熱き想い…そして決意! 5
閑話なのに今までで一番長い話になってしまった;
ヒロインはチョロインでないとやっぱだめ?
あれから数日が経ち荒治療?のお蔭かシオン様との距離が以前より縮んだ感じはある…ドリアードかな;
ドリアードとは木の精霊なので木の精=気のせい…なぁんてね…だぁはっははは…はは…はぁ…寒いな;
ここはカットで;
そろそろシオン様の男性恐怖症克服への道を更に一歩進めたいところ。
今日はそのためにも思いきった提案をしてみるつもりだ。
「シオン様」
「はい、タカキ様」
最近自然と柔らかい笑みを返してくれるシオン様。
くぅ~~いいなぁ~、何時見ても良いなぁ~ほへぇ‥‥んっんん
(気を取り直して)
「シオン様は自分より年下の男の子はどうですか?」
「……?! そ、その…と、年下はそれほど好みではないです…と言いますか…少しだけ年上の方が好ましといいますか…」
きょろきょろと瞳を彷徨わせ、仄かに頬を桜色に染めるシオン様…き、訊き方が不味かったみたいだ。
こ、これじゃ異性の好みを訊いてるように勘違いするか。
お茶のお代わりを準備していた侍女のマイも目を丸くして此方を見てるし…。
「えっと…そういう意味では無くてですね…」
「えっ?!…そんな…」
急に顔色が蒼白になるシオン、今にも瞳からは涙がこぼれそうなほど潤んでる。
今度は何が起きているのか分からないタカキは言葉が続かない。
「え?」
「「タカキ様!見損ないました!!」」
泣きそうなシオンを庇う様に侍女のアイとミィが噛みつきそうな勢いで攻め立てる。
ますます訳が分からないタカキ。
「そんな露骨に聞いておいて!分からないとでもお思いですか!」(分からないです;)
「誰と代るおつもりですか!年下ということはラクセル様ではないことは分かっているんですからね!」
「「何が不満なんですか!」」
憤慨する侍女達。最後はの方はかなり私情が入っている気がする。
何も口にしないマイなどシオン同様に大きな瞳に涙をためたままイヤイヤをするように顔を振るだけだ。
ここにきて漸くタカキもこの状態を理解して慌てて弁解する。
「ご、誤解ですよ!シオン様の男性恐怖症が小さな男の子でも発症するのか否かということであってですね…付き人を代わりたいとか、そんな俺に限って絶対に在り得ませんって!!」
「……絶対って(ボソ)」
顔色も戻り…いや血色が良くなりすぎた顔を下に向け無意味にティースプーンでお茶を攪拌するシオンと、埃一つ付いていないお仕着せを無意味に払い身嗜みを整える侍女達。
しっかり十秒程の間を持たす。
「「「紛らわしい言い方は止めてください!!」」」
「す、すまない?」
「本当に分かっていますか?もぅ~」
マイからジト目混じりで小言を言われるも、何とか誤解が解けた事に胸を撫で下ろすタカキ。
「(気を取り直して)で、シオン様どうでしょう?」
「え~と、試してはいないから、分からないわ…」
「そうですか、では自分の知り合いに8歳の男の子が居るので会ってみませんか? 専門的な事は分かりませんが、会ってみて大丈夫なら少しずつ年齢を上げて抵抗の少ない歳から克服していくのはどうでしょう?」
「…それはいいかもしれませんね」
「知り合いの子は今日直ぐそこのロックバーズネストで遊んでいるはずです。シオン様さえ良ければこの後一緒に会いに行きませんか?」
「はい、よろしくお願いしますね」
ロックバーズネストは城下町と城の間にある花や草木などを楽しむ自然公園のような場所である。
元は野戦訓練場として用意された区画であったがクレセントが一つの国として纏められてからはその役目を果たす事もなくなり、三代前の王アルフレート統治時代に臣民の憩いの場所として拓かれた場所だ。
ロックバード達が羽を休める事が出来るほどの広い公園「ロックバーズネスト」と臣民が勝手につけた名がそのまま正式な公園の名前になるあたりクレセント王国らしいといえる。
昔は街、城の全員が落ち着ける憩いの場所であったが、シオン誘拐未遂事件以来は兵のチェックを済まさなければ入ることが出来ない場所となっており、安全と引き換えに少し淋しい公園となっている。
―ロックバーズネスト―
なんとも微妙な距離をとりながらシオンと侍女達を引き連れロックバーズネストへと足を運ぶ一行。
