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AGO物語  作者: AGOメンバー
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熱き想い…そして決意! 2

ヒロイン登場です。

 翌日、タカキは付き人用の真新しい騎士服に着替えると侍従長の執務室へと急いだ。


 なんというかこの騎士服って派手だよな~、長靴もピカピカだし…着慣れれば気にもならなくなるのかね。 緊張のせいか色々なことが気になるな~。


「まぁ今日からシオン様に会える事だし、頑張っていくか!」



-侍従長の執務室-


「本日よりシオン様の付き人を拝命致しましたタカキ・シノサトです」

「ご苦労。侍従長を務めるカスティーラ・シュノーゲルだ」


 部屋の主であるカスティーラ・シュノーゲルはまだ年齢30前であり、侍従長としては異例の若さであるが、王の信頼厚くやり手との評判の人物だ。

文官だが鍛えているのか立ち姿は騎士と紹介されてもなんら遜色がない。

他に部屋には40代後半と思われる品の良い黒髪の女性が一人控えていた。

タカキの目線を追ったのかカスティーラは女性を促す。


「知ってると思うが、女官長のコーウェン殿だ。姫様付きの侍女メイド達を管理している。奥殿についての細かなことは女官長に聞くと良い」

「女官長を務めますジュリアーヌ・コーウェンです。よろしくお願いします」

「はっ!コーウェン女官長殿。よろしくお願いします!あ、いゃ、その…」


 女官長の宮廷式の礼に対し、タカキが騎士団の敬礼で返してしまいアタフタしている様を見てカスティーラからは溜息がこぼれる。


「追々慣れてくれ…ところでタカキ、本日から付き人となる訳であるが、その役割について知っているかね?」

「え、あぁ…はい、基本的には主の身辺警護と従卒を兼ねた者、もしくは御伽衆といった所と認識しております」

「概ね正解だが、今回は当てはまらん。貴公の護衛としての能力は全く期待していないからな、安心しろ」

「え? は、はぁ」

「そも護衛としての付き人なら一人だけというのは可笑しいだろう?身辺警護はこれまで女武官として侍女メイド達が交代で事に当たっている」

「では、何故自分を選ばれたのですか?」

「べっ、べつに私が個人的に貴公を選んだ訳じゃないんだからな!」


いや恥ずかしがって言われても、こっちが困るし;


「これまで付き人になった者は如才なく仕事をこなす者達であったが皆旨く行かなくてな、であるならば今回はその逆をと思い、身元が確りしていて何処か抜けている奴は居ないかと聞き込んだところ貴公が出てきた訳だ。ダントツだぞ!嬉しいだろぅ」


 全く嬉しくないよ!聞かなきゃ良かったよ!あと推薦したの誰だよ! あぁなぜか景色がぼやけて見えるような気がする…。


「で、では、自分の任務は従卒としてでしょうか?侍女達が居る城内ではそれすら無いように思えますが…」

「察しが良いな、詰まる所リハビリテーションだよ。貴公も知っているとは思うがあの事件以来シオン様は男性に対して壁を作ってしまってる。これを克服出来るようただ居るだけ、それが貴公の任務だ。嬉しくて涙がでるだろぅ?」

「…はっ! という事は旨くコミュニケーションが取れるようになれば、公認でおしゃべりとか出来てしまう訳ですね!がんばります!」

「あ、あぁ、頑張りたまえ…」


 ん?なんか反応悪いなカスティーラ様。変な物を見るような顔しておられるし、俺の後ろに何か居るのかな?…居ないし。??


「べっべつにすごく期待してるわけじゃないから貴公しかいないだけだしな」


えっええ~つん、ツンデレですか;アラサー男のツンデレって誰得なのよ。


「ふふっ、期待されていますのねタカキ様。しかしここで何時までも話をしていましても姫様が良くなる訳でもありませんからね、カスティーラ様タカキ様をお連れしてもよろしいでしょうか?」

「き、期待なんかしていません…どうしてもというなら…が、がん…ば‥れよ」


あの人は王にもツンデレ対応なのか; いやしかし女官長は強いな;


「はいはい、では失礼します。タカキ様、参りましょう」

「あ、はい。失礼します!」


 女官長の先導で奥殿にある姫様の部屋へ向かう道すがら先程の対応が侍従長の心証を悪くしたのではないかと心配になる。相手はやり手の侍従長である、話の途中でズバッと切って平気な訳がないと思うのだが女官長は何もなかったように先を歩いている。


「女官長殿、その…良かったのでしょうか?」

「えぇ、カスティーラ殿はどうにも出来ない心配事があると口数が増えて、たまに御自分でも訳の分からない事を言う事がありますから、あれくらいで引き上げた方があの方のためになるのですよ」

