初めからピンチ
前の話から2年も経ってて驚きました…
…どうしましょう。
いや、と、とりあえず現状況を説明する前に短く回想を一旦しましょうか。
入学式が無事に終了して少し経った時のことです。
退場したのち、教室に向かう途中でクラス発表があり、見事ヨナちゃんと同じクラスになれたことにお互い感激しながら教室に向かって歩いていた直後でした。
「おい。人間。」
突然背後からこっちを真っ直ぐ見て声をかけられたと思ったら、目の前にヨナちゃんに負けず劣らずの整った顔立ちと腰まである長い黒髪をなびかせた女の子が廊下のど真ん中で仁王立ちをしていました。
………ヨナちゃんといい、この子といい、髪のことを褒めてますが私髪フェチじゃないですよ?
「………水色の髪、お前がバティストの人間か。」
見た目通りの強気そうな声と違って、言い方がとても威厳ある口調で私に向かって言われた訳ではないのに、思わず背筋を伸ばしてしまいました。
本当にすごいんですよ?
真っ直ぐヨナちゃんを睨む鋭い目付きに、場所が廊下なので周りの目線がすごいのに堂々とした仁王立ち。
しかもその顔が整っているせいで、余計に怖さが倍増されているんですから!
「…………なに?」
しかしヨナちゃんはさして気にしない様子で返事を返しました。
…でもどこか冷たさを感じたのは気のせいでしょうか?
「これが終わった後、中庭に来い。……逃げることは許さん。」
「…」
…口調からして知り合いなのでしょうか?
黙ったままのヨナちゃんを放っておいて、さっさと自分のクラスへ戻っていった黒髪の子は、最後まで威圧感たっぷりでした。
それに、何故かヨナちゃんの名字を知っているみたいですし…
あ、ヨナちゃんの家の人はすっごいところらしいんですよ!
……………………詳しくは教えてもらえなかったのでわかりませんが…
……それにしたって情報ないにも程がありますよ…もっと調べようとか思えないんですか私…
それをとても冷えた目で見送ったヨナちゃんは、先ほどの出来事がなかったかのようにコロッと変わり、気付いたら教室に向かい直してました。
そして知り合いか聞こうにも怖くて聞くことができませんでした…。
………………これ入学したての小学生の会話じゃないよね、というのが終わって真っ先に思い浮かんだ感想です。
そして帰りになり、約束通り中庭に向かおうとした所で呼ばれたのはヨナちゃんであって私が一緒にいても邪魔なだけではと私は気づき、先に帰ろうか聞こうとしたら
「マリちゃんは私を一人にしないよね?一緒にいるって約束したよね?」
それを察したのかヨナちゃんは言わせないとばかりに約束の話を持ち出してきました。
た、確かに助ける?というか、一緒にいる?みたいな約束はしましたが……
「い、一緒に行ってもいいの?じゃまにならない?」
「なんでマリちゃんが邪魔になるの?だってあの人私だけ来いって言ってないし平気よ!後から言われたって遅いもの。」
気にしなくていいんだよ!と素敵な笑顔でかえしてくれたので単純な私はそっかと納得してしまい、そのままついて行ってしまったんです………
結局長くなってしまいましたが、ここからです。大変なことになったのは…
あの黒髪の子に言われた通りに中庭の側まで来て、ヨナちゃんにそこで待つよう言われて待っていたのはいいのですが……………………………………………………………………………どうして、ヨナちゃんが中庭に入った瞬間に火の玉が突然出て来たのでしょうか。
「……え」
あまりの唐突さに声もまともに出せない私を余所にあっさりとそれを避けたヨナちゃん。
避けられた火の玉は当然その後ろにいる私に向かって来るわけで………
「………っ!!」
当たると思っていた火の玉が私の目の前で音もなく突然消えていました。
え、あれ?冷静に説明しといてあれですけど、私、助かったんですかね…?
