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AGO物語  作者: AGOメンバー
7/26

熱き想い…そして決意! 6

え~っと、ヒロインのトラウマが軽いと思うんだが、ご都合主義なので勘弁してくだされ。

 シオン様にダット達を紹介してから二週が過ぎよとしている。最近はダット、プレシア含めて会うことが多くなりその御蔭かシオン様の笑顔が増えてきたように感じる。

ダット達幼い男の子に対する過剰な反応も無いのでそれとなく年齢を上げての人付合いを奨めてみるがシオン様は二の足を踏むようで、未だ色よい返事を貰うことができていない。


まぁ無理強いするつもりもないので暫くはダット達に付き合って貰う事として、今日も俺はシオン様の御供として最近では定番となった自然公園ロックバーズ・ネストの散策に来ている。

先日プレシアと会う約束をしていたようでシオン様は公園に入るとキョロキョロと2人を探している。

その様子に『ほっこり』としてしまい傍で控える侍女メイドのマイと目が合うとお互い目を細め自然と笑みが零れてしまう。


「…2人はまだですね」

「またダットの奴がおばさんに怒られてるんでしょう」

「ふふ、ありえますね」


相変わらずの糸念話越しの会話となるが糸の距離を侍女達メイドーズが少しづつ短く調整しており、既にその距離は3mを切っている。

シオン側の筒をアイが、タカキ側の筒をマイが担当し会話がある毎に器用に捧げる様も習熟した職人を思わせる技と昇華されている。タカキとしては殆どそのまま会話が成り立つ距離なので、そんなスキルが上がっても「なんだかな~」と思うのだが、シオンは未だ糸念話越しでの会話を望んでいるため致し方なくそのまま続けている。


早く普通に会話したいよな~等と毎度の事ながら埒もなくタカキが思っていると、奥の林から此方に近付く小さな影を捉えた。


「うわぁ!」

「きゃぁ~!!」


ダットとプレシアだよな?何慌てているんだ??


「お~い、ダット、プレシア~何してるんだ~」


離れた所にいる2人に声を掛けるが、どうも落ち着いて話せる状態じゃないらしい。


「タカにぃ~たちけて~」

「ハ、蜂!タカキお兄ちゃん、蜂がぁ!」


良く見ればブゥ~ン と此方にも羽音が聞こえてくる程の蜂の群れに追われているダット達。

慌ててタカキも駆け寄るためシオンに断りを入れる。


「おほ、大群だな;…シオン様、散策は中止としましょう。離れてて下さい!」

「へ?あ、はい!」


半ば使う事もないだろうと諦めていた腰の剣に右手を添えながらタカキは2人の許へと駆け出す。

その様は何時ものタカキと違い、頼りがいのある騎士の姿だ。


「ダット、プレシアはそのまま駆け抜けるんだ!なんとかする!」

「お~さすがタカにぃ!」

「うん、タカキお兄ちゃんかっこいい!」


ブゥ~ン


チャキ!

タカキの腕に力が入り、剣はその武威を示す時を待つ。

少し離れたところではダット、プレシアが、さらに少し距離が離れた反対側にシオン、アイ、マイが固唾を呑んで見守っている。


 ここでビシッと決めれば俺の株もあがってシオン様との距離も縮まるはず…いや縮まる!

観ていろ世のイケメン達よ!俺の必殺技タカキスペシャル・ストライクマグナムを…これで俺の時代の到来だ!

絶対に決めるぜ!!


ブゥ~ン


「はぁぁぁっ!」


ズシャァー!!!!

鋭い踏み込みと抜剣。鞘走りの勢いをそのまま斬激に乗せる業は正に電光石火だ。


ペチっ


「ペチっ?」


タカキは蜂を一匹倒した。


ブゥ~ン


≪パーティ≫

タカキ・ダット・プレシア

【コマンド】

 たたかう

 まほう

 あいてむ

☞にげる (ピコッ!)