「はぁ~」

「それに、あの方のオシメを代えた事もある私には頭が上がりませんから心配には及びませんよ」


 女官長は目を細め、ふふっっと悪戯が成功した幼子のような笑みをこぼす。


 さぞ若い頃はモテたんだろうな~などと思っていると、周りの調度品が明らかにランクが高くなっている事に気がつく。そろそろ王族の方々が住まう場所に入ったということらしい。


「タカキ様、まずは姫様付きの侍女メイドに貴方を紹介します。最近の姫様の事は私より彼女達の方が詳しいでしょうから、仲良くしておいて損はありませんよ」

「はっ!御心使い感謝いたします!」

「そんなに硬くならなくても良いですよ、姫様はそのような態度を苦手としておりますから」

「ほっ、そうでしたか!いや助かります。正直な所こういう口調は苦手でして…;」

「ふふっ、サイガ様の若い頃に良く似ておいでですものね」

「おやじの若い頃ですか、そんなに似ていますかね?」

「えぇえぇ似ていますとも。特にその口調は若い頃のサイガ様そっくりですよ…今ではこんなに立派なご子息が居られるのですものね~私も年を取るはずです…さぁ、着きましたよ中へどうぞ」



-シオン姫の部屋・控えの間-


「ラクセル様の後じゃぁタカキ様って微妙だよね」

「うんうん」

「ラクセル様は何故辞退したのかしら」

「ああ~ラクセルさまぁ~~」

「でも、もしかしてもしかするかも!」

「ありえなぁ~いぃ」

「それ、うける!」

「「「あはははは」」」


コホンッ


 入室したことにも気がつかないほど話に熱中していたのか女官長の小さな咳払いに3人の侍女メイド達は文字通り飛び上がった後、慌てて整列すると揃って一礼する。


「姫様の付き人とをお連れしました。タカキ様どうぞ」


女官長に促され、姿を確認できるよう前へ出る。


「本日よりシオン様の付き人を拝命しました、タカキ・シノサトです」

「タカキ様、向かって右からアイ、マイ、ミィです、この他に今姫様に付いているマインの計四名が姫様付きの侍女メイドになります。 皆協力を惜しまぬようになさい」


 呼ばれた順に礼をとり、最後に揃って肯定する様は先ほどの姦しさとは無縁に思える品の良さだ。

さすがは姫様付きの侍女メイドさん、ってか変わり身はやっ! 女の子って怖ぇ~。


 アイは水色の髪をツインテールした娘で三人の中で一番背が高く意思の強そうな感じがする、4人のまとめ役のようだ。

マイは黄色がかった茶色の髪をポニーテールにした小さな娘で、ミィはセミロングの茶色い髪をした娘だ。

三人とも美少女といって差し支えないだろう。


 女官長はアイに2・3連絡を終えると後を任せる事を告げ、申し訳なさそうに退出していってしまった。なんでも近々ある祭典の打ち合わせがありこの後の時間が取れないのだそうだ。

もしかしたら侍女メイドさん達と打解けやすくするために気を使ってくれたのかもしれない。その証拠に女官長の退出と同時に室内の緊張もだいぶ下がった気がする。

すると此処で一番背丈の低いマイと紹介された娘がばつが悪そうに聞いてくる。


「その、入室された際に、あの…聞いていました?」

「ナンノコトデショウ、ナニモキコエマセンデシタヨ、ハイ」


 ラクセルに比べたらね…ああ、劣るよ。ああ劣るさぁ!  ふみぃ…へこむわ~。

気をしっかり持て!タカキよ!!こんな所でへこたれるな、まだ始まったばかりではないか、強く生きるのだ!


「と、ところで、シオン様は?」

「あっ、今姫様はお庭で遊ばれてますよ。ご案内いたしますね」

「ありがとう、お願いするよ」


 奥の部屋から直接中庭に出られる造りになっているようで、マイに奥へと案内される。


 もうかれこれ2年以上は王城に勤めるタカキだが此処の庭には初めて足を踏み入れる。騎士団の下っ端であるタカキの勤務する場所はお世辞にも華やかとは言えない場所だ。そのため緑眩しいこの場所はとても同じ城の中とは思えず、浮ついた感じでキョロキョロと見てしまう。

御上りさんと言われても仕方がないその様子をマイが横目でクスクスと笑っいる事にも気が付かず、促されるままタカキは庭の奥へと歩を進めた。


 城の面積から考えればこの中庭は然程広くはないはずであるが、木々が絶妙な配置で植えられ実際の奥行きを感じさせない造りとなっいる。

アイストップとなる場所には姫の趣味なのか王族が使用する庭には珍しく一年草の花が鉢植えされ奥にある東屋までの道程を楽しませてくれる。


 庭を楽しみつつ歩き東屋の屋根が見える頃、美しい調べがタカキの耳朶じだに触れる。


…歌声?東屋から? 