「あなたなんで魔法使ってマリに当てようとしたのよ!サイテーな人ね!」
…………ヨナちゃんの声が聞こえる………………あああああああああ怖かったああああああ………
思わずへたりこむのを我慢して立てていますがもう生まれたての小鹿レベルでガクガクしてます。
意外にもヨナちゃんが私以上に怒っていて、なんで火の玉を出したのかを代弁してくれました。
あれ魔法だったんですね!昔ウィンディーネさんに見せてもらって以来なのでわかりませんでした。
でもヨナちゃん、多分ですがあの火の玉、ヨナちゃんに向けて放ったものだと思いますよ?
ヨナちゃんが避けたとたんに火の勢いが分かりやすいほど弱くなってましたし。
それでも突然でしたので十分怖かったですがね!
「安心しろ。先程のは貴様だけに向けたものだったのでな、別の奴に当たったとしても軽症で済むだけだ。」
やっぱりでしたか!
でも当たると痛いのは変わらないんですね!
…ん?そしたらなんで火の玉が当たる前に消えたのでしょうか?
「それに、私の攻撃範囲は中庭までだ。そこの金髪はその範囲外にいた。当たりはしなかっただろう?」
「あ、はい!」
つい敬語で返事をしてしまいましたが、何故火の玉が消えたのかは納得しました。
つまり、彼女の魔法の攻撃範囲は中庭までが限界?らしく、そこで私が廊下と中庭の境目ギリギリにいたので火の玉が目と鼻の先のところで消えたってわけなのですね!
でも怖いことに変わりはありませんけどね!
「……だから安心しろって?」
………ん?
「…ヨナちゃん?」
ど、どうしたのでしょう?なんかヨナちゃんの周りが寒くなっているような…
って、地面が凍ってる!?
段々それが広がってませんか!?
「マリちゃんに怪我がなくても怖い思いさせたくせに…っそんな簡単に許すわけないじゃない!!!」
ヨナちゃんの叫びと一緒に氷結した地面から沢山の尖った氷が突然現れて、今にも黒髪の子に向けて飛びかかりそうな状態で浮かんでます。
「…ふん、やっとか。」
それを心待ちにしていたように黒髪の子も札を前に突きだすポーズをとったら背後から無数の札がどこからともなく現れて、その札が黒髪の子を覆うように動きながら炎を纏い始めてあっという間に臨戦態勢についていました。
……………突然ですがこの世界の魔法って発動させるにはなにかしらの道具が必要不可欠でして、体に密着するもの(あ、服は例外ですよ!)であればなんでも良いっぽいのですが基本的には手に持つものですね。
そしてその道具に使う分だけの魔力を注いで詠唱してから魔法が使えます。
つまり(魔法の威力は別として)杖でも財布でもなんでも手に持って唱えれば誰でも魔法は使えるっていう簡単なことなのですが、逆をいえば何も持っていなければどんなに詠唱しても魔法は使えなくなります。
しかしある特定の種族と数多くの条件をクリアした人だけは無所持、無詠唱で魔法を発動させることが出来るらしいです!
種族だったら私の知る限りだとエルフ、ドラゴン、妖精などの高位種族たちですかね!
…聞いて察したと思いますが、我が家の純血のエルフであるお母様、その血を色濃く継いでいるお姉様とお兄様はもちろんのこと、実は妖精の1人(?)だったノームさん、サラマンダーさん、ウィンディーネさんもそうだったんです!
…………え?私も使えるんじゃないのかって?
無理でしたよ!!!!!
妖精の3人に口を揃えて「無理だな」「無理ね」「無理。」とはっっきり言われましたからね!!!
さすがの私も泣かずにはいられませんでしたよ!!ええ!!!
………えー、こほん、つまり私が何を言いたいのかというと、無所持・無詠唱ができるのはその種族の血を引く人かとんだチートな人かのどちらかしか成し得ないはずの技を、何故目の前の小学生になったばかりの幼い少女たちが息をするかのように自然にそれを使っているのか…
それが不思議すぎて驚きを越えてひどく混乱してます。いやそれ以前になんでこうなったのかわけわかりませんだれか助けてください………
「はーい、そーこーまーで!」
空から救世主が現れたかと思いました。
次回も不定期更新になります(-_-;)
読んでいただきありがとうございます