第二章 報酬の行方
PTとなったタカキと、そのエルフ達…
あっ;
ドワーフもいました;
「うむ」
ちょい、ここに入らないでね
「うむ。すまん」
し~ん
…ふぅ、さて続きをご覧ください。
翌日タカキがギルドに顔を出すと、顔役から話があると声を掛けられた。
何でも件の武装ゴブリンには商業ギルドから調査と討伐の依頼が出ていたらしく、根城の発見と逃亡まで追いやった事から報酬が出される事となっているそうだ。
今朝がたギルド職員が昨日のタカキ達の証言を基に根城を確認し、捕まっていたアウロラとの証言が合致している事などから異例ではあるが後追いでの依頼達成とされているそうだ。
当然全額報酬が貰える訳ではないのだが、予期せぬ臨時収入に一行は色めきたつも頂けるものは確りと頂く事とし、祝いも兼ねて今日1日は個々にシグロの街を満喫する事とした。(ミールが勝手に決めたのだが;)
何でも職人街の方では然程種族による迫害は少ないとの事だったので、明日の朝この時間にギルド集合しようと打ち合わせを終えるとミール達は報酬を手に手に喜色満面で出かけて行った。
タカキとしては今回の様な幸運は続かないだろうと、何か良い路銀稼ぎは無いかとギルドでの情報収集や携行食料等の消耗品を買い、午後には此処ルシチ亭で黒茶を楽しみつつ「宿を決めて武具の手入れでもすっかな~」等と、この後の事を考えていた。
そんなまったりな時間を過ごすタカキにミールの嬉しそうな声が掛けられる。
「タカキ~♪」
「ん?どうしたん ズゥ(コーヒーを飲んでいる)」
タカキの隣の席に投げ込むようにドカリッと装備一式を置くとミールは冒険者には似つかない華奢なブレスレットをシャラリと鳴らしながら、すまし顔で片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げると軽くスカートを持ち上げ綺麗な『カーテシー』見せる。
タカキは一瞬城に戻った様な感覚になり固まるも、続いてニパッと音が出そうな笑みを浮かべながらクルリとターンをするミールに「だよな~」と何故か安堵の溜息が漏れる。
エルフだけあってミールは黙って着飾れば異国の姫様と言っても通りそうな美貌の持ち主だよな…黙っていればね…等と失礼な事を考えながら適当に会話を続けるタカキ。
本人も黙っていれば好青年なのに口を開くと結構『残念な人』扱いされている事は此処では棚に上げるようだ。
「みてみて可愛いでしょ~♪ひらり~♪」(くるっともう一度回ってみせる)
「お~、似合ってるね、可愛い、うん可愛い」
「てへ、でしょ~♪ でね宿代頂戴♪」
「あいよ宿代ね…ズズ(コーヒーを飲む)……ブゥッ(飲んだコーヒーをミールにゲットリバー)」
「あ~!お気に入りなのに、何するのよ!!」
「報酬は!?お金はどうしたん!?」
「お店の人がね!似合ってますよお客様~!!さらに、このアクセを付けるとより可愛くなりますよ~。あっこれもいいですね~で、色々と親切にしてくれたんで全部買っちゃったの♪」
「そ、そうなのね…断れない性格なのね」
というより天然まっしぐらやん。
「今回は貸しにするから無駄遣いはダメだよ」
「無駄遣いじゃないも~ん、タカキが汚したしクリーニング代で貸しは無しだよ」
「おほ!、ちゃっかりしてるのね」
「そうだぞ無駄遣いは良くないぞミール」
タカキの後ろから声が聞こえ後ろを振り向くも誰もいない。
「あれ?誰もいない??」
「こっち、こっち」
すると店の入り口から今入ってきたルージュが手を振りながら此方に向かって来る。
その後ろにはアランも居り、何か疲れたような顔をしている。
「どうだいビックリしただろう」
「ああ!ビックリしたさ声が後ろ聞こえるんだから」
「そうだろう! ベントリロギズムって言う魔法だよ。声を別の方向から聞こえさせる魔法さ」
「へ~不意打ちに使えるな」
