熱き想い…そして決意! 8
あぁ~テンプレ展開…以外に書き辛いものなのですね;
話短めです;
― クレの森 ―
シオン様は何処だ!
オヤジ達がクレ茸が群生するからと、良く採取しているポイントに急行したが…如何すればいい?
焦る気持ちを無理に抑えながらタカキが辺りを見回すと入ってきた方向とは逆側にキノコ狩りに使ったのか籠が転がっている。
奥に行ったのか…シオン様の足では悪路走破は無理だ。比較的歩きやすい場所を辿って奥に行ったに違いない。
狼がシオン様を逃がさないよう追いつめるとしたら街の方角は無いな…という事はこっちか。
---きゃぁ~~
先を急ぐタカキの耳朶に木々で減衰した悲鳴が微かに届く。
シオン様!声の聞こえた感じだと…崖の方だな、まずい急がないと危ない!間に合ってくれ!!
体力の限界が近い事もあり足を木々の根に取られながらもシオンは未だ獣の顎門から逃れていた。
明るい場所は森の終わりに違いないと、萎えそうになる気持ちを無理やり奮い立たせ何度も転がり悲鳴を上げながらも此処まで来たのだ。絶対に諦めない!そう決めたのだ。
森の外まで逃げ切ればあの獣たちも諦めるかもしれないし、助けを呼べるはず。
シオンは生まれてからこれまでの中で一番と言って良い程必死になって足を動かした。
心臓の音がバクバクと外に聞こえ、その音を辿って狼達が自分を追いかけて来るのではないのかと思ってしまうほどだ。
ガゥルルゥ
ハッハッ
「はぁはぁ…どうしよう、まだ追いかけてくる。はぁはぁ、体力も…」
数m先(直ぐそこ)には光が広がる場所がある。森から出れれる! まともに動かなくなりつつある身体を奮い立たせシオンは飛び込むように光のある場所へと走り込んだ。
飛び込むと同時に汗で張り付いていた前髪が跳ね上がる程の強い風が吹き付ける。
シオンの目の前には信じられない光景が広がっていた。
眼下には陽光に輝く一面の青色、その青と空の青とを薄っすらと分ける陸地はクレセントの貿易相手となるシグロ港だろうか、こんな状況でなければ見とれてしまう美しい風景だ。
風は斜め下から吹き上げるように流れており目線を下に移すと、落ちればゆっくり3秒は数えられそうな断崖絶壁。真下では白い波が絶壁に纏わりついている。
「もうすぐで…えっ?…そ、そんなぁ…崖だなんて…」
…グゥルルゥ
「はぁはぁ」と自分の呼吸音が煩いのに狼の唸り声も確りと聞き取れる。
振り向けば3匹居る狼の内一匹と目が合い、シオンは無意識にジリジリと後ずさりしてしまう。
ジャリ、ガララ…
崖の端に足を置いたため足元にあった小石を崖下に落とす。
思いのほか大きな音に目線を落とすと小石は白い波に消えていった。
「どうしよ後が…」
ガゥ!
目線を外したのが合図となったのか、一匹の狼がシオンに襲いかかる。
「いやぁ~」
襲撃を回避しようと、しゃがみ込もうとしたシオンの足元が崩れその場に倒れ込む。
襲いかかった狼は勢いがついたままシオンに噛みつけず途中岩に身体をぶつけながら崖下へと落ちていった。
…キャン…キィャン………ザンッ
「タカキ様~~」
必死に周囲に手を伸ばし草を掴むが身体の半分以上が崖から出ており、そのままズルズルと落ちていくシオン。 掴むものがなく落下する浮遊感を感じながら虚空に手を伸ばす。
っと、そのシオンの右手を確りと掴む一人の手…
ガシッ
「ふぅ、間に合いましたねシオン様」
「タ、タカキ様~」
「シオン様、このまま引き上げます」
「はい、お願いします。タカ…キ…様…」
腹這いとなったタカキが引き上げようと全身に力を入れた瞬間、左肩に金色の目をした何かがシオンの目に入る。
グァン! と吠え声が聞こえたかと思うとピッピッとシオンの顔に暖かい飛沫が当たる。
シオンからはいきなりタカキの左肩に狼の頭が生えてきたようにも見える。
「タッタカキ様!狼が!」
「ああ、シオン様のことに夢中で、あいつら倒すの忘れてました。本当に抜けてるな俺」
「そんなことないです!何時も一生懸命で」
「ありがとうございますシオン様。そんなふうに言ってくれるとうれ‥‥グッ」
ヴゥ~グルル…ブシュッ
獲物は静かにしていろ!とばかりに狼は犬歯をさらに食い込ませる。
ピッピッとまたシオンの顔に飛沫がかかる。それがタカキの血である事が分かったシオンはキッ!と意を決し、血化粧を施した青い顔をタカキに向けると口を開いた。
「離して下さい!そうしてくれればタカキ様は助かります。良いのです、このまま克服出来ないのなら…いっそのこと手を離してくれた方が…」
「シオン様そんな悲しいこと言わないで下さい!約束したじゃないですか…絶対に克服させますって」
「タカキ様…」
「それに、こんな状況で好きな人の手を離す奴がいますか?」
「えっ?!」
「好きなんですよねシオンことが好きでどうしようもないんですよ。何があろうとシオンをずっと守りつづけていたいんです。だから俺を信じて下さい大丈夫だから…ね!」
こんな状態であるのに「にこり」と笑うタカキにシオンも頷く。
「…信じます…タカキを信じます!」
「了解!」
っと、言ったものの結構ピンチやね、まずは残り力を振り絞ってシオン様を引き上げますか…せ~の!
「シュッ」と空気を切る擦過音と同時に狼の苦痛を訴える吠え声が聞こえると、背に掛かっていた重みと刺さっていた剣歯がタカキの身体から無くなる。
ギャウン !
「はぁぁぁ!」
タカキのほど近い場所から聞きなれた気合いの声が聞こえる。
ドシュッ
ギャン
「間に合ったか!タカキ大丈夫か?」
ブンッと剣をひと振りし血糊を飛ばすとラクセルが急ぎ助け起こそうと手を伸ばす。
その後ろにはサイガが下してはいるものの弓の弦に矢を掛けたまま周囲を警戒しつつタカキ達の方に近づいてくるのが見える。
「ラクセル~、わりぃシオン様を引き上げるの手伝ってくり、力が入らないわ」
「あいよ」
「「せ~の!」」
無事にシオンを引き上げることが出来た事にホッとし、尻餅をつきながらもタカキはシオンの無事を確かめられずにはいられない。
「シオン様、身体の方は大丈夫ですか?」
「はい!…ッ?」
思いのほか元気な声で答えるシオンだが、タカキを見るその表情が心配の色に変わる。
「よ、よかったぁ…言ったで…しょぅ、だい…じょう…ぶ…」
ドサッ
あ、あれ?なんで地面が顔の横にあるんだ?
何だか安心して気が緩んだのかな、眠くなってきたような…。
「「タカキ?!」」
「いやぁ~タカキィ~!」
まだ一章終わりません…結構無駄に長いような気がする;