 見れば青み掛かった灰色の髪を持った少女、シオン姫が小鳥たちを相手に歌を披露しているようだ。


歌も上手いのねシオン様!  聞き入っちゃうなぁ~、終わるまで待とう。


 ちょんちょんとマイの肩を叩くと、人差し指を自分口元に持っていき静かに聴こうと伝える。

マイは嬉しそうに黙って頷くと、タカキの後ろへと控えた。


 シオンは歌い終わると白魚のような細い手を胸に当て、満足そうに「ふぅ…」と息を吐く。

その様子にタカキが声を掛ける事も忘れ無意識にパチパチと拍手をすると、音に気が付きガバッっと音が聞こえてきそうなほど驚き振り向くシオンと目が合う。


「えっ・・・きゃっ!!」


 拍手をしながら近づくタカキとマイの姿に、シオンは東屋の奥に身を隠してしまう。


「あ;シオン様」


 あぁ;逃げてしまった。ん? なんか置いて行かれたか?

マイがちょっと困った顔をしながらシオン姫が置いていった筒のような物をタカキの元へ持ってくる。


「これを自分に?」


 東屋の奥に居るシオン様に確認すると、こくんと頷く…なんか小動物じみて可愛い///

筒ぽいな、ん? 糸?これって…糸念話(糸電話)? これで会話をしろと‥‥


 糸念話…ひと昔前に巷を騒がせた誰にでも使えるマジックアイテム(詐欺)で、貴族の子弟に爆発的に売れたものだ。今では魔法とは全く関係が無い事が分かっており、この筒を見ると幼少の頃を思い出す貴族が結構いるのだとか…。

(スマホの時代に‥‥糸念話(糸電話)って‥もっとましなアイテム考えられなかったのかな歳バレますよ作者様)


…まぁいいや。


「あ~・あ~、聞こえますか? 本日よりシオン様の付き人を承ったタカキです。以後よろしくです!」

「タ、タカキ様ですね…ち、父から話しはうかがってます。よ、よろしくお願いします」


5メートルも無いこの距離で糸念話を使う意味があるのだろうか…


「…」


「……」


「………」


「…………」


 う、気まずい…すごい緊張感プレッシャーだ。

くっ…このプレッシャー野郎…いや違うだろ!…誰か何とかしてくれ~。


「にゃ~」


 タカキの想いが神に通じたのか、ショートヘアの黒猫がひょいっという感じで緊張する二人の間に入ってくると、糸が気になるのか器用に後ろ足で立ちながら可愛いピンクの肉球で掴もうとしくる。


「あっ、ミーヤおいで」


 シオン様ったら、そんな良い笑顔で猫の名を呼ぶの反則ですよ~可愛いすぎる~。


 にゃ~にゃ~と甘えて鳴く猫に指をからませ…あれ?シオンさま糸念話は?

見れば見知らぬ侍女メイドさん(きっとマインさんだろう)がしっかりと筒を保持してくれていました。さすがです。


「猫ですか」

「ええ、ミーヤって言うの。ねぇミーヤ」


俺(男)の存在を一時的に忘れたのか猫と戯れるシオン様…やっぱり可愛いの~。


「にゃにゃん」

すりすり


 くぅ~猫になりたい!てか猫めシオン様にくっつき過ぎだ。交替の時間ですよ~…くそ~羨ましい。


「ミーヤおいで~」

「んにゃ?」


 苦し紛れにミーヤを呼んでみたら意外にも俺に興味を持ったようで、こちらに顔を向けるその大きな目を瞬かせトテトテと足元にやってきた。


「ミーヤ?あら?」

「にゃ~~ん」

ゴロゴロすりすり

「おほ」

「めずらしいわ…この子、警戒心が強くて私以外には誰にも懐かなかったのに。タカキ様にはなにか感じるモノがあるのかしら?」

「は、はははは…さぁ、どうなんでしょうか」


 まぁ、毎度のことなんだけどね…年頃の女性には全くモテないのに、猫や他の動物には何故か直ぐ懐かれるのよね。


「ミーヤ、タカキだ、よろしくにゃん」

なでなで。

「にゃ~‥‥ふにゃぁぁ‥‥すゃすゃ」

「ゎぉ、寝よったにゃ」

「あら。うふふ」


 こうしてミーヤが取り持ってくれたシオン様との遠距離ならぬ中距離恋愛‥ち、違うか交際?…いやしてないし。

まぁいいか。


兎にも角にも、もどかしい関係が始まったのである。

まだ続きます;

続けられるのかな~;

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