「逃げるんだよ~ダット~、プレシア!」


タカキは惚れ惚れする程の美しいターンを決めるとダットとプレシアに向かって瞬足を発揮する。

戦術的撤退…男は諦めが肝心な時もある。 ― byタカキ ―


「「うわぁ!」」

「もぉ!タカキお兄ちゃん、あんな大群なのに何で一匹なのよぉ~」

「やっぱタカにぃは違うや大群の中一匹だけを倒すなんてしびれるぜ!」

「ダットもそこで感心しないの!」


蜂から逃げるため、なだらかな丘陵を転がるように走る3人。目の前に大きな池があり逃げられそうな場所は辺りに何もない。


「池に飛び込むぞ!」

「「うん!」」

「てぃ」

「とぉ」

「えぃ」


やや気の抜けそうな掛け声と共に3人はその身を池に投じる。


ドッボーン !


ブゥ~ン‥‥ブゥ~ン‥‥(フェイズアウト)


「「「ぷはぁっ!」」」

「蜂はいったかな?」

「かな?」

「…いったみたい」


しばし池から顔だけ出して辺りを警戒する3人。

タカキは頃合いだろうと岸へと向かい水で重くなった身体を池から持ち上げると続くダット、プレシアに手を貸す。


「よっこらっと」

「んしょ」


池の藻のせいか青臭い独特の臭いが鼻の奥に付くがこれといった外傷は無いようだ。

プレシアを引き上げると蜂に追われる事となった顛末を訊く。


「ふぅ…しかし、なんで蜂に?」

「ダットがね、蜂の巣を見つけてね、あの巣から蜜採ってさ、母ちゃんにパンケーキ焼いてもらってタカにぃ達みんなで食べようぜ!て」

「で見事に失敗さ!」

「ってダット!ちょっと、こっち来い!」


それを聞いたタカキはダットの耳を引っ張りながらプレシアからやや離れたところへ連れて行く。


「いたたた、タカにぃ痛いよ」

「いいかダット、そう思って行動するのは悪くない。けどな、失敗した時やさっきみたいに何かが襲って来てしまう時の事を考えろ。その時お前一人なら自業自得だから良いだろうが、誰か連れている場合はお前の安易な行動で怪我をさせちゃうんだぞ?ダットはプレシアと一緒にいること多いんだから、大好きなプレシアに怪我させたくないだろう。それともどんな時でもプレシアを守りきれるのか?」

「そ、それは‥‥」


十分反省しているようなので説教は良いか。

タカキはダットの頭をガシガシと撫でると自分でも似合わない事言っているよなと思い、話を切り上げる事にした。


「まぁなんだ…今日は無事で良かった。事が起こる前に何かあれば、俺かラクセルに話してくれよ…な!」

「わかったよ。タカにぃ」


「タカキお兄ちゃんなにしてるのぉ~…びしょびしょだよぉ。お気に入りなのに…ぐすん」

「…どうすっかな」


タカキ達が途方に暮れていると、無事を確かめにシオン達も丘陵を降りてくるようだ。

遠目にも分かるほどびしょ濡れの3人を見て驚いた様子で駆け寄ってきた。


「タカキ様、このままでは風邪引いてしまいます。城へ参りましょう」

「ダットやプレシアは?」

「大丈夫ですわ。私やタカキ様のお友達ですもの…ね?」

「お~!」

「わぁ!」


プレシア達に笑顔を向けるシオンに嬉しそうに歓声を上げる2人。

王族としては失格の烙印を押される会話に少し困った顔のアイとマイが顔を見合わせ苦笑しているのが印象的だ。


「そうですね、では参りましょう」

「「は~い」」

「ふふふ」


― 城内 ―


パチパチと音を立てる暖炉の前に3人固まってじっとしている。

先ほど案内されたこの部屋の暖炉に惜しげもなく薪が焼べられるのを見てプレシアは燃料費を気にしない侍女メイドに「さすがお城は違うな~」と何やら所帯じみた感想を口にしていた。普通なら部屋の調度品に目が行くと思うのだが何処かずれている所が彼女らしく、御蔭でダットの緊張も幾分無くなったようだ。