「タカキ様、そういえばミーヤが食事に戻って来ないの…何時もはこの時間には戻って来るのに」
「今日は暖かいので外で気持ちよく寝てるのでは?」
「ふふっ、それはありそう。途中で見つかるかもですね」
「ですね」
はぁ、忘れてるかもだが短くなったとは言え3m程度離れて糸念話を使っての会話なので、実際異様な光景なんだよね……
「あっ!タカキにぃちゃん居た!」
「タカキにぃちゃん、お城にいるって呼びに行こうとしたの」
公園に入ると幾ばくもしないうちに幼い子供達に囲まれるタカキ。少し離れた所にいるシオンにも気がつかないほど子供達は何か慌てている様子だ。
「どうしたん?」
「大変なの!」
「プレシアちゃんが大変なの!」
「プレシアが?」
話をするのももどかしいのかタカキの腕を引っ張る子供達。
「猫ちゃんが木から降りれなくなっちゃって、プレシアちゃんも!」
「ダット君がなんとかしようとしてるけど」
「プレシアちゃんがタカキお兄ちゃんて泣いちゃってるの!」
「タカキにぃちゃん助けに行って!」
要領を得ない子供達の言葉だが、一大事であることだけは伝わる。
「よ、良く分からないけど分かった!どっちだ?」
「「「こっち!」」」
引っ張られるようにして走るタカキの後をシオン達も攣られて追いかけてみると、見事な枝ぶりの木の周りをあたふたと走り回る茶色の髪をした男の子が見えてきた。
「もうすぐタカにぃが来るから頑張れ!」
タカキを連れてきた子ども達が木の下の男の子に向かって声をかける。
「タカキにぃちゃん連れて来たよぉ~」
「おっ!タカにぃ来たぞプレシア!」
男の子のはしきりに木の上を見ながら話している所を見ると、プレシアと呼ばれる子がそこにいるようだ。
タカキは男の子の隣に立つと木の上にいる女の子に声を掛ける。
「プレシア大丈夫か?」
「タカキお兄ちゃん~降りれなくなっちゃったよぉ~…うわぁぁん、こわいよぉ…」
「お兄ちゃんが来たから平気だよ。猫は?」
「抱っこしてる、それで降りれなくなっちゃって…ぐすん;」
にゃぁ~と人の気も知らないでプレシアを一舐めする猫…あれ?ミーヤじゃないか?
「ふみ、今から言うことを良く訊いて、プレシア」
涙を流しながらも頷くプレシアを確認する。
「いいかい、今その猫を助けられるのはプレシアだけだ。だから猫をしっかり抱きしめて俺の所に飛び降りるんだ。大丈夫、俺が絶対に受け止めるから!」
「飛び降りるの?ひっく、ひっく」
「危ないです、城の者を呼んだ方が…」
「平気ですよ、まかせて下さいシオン様」
にこっ
「あっ…はい///」
あれっ?赤くなって顔を背けられてしまった…怒らせちゃったかな; い、今はそれどころではないな、後で謝ろう。まずはプレシアを助けないと…。
「プレシア恐いだろうけど信じてくれ。大丈夫だから…ね」
「う、うんタカキお兄ちゃんを信じる! う~…」
大事そうに両手に猫を抱え、目を閉じながらプレシアは「えい!」とばかりにタカキへと飛び降りる。
タカキはプレシアを抱きとめ膝を使い出来る限り衝撃を和らげるよう努めたため自然とその場で座り込む形となる。
ドサッと最後に尻餅を突くなんて、ちょっと格好悪いが腕の中のプレシアは怪我が無さそうなので誰にも気づかれないようホッと一息つくと、然も不安など全く無かったかのようにプレシアに尋ねる。
「ほら大丈夫だったろ?プレシア」
「えへへ」
「さすがだねタカキお兄ちゃん」
「にゃぁ~」
「あっ猫ちゃんも無事だよ」
「本当だミーヤも無事でよかったな」
タカキが喉を撫でるとゴロゴロと目を細めながら喉を鳴らすミーヤ。
「この猫ちゃんミーヤっていうんだ…ミーヤ、よしよしミーヤ可愛い~」
「シオン様の猫なんだよ」
「シオン様?お姫様の猫なんだ…心配してたかな?…ミーヤをシオン様に渡してくるね」
「そうだな」
タカキはプレシアを立たせると髪についた葉を取って手櫛を入れると背中を軽く叩いて「ミーヤを宜しくね」と促す。
「シオン様~」
「はい?」
「はい、ミーヤ」
ぶら~んと両脇に手を入れられ差し出されたミーヤは、面目ないといった感じでシオンに「なぁ~」と一鳴きする。シオンは笑みを零しながらミーヤを受け取ると身を屈めプレシアと同じ目線になる。
「ありがとうねプレシアちゃん…だっけ?怪我はない?」
「はい、シオン様」