「だろだろ~、魔法使いぽい女性がさ、『そこの旅のエルフの方ぁ~これからの資金も底をついてしまてね…この町じゃ魔法との縁が薄くスクロール(巻物)が売れなくて…困って困って…これも何かの縁ですしぃ、とっておきのですがぁ、このスクロールを格安でお譲りしますぅ助けると思ってお願いしますぅっ』て訳でな、戦力にもなるし人助けになったし一石二鳥だろ」
変な科を作り小芝居を見せるルージュ。
返答に詰まるタカキとミールを気の毒そうにアランが見つめ、チラリとルージュを見ると深い溜息をつく。
「…あぁ」
「でだ、可哀そうなもんだからさ、言い値で購入したもんで宿代立て替えくれ」
「はいっ?」
「だからスクロールで全額使った。きっぱり」
「全額使ったって…しかも、きっぱりって言ってるよ; エルフて、皆あんなん?…まさかドワーフも?」
慌ててアランの方を見るタカキ。
「アラ~ン」
「うむ?」
「アランは報酬の金はどうしてるん?」
「うむ、話は聞こえてたしルージュが下らないスクロールを買った所も見ているからな、ワシはそんな所で下らない買い物はせん。ちゃんと残ってるぞ」
そう言うとアランはルージュとミールに見える様ジャラジャラとお金の入った袋揺らして鳴らしてみせる。
「さすがアランは違うな~」
「うむ、当たり前だ、あんなチャラエルフ達と一緒にせんでくれ」
「ひっど~い」
「言ってくれるねアラン! ドワーフってのは固い物を平気で食うし頭も堅い、さらに財布の口もかたいってか(うまい)」
「ふん!口だけは達者だなルージュ!」
「やるのかアラン!」
「ふんっ!望むところだ!!」
「や、やるって喧嘩? えっえ?…やっぱ止めた方がいいよね?」
急な展開で戸惑うタカキにうんざりとした顔つきのミールが半眼でボソリと呟く。
「はぁ~…大丈夫よ、お酒を飲み比べるだけだから」
「ほへ?」
「いくぞ!酒だ!マスター、キツイのを頼む」
「うむ!こっちにも頼む!」
行き成り隣の席で酒を飲み始めるアランとルージュ。
アルコールとは思えない速度で呑み始める。
「喧嘩するよりは良いけどさ昼間だよ昼間! 昼間っから酒って」
「時間は関係ないと思うけどね~あの二人ってさ、もめると何時も飲み比べするんだよ。…いつもアランが勝つらしいけど」
「え、え~と…」
「ほっとくのが一番。下手に手を出すと酷い目に遭うし」
― 一時間後 ―
「ダ…ダメだ…限界…きゅ~」
バタ!
口や鼻から得体の分からない液体を垂れ流しながら倒れる屍。
「うむ、くたばりおったか弱いな。わっはは」
「ドワーフってエルフと違って魔法使えない分対毒STに修正あるから酒も強いのね」Byタカキ
ツカツカ(ルシチ亭の店員がアランに歩み寄る)
「全部でこれだけになります」
「うむ」
支払いをするアラン そして…
「うむ、今ので全部使ったわ、わは」
「マジかい! 最後の【わは】って可愛く言ったつもりなん!【てへ】でしょう、て・へ」
「てへ♪」
「ってミールが言わない!」
「ぶ~ぶ~」
こんなやり取りの中ディオーネが店に入ってくると真直ぐタカキに近付く。
「此処にいたのか、タカキー話があるんだが…」
ディオーネがの言葉に被せるようにウンザリとした感じでタカキが喋りだす。
「どうせ宿代が~じゃないの! なんなんよ~報酬貰ったのに、もう金欠かい頭が…」
「えっ!貧血なの貧血で頭が痛いの横になる?」
「貧血じゃなく金欠、金欠!」
タカキが意外にも突っ込みキャラに二年の月日は性格が変わるのか否か…
これがタカキクオリティ
「まてまて、宿代ってなんだよ?俺は今後どうすんだ?て話にだな」
「何でだよ!話の流れ的にそれじゃ~可笑しいだろ!んじゃあ報酬のお金は?」
「何の流れだよバカか!こんな短い時間で使い切る訳ないだろう。だいたい此れから遠出するかもしれないんだから計画的使うもんだろが、普通は」
グサ!グサ!