「わぁ、暖かい」

「ぬくいわぁ」

「何故なまる;」


暫くすると部屋着に着替えたシオンが侍女達メイドーズを連れで部屋へと戻ってきた。

ワゴンも部屋に入れる所を見るとお茶の用意もしてくれたようだ。


「ホットミルクですよ」

「やったぁ」

「わ~い」


子供達を思ってか、珍しくミルクを用意したようで湯気が揺らいでいるポットからはミルクの甘い香りが漂い鼻を擽る。


「シオン様助かります」

「タカキお兄ちゃんはシオン様に近づけないから私が持ってきてあげるね」

「おっ助かるよ」


ダットとプレシアはミルクの入ったカップを貰いにシオンの傍に向かう。

侍女達メイドーズが動くのを制し、シオンはカップを手に2人を迎えると周りに聞こえないよう小声で話しかける。


「はい、どうぞ。…そうだ、二人ともお願いがあるのだけど…」

「ん?なぁにシオン様?」

「タカキ様ってクレ茸好きでしょ?色々と頑張って頂いているので内緒でプレゼントしたいと思っているの。採りにいくの手伝って貰えないかしら?」

「タカキお兄ちゃんクレ茸好物だし、きっと喜ぶね。シオン様一人だと危ないし手伝ってあげる。 ね?ダット」

「もちろんさ!何時もだと、父ちゃんとラクセルにぃちゃん、サイガのおじちゃんの三人で採りにいてるしみたいだし、こっちも三人だから平気だね」

「でもシオン様はお城の外に出て大丈夫なの?」

「そこが問題なのよね…」


会話が聞き取れないのか怪訝な顔で控える侍女達とタカキを尻目に思案を始めるシオン達。

良い案が浮かんだのかダットがポンッと手を打つ。


「う~ん…あっ!」

「どうしたの?」

「あるある抜け道が!」

「あぁ~タカキお兄ちゃんが壊したヤツだよねぇ」


プレシアも思い至ったのか、やや遠い目をして呟くように答える。


「そうそう、おいら案内するからシオン様まかせて」

「ダットちゃん頼りにしてるわね。今度タカキ様が来る前に採り行きましょう」

「「うん!」」

「シオン様?でも何で急にタカキお兄ちゃんにプレゼントなの?」


シオンは急に体温が上がるのを自覚しながら、声を落として早口で答える。


「べ、別にそうゆう訳じゃなくって、いつも真剣な向かい合ってくれてるし…何かお礼したくって、だから好物のクレ茸をね…」

「ふぅ~ん、そうなんだ、タカキお兄ちゃんは真面目だしね」

「真面目なんだよね~シオン様のこと好きなのにさ~、告白も出来ないんだよな」

「タカキ様が?…私のこと、す…」


口を滑らしたダットをプレシアが年下を咎めるような口調で口止めする。


「ダット!だめでしょ」

「あっ、いけねぇ。タカにぃには内緒な」

「ええ…」

「あっタカキお兄ちゃんにホットミルク持っていかないと」


微妙な空気を払拭するかのようにプレシアは両手のカップを見ると話を切り上げタカキの許に戻る。


「タカキお兄ちゃん、お待たせ~」

「テンキュ~」


ズズゥと一気にホットミルクを飲むタカキをじっと見上げるプレシア。


「ん~暖まるわ…ん?どうしたん?」

「えへへ…なんでもな~い」


3人は暫く暖炉の前に陣取りミルクを堪能すると服も乾いたようで、濡れてべた付く感じがなくなっている。


「服乾いたみたい…そろそろ帰ろダット?」

「おぅ、そうだね。タカにぃ良い?」

「あぁ…シオン様、では二人を送ってきます。よろしいですか?」

「あっ、はい///」

「では」


2人を送るためタカキが出て行った扉を見つめるシオン。

話し掛けられる直前まで自分が想っていた事を考えると、まともにタカキの顔を見る事が出来なくなっており次にどんな顔をして会えば良いのか分からなくなる。


「…タカキ様が私のこと好きだったなんて」


小声で呟いた自分の言葉が耳朶に届くと、体温がまた上がったような気がして手を自然と頬に当ててしまう。

暖かく感じるのは暖炉のせいだけではない事をシオンは自覚しつつタカキの去ったドアを唯見つめるのだった。

すでに第一章の下書きをタカさん書き終わっていますが、新九郎の執筆速度が遅いのでアップ出来ません。

まだエタってません…がんばります;

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