「あっそうだ!シオン様、お花のところ行こうよ…ほらぁ!」
「あらっ、はいはい」
プレシアに先導されて一行はやや丘になった白詰草が白い絨毯のように花を咲かせている場所にたどり着いた。時折優しい風が吹き白い絨毯を揺らす気持の良い場所だ。
ダットはタカキの横に来ると騎士服の袖をちょいちょいと引っ張る。
「タカにぃ…プレシアのことありがとな」
「おぅ…そうだダット、シオン様のとこに行ってみて」
「おいらが?」
「ああ、頼むよ」
「?…OK~」
タカキ兄は相変わらず唐突だな~と思いながらもダットはタカキと共にシオンの下に向かう。
「シオン様」
「はい?」
「これからダットがそちらに向かうので抵抗あるか試してみてください」
「わかりました」
ダットもプレシアも「なんで糸念話なんだろう?」と思いつつも口に出してはいけないような気がして言えないが、タカキを可哀そうな人を見るような眼で見てしまう。
「んじゃダット頼むわ」
「・・・あいよタカにぃ」
「シオン様そっちに行きまーす」
「あっ、はいどうぞ」
てくてくと気負いなくシオンへと近づくダットにタカキ、シオン、メイドーズの緊張が高まる。
ドキドキと皆の心音が聞こえてきそうだ。
「来たよ、シオン様?」
「あら、大丈夫ですね。よろしくね、ダットちゃん」
そう言うとシオンはミーヤを脇に下し、ダットを優しく抱きしめる。
「おぉ、ダットくらいの歳なら大丈夫そうですね」
「…シオン様っていい匂いがする」
「そうかしら?」
「うん…そうだよ」
そうなのか…近寄れないしな…ん?
ダットと目が合う…にま~と人の悪い笑みを向けてくるダット…なんだ?
「シオン様~」
すりすり
シオンに顔を埋めて摺りつくダット。
「きゃ、くすぐったい」
「だ、ダット!!」
あいつ調子にのりやがって…うらやましい…ってダットぬっころす!
そんなやり取りをしている横から唐突にプレシアの声が上がる。
「出来たっと!」
「ん?」
プレシアがてけてけとタカキの下に駆け寄る。
「タカキお兄ちゃんしゃがんで」
「こうかな?」
タカキが片膝をつくと「うん」と満足そうに頷くと背に隠していた物をタカキの首に掛ける。
「はい、タカキお兄ちゃん」
「お~花の首飾りか、ありがとなプレシア」
「ううん、助けに来てくれてありがとねタカキお兄ちゃん」
ちゅっ
「えへへ」
助けてくれた騎士へのささやかな御礼
「おほ」
「あっ…」
「…あ゛~~~」
シオンから零れた小さな声はダットの断末魔のような声に掻き消される
「プレシアちゃん」
「なぁにシオン様」
「プレシアちゃんてタカキ様のこと好きなのかな?」
私て何聞いてるのかしら‥‥自分の言葉に驚きながらシオンはプレシアに訊かずにはいられない、なんだか得体のしれない感情をもてあましてしまう。
「うん、大好き」
にこ
近くで「むっ!」っとするダットを視界の隅に捉え、シオンは何故か今同じ様な気持ちのような気がして無意識に手を胸に当ててしまう。
「シオン様はタカキお兄ちゃんのこと好き?」
「えっあっ……まだわからないかな」
「私ね男の人が苦手なの、だからねタカキ様のことが好きとか嫌いとかね…で、でもタカキ様はいつも一生懸命接してくれるし‥だ、だから嫌いじゃないのよ」
わっ私、何本気になってるの;
「タカキお兄ちゃんは他の男の人と違うから…きっとシオン様すぐに好きになっちゃうよ。えへへ」
「えっ‥そうなのプレシアちゃん?」
「ん~とね、ラクセルお兄ちゃんと違ってね、頼りないとゆうか、抜けてる感じだし…普通の女の人なら断然ラクセルお兄ちゃんね!」
全然誉めてないわ; 確実にシオンとメイドーズの心が一つになった瞬間だった;
「でもでもね、ここって時だとね、なんていうんだろう…そう、大丈夫だよていうとね本当に安心できて大きくて暖かいの! この時のタカキお兄ちゃんを知っちゃうときゅ~んとしちゃうんだよ」
「もしねシオン様がタカキお兄ちゃんのこと好きになったらタカキお兄ちゃんをシオン様にあげるね」
「えっ?…なんでプレシアちゃん?」
「だってタカキお兄ちゃんはシオン様のこと好きみたいだし」
「えっ?た、タカキ様が私のことを…?!」
「だからねシオン様がタカキお兄ちゃんのこと好きになったら両想いになるからあげる。えへへ」
な~んか2人して何盛り上がってるのかな?