ミール、ルージュに言葉が矢が突き刺さる。
カンッ!
アランは気にもしていないので小粋良い音を立てて弾かれるが…。
これがアランクオリティ
「まぁ、ミールはの事だから察しはつくが…ルージュ、アランもかよ…」
何だかディオーネの方がリーダー向きではあるよな~。
変わってくれないかな~等と思いながら此れからこのPTではお互い苦労するような気がするタカキであった。
「まぁ、すまんなタカキ、俺も出すよ3人の分の宿代…ルージュがこんなんだし、明日からこれからの事も皆で話し合って資金集めないとな」
「だな、了解」
苦笑交じりで此れからの事を話す二人に、ルシチ亭の女将さんが見かねて口を開く。
「は~何やってるんだか、酒で儲けさせて貰った事だし、家の倅が世話になったんだ、今日も特別に泊めてあげるよ」
「おお~ありがとうございます、女将さん」
「いいって、いいって。あんた達賑やかで楽しいからね」
「あ、あははっ愉快な仲間達的な…」
「うむ、ではタカキのおごりで酒を」
「よし!また勝負だアラン!まだまだ勝負は着いていない!!」
「あんたさっきまで酔いつぶれてたよね?…ね!?」
「私はディオーネのおごりでミネシグローネ食べたいな~、ねっ♪」
「「ねじゃねーよ!お前ら~!!!!」」
― 冒険者ギルド ―
その頃ギルドでは魔法使いぽい女性とハンターぽい男性の二人が落合、嬉しそうに話し始める。
「やっとスクロールが売れたぁ~しかも売れ残りで困っていた在庫が一気に処分できたわ~これも私の美貌の成せる技よね♪ はぁ~これでやっとマトモな宿に泊まれるしぃ。そっちはどうなのぉ?」
「ばっちりよ!コボルト討伐なのにかなりの報酬の依頼を受けたぜ。他の冒険者に先を越されないよう明日朝一で出発しよう」
「やったぁ!じゃぁ、後はゆっくり休んで明日に備えなきゃね」
「ああ、そうだな!」
翌日になりタカキ達はルシチ亭で朝食を済ませるとギルドに向かった。
結構早い時間帯にも関わらずギルド内は相変わらずの活気だ。
昔はクレセントから食材や鉱石などの取引があり貿易や職人の盛んな町ではあったが、今ではクレセントから連絡が途絶え、物も入荷がなくなり職人達の仕事は以前に比べれば激減したと言っても良い。
その為、材料を求めクレセント向かう者いたが多数でたが、行ったきり誰一人として帰っては来なかったそうだ。
今ではクレセントがどうなっているのか分からない事から色々な噂が飛び交い、魔の大陸などと呼ばれるようにもなっている。
しかもクレセントからの連絡が途絶した頃からかシグロや他の周辺諸国でもゴブリンなどの亜人種やモンスターの行動が活発になってきており、町や村への被害が増加した事で前までは雑用が主だったギルドにも討伐などの依頼が増えてきている。
それと同時に職を失った者が日銭を稼ぐため冒険者になる等、ギルドに活気が在る様に見える理由の一つとなっている。
一同は掲示板に貼られてる依頼を個々に見ている
個々に見てる事もあってか依頼の判断の基準がバラバラで、これでいいのか悩んでる最中、ミールがしゃべりだす。
「ねぇねぇ、この依頼の報酬すごいよ、コボルト三匹の討伐依頼なのにこの報酬は中々見ないよね?」
それを聞いた一同はミールの見てる所に集まる。
「この内容で、この報酬だよ?! ねっ、これにしよう♪決定~♪」
他のメンバーは何かあると悩んで決めかねてるのもつかの間、ミールがタカキの腕を掴んで強引に連れて受付に引っぱて行く。
「はい、タカキよろしくね~♪」
「えっ? あっ、う、うん」
ミールの強引さに圧倒され受け付けをするタカキ。
後の三人も苦笑交じりに見送る。
正直なところ是と言った依頼がないので決めかねていたのだから、さっさと決めてくれた方がありがたいのだ。
