みたいに地下に何層もなっている場合はどうなるのか? 同じ階層だけ、探知できるのか、他の階層も探知できるのか検証したことがないからわからない。


「あと、問題がもう1つ起きているわ。奥に進むとアイアンゴーレムが出てくるの」


 アイアンゴーレムか。

 洞窟の中では戦うのが面倒かな。

 洞窟の中だから、火属性魔法は使えないし、物理の土魔法でどこまでダメージ与えることができるか分からないし、風魔法で鉄を切り裂くことができるかどうかわからない。水は論外だし、氷も土魔法と同じだし。こうなると鉄を切り裂く、ミスリルの剣が欲しいね。

 結果から言えば、洞窟の中で戦ったら面倒くさくなりそうだ。


「だから、先日までランクDの依頼としてだしていたけど。先日、ランクC以上の依頼としたのよ」


 ランクDからランクCの引き上げね。

 ランクDといえば、デボラネとか、デボラネ(仮)ぐらいの実力か。

 と、二人の実力を思い出してみるが、一方的に殴ったり、一方的に魔法をかけただけで、二人の実力が分からないことに気づく。

 ランクCの知り合いは、先日知り合ったジェイドさんぐらいだけど、実力は知らない。

 実力は分からないけど、ランクCなら、大丈夫なのかな?