まぁシオン様が自然と笑えているようで良かった良かった。ん?
ダットが不機嫌そうに近づいてくる。
「ん?どうしたダット?」
ダットはいきなりタカキの脛に無言で蹴りを入れる。
「痛!ダットぉ、待てぇ!」
逃げ出そうとするダットの襟首をムンズと掴む。
「だってタカにぃはプレシアに『ちゅう』してもらってるしさ!」
「お前だってシオン様に『すりすり』したろうに!!」
「…お互い様か…」
「…うん…」
やや遠目に「きゃぁっきゃっ」とはしゃぐシオンとプレシアを見て「にへらぁ~」となるタカキとダット。「本当に可愛いわぁ~ 」と自然と2人の口から洩れる。
ガシッ!
タカキとダットが向かい合い腕を組み交わす。
「ダットお互いに頑張ろうぜ!」
「タカにぃもな!」
2人は男と男の熱い絆を確かめ合い、逆にシオンとプレシアから見られているとには全く気がつかない。
「…あの二人は仲いいのね」
「うん!ダットはタカキお兄ちゃんに憧れてるから」
「ふふっ、そうなのね」
「ダット~晩御飯の時間だよ~」
見れば恰幅の良い女性が手を振りながら此方にやってくる。
「あっ母ちゃんだ! ここだよ母ちゃん~」
「いたいた…なんだいタカ坊もいたのかい?」
「…いたでございます」
な~んか苦手なんだよね、ダットの母ちゃん;
「なぁに硬くなってるんだい?」
「そ、そんなことないるれうっ;」
「あーあー噛んでるよ、全くダメたねぇタカ坊は」
「こんな時に噛むタカにぃてかっこいいよ!」
「すげぇよ、すぜぇ!」
何故か嬉しそうに興奮するダット。変な子である。
「ダットまで似てきたねぇ~全く、しっかりしておくれよタカ坊!」
「は、はい;」
「やれやれ」と言わんばかりに肩を竦めるダットの母さん。芝居っけたっぷりのため息も堂に入っている。
「はぁ…今日は晩御飯は家で食べておいきよ。あんたの好物のクレ茸をあんたのとこのオヤジさんとラクセルとうちの旦那でクレの森に行って採ってきたからね、腹一杯食えるよ」
「お~有り難い。塩焼きお願いします」
「あいよ」
「やった!今日はタカにぃと一緒だ」
ということは…チラと プレシアを見るダット。
「プレシアも一緒においで」
「私も一緒していいの?」
「あぁもちろんだよ。お母さんには言ってあるからそのままおいで」
「ありがとう!えへへ」
「母ちゃんナイスだぉ」
「ん?あのお方は…シオン様じゃないかね…あれまぁ恥ずかしいとこみせちゃったね。でも、こんなとこになんでシオン様が?しかもなんで侍女さんたちは糸念話持ってるんだい?」
「タカキ兄ちゃんと一緒来たんだよ…糸念話は何でだろうね?」
「タカ坊がね…そういえばシオン様の付き人てオヤジさん言ってたね…出世したんだねぇタカ坊!」
バンバンとタカキの背中を叩く。
結構本気で痛いです。
「い、痛いよ」
「それじゃ出世祝いもつけて盛大やるかね!さらに好物の唐揚げも付けちゃうよ!」
「うおぉ、ありがとう。シオン様をお送りしてからおばさんとこ向かうよ」
「あいよ。待ってるよ!」
「ではシオン様参りましょうか?」
「はい、タカキ様」
―城内―
「タカキ様、暖かい人達でしたね」
「はい!あの笑顔を守りたくてクレセントナイツになったので、それに…」
「それに?」
「(今は、ずっとし、シオン様をお守りしたいです)…いやぁ、なんでもないです。あははは;」
「…でも、うらやましいです。恐怖症を克服出来たらあの団らん入りたいなぁなんて思ってしまいました。クスッ、その時はご招待してくださいね、タカキ様」
ニコッ
きゅ~んと来ちゃいましたよシオン様~
「…もちろんです!絶対に自分が克服させてみせます!絶対に!」
「タカキ様ありがとう。また、明日もよろしくお願いしますね」
「はい!おやすみなさいシオン様」
「おやすみなさいタカキ様」
「(なんか私達影薄くない?)」
「「(そうですね;)」」
侍女達の会話は城の廊下に消えていった。
日もすっかり落ちて就寝前のひと時、シオンは昼の事を思い返していた。
色々と有りすぎて未だに胸がドキドキしているような気がする。
「ふぅ、タカキ様か…クレ茸と唐揚げが好きなのよね…いろいろわかっちゃったなぁ。ふふふ」
あれ?なんか楽しくなってる?…戻れるといいなぁ、あの頃に…。