「ああなるとミールの独壇場だからな… 腹くくるか」
「そうさな、了解した」
「うむ」
3人が覚悟完了したところにギルドシグロ支店の店長が、タカキ達に声をかけてくる。
「あんた達も、この依頼を受けるのかい?」
「ええ、何かあるのですか?」
「いやね、1ヶ月くらい前から貼ってるんだけどね、ここから歩きで1時間ほどの採掘場の跡地を陣取って周辺の民家や通る旅人に悪さするコボルト達でな、ずる賢くって自分より強いと思ったら採掘場の中に連れ込んで罠か何かで仕留めているみたいなんだよ、まったく採掘場の中で何かあるんだか…で町から依頼を出してるんだが次々と受けてくPTが帰ってこないんだよ。だから帰ってこない度に報酬を積み上げているのさ。そういえば、昨日も男女二人が受けて今朝早くに出て行ったみたいだけど、どうなったかね」
タカキを除くメンバーは店長の話を聞いた事で本当に受けていいのか不安になってきたが、そんな空気の中でタカキは呆気らかんとした口調で依頼を受ける事を宣言する。
「何があるかわからないけど、先に行った二人が無事に依頼を済ませるかもしれない。それに逆だったら、今から行けば助けられるだろう?行こう!」
タカキはクレセントの事を思い出し、誰かを助けられるのなら助けていきたい、それに今の自分が強くなっているのか試したい気持ちもあったため、多少危険でも報酬の良いこの依頼を是非とも逃したくは無かったのだ。
そんなタカキの言葉とヤル気になっている目つきを見て、PTの四人も腹を決める。
「だな、みんなで協力すれば大丈夫だ」
「そうよね、せっかく美味しい報酬なんだしね」
「そうだ俺とアランがいるんだ、とうって事ないよなっ!」
「うむ!」
(もめる割には仲がいい)
「よし! 盛り上がってきたね。あんた達が先に行った二人と無事に依頼クリアしたら酒を振る舞うよ!」
アランの目が【ギュッピッ~~ン】っと音が聞こえるんじゃないかってくらい目が輝く!
「言質は取ったぞマスター」
「お、おう。任せておけ」
店長、後悔するな~と思いつつ何も言わずギルドを後にするタカキであった。
【ここからはタカキの説明しようのコーナー】
説明しよう! ダンジョン(迷宮)について!
まず簡単にダンジョンは2つのタイプがある。自然タイプと人工タイプだ!
まずは人工タイプから行こうか。
この人工タイプでも、いろいろある訳だが、一つ目は話しにも出てきた採掘場の跡地だな、これは鉱石などを採掘し掘り尽くして放置された場所でゴブリンやコボルトなどが住処になることが多い。
この場合は難易度も低く中で手に入る宝はたかがしれてる。異例として採掘中にモンスターの巣に当たってしまったり冬眠を覚ます事もあり、この場合の討伐はやっかいな事が多いのが特徴だ。
もう一つは魔法使いや盗賊など作ったタイプだ
盗賊は盗んだ物の保管の為か盗賊同士の腕試しで作ったりする。魔法使いは、特に高Lvの魔法使いに多い、魔法の実験などで住処にしている。
この2つは罠や奥に進む為の仕掛けなどが多く、魔法使いだと魔法生物が護衛としている場合も有り、中に手に入る宝も期待できる。
中には強大モンスターを封じ込めてたり、倒す為のアイテムが保管されてたりするので注意が必要だ。
最後は自然タイプだな。
鍾乳洞や自然にできた洞窟が主だ。
難易度はピンキリで、そこで生息してるモンスターの強さで変わる訳だが、宝に関してははっきりいって宝ではなく冒険者の遺品になる。
討伐や腕試しで生息してるモンスターに挑むのたがら元は住処だし何もない訳だから強いモンスターほど、それにあった冒険者が来るから、モンスターが勝てば、それらが蓄積される訳さ。まぁ、生息してる地域では貴重な鉱石が眠ってる事もあるが極稀だな。
こん感じで説明は以上だ。君達の冒険、待ってるぜ!