「ちなみに、鉱山に行けばミスリルの鉱石って手に入るの?」


 わたしの目的はミスリルの鉱石の情報であって、ゴーレムの情報ではない。


「うーん、どうかな。その辺の管轄は商業ギルドになるからね」


 それじゃ、鉱山に行っても意味がない。

 手に入るかも知れないけど、手に入らない可能性もある。

 それなら、面倒だし、今回は帰ろうかな。

 わたしはそう結論を出して席を立つ。


「サーニャさん、ありがとうございました」


 わたしは帰ることにして、サーニャさんにお礼を述べる。

 最後に職員が持ってきてくれた飲み物を飲み干して、椅子から立ち上がった瞬間、ドアがノックされる。


「どうぞ」


 サーニャさんがドアの外に返事をする。

 部屋の中に入ってきたのは、わたしが知っている人物。


「あれ、ユナちゃんとフィナちゃん?」

「エレローラさん!?」

「どうして、2人がここに?」


 それはこっちのセリフでもある。


「エレローラさんも、どうしてギルドに?」

「わたしはサーニャに用があるからね」

「わたしは冒険者ギルドに聞きたいことがあって」


 エレローラさんはこちらにやってくるとフィナの隣に座る。


「フィナちゃん。元気にしていた?」

「はい」


 フィナは少し緊張ぎみに返事をする。


「ノアは元気にしているかしら」

「はい、先日も一緒に遊びました」


 たまに一緒にいるところを見かけることがある。

 2人は仲良くしている姿をみる。時折、クマハウスに来て、くまゆるとくまきゅうの召喚を頼みに来ることもある。


「あら、そうなの。これからも、あの子のことお願いね」


 フィナは笑顔で頷く。


「それで、エレローラ様、今日はどのようなことで」


 いきなりやってきたエレローラさんにサーニャさんが尋ねる。


「例の件はどうなっているのかなと思って」

「鉱山でしょうか?」

「ええ、このまま鉱石が入って来ないのは国としても困るからね」

「数日前に、ランクCの冒険者が鉱山に向かいました」

「無理なら兵を出そうと思ったけど、ランクCなら大丈夫かしら。人数は?」

「2パーティーで、4人と5人のパーティーです」

「う~ん。それじゃ、暫くは様子見かしら、それで無理なら兵士を出すわね」

「はい、わかりました」


 兵士が出せるなら早く、出せばいいと思って聞いてみたら。

 2人の話によると、魔物が現れた場合は冒険者ギルドの仕事になるらしい、国の兵士が討伐してしまうと、冒険者の仕事がなくなってしまうためだ。

 冒険者で駄目なときは国の兵士が動くらしい。

 それは暗黙の了解で繋がっているとのこと。

 だから、今回のゴーレムの件も冒険者ギルドが討伐をしないといけない。

 面倒な関係だけど、仕方ないのかな。

 魔物を全て、国の兵士が倒したら、冒険者の仕事は無くなるし、本当の有事のときに国に兵士がいなかったら困ることになる。


「それで、ユナちゃんはどうしてここに?」


 エレローラさんに、ここにいる理由を説明する。


「ミスリルね」

「そんなに鉱石不足なんですか?」

「鉄などは、どうにか大丈夫だけど、ミスリルみたいに少量しか採れない鉱石は不足しているわね。そのせいで価格も上がっているから、一般の冒険者は手に入らないわね」


 やっぱり、ミスリルは高いんだね。


「ユナちゃん、ミスリル欲しいなら、お願い聞いてくれない? ミスリルが手に入ったら優先的に回してあげるから、なんなら家にあるミスリルのナイフをあげてもいいわよ」

「お願いってゴーレム討伐ですか?」


 話の流れ的にこれしか思い付かない。


「ええ、ランクCのパーティーが行っているから大丈夫だと思うけど、少しでも早く解決したいからね」

「ミスリルは欲しいけど、別にわたしじゃなくても、ランクBとかランクAに頼むとか」


 見たことはないけど、王都ならいるでしょう 。

 その言葉で二人は苦笑いを浮かべる。


「一応、王都にも高ランク冒険者はいるけど、頼むのはちょっと難しいのよ」

「…………?」


 わたしは首を傾げる。

 いるのに頼めないって、意味が分からない。


「まず、無理な理由は、高ランク冒険者は放浪癖がある者が多いのよ。どこに行ったのか、いつ帰ってくるのか、分からないの。だから、頼むことができないの」

「未開の土地に行ったり、強い魔物を捜したりして、王都にいない方が多いのよ」

「高ランク冒険者は自由奔放で、人に縛られたくない者が多いのよ」


 エレローラさんとサーニャさんが説明してくれる。

 だから、今まで高ランク冒険者に会ったことがなかったのか。


「それに、高ランク冒険者は変人が多いから、頼むのも大変なの」


 エレローラさんとサーニャさんが、同時にわたしをみる。

 どうして、2人ともわたしを見るかな?

 いや、視線はもう1つあった。どうして、フィナも見るかな?

 わたし、悲しくなるよ。

 わたし、変人さんじゃないよ。くまさんだよ。

 わたしを見たエレローラさんが、


「ユナちゃんは変人じゃないから、ダイジョウブダヨ」


 なんか、言葉のニュアンスが違うんだけど。


「さっきも言ったけど、高ランク冒険者は冒険好きだったり、魔法の研究で引きこもったり、強い者を求めて旅に出たり。まして、お金も持っているから、仕事をなかなか引き受けてくれないのよ」


 おお、なんか、好感が持てる冒険者ばかりだ。

 わたしもお金はあるから、無理に働きたくない。世界を見てみたい気持ちも分かるから、冒険もしたい。新しい魔法の研究も面白そうだ。強い者を求めるのは違うけど。(少しはあるけど)

 そう、考えるとわたしも変人の仲間かな。

 決して考え方であって、格好が変人ってわけじゃないよ。


「でも、高ランク全員が変人ってわけじゃないよね」


 もし、そうだったら、この世界は終わってしまう。


「そりゃね。普通の高ランク冒険者もいるけど、そのような者は国が確保する場合が多いわね」


 なるほど、だから、残っている高ランク冒険者は変人が残るわけか。


「だから、高ランク冒険者に依頼を頼むのは難しいのよ。だから、ユナちゃん。引き受けてくれないかな?」


 なんか、変人と同列に並べられているような感じがするんだけど。

 ミスリルは欲しいから受けてもいいんだけど。難点はゴーレムが洞窟の中にいるってことなんだよね。

 普通の土や岩でできたゴーレムなら問題はないけど。鉄でできたアイアンゴーレムが倒せるか分からない。


「ミスリルを譲ってくれる量はナイフ一本分?」

「う~ん、ミスリルはレア鉱石で量は少ないし、ナイフや武器の加工も大変だから、かなり値が張るのよね。とりあえず、ナイフなら2本かな」


 わたしはチラッとフィナを見ると、ミスリルが思ったよりも、高価だったためか、わたしを見て、首を振っている姿がある。


「ユナお姉ちゃん……無理しなくても、わたしミスリルナイフはいらないよ。黒虎ブラックタイガーの解体ならギルドに頼めばいいと思うよ」


 いらないと言われると、無理にでもあげたくなるのが人の心理。

 それに今後のことを考えるとミスリルは必要になりそうだし。


「うん、わかった。引き受けるよ。でも、倒せるか分からないからね」

「ユナちゃん、ありがとう。助かるわ。それじゃ、その間フィナちゃんはわたしの家で預かるわね」

「「えっ」」


 エレローラさんの言葉にわたしとフィナが驚きの声がハモる。


「まさか、連れていくつもりだったの?」


 エレローラさんは隣にいるフィナを抱きしめて、驚いたように聞いてくる。

 連れていくつもりはなかったけど、さすがに転移門でクリモニアに帰しますとは言えず。


「お願いします」


 と返事をしてしまった。


「ユナお姉ちゃん!?」


 その瞬間、フィナは驚いた顔をしていた。

 わたしは心の中で謝る。

 それから、鉱山の話を聞き。一度、クマハウスに戻り、転移門でクリモニアに戻って、ティルミナさんにフィナの貸し出し許可をもらうと、転移門で王都に戻り、フィナをエレローラさんに預けるという、面倒な作業をするはめになった。

 フィナは貴族のエレローラさんのお屋敷に泊まることになって、悲しい顔をしていた。

 帰ってくるまでに、フィナの精神が緊張で壊れないことを祈ろう。

 早く帰ってくるから待っていてね。

 捕らわれの(フィナ)を救い出すため、わたしは1人、鉱山に向かうことになった。

 なんか、目的が変わったような気がするが、気にしないで出発する。



明日の投稿は無理そうです。

外伝も書きたいのに……

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― 新着の感想 ―
かくして、お姫様を救う為に勇者(クマ)は旅立つのでした!フィナちゃんファイト!
[良い点] とうとう出てきましたね、AランクBランク。この世界でもロマンを追う人が多いのでしょうか。 そこにシンパシーを感じるあたり、さすがユナちゃんです(笑)
[良い点] 自分たちにとって都合が良い人間を普通、そうでない人間を変人とレッテルを貼ることでエレローラとサーニャの人間性が表現されているところ
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