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AGO物語  作者: AGOメンバー
13/26

熱き想い…そして決意! 12

月神闘技祭ついに決着~

短めです。

「まだまだいくぜ!ラクセルッ!!」

「僕もこのまま終わらせるつもりは無いよ。タカキ!」


 ラクセルは左のシールドで半身を隠すように構え、万全の迎撃態勢で後の先を狙う。

タカキの武器は片手半剣のような長さだが基本両手で扱う物だ、今の装備では膂力と速さで勝てないとラクセルは先の一撃で判断し、剣と楯という二つの武器 -楯は当然殴る事も出来る- を持つ自分が取る戦術は手数の多さを活かした防御優先のカウンターであると即座に回答を導き出した結果の構えである。


そんな構えなど知った事かとタカキは開いた距離を一気に詰めると、袈裟がけの一撃を見舞う。


ガッ!

「なっ、何っ!」


 予測通りの一撃に楯を合わせたラクセルであったが、想定外の膂力に体勢が崩れてしまい主導権をタカキに取られ、続けざまに襲い来る刃に防戦を強いられる。

無理に攻勢に出れば勝てるかもしれないが唯では済むまい。「此処は我慢のしどころ」とラクセルは逸る気持ちを抑え込み連続して打ち込まれるタカキの攻撃に対し防戦に集中し勝機を窺う。


 会場の観客たちはタカキの初撃の衝撃インパクトも薄れてきた事で、次第に観戦を楽しむ事が出来るようになり声援以外の口数も増えてくる。


「タカキの奴デタラメだな、あれじゃダメだろ。ぶん回してるだけやん」

「最初の攻撃は凄かった分拍子抜けだよな」

「でもよう…ラクセルの奴なんか押されてないか?」

「まさかぁ?」

「うぉ、マジかよ!!」

「あのラクセルが押されてるよ…こ、こいつはタカキが優勝って事も」


 むさ苦しい男どもの講釈など聞いていない乙女たちはラクセルの防戦に、此処が自分たちの頑張り所とより一層声援を送る。

当然メイドーズのアイとミィも周りに負けじと声を張り上げる。


「「ラクセル様~頑張って~」」


周りがラクセルばかりの声援一色になってきた事に頬を膨らませつつシオンも負けじと声援を送る。


「むぅっ!いっけぇ~タッカキィ!」


 その横ではマイが何故だかオロオロとしはじめると、困ったように眉をへの字に曲げ小さく「う゛~ぅぅ」と良く分からない唸り声をあげているかと思えば、ハッと顔を上げ対戦している2人をじっと見つめ、また困ったように小さく唸り声を上げる事を繰り返している。

シオン、アイ、ミィもこのマイの可笑しな挙動に気が付き声を掛けようとしたが、途端にマイはガバリと立ち上がると真っ赤な顔をしながら此れまで聞いた事も無い大きな声で応援しはじめた。


「えぇ~い!もう!ラクセル様~タカキ様~どっちも勝ってぇ~!!」

「「「え、えぇ~?ここにもいた天然…;」」」


キン、ガッキーン


 攻勢にやや陰りが出たのか、タカキの暴風ともいえる攻撃を受け止め、静寂を作るラクセルの剣。

タカキの荒い息から苦しそうに不満の声が漏れる。


「ぜぇぜぇ…ったく、流石だぜ。全部受け止めやがって…」

「 ふぅ~、タカキ攻撃が単調になっているよ。そんな攻撃じゃ受けるのは容易だし、全て全力じゃ疲れるだろ。まだヤレるかい?」


 内心背中に冷たい汗を搔きながらもラクセルはタカキの疲れを誘うべく挑発的な言葉を口にすると一端距離お開け、来い!とばかりに勢い良く剣を一振りする。


「まだまだ終われるかよ!うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~!!!」


 2人は再び剣を交えると先ほどと同じ光景が展開される。全力で打ち込み続けるタカキとそれを完璧に防ぐラクセル。

観客の中には、進展しない試合運びに焦れてくる者も出始める。


「ふぁ~進展ねぇなぁ?」

「しかしよぉ、もう5分近くもあの状態だ」

「完璧に受け続けるラクセルもすごいが、タカキも負けてえねぇ!普通は拳闘でも対戦3分でインターバルを入れる中、アイツはそれ以上続けてるわけだ!」

「それだけ、スゲェてことか…」

「だな…」


 タカキ攻勢は「どんだけタフなんだよ!」とラクセルが舌を巻くほど続き、体力的に有利であるはずの

ラクセルにも限界が近づいて来ていると自覚させるに至った。

「奴との根比べ」2人は奇しくも同じ思いのまま剣を刀を振るい続けた。


「ぐぉぉ~……くっ」


 タカキに限界がきたのか動きが鈍り顔色も土気色となりる。無酸素運動から来るチアノーゼの症状だ。

ラクセルは勝機と見てタカキの膂力が落ちた刀を楯で強引に去なすと、此れまでの鬱憤を晴らすかのような大ぶりの攻撃を掛ける。


「必殺!ブラッディクロス!」


胴への横の一閃から直ぐに肩口へ縦の一閃。

神速の十文字斬り「ブラッディクロス」。

ラクセル的に格好良く付けたらしい…俺が付けたら中二病扱いなのに…さすがイケメン…ちっ(舌打ち)


ズッバァァーザン!


 衝撃で吹き飛ぶ鎧の破片とタカキ。

気が付くとラクセルの剣が首もとでピタリと止まっている。


「うっ;」

「決着ぅ~今年の優勝者はラクセル・ライト!!連覇達成です!!!」


 司会者が良く通る声でラクセルの勝利を宣言すると会場から大歓声が巻き起こる。

その終わらぬ歓声の中、タカキに手を差し伸べるラクセル。

やはりイケメンである。


「ふぅ~…全く、危なかったよ」

「リベンジならずか…」

「お疲れタカキ」

「ああ」


 ガシッと二人で手を取り合うと更なる大歓声が巻き起こり、タカキは耳鳴りになりそうだな~等と若干ボケた事を考えながら立ち上がると、痛む身体を無視して観客に無事である事を伝えるべくラクセルの隣で手を振る。


「いいぞぉ!」

「ラクセル様~!」

「負けたなタカキ!」

「「きゃぁ~ステキ~らぁくぅせぇるぅぅさぁまぁぁん」」


メイドーズのアイとミィの歓声に遅れる形でマイも声を張り上げる。


「ラクセル様~優勝おめでとうございます!…タカキ様~お疲れ様です、次回こそはリベンジですよ~」

「「どっちなん;」」

「あっと///、それは…きゃふん」


この子壊れてきてる…;

アイは本気でマイが心配になってきたが、更に心配な方が出てきたため今は棚上げすることにした。


「タカキィなに負けてんのよお!!後で反省会だかんね!」

「シオン様キャ、キャラが…(それとも素?)」


 粗暴な口ぶりとは異なり大粒の涙をポロポロと落とすシオン。


「だってタカキ頑張ってたんだよ!ひっく…あんなに特訓してて、なのに~!ひっくひっくふぇぇ~負けちゃったぁ~タカキふにゅぅぅ」

「あぁぁ、シオン様、シオン様落ち着いてください;」

「泣いてないもん!ぐにゅん」

「あっ、ラクセル様、タカキ様が戻られますよ。シオン様、タカキ様を労って上げましょう」

「うん、泣いたのバレないかな?」


 やっぱ泣いてたんじゃん;

シオン姫の壊れっぷりに将来が心配になるメイドーズであった。

次回急展開の予感;

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